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女性の社会進出は「あなたに還元される」

※本記事は2020年6月27日の一部記事を再転載しています。
 全文はこちら。“口当たりの悪さの先に,喉ごしの良さが待っている 「日本よ、目を背けるな」2/4


■女性の社会進出は「あなたに還元される」

 今般、日本でも女性参画がよく謳われるようになりましたが、このテーマの本質は単に女性の活躍を目指すだけのものではありません。“女性の活躍”はあくまでも結果論で、本来の目的は “少子高齢化社会で1人でも多く労働に参加してもらうこと” です。もちろん、多面的には国際協調の中での人権圧力や実際に有能な女性に活躍してもらいたいなど、複数の目的はあるでしょうが、日本の人口動態、高齢者の定年廃止や働き方改革による流動性圧力などを鑑みれば、目的が“労働人口の確保”であることは明らかです。

 この前提となる目的を共有した上で議論を進めなければ、一部男性からは女性優遇のように映りますし、一部女性からは参画の強要のように感じ、古い慣習に生きる方々にとっては単に耳障りなだけのテーマとなってしまいます。つまり、男性なのか女性なのかトランスジェンダーなのか、高齢者なのかという問題ではなく、人口減少に向かう日本では須く日本国民全員が(可能な限り生産性の高い)労働に参加しなければ、豊かな生活を守ることが難しいという世界線にあり、女性の社会参画とは男性や高齢者の負担軽減のためにも、議論を進める必要があるということです。

 当然ながら、レイプやセクハラ、思想としての蔑視問題などは人としての権利という文脈で横たわっていることも事実です。しかし本来、制度的な側面においては、女性の社会進出と女性蔑視の問題は分けて議論を進めなければ、取り組むべき課題設定が曖昧になってしまいます。

 この社会進出という側面で考えると、堀江貴文さんが“東京改造計画”で言及されていた生理問題、そして出産問題が重要なところです。また、これは前述の内容と重複する要素ですが、男性側の視点も丁寧に汲み取る必要があるように思います。

 生理による身体的・精神的負荷が業務に影響を及ぼし、さらには男性に理解がないため意思疏通の妨げにも繋がってしまっています。また、現代女性の出産率が低下することで生理による負担が長期化している点もあげられます。この生理問題では東京改造計画にある通り、低用量ピルによる生理やホルモンバランスのコントロールは重要な改善方法となります。ピル=避妊薬という意味でネガティブなイメージを持たれるようですが、QOL(Quality of life)の向上にとって有効なアイテムです。

 また出産問題では、産休や産休後の復職制度は当然として、子育て環境を共働き前提とした場合、託児所の広義化が必要になるでしょう。同居はしない形での、拡大家族やシェア家族のような共助のコミュニティーもそうですが、結局のところ託児所の規制を緩和し、定年後の高齢者とテクノロジーの活用で運営コストを下げつつ受け皿を増やすしかありません。IT技術の導入は保育士の負担軽減にも繋がるでしょうし、高齢者の参加は認知症防止や人材確保の面でも活かされます。

 最後に、男性視点での制度上の問題は”甲斐問題”が挙げられます。恐らく、女性差別反対運動に対して男性の共感が集まり難い一つの要因は、日本に存在する“男性が女性を養う”風潮、そして実際の社会保障や労働環境などでも“どちらかが扶養する”ことを前提とし、往々にして“男性が養う”とされてしまっているからでしょう。これを変えるには、価値観を変えるための育メン的なプロモーションよりも先に、実際の制度設計(男性の産休や共働き前提の社会保障など)を変えることで、感情面の価値観を変える素養を構築したほうが早いように思います。


 このように個人、制度の具体的な障害を潰しながら、価値観や制度が凝り固めっている過渡期ではクオータ制などで半ば強制的に多様性を設けることで、個人的障害、制度的障害、組織的障害、の3方から進化圧を加え、最後に環境による価値観の変容という流れが現実的なロードマップではないでしょうか。

 1番のポイントは “女性の” と付いていますが、女性のためだけに行うわけではなく、日本全体の成長戦略として老若男女分け隔てなく取り組む課題であるという前提の共有です。

 少子高齢化による成長の鈍化は、誰かを優遇する議論でも、誰かを非難する議論でもなく、ゼロサム思考のない “私たちの共通課題” です。



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-引用・参考-
著者-堀江 貴文 発行者-見城 徹 発行所-株式会社幻冬舎 News Picks Books
  「東京改造計画」 第二章 21項 ”低用量ピルで女性の働き方改革ピル”

Top Image by Daniel Sampaio Donate if you want (Paypal) from Pixabay

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