伊坂幸太郎『逆ソクラテス』
子どもは非力な存在だ。
だから、親や教師に従わざるを得ない。
それが子どもが生きる道。
子どもは思っている以上に大人で、
子どもの心はとてもデリケートで、
子どもは大人をよく観察している。
子どにも生きづらさがある。
だから子どもにも
「世を忍ぶ仮の姿」というものがある。
早く大人になりたい?
大人になっても辛いことばかりだけどね。
伊坂幸太郎の『逆ソクラテス』を読みました。
(出来るだけネタバレしないように、読んで感じたことを自由に書いています。)
五つの短編が収められています。
主人公は子ども。
子どもはあどけなく無垢な存在で……
子どもはそんなに単純なものではありません。
誰だって昔は子どもだったのだから、わかるはず。
子ども時代を振り返ってみても、大人の顔色を瞬時に読み取って先回りしたり。
こういう風に振る舞えば、好印象を得られるとか。
感情的な大人に振り回されて、理不尽を学んだり。
早く大人になって自由になりたいと希っていた。
表題作の『逆ソクラテス』に引き込まれました。
謎めいて大人っぽい転校生は、大人の先入観、決めつけをことごとくぶっ壊す作戦に出ます。
ぐっと引き込まれますよね?
時には、犯罪紛いの手段も辞さない。
周到に準備されたさまざまな作戦が遂行され………。
この作戦に巻き込まれた結果、パッとしない存在だったあの子は華麗な変貌を遂げて……。
そして、首謀者の転校生安斎くんは………?
なるほど、そういうことだったのかという仕掛けもあり、さすが!と手を打ち、胸が熱くなる。
倫社の教科書で学んだソクラテスの「無知の知」。
『逆ソクラテス』の意味にも納得。
他作品も現代的な要素がありながら、普遍的な何かを感じさせてくれる秀作揃いです。
著書のあとがきの一部を引用して、締めくくりたいと思います。
文庫本にもなっています。
こちらの方もおすすめされています。