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#9 短編空想怪談「赤い私」

この話しは今でも続いてる現在進行形の話しで、あまり人には信じてもらえないからというのもあるんですが、それ以上に、私自身が不快なのであまり話さないんです…
と、彼女は前置きしてから話してくれた。

私には毎月、決まった時期に現れる人物が居る、それは自分自身だと言う。
しかし、自分自身である事は間違いないのだが、その見た目は明らかに異常で、全身赤いのだ。ただ赤いだけではなく、赤黒い。
例えるなら、鮮血ではない少し傷んだ血に塗れてるような外見をしているそうだ。

それが現れる様になったのは小学生の終わりか中学生頃からだという。
初めは月に一回かニ回、不快な夢を見る程度だったが、いつからか夢がハッキリとしてきて、今となっては私の目の前にしっかり見えていて、赤黒い自分が実生活の中に現れる。

でね、私気づいたんです。
その赤い自分がいつ現れるのか。赤い自分が現れる時期、それ、生理の時なんです。

生理の時にだけ現れ、終わるとぱったり姿を消す。しかも生理が重い時はよりドス黒く、酷い時は悪臭も放つ。

なんで私の前に現れるのか、なんで自分の姿なのか分からない、母や友人にも同じ事が起きているのか聞いたが、やはりそんな現象は起きているはずはなく。
それ所か友人には怖がられ、母親にも「気持ち悪い」「汚らしい」と言われて、それからは誰にも話す事は無かったというのだ。

つまりどういう訳か自分にだけ、初潮を切っ掛けに、自分にしか見えない赤黒い自分が現れる様になったのだ。

その赤い自分を自分だと認識したのは、19歳か20歳頃で、それまで赤い人型のシルエットしか分からず、ただその時その時で髪型や服装が自分と重なる所があり、何となく自分かな?という程度だった。

20歳を超えると、鮮明に顔の輪郭や特徴、服装の質も分かるようになり、確実に自分だと認識した。
その顔は怒りを堪えてるような顔で自分自身に責められてる様な気にさせられる。

だから見ないフリをずっとしてきたんです。
生理の時にだけ見える、ただの赤い自分。気味は悪いけど、特段、実害を及ぼす事は無かったので、と。
母親や友人の件もあり、誰にも話さず彼女は一人で我慢して、その赤い自分を無視し続けた。

…でも、必ずしも私だけにしか見えない訳じゃないみたいなんです。
それは彼女が上京して大学に上がった時の話しだ。

その大学で仲が良くなった男性とお付き合いする事になったんです。
その間も、生理になると赤い私は出てきたんですが、特にこの時も何も無かったんです。

付き合って3〜4ヶ月は過ぎていた。
彼から赤い私を見た、それ以外にも変なものが見えたりしないか、変な臭いがしないか、そういう相談があったら直ぐ別れようと思ってました。
ですが特にこれと言った変化は無く、問題は無いと思ってました。

流石に付き合って3〜4ヶ月も過ぎても何も無いと、彼も不安がってきてたし、私も例の赤い自分に変化が無かったので安心して、一夜を過ごしたんです。
 
その夜、私の家でする事はして過ごしたんですが、その最中、彼の顔がだんだん青白くなって、最後まで出来なかったんです。
結局その夜の内に、彼は自宅に帰ってしまって、そのあと数日間、連絡が付かず大学にも来なくなったんです。
彼と電話が繋がったのは10日程過ぎてからでした。

私は彼からあの時何があったのか聞きました、すると彼から「赤いお前が怖い顔で僕の首を締めてきた」と言ったんです。
私は直ぐにあの赤い自分の仕業だと分かったんです。私は首なんか締めてないし、赤い自分なんか知らないと。
しらばっくれて気のせいだと言ったんですが、その連絡で怖いからもう会いたくないと言われました。
引き留める間もなく電話を切られ、彼は音信不通になりました。

それと、ここから一つ変化が現れました。
私が男性と話してる時は生理に関わらず現れる様になったんです。

今も居るんですか?

と聞くと、はい。と彼女は答えた。
 私の横であなたを睨んでます。

だそうだ。

その彼との別れから、精神病院や心理カウンセラーにも相談したが、解決には至らなかった。
以来、彼女は男性との恋愛交際を一切無くしたという。





この話しを聞いてから、もう6〜7年以上が経っている。
今でも毎月、赤黒い彼女は、彼女の前に現れるのだろうか。







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