悪魔解体: 一(上)

一 - 信を交わす

 ⇒ 悪魔解体: 壱 より


 「ふふ。ふ、」


 歩いて十分ほどだろうか、「現場」から離れた、とある喫茶店の中に、その落ち着き払った低い声が零れる。こじんまりとした白基調の店内が、日陰と比べるにはあまりに黒い彼を、余計に際立たせていた。…なにせ黒い。そうは言いつつも、一瞥して、少し暇を持て余しているであろう店員たちは、露骨な反応を彼に示さない。おそらく、足しげく通っているのだろう。居心地こそ良いが、先のこともあり、春の脚は、まだ慣れないままにそわそわと定位置を探し続ける。

 「そうですか、そうですか。このお店は私のお気に入りでしたが、なんともまあ」

 「エドゥ=バル、エドゥ=バルよ。悦に浸るのは良いけれど、他人を差し置くのは善いことではなくてよ。目の前のお嬢さん、貴方の新しいお気に入り。そっぽを向かれた日には、貴方は涙を流すのかしら? けれどエドゥ=バル、子猫にも牙は生えているの、エドゥ=バル。愛でるにしても、傷がつくわね? 肌が裂かれた日には、貴方、血も流せるのかしら?」

 「これは失礼、」

 「いや、あの…」


 何がなんだか分からないようで、とりあえず春は、ひとつだけ確かなことを把握していた。この男性こそ、エドゥ=バルと呼ばれる”何か”なのだと。だが、彼は明らかに日本人の顔つきである。クォーターか? …というより、時折方々から聞こえるこの声の存在が、物事を整理しようとする春の脳内を、解釈と言う名のカンバスを、出鱈目に混ぜ続けている。それでも息がもう、乱れていないのは、この店内に漂うコーヒーの香りの作用なのだろう。得意ではないが、家でもよく匂う香りだからか。そんなことを考えながら、間に合わせのため、目線が泳いでいるままに、彼に問うてみる。

 「…あの、お名前は?」

 「申し遅れましたね。私、○○○○と申します。…ああ、なるほど」

 ふふ、と、彼はまた頬を緩ませる。このように、店に着いてからこの方、否、もっと言えば、店までの道中から、会話を主とせず、ころころと表情を変えてはくすくすと笑っているのだが、どうにも第一印象とはかけ離れているために、違和感がまだ拭えない。

 「しかし、私はこの○○○○という名前をとても気に入っていますよ。親が持っていた、そして付けてくれた名前ですからね。さておき、私も貴方に質問したいことが山のようにあります。…ですが、名前だけでは満足がいかないという顔をしていますね。それでは、レディファーストということで、気のお済みになるまで」

 どうぞ、とばかりに、○○は右手をすっとこちらに向ける。すらりとした、その白い指先に少しだけ見入った後、春は言葉を続ける。


 「あ。ええと、何から…。あ、エドゥ=バルというのは?」

 左手で下唇、顎を擦りながら思考する○○。

 「…ふむ、難しいですね。ただの名前と言えば名前に過ぎません。…では、私の芸名みたいなものだと思ってください。ただし、その名を知っているのは、私と貴方だけだと思いますが」

 ここで、歴を経てきたかのようなしゃがれた声が、彼の右手、窓側に置かれている、テーブルナプキン用の木製スタンドから言葉をぽつりと紡ぎ出した。もちろん、このテーブル席には、○○と春以外に他の人間は座っていない。

 「惜しいかな、エドゥ=バル、エドゥ=バルよ。お前の持つ名、私たちが好み、繰り返すその名は。真の意味で個を示し、証とするもの、し得るもの。また、限りのない可能性の証。それこそがエドゥ=バル。それは、その名は。お前が仮面を皮膚に沿わせては、観衆の前で名を隠し語るためのものではない。もしも、エドゥ=バル、エドゥ=バルよ。もしもお前が仮面をつけたなら、その仮面は。それもまた、エドゥ=バルという名の、肉、皮膚には違いないのだ。幕の裏に降りたなら、まさかその名を外すと言うのか?」

 「…この声は?」

 春は、いよいよとばかりに問う。すっと店の天井を見上げながら、彼は答える。基調の彩りを妨げない、ダークブラウンのシーリングファンは、音もなく、からからと回っていた。

 「私は彼らのことを、”ヤオロズ”と呼んでいます。ヤオロズ、またはヤオヨロズという言葉を、聞いたことはあるでしょうか?」

 「はい、何かの本で見ました。八百万と書いて、たくさんの、みたいな意味で、神様の呼称だったかと」

 「聡明ですね! その通りです。ある頃、物心のついた辺りを境に、聞こえてくるようになりまして。姿などは未だ見えたこともありませんが、まあ、常に揺蕩っていますね。ヤオロズさんの人格は様々で、常に入れ替わり、立ち替わり、私に日々”学び”を与えては、音を立てることもなく去っていきます」

 「学び?」

 はい、と、○○は答えながら、すっと左手を上げ、店員を呼ぶ。
 
 「私には、○○○○という名前があり、一人の人として、確かに今、生きています。ですが、”私” とは? “一人の人”とは? その答えを求める過程を、学びと解釈しています。コーヒーがお好きでないなら、紅茶でも頼んでくださいね」

 「はあ… ありがとうございます」

 流暢に話してくれるようになったのは何よりなのだが、内容が何やら段々と、砕いて言うところの面倒くさい方向に転んでいる気がする。ただ単に、落ち着かないままに流れでこの店へと足を運んだ自分の所為ではあるのだが、そう断ずるには幾らか異なる気持ちを含んでいたことへの自覚もあった。春の左頬を、雨上がりの陽が照らす。...そういえば、コーヒーが苦手だって話、言ってたっけ? と、ここで、

 「とまあ、聞かれたからには答えているのですが、端から見れば、抽象的やら哲学的やらと称されるような、とても面倒な内容を話している、という自覚は当然ありますよ。舞い上がっては、喋りが過ぎたように思います、お気に障ったのであればーー」

 と、にこにこしながら〇〇は続けるのだが、つい、春はそれを遮ってしまった。
 
 「心、読めるんですか?」

 「いいえ、顔には書いていましたが。不愉快に感じる方も少なくありませんが、どうにも性分と言うのは曲がらない気がします。ついつい、春さんと居ると心地が良すぎるもので、いつもよりも冴え渡ってしまっているようです」

 「あら、〇〇さん、こんにちは。今日はお連れが? 珍しい」

 ここで、木目調の洒落たプレートを片手に、店員が二人へと話しかける。テーブルへと、コーヒーと紅茶を慣れた手つきで置く彼女に、これもまた、ひどく自然と、ありがとうございます、と、礼を踏まえて声を返す○○。…美しい女性だ。

 「こんにちは、今日もお綺麗で。ふふ、そうなのですよ、珍しくね。どうです、可愛らしいでしょう? おっと、変な意味はありませんが」

 「あらあら、そんな冗談まで。少し怖いですよ」

 裏腹に、存外、安心したような顔を見せながら踵を返す女性。その距離感を見るに、○○は本当に常連なのだろう。店の内観やメニューをざっと攫い、いつか来る放課後のイメージを走らせる。こうして、男性と過ごすのも良いのかもしれないが、と、そこまで思考を巡らせた辺りで、春は、話の筋を改めて頭の中でなぞり返した。

 「…あの、」

 と、言葉を続けようとした先に、彼は既に言葉を置いていた。

 「私に聞きたいことって、でしょうか」

 やっぱり心読めるんじゃん、と思いながらも春は頷く。○○は、なおも声、表情ともに嬉々としている。

 「確かに。このように私へと時間を割いて頂いた分、質問も踏まえ、私のことも確りと話しておかねばなりませんね。ですが同時に、現実としてこのような可能性と出逢えたことに対し、未だ、私自身が驚いておりまして。そうですね、僅かながら、本調子とはいかないと思います、良い意味で。理路整然とはならないであろうこと、どうかご容赦のほどを」

 いえ、と春は半分聞き流しながら言葉を返した。○○は、どうにも回りくどい言い方を好む節がある。かと言って、驚いているという割には、そのくどい言い回しをすらすらと声に変え、続ける才には流石に舌を巻いた。…仕事は何をしているのだろう。

 「能力、と表現するのは好むところではありませんが、確かに分かり易いので用いてみましょう。春さんは、たとえば。自分以外の声があちこちから際限なく聞こえてくる、という人の話を聞かされたとき、まず何を思いますか?」

 「まあ、大丈夫かなこの人、とかですかね。 あとはあんまり信じていないんですけど、多重人格ってこのことかな、とか」

 あまりこの人の前で言動を着飾る必要はない、とすでに観念していた春が、正直に口を開いてから閉じるまで、彼は笑いを堪えきれない様子で目尻に線を描いていた。もう慣れてきているとは言え、やはり失礼である。率直な意見を声に出したのは良いのだが、しかし振り返ってみれば、今ではもう、自分も”そちら側の人間”なのだと気付く。恥ずかしさも交じり、下の唇を薄らと噛む春。

 「なんと屈託のない、透き通った表現をすることでしょう! いやはや、素晴らしい」

 ここで、彼がすっと手を伸ばしたコーヒーカップから、落ち着き払った壮年男性の声が、彼の指に先んじてコーヒーの表面に波を作った。

 「エドゥ=バル、エドゥ=バルよ。真に透み渡り続ける、山の傍の湖よ。命に呼応し波と成り、澄んだままに命の喉を通り給え。命は皆、水から成る。絶えず清み続けること、エドゥ=バル、それこそがお前の責務。エドゥ=バルよ、概して神とやらは皆、どこか臭う命をしているな。嗅ぎ分ける鼻は、お前に付いているか?」

 これはこれは、と、彼は姿勢を少し正す。

 「春さんの仰る通り、私も最初は、自分自身が多重人格、またはその類の、何らかの病とされるものを有してしまっているのではないかと思ったものです。しかし、ヤオロズの皆さんとは、物心のついた頃からともに過ごしています。もちろん、彼らの、小難しいと表すと怒られそうですが、あの言い回しも昔から。そう、まだまだ漢字の読み書きもままならなかったくらいの、昔から。その点に気付いてからは、病とは思わず、ある種の能力であると確信して過ごしていますね」

 絶えず遠回しに語る○○の表現を、二、三拍遅れながら口内で磨り潰す。ヤオロズの存在は、当時の知的水準と乖離しているからこそ、精神病を誘発する内的な要因とは成り得ない、と判断した、ということなのだろう。

 「その頃、何を言っているかとか、理解できたんですか? …あと、親とかに相談したりは?」

 立て続けに並べられた春の質問を、事もなげに拾う○○。

 「もちろん、言葉の節々に、聞いたことのない言葉が飛び交いますから、常に辞書片手に、彼らが何を言っているのかを調べたりしていましたね。ただ、何故か、最初から彼らに対し嫌悪感なども抱いたことはありませんでした。ポジティヴな印象しかなかったからこそか、他人に相談しようとしたことは、ありませんでしたね。...そうしたところで、まともに他人が相対してくれるかどうかも、既に疑わしく思っていた、というのも理由のひとつですが。とにかく、私は彼らの言葉を、さも特権かの如く、日々教授していました。確かに、今思えば、恐怖などしても不思議ではなかったでしょうに」

 嫌悪感を抱かない。確かに、と春は心中で頷く。

 「…でも、自分にしかない能力、というのもなんだか寂しいですね」

 と、春がインタビュアーさながらに突いてみたところ、○○の顔つきはとても怪訝なものへと変わった。からん、とアイスコーヒーの氷が沈む。

 「私にしかない? 春さん、それはきっと早とちりでしょう。確かに、私は生きてきた中でこれまで、自分と同じような人と出会ったことはありませんが、それでも。自分のような人間が、他にもごまんと存在しているのだと思いますよ」

 人のもつポテンシャルへの、過ぎた信頼。その歪な謙虚さを春は垣間見た。ただ者ではない身振り、口振りであると思ってはいたが、ここまでの客観性を持っている人間を、見たことがない。

 なるほど、と呟く春に対し、再び心を読んだかのように、彼は言葉を続ける。

 「まあ、私は、客観的であるというよりは、常に何かしらの可能性を考え続けているのだと思います。傍から見ずとも、異常なほどに。あと、そうですね、客観的という言葉を使うには、響きがなんだか冷たくありませんか?」

 「はあ…」

 先から同様の相槌を繰り返す春をにこにこと眺めながら、コーヒーを喉に通す○○。

 「例を挙げるのであれば。テレビでもよく取り上げられている超能力を有する方々、オリンピックなどに出場している素晴らしい身体能力を持つ選手の方々、歴史に名を遺すほどの手腕を光らせた政治家の方々、世紀の歌声を持つと称されるシンガーの方々…。私は、そんな人々の中にきっと、私と同じような能力を持つ人が潜んでいるんだろうなあ、と、心を躍らせながら思いを馳せているのですよ?」

 妙に得心のいく表現をする、と春は感心する。おおよそ人間業ではないような武勇伝を持つ歴史上の偉人は、未だにメディアや噂で見聞きするし、それこそオカルトと結び付けられていることもあるからだ。そう理解を進めるにつれ、前のこの男性は、失礼なようだが、そのような”カリスマ”とは思えないでいた。確かな異質さを感じることは感じるのだが、完全に掛け離れた存在のようにも感じない。その狭間を往来しているような、そんな感触を覚える。


 「…楽しくなってきた、とは?」

 春は、○○と出会った当初の会話を思い返し、更に問いを投げ掛ける。今、彼が見せている活き活きとした表情に釣られて、あの無邪気なセリフが、このタイミングで燻り出されたのだ。

 すでに氷も融け出しており、やや結露もみられるコーヒーカップを手に取っては、飲まず。手元で遊ばせては、コースターの上へと戻す○○。

 「また、面倒な話をしてみましょう。春さんは、人は。何故生きるのだと思いますか?」

 この人は、人の質問に対して質問で返してはならない、と教わらなかったのだろうか。しかし同時に、春は、その誰が言ったでもない匿名の教訓が、果たして正しいのかとも考え始めていた。思考を始める。

 「…うーん、まあ、種の繁栄のため、がひとつありますよね」

 そうですね、と○○は返す。

 「疑いなく。では、何故人は、種の繁栄のために行動するのでしょう? 我々、というと先走りの節がありますが、個人的には、人は、”何か”を残すために。また、それだけに留まらず、”それ”を何らかの形で後世に継承させるために生きているのだと解釈しています。その確かなひとつの手法が、生殖行為に因る種の繁栄だと言うことですね」

 「…壮大ですね」

 「ふふ、何せ私は回りくどいですから。まあ、私にとっての生きる理由、その”何か”とは、後継者のような方を指しているのです」

 「それが私だ、と」

 自意識が過剰だろうか、と、口に出してから両肩を内に丸める春。

 「そうであることを願って止みません。ですが、言い換えれば、春さんすら、ありとあらゆる可能性のひとつでしかないと言うことにも。とは言え、無下になど到底できるわけもなく。…ふふ。そう、ただただ、その”何か”に出逢えたことが、繰り返しにはなりますが、今回がはじめてなものでして。手放しで喜んでよいのではと思う程に興奮している、というわけです。おっと、語弊がありますが」

 「後継者、ですか…」

 喉が渇いていないこともなかったのだが、先程からずっと意識の外に在った目の前の紅茶を、改めて口に含む。○○に対し、ホットを頼んでいたこともあり、お世辞にも堪能できる味ではもう、なくなっていた。

 「ふふ、冷めていることでしょう。ついついお喋りが弾みましたからね。お代わりが必要なら、いくらでも言ってくださいね」

 いえ、と咄嗟に言うものの、ちらと左手に置かれているメニューの位置を確認する春。

 「話が少し逸れましたね。後継者のことですが、恐れず言うのであれば、私自身、とうに人間の域を脱してしまっています。そう在りながら、しかしもちろん、いずれこの肉体は朽ち果てるでしょう。此れを思考するたび、身体中の細胞ひとつひとつが、無性に”次のエドゥ=バル”が必要なのではないか、と叫び声をあげるのですよ」

 おずおずと、春は詰める。

 「…”誰にとって”です?」

 ふふ、と彼は目を輝かせながら続ける。一瞬、その目の輝きに陰が差した気がしたためか、不思議と不気味に感じた。

 「キリストさんはもう古いのでは? 世界の人々は、そろそろおニューな刺激を待ちくたびれているのですよ」

 「大きく出ましたね…」

 斜め上の回答に、春は苦笑いを浮かべる。

 「恐らくですが、当時のキリストさんもそう思っていたのではないかなと。そしてそれは叶った。彼は運がいい。のみならず、使徒というお弟子さんに恵まれていましたからね。しかし、運悪く、彼の後継者は今のところ現れてはいません。それは既に完結した唯一つの存在であるから、という根拠に因るのは周知の通りですが、その理由付けはとても神性を帯びた印象をもちこそするものの、私は実に悲しいものだなとも思っているのです」

 事もなげにすらすらと話す彼に、頭上のシーリングファンが音を立てるでもなく、応える。

 「それはそうだ、エドゥ=バル。神すら成れぬ、神すら呑み込む、あらゆる想いが集う螺旋の城よ。エドゥ=バルよ、お前とこのように触れ合う私を、私たちを、どうか連れて行ってくれ。神も人も、描くことのできなかった、故も知らぬ先へ。善や悪などを通り越した、個が個であるための世へ。エドゥ=バル、エドゥ=バルよ、何かを洗い流すものは、雨だけとは限らぬ。言葉を流せ、エドゥ=バル」

 おっと、と、彼は手元の腕時計を見やる。徹底していると言おうか、やはり黒色だ。

 「…楽しい時ほど早く過ぎる、というのは正にこのことですね! 信憑性の帯びない事柄も、実感すると、どうにも確信に変わりそうな気がします。日を変えてでも良いのですが、春さんさえ宜しければ、私からもいくつか、今の内に質問を重ねておきたいと、」

 気遣いこそ徹底しているが、まだまだと言わんばかりに目の輝きを失っていないままに、話を続けようとする彼を遮るように。それに付き合い、話し込んでも良いと思う反面、家のことをちらと思い、○○の言葉に甘えて追加で紅茶を頼もうか思案していた春を止めるように。もう、疎らにしか客が見られない店のドアベルが揺れた。

 「おう、やっぱここか」

 「おや、これはこれは。ご無沙汰ですね」


 灰色のスーツがやけに似合う、中肉中背の中年程の男性と、その半歩後ろに、卸したてだと言わんばかりのスーツを身に着けた、活気溢れる長身の二〇代の男性が、二人へと近付く。慣れたように○○へと声を掛けた男性に対し、はじめまして、と、二人へと頭を丁寧に下げる若い男性。察するに、○○とも初対面なのだろう。はじめまして、と、〇〇は微笑みを絶やすことなく、迎え入れる。

 故に、代わりの紅茶を頼むタイミングを、完全に見失ってしまった春。空気を察するに、帰るにはもう少し、長引きそうな予感がした。


悪魔解体: 一(下)

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