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怖い話し その1

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最初期のホラー小説のまとめ。 1話〜10話収録。
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2021年4月の記事一覧

#10 短編空想怪談「窓の外」

#10 短編空想怪談「窓の外」

私が高校生の時の話しだ。
私の実家は地方の田舎で、どこへ行くにも自転車か車移動が普通で、家の周りも田んぼや畑が囲んでた。

その日も学校が終わり、自転車で家に帰る途中だった。
田んぼを挟んで向こうに誰か居る。
時間は夕方の6時頃、夕飯時で買い物なら駅前や商店街の方に行くだろう。
もしくは散歩か、今が買い物の帰りか。

目の端にちらついた時はそれくらいで、気にはしなかったのだが、妙に後から気になって

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#9 短編空想怪談「赤い私」

#9 短編空想怪談「赤い私」

この話しは今でも続いてる現在進行形の話しで、あまり人には信じてもらえないからというのもあるんですが、それ以上に、私自身が不快なのであまり話さないんです…
と、彼女は前置きしてから話してくれた。

私には毎月、決まった時期に現れる人物が居る、それは自分自身だと言う。
しかし、自分自身である事は間違いないのだが、その見た目は明らかに異常で、全身赤いのだ。ただ赤いだけではなく、赤黒い。
例えるなら、鮮血

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#8 短編空想怪談「旧い旅館」

#8 短編空想怪談「旧い旅館」

学校の七不思議と言うものは大抵どの学校にもあるのだろうが、僕の通っていた中学校には、“学校外の1不思議”という変わった話が有った。

概要としては「修学旅行で、ある古い旅館に泊まると、そこの一部屋は呪われていて、女の声が聞こえる」とか、または「子供が遊ぼうとせがんで寝かせない」とか、色々言われてるが共通して、地方の某旅館が舞台だった。

とはいえ、得てして七不思議や、学校の怪談というのは尾鰭が付い

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#7 短編空想怪談「写真の人」

#7 短編空想怪談「写真の人」

私の曽祖父の最後は奇妙でした。
齢100を過ぎて、痴呆も入っていたのでだいぶ苦労はしたが、大抵は穏やかに過ごしていた。
だが時より、思い出した様に何かに謝り続けていた。誰に何を謝っていたかは未だに分からないが、恐らくは曽祖父の若い頃、迷惑を掛けた人物だったのだろう。

その曽祖父の最後、容態を悪くし、このまま逝くのだろうかと家族で見守って居た時、
曽祖父は急に叫びだした。「すまない!申し訳無い!許

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#6 短編空想怪談「観客」

#6 短編空想怪談「観客」

1週間ほど前、ソイツは突如現れた。
ある日の朝、いつも通りの出社で自宅から、会社に向かう途中の踏み切りで、ソイツはずっと立っている。

朝も夜も。
会社から帰ってきて、夜になってもソイツは居た。かく言う自分もソイツの存在に気づいたのは、消える3日前くらいに気づいたのだが。

毎日通る道に、同じ黒いスウェット、同じ黒い帽子を深く被り、人通りも関係なく、踏み切りの横に立っている。
他の人も気づいている

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#5 短編空想怪談「夫の記録」

#5 短編空想怪談「夫の記録」

「これは私の最後の記録だ。

私の家族構成は妻、娘、息子、至って普通のどこにでもある家庭。仕事も大学を卒業後、何事もなく就職し10年以上は働いていた。ところが30歳半ば過ぎにして、身体に異変が起きた。右脚が突如、痛みと共に動かなくなったのだ。

その日は会社を休み病院へ行くも、医者の見立てでは、何も異常が無いという。とりあえず様子を見てくれと言われ、一旦家に帰ったのだが、家に着く頃には、不思議と痛

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