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馳星周 『少年と犬』

フォローさせていただいているShinjiyさんの記事を拝読して、この本を知り、図書館で借りて来ました。


『少年と犬』 馳星周 著
 文藝春秋

第163回 直木三十五賞受賞作


noteにはペット愛に溢れた記事が数多く見られます。
わたしがフォローしている方はどちらかというとネコ派が多いような気がします。

中には、犬猫両方飼っていらっしゃる方もおられます。

ペットと人間。
主従関係ではなく、家族として
いつもそばにいてくれる存在。

こちらの作品はまさにそれがテーマでした。

 男と犬
 泥棒と犬
 夫婦と犬
 娼婦と犬
 老人と犬
 少年と犬

6話の短編から構成されていますが、最後まで読むことによって、主人公の犬の素性がわかり、次々に代わっていく飼い主たちの人間ドラマが浮き彫りになります。

たとえ短い間でも、飼うものと飼われるものとして契りを結ぶことで、信頼関係、心の交流が生まれます。
やはりこの作品の主人公は、猫ではなく、犬でなければなりません。

人の心を理解し、人に寄り添ってくれる。こんな動物は他にはいない。

「老人と犬」p.234より


ドラマの背景には東日本大震災があります。

犯罪が横行する殺伐とした風景。
人間の世界はきれいごとばかりではではありません。
犬は話すことはできませんが、
それでも人間の声を聞き、理解することができます。

人間の死に立ち会う犬。


この犬にはマイクロチップが埋め込まれていて、多聞という名前だということはわかります。
飼い主も、住所もわかりますが……。


飼い主が代わっても、多聞はいつも同じ方向を見ています。

その視線の先に何があるのか。

ミステリー仕立てになっています。

東北から九州まで、長い放浪の末、
多聞は少年に再会します。


ネタバレになりますので、このくらいにしておきましょう。


多聞は、悩み、苦しむ人間の心の声を聞き、寄り添うことができる特別な犬でした。


仏法を守護する四天王のうち、北方を司る神、多聞天。
多聞天は毘沙門天とも呼ばれています。(Wikipediaより)

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