新春 歌の連想ゲーム
お正月は、老人ホームから、母が我が家に泊まりに来ている。
一緒に箱根駅伝を観ていると、
「箱根」という言葉に反応して、
〽︎箱根の山は天下の険
(箱根八里)
と、突然歌い出す。
青山学院の選手がトップに躍り出ると、ペギー葉山からの連想で、
〽︎つたのからまるチャペルに
(学生時代)
という具合。
痒い痒いというので、
母の背中を掻いているとき、「あんまり掻くと傷だらけになるよ」と話していたら、歌いこそしなかったが、『傷だらけのローラ』といってみたり。
ひ孫の写真を見せて、名前を教えると、それに反応して、
〽︎〇〇〇ちゃん、遅くなってごめん
ね
(花はおそかった)
みかん狩りの写真を見ながら金柑を食べた話をすると、
〽︎キンカン塗ってまた塗って
(CMソング)
などなど。
会話の中の言葉に反応して、連想ゲームのように歌がワンフレーズ飛び出す。
平素は無気力で、日中もほとんどベッドで横になっている。
自分が今どこにいて、どんな状況なのかも忘れていることが多い。
我が家に来た時は、夜は同じ部屋で寝ているが、電気を消すと、ここはどこかに始まって、次から次へと質問責めにあう。
夜中にお手洗いに立つ度にそれが繰り返されて、なかなか寝かせてもらえない。
明日には施設に帰ることを告げると
「寂しいね」と心細げにいうので胸がチクッと痛む。
「車でいつでも行ったり来たりできるよ」というと、
〽︎行ったり来たりの繰り返し
(かもめが翔んだ日)
と節をつけて歌い出す。
母の頭の中に、歌の抽斗がいくつあるのか。
不思議でたまらない。