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一蓮托生

真夜中の博物館。
強化ガラスが砕け、展示物である火星の石が侵入者の手に渡った。その時である。
「はは、見事にかかりましたな。館長」
爽やかな笑顔を浮かべ探偵は話しかける。
「まさか展示物すべてを偽物に取り変えるとは、月の石然り実に精巧だ。石ころの為に飛び込ませるとは」
真っ青になっていた館長の顔は、この言葉に更に血の気が引いて白む。
「い、いえ、私はそんな事しておりませんが……」
その反応を見て探偵は訝しむ。
「……うん?それならばこれらのレプリカはなんのために……?」
ギリギリな状態の館長は叫ぶ。
「これらはステイツからの預かり物です!そして預かった物とこれらは同じ物です!」
心からの叫びに、探偵は得心した。
「ははぁ、これは実にマズイことなりましたな」
探偵は侵入者へと目線を向けた。
「どうやら我々は、ステイツが宇宙競争でボロ負けした挙句、国民を騙している事を知ってしまったようですな」

【続く】