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ついに見つけた、ナチュラルワインの楽園

昨年末、はじめての記事をnoteに投稿して以降、非常に多くの声をお寄せいただきました。

しばらく疎遠だった知人、友人たちより連絡があり、この記事をきっかけに再びつながることができました。
また、noteを通じてわたしの取り組みを知った方々からも、フォローや温かいメッセージ、サポートなどをいただきました。
心より御礼を申し上げます。

今回の記事は、みなさまから頂いた質問で、最も多かった問いにお答えします。

「KAZU WINEは自社の畑やワイナリーを所有せず、世界中にある友人たちのワイナリーを訪れ、現地のぶどうでワインを製造する」

と、前回の記事でお伝えしました。では、どこでワインを造るのか?

長年の友情が育んだ、ワイン造りへの道

最初にご紹介する国は、バルセロナを州都とする、スペインのカタルーニャ州です。

バルセロナ空港から、車で1時間半ほどの場所にコンカという地区があります。
コアなナチュラルワイン好きの方ならご存知の「エスコーダ・サナフヤ」「メンダル」「ジョルディ・ロレンス」といった有名な造り手たちが、ここから世界レベルのワインをボンボン産み出しています。

この町に住む友人のマイク・シェフィールド(通称:マイキー)を訪ね、昨年の9月に一緒にワインを造りました。

彼との出会いは、かなり前にさかのぼります。

2016年、まだ醸造家見習いのわたしは、ワイン造りの勉強のためにニュージーランドのネルソンという場所へ修業に行きました。
その研修先「ドン・アンド・キンデリ」で出迎えてくれたのは、アレックス・クレイグヘッドという長身の若者でした。
(アレックスにはその後、山形での前職のワイナリーの立ち上げにも関わってもらい、現在に至るまでビジネスパートナーを務めてもらっています)

アレックスに、ある日、仕事の合間にwebページを見せられました。
「俺たち、仲間同士でこんなことやってるんだ。カズも入らない?」

それは「アルテサーノ・ヴィントナーズ」と呼ばれる、若手の醸造家たちで結成されたユニットでした。
(直訳すると「手作りワインの職人たち」という意味でしょうか)
仲間うちでスペインに寄り集まっては、コラボワインなどをワイワイと造っているとのこと。
その場のノリで末席に加わりましたが、わたしだけ数世代離れたおじさんです。

そして、翌2017年。
「おいカズ、スペインに行こう!」とアレックスに呼び出された先で出会ったのが、身長190cmで熊のようにガタイのいい、クリクリパーマの白人でした。
「こいつが、アルテサーノ・ヴィントナーズを仕切ってるマイキーだよ」

髪形、Tシャツからもわかるように、ゴリッゴリのメタル野郎です

聞けば、若い頃に英語教師として日本に住んでいた経験があるとか。
愛嬌たっぷりのフレンドリーな性格で、すぐに仲良くなりました。

マイキーの出身はニュージーランドですが、その後スペインに奥様と移住。
アレックスとの意見交換を通じて、現地のシェアワイナリーでワインを造っていました。
テイスティングすると、彼の人柄まんまの超ナチュラルな味わい。

「将来はさ、カタルーニャにみんな集まってワイナリーをやろうぜ!きっと楽しいと思うんだ」などと、夢を語り合ったのをよく覚えています。

その後、マイキーはワインメイカーとして着実に成長。
世界中のナチュラルワインマニアが聖地と崇める、バルセロナのワインバー「バー・ブリュタル」では、店からの依頼を受けて、専用のハウスワインを造っているほどです。

昨年、マイキーは念願のぶどう畑を購入し、会社を設立しました。
もちろん社名は「アルテサーノ・ヴィントナーズ」。
国籍を越えた友人同士のユニットは、ついにワイナリーへの第一歩を踏み出したのです。

スペインは、ナチュラルワインの聖地になる

同じヨーロッパ内でも、なぜマイキーはスペインを選んだのでしょうか?
ご存知のとおり、ナチュラルワインの製造国で圧倒的に有名なのは、フランスやイタリアです。
その理由を、レストランの出店にたとえて説明します。
みなさんも想像してみてください。

〈A案〉
街なかの一等地や、人通りの多い繁華街、ごっつい商業ビル内に出店する
〈B案〉
地方だが、優れた生産者や漁師さんが近所にいる物件に出店する

当然ながら、A案の家賃はハンパないです。そこらじゅうに競合店があるでしょうし、最良の食材を手に入れるのもひと苦労です。
その反面、B案の家賃は激安。利便性は悪くても競合店は少ない。食材はいいものが簡単に手に入ります。

もしも、わたしがレストランマネジャーだった頃に戻るなら、絶対にB案を選びます。
これと同じことが、ワイナリーにも言えるでしょう。
スペインでは、土地代が比較的安く、良質の原料が容易に手に入り、非常に恵まれた環境でのワインメイキングが可能になるのです。

さらに言えば、カタルーニャはワイン発祥の地であるジョージアと並んで、古来よりアンフォラ(粘土の素焼きの甕)を使った、伝統的なワイン造りを行ってきた歴史があります。
そして現在は、前出のレジェンド醸造家たちが精力的な活動を行って名声を獲得し、それに刺激を受けた若い世代の造り手たちも加わるようになりました。

地理的にも、スペインの北端にあるカタルーニャはフランスに近いことも相まって、ナチュラルワインのメッカとして、ひときわ盛り上がってきているのです。

カタルーニャの風土と人の素晴らしさは、現地を訪れた際に強く実感しました。
赤茶色の独特な土質、乾燥した気候、なだらかな丘陵地や遠くに見える山々。
そこに住むのは、いつも笑顔を絶やさず、めちゃくちゃに明るい人々。

ワインを造るなら、天国のような場所としか言いようがありません。

昨年の9月、この地でアルテサーノ・ヴィントナーズの4名が久しぶりに再会し、計32トンものぶどうを仕込みました。
このときに造ったワインは、KAZU WINE名義で本年中にリリース予定です。
ぜひ、ご期待ください。

マイキーの最新ワインが、日本にやってきます!

さて、今回の記事はまだ終わりません。ここからが本題です。

昨年の訪問中、マイキーがその前年(2021年)に仕込んだアルテサーノ・ヴィントナーズ名義のワイン、6種類を飲ませてもらいました。
もちろん、すべてが亜硫酸塩無添加のナチュラルな仕上がりです。

開けてから30分後に、最初はかくれんぼしていた香りがグワーンと前に出てきて、めちゃくちゃおいしいと感じました。
手前味噌ながら、わたしが作ったイタリア料理と合わせたら、ハーブやスパイスの香りと抜群の相性をみせて、もう大変。
6本のワインが、瞬殺で4人の胃袋に吸収されていきました。

左よりマイキー、アレックス、フィンランド人醸造家のオーティ、わたし。この4人がアルテサーノ・ヴィントナーズです

「おいマイキー、このワイン激ウマじゃん!日本に帰ったら速攻でおかわりするわ」
「それがなあ、カズ……。日本では取り扱ってないんだよ」

なんと、このヴィンテージのみ日本には輸出されておらず、セラーに在庫がたんまり残っているというのです。
これを日本で売らんで、どないすんねん!
懇意にしているワインインポーターにお願いして、残りの全量を速攻で輸入してもらう手筈を整えました。

この2021年ヴィンテージ6種は、すでに日本に到着。
改めて試飲しましたので、簡単なインプレションをお伝えします。

ベンジャミナ・ペットナット|白・微発泡|Benjamina(税込 4,180円)
・軽い泡感、レモンのような酸味が印象的
・ボディーが強めでミネラル感がある
・大化けしそうなポテンシャルを感じる

シェリノラ|白|Xerinola(税込 5,170円)
・和ナシ、キンカン、ワンテンポ遅れてパイナップルの香り
・少しトロミのあるテクスチャーが特徴的
・アフターは華やかな白い花のよう

パルダレット|白|Pardalet(税込 5,170円)
・温州みかんの青っぽさと、フェンネルのような甘さと、昔の石鹸のような懐かしい香り
・香りの清涼感、甘さとは対照的に、ミネラルを感じる
・翌日もポテンシャルが落ちない

パタティナ・パワー|ロゼ|Patatina Power(税込 4,840円)
・チェリー、カラント、ザクロなど赤い果実の香り
・真夏の塩トマトのような鮮烈さ
・クミンをかけたシュレッドチーズとの相性が最高

パム・イ・ピーパ|赤|Pam i Pipa(税込 5,720円)
・カシスのような軽快な香り
・ウルトラスムーズな飲み心地
・万能感があり、どんな料理にも合わせやすい

パレリャチャ|赤|Parellatxa(税込 6,050円)
・アメリカンチェリー、カシスの力強い香り
・ビシッとした強めの酸が印象的
・肉々しいハンバーグにマストの1本

いずれも、いま開けても十分に楽しめますが、3年後には宇宙のファンタジーに到達していそうな、底知れぬポテンシャルが感じられます。
まさに、ナチュラルワインの新しい潮流がスペインから来ていることを納得できる、会心の仕上がりといえるでしょう。

マイキー渾身のアルテサーノ・ヴィントナーズ2021年ヴィンテージは、本日2月1日より、輸入販売元のウミネコ醸造からリリースされます。

お近くのワインショップやレストランなどでお見かけの際は、ぜひお試しください!

次回の投稿では、また別の取り組みについてお伝えしたいと思っています。
引き続き、ご注目ください。

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