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エーリヒ・ケストナーの世界

小学生時代に最も愛読したのは、
エーリヒ・ケストナーの童話でした。
ユーモアあり、ワクワク感あり、夢がいっぱい織り込まれていて、読めばいつでも、自由な空想世界に連れて行ってくれました。

しかし、ケストナーの魅力はそれだけではありません。
親子の愛や友情など、大切なことは決してごまかさずに真面目に書かれています。
子どもの世界にも厳しい現実があるのです。


そして何よりも、味わい深い文章に惹きつけられました。
ドイツ文学者高橋健二さんの名訳の賜だと思います。

『エーミールと探偵たち』を読み返してみて、感動を新たにするとともに、子どもの頃気づかなかった発見もありました。

挿絵も魅力的。

主人公エーミール
母親思いの実業学校の生徒
美容師をしながら女手ひとつでエーミールを育てているティッシュバイン夫人
ベルリン在住のエーミールのおばあさん。
エーミールはお母さんから預かったお金を届けるため、ひとり列車でベルリンに向かう。


ベルリン行きの列車に乗り合わせた山高帽の紳士
一見、善人風だが…

大切なお金を盗まれてしまったエーミールはベルリンで出会った子どもたちと協力して、犯人を追い詰める。


わたしが子どもだった頃は、エーミールは「エミール」表記だったと記憶します。

ガンジーがガンディーに、
リンカーンがリンカンになったのと同様に、現地の発音に忠実になったということでしょう。

ケストナーの物語の世界に魅了されて、小学生のときには、自分でも童話のようなものを書いていました。



今図書館で借りて、こちらも読み返しています。

『五月三十五日』岩波書店

タイトルからもおわかりのように、一見荒唐無稽なお話。

しかし、この本にはオマケがあり、
巻末にちょっとした詩集が付いているのです。
実はケストナーは、元々詩人でした。

大人にこそ、是非読んで欲しい警句的な詩もあります。

一部をご紹介すると……

 「警句 かんたんに、はっきり」

いうことを持っている人は
いそがない。
時間をかけて
一行でかんたんにいう。

p.158

「ねうちのあるあやまり」

あやまりにも、それなりにねうちがある。
だが、いつでもというわけではない。
インドに向かって航海するだれもが、
アメリカを発見するわけではない。

p.160

「道徳」

よいことなんて、世の中にはない。
よいことをおこなうことがあるだけだ。

p.161


一番好きな詩は少し長いので、また機会がありましたら、ご紹介したいと思います。



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