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ファシリテーターがもつべき人間観

ファシリテーターをはじめて10年。インターンへのレクチャーをしていて気付きましたが、コロナ禍でオンライン対応が増えたことで、ファシリテーションの場数も通算1,000件を越えました。

500名参加する大規模オンラインイベント、対面の150人参加研修、地域振興の人材育成講座、起業体験イベント、火中の栗を拾うかのような炎上事案の支援ミーティング、中学生全校生徒の読書ワークショップ、家族会議などなど…対象者は小学生から上は80代までやってきましたが、問題解決においてこのスキルは汎用性が高いとつくづく実感します。

企業向けでは社外CHROとして組織内部に入り、人事部の立ち上げや人材採用・育成・組織づくりを切り口に経営支援をスタートしていますが、話を伺っていくとそこが真の課題ではないことに気づけたりします

先日も人員補強を目的に採用支援をスタートしましたが、ヒアリングを重ねていくとネックとなるものはそこでないと気づき、提案し営業戦略ミーティングにお邪魔しました。

詳細は省きますが、元々関係者からお話を聞いていた課題…現場メンバーのスキルややる気が低い訳ではなく、犯人はシステム(関係性)やプロセス(話し合いの過程)にあると発覚。3時間ファシリテーションをし話す(問う)・聴く・書く・整理をすると、何年やっても決まらないものがその場1回でほぼ決まり、その結果「光明が見えました」と参加者からモチベーションが上がった旨の振り返りを聞かせてくれました

経営者からも「今日のミーティングはこれまでになかった可能性を感じた」というお褒めのコメントいただけましたが、仮にお金を掛けて優秀なメンバーを集められたとしてもうまくいくとは限らないですし、人はただ集まっただけでは力は発揮されません。

こうしたメカニズムを社会心理学者のスタイナーは「プロセス・ロス」として表現し、人は集まるほど集団心理として社会的手抜きやフリーライダーが出現し、多様性とそれに伴うコミュニケーションコストの増加などから、メンテナンスを意図的に行なわないとパフォーマンスは低下すると指摘しました。逆にうまく働きかければメンバーは元々以上の力がチームのなかで発揮されたりするのです。

これが特に表面化するのがまさに会議のやり方、コミュニケーション方法です。

ファシリテーターとしてシステム思考とダイアローグについて学んだことが個人的には一番大きかったですが、端的に言うと人を責めずにシステムとプロセスを責める(問いを持つ)という視点が大事ではないかと考えます。

人が問題行動を起こすのはその人が悪いからではなく、そのように人を仕向けるシステムやプロセスに問題があるという前提に立って議論をする。

たとえば「何が私たちをそうさせているのか」「何がネックなのか」「(問題ではなく)めざすべきゴールや理想は何か」「私たちが見落としているものがあるとすればそれは何か」など、プロセスや参加者の思考の外側へ探究的な問いを投げてみる。
すると灯台下暗しなのか、外部から入った私だからこそ気づける部分が多く見つかったりします。

厄介な人、駄目な人、出来ない人と見なされる人にも理由があり、組織の外では違う役割を担っています。必ずしも故意に振る舞っている訳ではないということを忘れてはいけません。

もちろん本当に知識やスキル不足に起因することもあるので断定できませんが、組織やチームを取り巻くシステムやプロセスにもぜひ疑問をもってほしいです。個人的にはそんな人間観の方が人をいたずらに傷つけず救いがあるなと思ったりします。

ファシリテーター自身も上辺のスキルや知識に溺れず、人と組織を見る眼差しと向き合うあり方を磨き続けるべし
(と自戒も込めて)


久しぶりにファシリテーションについて書きましたが、企業への支援や官民協働の場面でもっとファシリテーターの価値が伝わり需要が高まってほしいので、後続のためにも引き続き草の根活動頑張りたいと思います。

ご興味あれば、以前対話や対人支援について書いたこちらの記事もどうぞ↓


数多あるnoteのなか、お読みいただきありがとうございました。いただいたご支援を糧に、皆さんの生き方や働き方を見直すヒントになるような記事を書いていきたいと思います。