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【リフレクションの探究】1.リフレクションとは何か?

2021年がはじまりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

不定期ではありますが、今年も現場の実践からの気づきや気になるトピックスからnoteを更新していきたいと思いますので、どうぞお付き合いください。

さて、2020年もコロナ禍もありながら学校・企業・自治体・NPOとさまざまな方々とお仕事をし、その現場に応じてコーチ・カウンセラー・ファシリテーター、プランナー、コンサルタントと実に多様な役割を担わせていただきました。

いかなる立場においても”関わった人と組織が成長する”を起点に考えているのですが、一貫してお役に立てるテーマであり、これまでこだわってきたのがリフレクション(Reflection)です。

特に「探究的な学び」が導入された教育現場では相談を受けることも少なく、まだまだこの点については学校に限らず伸びろ白があるなと感じています。

”事始め”とも言いますが、1月は新しい何かを始めにはいいタイミング。

これまでセミナーや個別の相談にて応えてきたものをログに残すという意味も兼ねて、「リフレクションの探究」をシリーズとして何回かに分けてお届けしたいと思います。

教育や人財開発に限らず種々の理論や概念を用いながら、経験によってもたらされてきた暗黙知とアカデミックな知識や概念など形式知との統合を試みていきます。

人の成長に関わる方、あるいは自分自身を成長させたいという方の参考に少しでもなれば嬉しいです。

以下は、7回のテーマ(予定)です。書いていくなかで多少変わるかもしれませんが、完走をめざして書いていきます。

1.リフレクションとは何か
2.リフレクションの意義と効果
3.リフレクションの歴史を辿る
4.リフレクションの実践①個人編
5.リフレクションの実践②グループ編
6.リフレクションの実践③コーチング編
7.リフレクションの可能性


vol.1テーマ:リフレクションとは何か?

初回のテーマはそもそも”リフレクションとは何か?”です。

言葉自体初めて聞いたという方もいれば、言葉は知っているけど意味はよくは分からない。あるいは、リフレクション=反省のような認識の方もいるかもしれませんね。

私がリフレクションという概念と出会ったのは、曖昧な部分もありますが、思い返せば社会人となって数年経った頃に受けた研修だったように記憶しています。

当時は20代半ば。今ほど読書の習慣もなく、教員免許を大学時代に取ったものの教育や人財育成について知識も表面的で、まだまだ”自分が育てられる側”の意識が強かったように思います。

リクルートでは入社後に各年次で受ける必須の研修とは別に、ビジネススキルやキャリアなどさまざまなテーマを無料受けられる手挙げ制の研修制度がありました。

当時は大した学歴・職歴もないまま転職したこともあり、周囲に置いて行かれまいと積極的に学びはじめた頃。それ以降、書籍のなかで表現を変えて度々このリフレクションの重要性を知ることがありました。

何が言いたいのかというと、リフレクションは学生~社会人と成長していくなかで意識的に触れることや習う機会がほとんどなく、自ら学ぼうとする人でなければ恐らく出会うことがないと概念とも言えるのではないでしょうか。

しかし、公教育を受けた人でリフレクションを体験したことがないという人はまずいないはずです。

後ほど触れますが、実はリフレクションは私たちのこれまでの学校教育や様々な人材育成のプロセスのなかに部分的にでも組み込まれています。

学ぶ側がそれだと意識していなかっただけなのです。

リフレクションはシンプルですが、先人の思想や哲学など歴史的背景もあるとても重要なプロセス。これがあったからこそ、私たちは今の自分となったと言っても過言ではないかもしれません。

まずはリフレクションとは何かを知るのために”リフレクションと似て非なる概念”を紹介します。

私は教員や企業の人事、研修講師といった立場の方だけでなく、これからの時代を生きる方すべての人が意識的かつ意図的に出来るようになるべきではないかとも考えていますので、次回以降のテーマにも繋げる意味で”なぜ、今リフレクションが求められるのか”について私見をお話したいと思います。


リフレクション(振り返り)の意味

冒頭から説明もなくリフレクションという言葉を繰り返し使ってきましたが、まずこの意味から見ていきましょう。

リフレクション(Reflection)
(光・熱などの)反射、(音などの)反響、(鏡などの)映像、(水などに映った)影、よく似た人、(状況・事情などの)反映、投影、影響、熟考、内省
出典:weblio英和・和英辞典より

辞書的な定義でいえば鏡による反射や投影、反映という意味で使われることがありますが、人材育成・教育の文脈では内省という意味合いで使われます。

リフレクションは現場で使われる表現として「振り返り」がポピュラーだと思います。以降、表現としてはリフレクション=振り返り(内省)として使っていきます。


振り返りと「反省」の違い

「振り返りをしましょう」「振り返りは大事ですよ」という話をしたとき一番多いのは、振り返り=反省という誤解です。

リフレクションは振り返り(内省)であり、反省とは異なるものなので、まずは使い分けをしていきましょう。

念のため、反省の意味も確認しておきます。

反省(はんせい)[名](スル)
1.自分のしてきた言動をかえりみて、その可否を改めて考えること。「常に反省を怠らない」「一日の行動を反省してみる」
2.自分のよくなかった点を認めて、改めようと考えること。「反省の色が見られない」「誤ちを素直に反省する」
出典:weblio辞書より

反省の目的とは、「やってきた言動を省みて、どこが良くなかったのかという問題や課題を”なぜ?”という視点で議論を進め、関わった人がその非を認めること」と言えます。

これによって人の過去志向を強めてしまうだけでなく、参加する人の批判的態度を引き出しやすい。時には自分や他者の責任を問うような「犯人捜し」になってしまうこともあるかもしれません。

イベントやワークショップ、プロジェクトに関する現場の課題の一つに、この反省との混同問題が挙げられます。

特にまちづくりの現場にいる多くの皆さんは、振り返りと反省の意味・目的を混同しており、「反省会なんて面倒だ。それよりも忘れて飲もうぜ!」となってしまいがち。

企画の最後が問題や課題を見つける犯人捜しになってしまうのならば、誰もそんな場に出るのは気が進みませんよね。ましてや仕事の関係で仕方なく付き合っているような苦手な人がいるならばなおさら…

この気持ちが貴重な成長や変化の機会を逃し、やりっぱなしを引き起こしてしまう。この結果、気づけば毎年の現状維持、前年踏襲になってしまっているのではないかと考えます。皆さんの周りはどうでしょうか。

ポイントは、悪いところ・上手くいかなかったところ探しに終始しない。次に繋げようという意識を持って未来志向で考えるということです。

では、リフレクションとは何でしょうか?

リフレクションは、「自分の言動や感情、いい所や悪い所を識別し、主観的・客観的に省みて、そこから自分なりの教訓を生み出し、次のアクションの修正を図っていくこと」です。

反省と比較すると、外面的な行動や成果だけではなく、内面的な感情や主観的な経験にも注目し、課題や問題だけでなく上手くいった所や良かった所にも焦点を当てます。

自分にとって・仲間にとって・チームにとって・この成果はどうだったのか?どんな意義があったか?と、個人あるいはチームで現状に向き合っていきます。

仮に期待する結果が伴わなかったとしても、そこからネガティブとポジティブの両面を取り出していきますし、原因を追究し犯人捜しをするのではなく、次どうするか?で進めていくのです。

そして、やりっぱなしにしないために、振り返りによって生まれた教訓を次の行動や計画に反映する。過去をもとに、次の未来を描くのが振り返りです。

この振り返りの基本的な考え方として背景になる理論が、デービッド・コルブが提唱した経験学習モデルです。

デービッドコルブの経験学習モデル

何かを経験したら様々な観点からその経験を吟味し、評価し、意味づける。それによって次の行動が変わって行くというサイクルを表しています。

子どもの頃の体験で当てはめて言えば、社会科見学や修学旅行などに行き(経験)、そこで起きたこと・見聞きしたこと・個人的な感情を省みて(省察)、大事だと思える自分なりの考えや価値観をつくり出し(概念化)、今後どのようなことを意識して生活していくかを決める(実践)というイメージでしょうか。

やり方として必ずしも充分とは言えませんが、ある意味感想文やレポートのような課題もその一端を担っていたといえますね。

今置かれている現状を変えるためには、人とチームの成長は不可欠…もしも人の成長を考えるなら、反省会ではなくリフレクションを始めてみてはいかがでしょうか。


いま、リフレクションが求められる

冒頭でも触れましたが、学校教育でもこのリフレクションの重要性が再認識されるようになりました。

高校では昨年度からはじまった「総合的な探究の時間」然り、プロジェクト型学習・問題解決型学習(PBL)でも振り返りが肝となります。

人が日々の営みから何かを学ぶためには、このリフレクションなくしてあり得ない。

これは何も子どもや学生だけに求められるものではなく、今を生きる私たちに大人においても必要なものなのです。

その背景にあるのはVUCA(ブーカ)と呼ばれる予測困難で曖昧で複雑性の高い現代社会です。

人生100年時代。一つの仕事、一つの組織で生涯を終えるような終身雇用はもはや幻想。リモートワークや副業など、働き方と組織のあり方はここ数年で一気に流動性が高まりました。

そして、2020年は未曽有のウイルスが世界中に広がり、これまで当たり前だと思っていたものが当たり前ではないことに気付きました。

少し話題にもなりましたが、奇しくも2020年12月からは占星術で200年ごとに変わると言われる「風の時代」へと切り替わったそうです。

スピリチュアルについてはあまり詳しくはありませんが、以前の「土の時代」は、金銭・物質・権威などが重視されるのに対して、「風の時代」では、知性・コミュニケーション・個人などが重視されるようになるそうです。

確かにテレワークによって場所や建物から縛られていた働き方が開放されましたし、この数年で様々な電子マネーやサブスクリプションサービス、シェアリングエコノミーが普及し、その流れをSNSが後押ししました。個人が現金を持つこと、モノを所有することに留まらず、組織が内部に人員を抱えなくとも回るようになってきましたね。

地域に目を向けても移住定住という言葉から、住所がそこになくともかかわってくれる流動的な存在として「関係人口」という言葉が使われ始めました。

これから先を考えると、一体何が正解なのか?何をして生きていけばいいのか?…と不安になる人も少なくないと思います。

では、そもそも正解とはなんでしょうか?

十人十色、当たり前ですが人生に求めるものの優先順位は皆違います。

これからの時代においては誰かが用意してくれた答えを正解と信じるのではなく、一人ひとりが(時には仲間たちと協力し)自分にとって、その時々の納得解・最適解を考え、選択・行動してくことが必要です。

そして多様な価値観、流動的な社会となるからこそ、その分一人ひとりの目利きや軸がより大切になっていくのではないでしょうか。

つまり、これまで以上に何をするか(手段)ではなく、何を生きるのか(テーマ・問い)が試される時代になります。

ここでいうテーマ・問いとは、「自分の人生に求める価値や意義、大きな方向性や方針を言語化したもの」と捉えて下さい。

山本の場合は、過去の経験を紡いでいった先に、
「人の成長発達のプロセスに携わる、教育者というあり方を体現する」
「何が人の変化を促すのか?そのメカニズム、構成要素、概念を探究する」
といったテーマ・問いに収斂されました。もちろんこれは現時点のものであり、今後進化するかもしれません。

こうしたテーマ・問いは、ただ漫然と生きているだけでは見つかりません。

経験則的にいえば、言動を振り返り、今の自分を形作ったであろう経験を意味づけし、それを折り重ねていく先に、”ある時ハッと降りてくるような感覚”で生成されました。

過去が繋がっていくなかで未来の自分をつくるための礎となる自信や確信、ブレない軸が定まっていく。それこそが流動的な社会の中で自分にとっての納得解・最適解を選ぶ基準となる。

「自分は教育関係者ではないからいいや」「部下もいないし、人事担当でもないし」と思わず、自分のテーマ・問いを探す旅の手掛かりとしてリフレクションの探究にお付き合いいただければ幸いです。

次回のテーマでは、改めてリフレクションの意義や効果、リフレクションをするとどんな力が身に着くのかなどについてお伝えしたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


数多あるnoteのなか、お読みいただきありがとうございました。いただいたご支援を糧に、皆さんの生き方や働き方を見直すヒントになるような記事を書いていきたいと思います。