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皮算用

なぜか、夫の方が先に旅立つと信じて疑わない自分がいる。

黒老婆の日常茶飯事。

男女の平均寿命の差を考え、
年の差を考え、
おまけに夫は大酒飲みときているので、ごく自然の成り行きとして自分は後に残るものと思ってしまう。


最近は、夫もそれなりに気を遣ってくれて、日中は出掛けることも多いけれど、いればそれなりの食事を決まった時間に用意する。

ひとりだと、多分ここまで几帳面にはやらないだろう。
スーパーでお惣菜を買ってきて、冷凍してあるご飯と食べたり。
残り物やおにぎりでささっと済ませたり。
多分、手を抜くだけ抜く。

起床も就寝も不規則になり、
掃除もおざなりになる。
(掃除は今もおざなりだ!)

間違いなく、自堕落な生活になるであろう。

結果、健康を害するおそれもある。

とはいえ、ひとり暮らしになったら、あれもしたいこれもしたいと妄想が膨らむ。

ひとりで焼き鳥屋に通って、常連になりたいとか。

ひとりで船旅をしてみたいとか。

気の合う女友達と自由気ままにランチ&お茶三昧の日々。

どれも、夫が生きていても出来ることばかりだ。

しかし、夫がいることで心にブレーキがかかる。

ひとりの老後を謳歌したいなら、今から自分の健康管理も大切だ。


毎日の食事の支度はそこまで苦にならないが、買い物に行って荷物を持ち帰るのが結構辛い。


その辺ところを夫はわかっているのか。
車や自転車を使えばいいのだが、わたしは歩くのが好きだから、徒歩でスーパーに行くことが多い。
夫はたまに自分で料理することもあるけれど、そのために必要な食材を買ってくるだけだ。
ゴミ捨てや洗濯は今も昔もわたしが担当。

たまに草刈りやお風呂の掃除などを徹底的にやってくれるのはいいのだが、「しましたよ」アピールが鼻につく。


そんな日々の小さなイライラモヤモヤを溜め込みつつ、自由気ままなひとり暮らしを夢想する。

若い方は、関心も知識もないと思うが、62歳になると、年金受給手続きというのがある。
しちめんどくさい諸々の添付書類を、黙ってすべて揃えてくれたのは夫である。
お蔭で、無事に書類は年金機構に受理された。

わたしは書類を読むのも書くのも苦手意識がある。
とりわけ、お上からの通知は。

今まで確定申告などは税金関係はすべて夫に丸投げ。
その他各種手続きも夫が処理してくれた。
そんな他力本願な生き方が許されたのは夫のお蔭と素直に認めよう。

夫を失うデメリットを考えると、
今はまだ失いなくない。

そして、自分が「お先に」と、旅立つ可能性もないとはいえない。
人生に番狂わせは付き物だ。


現時点で、お互い元気だからこそ、
こんな無責任な皮算用ができる。



※イラストはマサルさんより
 お借りしました。
 いつもありがとうございます。