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フリーランスのカメラマンと源泉徴収の話

こんばんは、フリーランスフォトグラファーのまちゃるです。

気が付けば2021年もあっという間に1か月以上が過ぎ、2月の半ばに入ろうとしています。

そしてこの時期と言えば、企業のみなさんや僕たち個人事業主を悩ませるのが確定申告ですね。
日ごろからコツコツとまとめている方もいらっしゃれば、この申告書類の提出時期に一気にやってしまうという方もいらっしゃるでしょう(僕は後者かも・・・)

今回は確定申告の中でも少しコアなお話ですが「フリーランスのカメラマンって源泉徴収をどう考えればいいのか?」という備忘録的なまとめです。

基本的に源泉徴収はフリーランスのカメラマンの場合、「徴収される側」で企業から仕事を受けている方が対象になることがほとんどです。個人のお客様からの依頼しか受けていないカメラマンの方には関係のない話となってしまいますが、「そんなこともあるのか」程度に流し読みしていただければ幸いです。

*税務に関しては特別な資格などがあるわけではありませんので、不十分な点などありますのはご容赦ください。詳細な点などは専門家や専門窓口にもお問い合わせください。


源泉徴収とは

ご存知の方も多いと思いますが、簡単に「源泉徴収とは?」という点に触れておきます。

企業が個人事業主(フリーランス)に業務を依頼した際、報酬を支払う時に所得税分を預かって代わりに税務署に納付するという制度です。
企業と企業の取引では源泉徴収は発生しません。

*別の人を常時雇っている個人事業主の場合は、取引の際に源泉徴収の義務が発生します(源泉徴収義務者と呼ぶ)

支払者(企業)は源泉徴収の必要がある場合は、報酬に10.21%(報酬が100万円以下の場合)をかけた額を差し引き、残りを報酬として支払います。
報酬が100万円を超えると税額も変わりますので、ご確認ください。

最終的に確定申告では、自分で計算した所得税の額と事前に源泉徴収された所得税の額を調整し、実際支払う所得税の額が減ったり、場合によっては還付(返ってくる)されることもあります。
(源泉徴収された額が払うべき所得税より多い場合)


これだけの説明だとこの記事をご覧いただいているフリーランスのカメラマンの方は「それだけのことだったら特に難しいことはなさそう」と思われそうですが、実はカメラマンの源泉徴収は少しややこしいんです。

というのも依頼者の企業からの発注内容によっては源泉徴収が発生する場合と発生しない場合があるからです。
それを次から詳しく見ていきます。

*今回、ネット上で良く指摘されている内容に加えて「こういう取引内容の場合も源泉徴収があるか考える必要がある」と個人的に感じた点も挙げています。
誤りやさらに追加するべき点があればぜひご指摘ください。


源泉徴収が発生する場合①~写真を印刷物に使う場合~

所得税法第204条 
居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
一 原稿、さし絵、作曲、レコード吹込み又はデザインの報酬、放送謝金、著作権(著作隣接権を含む。)又は工業所有権の使用料及び講演料並びにこれらに類するもので政令で定める報酬又は料金
所得税法施行令 第320条
法第204条第1項第1号(源泉徴収義務)に規定する政令で定める報酬又は料金は、テープ若しくはワイヤーの吹込み、脚本、脚色、翻訳、通訳、校正、書籍の装てい、速記、版下(写真製版用写真原板の修整を含むものとし、写真植字を除くものとする。)若しくは雑誌、広告その他の印刷物に掲載するための写真の報酬若しくは料金・・・・・

所得税法とその運用方法を定めた施行令の条文です。文章自体は少し難しいですが参考にしてみてください。

施行令の中に「雑誌、広告その他の印刷物に掲載するための写真の報酬若しくは料金」という記載があります。

ここから雑誌やパンフレット、広告物など写真を印刷して使うことを想定しているような撮影については、「支払者(企業)は源泉徴収をする必要がある」と考えられます。

最近では撮影した写真をWEBでの掲載のみに限る案件も多いですが、そのような場合は一般的に「支払者(企業)は源泉徴収は必要なし」とされています。このほか動画撮影の場合は特に源泉徴収の義務は発生しません。


源泉徴収が発生する場合②~撮影した写真を提供する場合~

次に「自分が撮影した(自分に著作権がある)写真を提供する場合」です。

上の所得税法204条にある「著作権(著作隣接権を含む。)又は工業所有権の使用料」という点から写真提供にあたって、源泉徴収が発生する場合があります。

こちらの規定については少し分かりにくく、著作権の譲渡や使用料を企業とフリーランスのカメラマンの間でどのように交渉していくかという難しい問題もあります。
写真提供を企業より求められた場合はそのあたりをよく相談してみるのがいいかと思います。

ちなみに自分が撮影した写真を登録して不特定の人に買ってもらう「ストックフォトサービス」では、登録の際に源泉徴収に関する情報の提出を求められることも増えてきました。


源泉徴収が発生する場合③~スタイリスト料・ヘアメイク料が写真の報酬に含まれる場合~

スタイリスト料・ヘアメイク料単独ですとそのまますぐに源泉徴収の対象にはなりません。

ただカメラマンの撮影費の中にスタイリスト料やヘアメイク料が合わせて入る場合、源泉徴収の対象となります。

少し複雑で細かい問題ですが、スタイリストさんやヘアメイクさんとチームで撮影を行った際には源泉徴収が行われることがあるというのは、頭の片隅に入れておいた方がよさそうです。


源泉徴収が発生する場合④~講演やセミナーをした場合~

少しカメラマンの業務とは離れますが、場合によっては講演やセミナーの講師を依頼されることもあるかと思います。

その中で講演料や講師料が源泉徴収の対象になることがあります。
講演やセミナーでは謝礼金や原稿料など様々な名目で報酬が支払われることがありますが、源泉徴収の対象となるかは実態に即して判断が行われるため、主催者とよく相談するのが良いと思います


まとめ・私見

大まかにフリーランスカメラマンと源泉徴収の関係について見てきました。

常時、従業員がいる一部の個人事業主の方を除いて企業から依頼を受ける多くのフリーランサーは「源泉徴収される側」になりますので、事務作業面ではそこまで難しい話ではないと思います。

ただ「源泉徴収する側」の企業の方は源泉徴収の法的義務が発生しますので、円滑に関係を続けていくためにもカメラマン側も一通りの知識を身に着けておいた方がよさそうです。


ここからは私見になりますが、「撮影した写真を印刷に使うか、WEBなどデータのまま使うかという区別で源泉徴収の有無を分ける」という今の規定は少し時代遅れかと感じます。

実際のところ最初はWEBやデータでの使用を想定していたとしても、後に印刷物に使う事例は多いですし、そこで源泉徴収の有無を区別すると逆に事務的な混乱を生む恐れがあるのではないでしょうか。

企業の経理関係の作業が増えてしまうなどの懸念点はあるのですが、企業と個人事業主間の税務関係はもう少しスッキリとなった方が社会的に上手くいくのではないかと感じています。

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