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みんな知らない電力会社のお仕事。 超具体的解説:文系(事務系)。

割引あり

面接官と就活生は同床異夢。

面接する側は来る学生の生活や資質だけを確認できればいい。
学生はもっと具体を知りたい。
わからないことだらけで入社するので、耐えられないことも多く我慢できず転職を考える。本当に電力会社がどんな仕事をしているかご存じないままに入社されることに起因すると思っています。
電力会社は「みんなに文句を言われながら発電所を立地し、自由化とかあって電力の販売に苦労している」。
みなさんの知識はその程度ではないでしょうか。
そこで、文系(事務系)、理系(技術系)別にどのような仕事があり何をしているのか。具体的に部門(仕事)別に解説しようと思います。
また、さまざまな印象的だった出来事を、episodeというネタ話でお伝えいたします。
みなさん方の疑問に最大限お答えできていると思っています。
ただし間口がとんでもなく広い電力業界。
あくまで私が40年間経験したり、見聞きしてきた範囲です。
おそらくこのような解説記事はどこにもないと自負します。
ただ膨大な記事になることはご了解願います。

文系(事務系)のお仕事です。

理系(技術系)と違い、直接的に学生の時の勉強内容とリンクしていない
部門が多いので、いったい何をやっているの?わけがわからん!
という、みなさま方の疑問の声が聞こえてきそうです。
部門の名前でイメージを沸かせるしかありません。でもそれが早とちりで、現実と異なることが多く、頭を抱えることとなります。
以下の部門について記載いたします。

▼立地部
   地点グループ
   内勤グループ
      episode   1:田舎以前、日本の原風景での勤務
      episode   2:会社の配慮は出張扱い
      episode   3:「無駄な仕事」の典型?
      episode   4:トップクラスの不人気部門
▼用地部
   取得グループ
   管財グループ
   運用グループ
      episode   5:水は血の一滴
      episode   6:送電線路は超極秘
      episode   7:この部門も発送電会社に
      episode   8:保有用地は自由化で有効シーズ
▼企画部
   経営管理グループ
   需要想定グループ
   設備計画グループ
   原価グループ
   経済調査グループ
   組織計画グループ
   海外調査グループ
      episode   9:経営者のカウンターパート
      episode 10:経済の専門家集団
      episode 11:海外情報の収集屋から大変貌
▼総務部
   総務グループ
   庶務グループ
   株式グループ
   文書グループ
   公租公課グループ
   保険グループ
      episode 12:政府の景気対策への協力
      episode 13:電力会社の歴史は国の歴史
      episode 14:役員と「オムツ」
      episode 15:税収支える電力会社
▼秘書部
   秘書グループ
      episode 16:秘書のストレスは独特
      episode 17:有名他社との付き合いは珠玉の経験
      episode 18:役員挨拶は会社のセンス
▼広報部
   広報企画グループ
   宣伝グループ
   報道グループ
   原子力広報グループ
      episode 19:広報屋は怪しいおっさん、家族の理解を
      episode 20:報道は24時間勤務
▼人事部
   人事グループ
   教育グループ
   管理グループ
      episode 21:人事部への配属は天国か地獄
▼労務部
   労務グループ
   安全衛生グループ
   給与グループ
   福利厚生グループ
   被服グループ
   住宅グループ
      episode 22:組合専従は別会社?
      episode 23:「組合活動」が転職理由
      episode 24:福利厚生の充実は「今は昔」
▼環境部
   環境グループ
   技術調査グループ(想像)
   地球温暖化対応グループ(想像)
   環境イノベーショングループ(想像)
   環境ビジネスグループ
      episode 25:自身のポリシーの確認を
▼経理部
   予算グループ
   決算グループ
   固定資産グループ
   審査グループ
   出納グループ
   資金調達グループ
      episode 26:電力会社の財務省
      episode 27:電力会社の本当の技術屋は経理屋のみ
      episode 28:資金調達は特別な専門職
▼資材部
   プラント契約グループ
   設備契約グループ
   経費契約グループ
   資材管理グループ
      episode 29:不祥事は資材部門の機能不全?
      episode 30:契約部門の限界
▼燃料部
   原油グループ
   LNGグループ
   石炭グループ
   新燃料グループ(想像)
   ガス事業グループ(想像)
      episode 31:化石燃料は続けるのですか?
      episode 32:英語力は必然
      episode 33:LNG調達は現地合弁会社
▼法務部
   法律相談グループ
   訴訟対応グループ
   コンプライアンスグループ(想像)
      episode 34:期待の星も田舎勤務
▼監査部
      episode 35:足首捻挫で大騒ぎ
▼営業部
   営業グループ
   営業企画グループ
   大口グループ
   受給グループ
   機械化グループ
   ソリューション事業グループ(想像)
   営業グループ(想像)
   顧客関連グループ(想像)
   受給グループ(想像)
      episode 36:マスコミ報道の上滑り
      episode 37:親方日の丸の営業音痴
      episode 38:提案型営業のダイナミズム
▼情報システム部
   情報企画グループ
   システム開発グループ
   情報教育グループ
      episode 39:電力会社に入社したつもりが
▼関連事業部。
      episode 40:自由化以降は自分がプレイヤー
 
17部門、66グループ。55,000字を超えるコンテンツとなります。

総論はこちらからどうぞ。

理系(技術系)はこちらから

以下に「立地部」を例示します。

みんな知らない電力会社の仕事。超具体的解説:立地部。

日本の原風景

ご存じの通り電力会社は設備産業と言われます。
逆に言うと膨大な設備形成なしに電力供給できないということです。
ご家庭に近いところから上流にさかのぼります。
各ご家庭に設置されている電力計(これが電力会社の資産であること、ご存じでした?)→引き込み線→電柱→配電用変電所→二次変電所→一次変電所→送電線→送電鉄塔→発電所。
これにさまざまな関連設備を加えると膨大なものとなります。
日本一の地主、JRさんに匹敵するかもしれません。
その源である「火力・原子力発電所」の立地に携わる部門が立地部とお考えください。
今ではメガソーラーなどもそれにあたるのかもしれません。
筆者が入社した当時は、日本は戦後復興が軌道に乗り、高度経済成長に差し掛かかっているタイミングでした。
時代の要請により水力発電では電気が足りず、更に大出力の発電施設が待望されていました。
火力はもちろん、原子力も国民合意として推進されようとしていました。
立地部の人員は各地点、発電所立地点ごとに何十人もの社員が必要で、合計すると100人を超える体制となっていたと思います。これに加えて、わずかな内勤者での構成です。
したがって組織としては複数の【地点グループ】【内勤グループ】です。
週中に立地部に行くと、だだっ広い執務室に内勤者だけが着席しているという異様な光景でした。本店立地部が静かになるほど地点班が現地に飛んでいるという状況で、実は活況を呈していることの裏返しだったと思います。
ただ、立地点は世間にオープンになっているものと、そうでないもの=まだまだ地元などとの関係で発表できないものもあります。
本当のところいくつ地点があり、何人くらいのスタッフがおられたのか。
部外者にはよくわからないこともありました。
同期入社で立地部に配属された奴もこのあたりは口が堅かったような気がします。
立地部が忙しいというのは業界的に活況という意味です。
 
今はどうでしょう?
立地部の職員が何人で、分掌がどう変わっているのか想像もできません。
火力は劣化と、脱炭素圧力により引退していましたが、原子力の体たらくにより再登板要請。中には博物館級のプラントも老骨に鞭打っています。
トランスフォーマーで引退した爺さんロボットが再登場したシーンを思い出します。
原子力については語るに落ちます。
SМRが本格化してからの話でしょう。
立地部が無くなると発電所の新規立地をあきらめたと思われるから、たとえ要員一名でも組織は置いておく。なんてこともありうるかもです。
 
業務の内容は、立地点の選定(または誘致)から調査、環境アセスメントを経て公開ヒアリング、その後の地元同意と国の認可。
気の遠くなるようなステップを踏み着工まで漕ぎつけます。
ここまでが立地部の仕事です。
国・県・地元町などの行政や、漁連・内水面・土改連などの利害団体、観光関係、地域団体などの想像以上のステークホルダーが登場します。
立地部員の仕事は交渉で、これらの方々はすべて「交渉相手」です。
地域に体一つで入り込み、信頼関係を構築する。天下国家のエネルギー問題を論じてご納得いただける相手ばかりとは限りません。
ビジネスライクに割り切って。。。では通用しません。
大変なコミュニケーション能力と判断力が求められ、労力と時間が必要な部門です。はまり込んだ社員。
たとえば交渉相手に認められ、好かれ人間関係を築いている人。
当然評価される方ですが、逆に言うとこの仕事、もっというとこの地点から抜け出せません。
同期入社の中に、会社人生のほとんどをある立地点担当として定年を迎えた人がいます。
・振り返れば、俺の入社した会社は本当に電力会社だったのか。
・会社からは論功ありとして評価されているが、立地はまだまだ。
・30年間の単身赴任(episodeで解説します)、どうだったの。
・自分の故郷とは何の関係のない地域での仕事。のめり込んで幸せだったの 
 かどうか。
・でも今でも地元の名産を盆暮れには送ってくれる。
言葉の端はしに感じるプライドと、これで良かったのかと感じる自問自答。
これこそが電力会社の立地マンだと思います。

episode 1:田舎以前、日本の原風景での勤務
みなさんが入社後に転職したくなる理由に「いなか勤務に辟易としている」というのがありました。(https://denryoku-jyuku.com/yametai-yameta/
これは主に発電所勤務をイメージしておられたと記憶しております。
立地部はそれ以前、発電所すら無い地域での勤務です。農村・漁村、日本の原風景のような場所で、事業所はもちろん一から設営、連絡事務所から始めましょうという感じです。
「いなかが嫌という方」に。
知り合いの立地マンいわく、発電所立地の最終段階の「公開ヒアリング」。
その後の「建設工事着工」から「完成」まで経験すると、とんでもない達成感だそうです。
引退後も当時丁々発止、交渉した地元の方々と、思い出話を肴に一献交わす関係だそうです。
このこと自体、昭和の電力サラリーマンの原風景ですね。
こういう電力マン生活をどう思われるか。
ライフスタイルは個々に違います。
何とも言えませんが筆者的には「それも一手」だったと思っています。
ただ配属は会社が適正を見ますので、あなたに白羽の矢があたる可能性も大いにあります。
 
episode 2:会社の配慮は出張扱い
立地部の地点班ともなりますと、当然ながら平日は現地に入りきり。
場合によっては土日祭日の交渉や行事も日常茶飯です。
会社は「赴任」にはせずに「出張」扱いにしていたような記憶があります。
「赴任」なら通常の転勤と同様、給料だけです。
「出張」にすると、給料+交通費・宿泊費+毎日の出張手当です。
どちらの手取り額が大きいか一目瞭然です。
中には「給料が倍以上」というツワモノもいました。
長期間に及ばざるを得ない方もおられるので、家族関係やライフスタイルに無理をかけることもあるということで、手取り額で配慮していたということかもしれません。
ここは各社で異なるかもしれませんが、他の勤務先より金銭面で配慮されているとすれば、日本のエネルギー問題という社会的使命でやっているというものの、受け取りを拒否する人はあまりおられないでしょう。
 
episode 3:「無駄な仕事」の典型?
電力会社を辞めたい理由の中に「仕事な無駄が多い」「こんなことをするために入社したのではない」という意見がありました。この部門はその典型ではと思うことがありました。
100人以上のスタッフが月曜日の朝、本店に集まりその後各々の担当地点に散ります。毎週月曜日に開かれる会議が「進捗会議」と言いました。
前の1週間の間にどの程度交渉が進捗したかを報告します。
どう思います?
年単位、場合によっては何十年とかかる立地交渉です。
週単位の進捗?しかもなんでもいいから少し進んだという記載になってなかったらぶっ飛ばされるらしいです。
今はまさかこんなことはないと思いますが。
「仕事に無駄が多い」「こんなことをするために入社したのではない」と思いますか?こんなことをやっていて安定した給料を貰えればラッキー。
どちらですか?
サラリーマンになって家族を養うことになると重いテーマですよ。
 
episode 4:トップクラスの不人気部門
電力会社では勤務先として、立地部門や、後ほど解説します、営業部門への希望者は極端に少なく不人気でした。
他の業種でいうと生産部門と販売部門で、会社の屋台骨となる部門です。
メーカーなら商品開発や生産部門、流通なら仕入れと販売部門、サービス業なら営業部門、どのような業態でも同じだと思います。
電力会社では希望部門を聞くと、ほとんどが企画・総務・人事・経理などの管理部門を希望する人がほとんどです。
一流大学を出てエリート意識に凝り固まり「俺さま」ほどになると、他人の業績や人間そのものを管理する仕事に就くのが当然、ということですか。
結果的に本社勤務がほとんどで、いなか勤務もないはず。
昔はそれでよかったかもしれませんが、電力自由化以降、競争環境に晒されることになる会社がこれでいいのでしょうか。
必ず大きな転換点を迎えることになります。

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