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ギガント・マーダー・マムシの末路

まだピクピクと動いている肉をむんずと掴み、醤油を貯めたボールに突っ込みそのまま喰らいつき、引きちぎる。 旨い。この様子なら串焼きの方も期待できそうだ。 冷蔵庫からビールをごっそり持ちだし、キャンピングカーから出る。焼け始めたマムシのいい香りが鼻を擽る。 一缶二缶三缶───どれも一気に飲み干し、先程の生肉をまた喰らい、またビールで流し込む─── マムシ肉の串焼きはビールの大親友だった───気がつけばダース以上の空き缶が転がっていた。 尿意を覚え、酩酊した体を車まで連れ戻そうとす

    • 一蓮托生

      真夜中の博物館。 強化ガラスが砕け、展示物である火星の石が侵入者の手に渡った。その時である。 「はは、見事にかかりましたな。館長」 爽やかな笑顔を浮かべ探偵は話しかける。 「まさか展示物すべてを偽物に取り変えるとは、月の石然り実に精巧だ。石ころの為に飛び込ませるとは」 真っ青になっていた館長の顔は、この言葉に更に血の気が引いて白む。 「い、いえ、私はそんな事しておりませんが……」 その反応を見て探偵は訝しむ。 「……うん?それならばこれらのレプリカはなんのために……?」 ギリ

      • ムーンシャイン・ラグナロク

        新宿の街中をリュックを背負った猿が駆け抜けていく。 人々をすり抜け、飛び越え、ビルを登り、縦横無尽に動き回る。 そんな奇っ怪な光景も、街の人々は気にも止めない。ここ数年でこの怪現象は日常へと溶け込んだ。 終戦直後以来、70年振りに日本で密造酒が流行している。 バッカスと名乗る違法酒造家が、市販の酒を上回るクオリティの密造酒を販売してしまったからである。 取り締まろうにも猩々ーーー運び屋も兼ねた先述の猿妖怪が妖術の類を使いあの手この手で違法行為を揉み消しにかかる。 酒の味、理

        • せめてもの弔い

          「おはよう。5000年ぶり」 「……博士がまだ生きているとは思いませんでした」 少年の応答に肩をすくめる。 「精神をデータ化する方法が見つかってね。肉体に固執するような風潮は殆ど消えたよ。おかげで君の仕事は殆ど無い」 仕事。その言葉を聞き少年の顔が曇る。 「もうダメですか……」 「まあね。けど思った以上に頑張った。終末戦争が起きるかと思ったが。人は愚かじゃなかった。宇宙は無事老衰を迎える」 少年は体を起こす。 「宇宙の終焉……」 「膨張し続けたものがまさか800年で収縮しきる

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