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【レシピと思考】敗北を知りたいポークビンダルーの作り方【カレー】

「自分のポークビンダルーが美味すぎて敗北を知りたい」

※この記事は、スパイスは一通り持っているカレー作りガチ勢の方向けに書いたレシピですが、最近カレー作りを始めた方にもこれから作ってみたい方にも楽しんでいただける内容なはずです。たぶん。

※6000文字あります。長すぎる。許してください…。
忙しい人は目次からレシピまでジャンプ!



長い前置き

ポークビンダルーってなに?

日本エスニック協会より引用https://ethnic-as.net/selection/recipe/170/

ポークビンダルーは、ポルトガル人がインドの西海岸地方のゴアにもたらした料理です。ポルトガルではポークにワインビネガーやニンニク等をたっぷり漬込んでから煮込んで作りますが、ゴアでは、さらにたっぷりのスパイスやチリーを加えてアレンジされています。ゴアの宝と言っても過言ではない料理で、辛味と酸味の味わいを効かせたインドカレーです。

日本エスニック教会より引用https://ethnic-as.net/selection/recipe/170/

一言で言うと
「お酢を使った甘酸っぱ辛いポークカレー」
です。最近はスパイスカレー屋さんでよく見かけますね。


僕のポークビンダルーは美味い

最初に言い切ってしまいますが、
僕が作るポークビンダルーは美味いです。本当に。
傲慢ですみません…許してください…。

敗北を知りたいポークビンダルーの顔

実際にコバタロポークビンダルーを食べた人からの評価も良さげ。
コバタロカレーYouTubeに載せてるほぼ同じレシピをみて実際に作った人からの評価も良さげです。

勝手に引用させていただきました。許してください…。

YouTubeに載せてるポークビンダルーのレシピ動画


ブヒブヒ🐽ポークビンダルーサミット

敗北を知りたすぎて、ポークビンダルーを作る人を集めて各々のポークビンダルーを食べ比べる"ブヒブヒ🐽ポークビンダルーサミット"を開催したことがあります。傲慢すぎにも程がある…。

ポークビンダルーが4種類同じターリーに並ぶ、お店では絶対に見られない光景

そして結果は、勝敗はつかず「みんな違ってみんな美味い」という結論でした。
各ポークビンダルーの完成度がどれも高くそれぞれが違う方向性で完成された味で、そこに優劣はありませんでした。
つまり、

「ポークビンダルーはポークビンダルーの数だけ正解がある」
(ポークビンダルーに限った話ではないですが)

「敗北を知りたい」と書いておいてアレですが、そもそも料理に勝ち負けなどありませんでした。深く反省した。傲慢パートはここまで。


ということで

"誰にとっても一番美味しいポークビンダルーはこの世に存在しない。一番美味しいピークビンダルーはひとりひとりの心の中にある。"

という前提のもと、"コバタロが考える"美味しいポークビンダルーのレシピをご紹介します。

コバタロカレーYouTubeにあるポークビンダルーのレシピを改良し、さらに手間を惜しまず美味しさにフルコミットした完全版のレシピです。

材料は一部のスパイスを除けばスーパーで手に入るもので作れます。その代わり手間のコストを一切考えてないレシピなので、作るのが少し面倒です。許してください…。


どんなポークビンダルーなの?

コンセプト

①お肉トロトロ
②うま味強め
③酸味・甘味・辛味のバランスのとれた味わい
④美味しくするために手段は選ばない

一言で表すならレストランっぽい派手な味です。

こんな人におすすめ

・スパイスからカレーを作ったことがあり、スパイスは一通り持っている人
・手間を惜しまず美味しさを追求したい人
・素朴な味より派手な味が好きな人


敗北を知りたいポークビンダルーができるまでの思考過程

このポークビンダルーのレシピに至るまでの思考過程を書いていきます。(長いです)
カレー屋さんやプロの料理人の方が読んだら当たり前のことや滑稽なことを書いてるかもしれません。コバタロなりの考えということで許してください…。

忙しい人はレシピのところまでスクロール!


先ほど挙げた4つのコンセプトに沿って解説していきます。

①お肉トロトロ
②うま味強め
③酸味・甘味・辛味のバランスのとれた味わい
④美味しくするために手段は選ばない


①お肉トロトロ

角煮みたいなトロトロのお肉がポークビンダルーに入ってたら絶対美味いよな…
ということで、豚肉はバラ肉ブロックを使います。僕はデブ味嗜好なのでトロトロの豚バラが大好きです。脂身最高!
まあとにかく豚肉で作るのが大事です。豚肉に合わせた味のバランスなので、鶏肉や牛肉など他の種族の肉に代用するのは非推奨です。


②うま味強め

うま味には"相乗効果"というものがあります。

・肉から出るうま味(イノシン酸)と、野菜から出るうま味(グルタミン酸)を掛け合わせると、単体で味わうより強いうま味を感じられる
・そしてその比率が1:1のときうま味の強さは最大となり、うま味は単独で味わうときに比べ、およそ7〜8倍強く感じられる。

うま味インフォメーションセンターより要約(https://www.umamiinfo.jp/what/whatisumami/)
グルタミン酸・イノシン酸の配合比とうま味の強さ
(うま味インフォメーションセンターより引用https://www.umamiinfo.jp/what/whatisumami/)

かつおと昆布の合わせ出汁がまさにこの理屈。
(詳しいことは今度別記事で説明します。)

この理論を参考に、このレシピでは豚肉から出るうま味(イノシン酸)と、玉ねぎにんにくトマトから出るうま味(グルタミン酸)の比率が1:1になるように計算して分量を決めました。料理は科学!


③酸味・甘味・辛味バランスのとれた味わい

味には、相互効果というものがあります。

ちょこますより引用(http://chokomasu.jp/pairing/702/)
ちょこますより引用(http://chokomasu.jp/pairing/702/)

この味の相互効果の理論を参考に、このレシピは酸甘辛のそれぞれが主張しすぎず調和の取れた味わいになるように分量を決めていきます。
(詳しいことは今度別記事で説明します。)

酸味・甘味・辛味のバランスは
「穀物酢(酸味)」
「玉ねぎと砂糖(甘味)」
「カシミールチリとブラックペッパー(辛味)」

を使ってとります。

・酸味
穀物酢を使います。バルサミコ酢やワインビネガーなどの良いお酢をあえて使わない理由は、お酢単品が美味すぎると、風味が複雑で全体バランスをとるのが難しいためです。なので、今回はクセが少なく素直な味の穀物酢(もしくは米酢)を使います。あと安くて良いよね。

・甘味
玉ねぎと砂糖を使います。玉ねぎだけで甘味のバランスを取ろうとすると玉ねぎの風味の主張が強くなりすぎるため、玉ねぎは風味的に必要な分量だけ使い、足りない甘味は砂糖で補強します。
お砂糖の種類に関しては、酢と同様の理由で味にクセが少なく素直な味の三温糖(もしくは上白糖)を使います。安くて良いよね。

・辛味
ブラックペッパーとカシミールチリを使います。
2種類の辛味を加えることで、辛さに立体感を作り、食べ飽きないような味にするのが目的です。

カシミールチリはぜひ手に入れてください。
辛味的にはカシミールチリである必然性はありませんが、カシチリには普通のチリでは得られないカシチリならではの香りがあります。
酢と砂糖はクセのないものを選びましたが、カレー作りガチ勢として唐辛子はこだわりたい。手に入れるのが大変かもしれませんが、カシミールチリホールを自分で挽くのがおすすめです。ガチ勢は美味しくするための手間を惜しまない。

カシミールチリはここで買えます


④美味しくするために手段は選ばない

ここがこのポークビンダルーの最大の特徴です。ここまで書いてきた内容は、レシピ本やネットに書いてあるポークビンダルーのレシピとそこまで差はありませんが、僕のレシピは調理の手順がよくあるレシピと異なります。
インド現地ではやらない邪道なやり方で作ります。そのやり方とは、

「肉をビンダルーペーストに漬け込まない」

です。そしてこうする理由は、

「各素材の火入れ具合をベストな状態で揃えるため」

です。

「にんにく・スパイス・酢で作ったビンダルーペーストに肉を漬け込んだものを煮込む」というレシピがポークビンダルーのセオリーですが、僕はこの作り方が個人的には最適解だと思っていません。

従来の作り方はビンダルーペーストに漬けることで「豚肉が柔らかくなる・肉の臭みが取れる」という利点がありますが、
一方で「豚肉・にんにく・スパイス・酢の火入れがベストな状態で揃わない」という課題があると個人的に思っています。

・肉が柔らかくなり、うま味が肉からグレイヴィに移るまで長時間煮込むと酢やスパイスが飛んでしまう
・スパイスや酢の香りが飛ばないよう煮込みを短時間抑えるとにんにくの刺激臭が残ったり肉が柔らかくなりきらない

このジレンマを解決すべく、以下のようなやり方で作っていきます。

・豚肉は別鍋でじっくり煮込んでおく
・にんにくはしっかり炒めて刺激臭を飛ばす
・パウダースパイスを加えて炒めた後はあまり煮込まない
・酢は終盤に加える

・豚肉の火入れ
豚肉はマサラとは別の鍋でしっかり煮込む。脂身がプルプルコラーゲン化するまで柔らかくする。

・にんにくの火入れ
マサラ作りの序盤で投入して、刺激臭が飛ぶまで炒めることで土台に馴染ませる。

・パウダースパイスの火入れ
パウダースパイスは具材や水分を加えた後は煮込みすぎないことで、香りを出来るだけカレーに残すようにします。(これはスパイシーカレー魯珈のレシピ本にも載っていた考え方)
.
酢の火入れ
酢は酸味と風味が加熱で飛びすぎないように仕上げに加える。

こうすることで、「豚肉・にんにく・スパイス・酢」それぞれの状態を(コバタロが思う)ベストな状態にもっていくことができます。


長い思考過程終わり

こんなことを考えながら、僕はカレーを作っています。
ここからレシピ本体ですが、ここまでで既に4000文字くらい書いてしまいました。許してください…。


レシピ本体

レシピを見る前に

分量はグラム(g)表記です。0.1g単位で計れるデジタルスケールがあると作りやすいです。
おすすめのデジタルスケールはこちら

スパイスを挽くためにミルサーが必要になります。
おすすめのミルサーはこちら


材料

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