Thisコミュニケーションの魅力をデルウハという主人公一点突破で語る
◆はじめに
Thisコミュニケーションを既刊の11巻まで読んだ。
巷で話題になるだけあってめっっちゃ面白かった。
とにかく主人公のデルウハに惚れ込んでしまったので、最初にあらすじを書いたら、後はひたすらデルウハについて語る。
もちろんデルウハというキャラ以外にも、バリエーションに富んだ敵の攻撃方法とそれを攻略する高い戦略性、ハントレス達のキャラクター、大味なギャグ等魅力は他にも山ほどあるんだけど、俺が語りたいのはデルウハなんだ!
◆あらすじ
これで説明を終えられるくらいあらすじはこれ。
デルウハが誰を(何を)どうやってどういう判断の元殺すのかという漫画である。
…さすがに不親切なのでwikiを要約&加筆。
とにかく重要なのは
①復活の際、死亡時点から直前1時間の記憶を失う、精神的に未熟で不死身のハントレス
②これをあらゆる方法で利用してイペリットに立ち向かうデルウハ
この2点である。
ハントレスが精神的に未熟という点がとにかく重要。
いちこ、にこ、みち、よみ、いつか、むつとあまりに適当に名付けられたこの6人の少女達はすぐに仲違いするしすぐに誰かに依存する。
10台、かつ家族からある種見捨てられたという境遇から仕方がないとはいえ、人類の最終兵器ともいえる存在としてはあまりに扱いにくい。
しかし、「近接戦闘において個人の力では対抗できない」からこそ人類はイペリットに太刀打ちできなかったのであり、ハントレスの存在はイペリットに立ち向かうには必須。
デルウハとしては、ハントレスに「自分が必要な存在である」と信じさせ、指示に従う関係を築きつつも、過度に依存させない関係を保ち続ける必要がある。
自分に従う統率された集団でなければイペリットには太刀打ちできないから。
そして、イペリットの侵攻を抑えなければ飯が食えないから。
この目的のため必要であればデルウハはハントレスを殺す。
不都合なイベントから一時間以内に殺せば記憶を削除できるから。
自分の弱みを握られれば殺す。
自分以外を行動規範にするほどにハントレス間の親密度が高まれば殺す(画像シーン)。
自分に依存しそうでも殺す。
死に覚えゲーでイペリットを攻略するために殺す。
とにかくデルウハはハントレスを殺す。
自分の所業がハントレスにバレて1vs6になっても殺すし、基本的にデルウハのピンチはハントレスを敵に回したときなんだけどそれでも殺す。
論理的結論としてそれが最も合理的だから殺す。
それがThisコミュニケーション。
◆デルウハ
さて、あらすじも終わったのであとはデルウハパート。
ここまで読むと感情のないロボットのように思えるデルウハだが、実際はそんなことはない。
行動原理の最上位に食事があり、その達成のための最適解を常に求めているだけで、感情は持っている。
そしてコミュニケーション能力をはじめとするあらゆる能力値が高く、どんな場面でも何とかしてくれるという信頼感があるのがこの主人公。
とにかく頼りになるこの男の魅力を順番に語っていこうと思う。
・論理的で合理的で情がない
まずはこれ。
敵を倒す、味方を団結させる、個性を生かした育成をする。
どんな行動をするに当たっても、論理的に合理的な結論を導き出す。
的確に弱点をつくし、道具も人材も最大限に活用して最小限の労力での目的達成を目指す。
そして、情がない。
選択肢に殺人があり、それを選ぶのに躊躇がない。
口止め:90点
殺人:100点
という選択肢があった場合に、迷わず殺人を選ぶ。
「かわいそう」とか、「こいつとは長年連れ添ってきたから」とかいう理由は判断に一切関与しない。
そう、倫理はデルウハを拘束しないのだ。
ただし、倫理的に問題のある行動を見た他者がどう思うかはちゃんと計算する。
「これをやったら信頼を失うのでは」といった行動をする場合、「見られないように殺す」「こいつなら知られても共犯者としてやっていける」「こいつはリセットしたほうが早い」といった複数の選択肢から、あらゆる情報を総合的に加味した上で結論を下す。
テンプレ天才に良くある「こうすれば合理的なのに馬鹿なの?」などと言って相手を怒らせて面倒な事態にするような行動は絶対にしない。
目的達成のためには他者との協同が必須であることを理解し、そのために必要とあらば感情まで利用する合理性がデルウハの持ち味である。
・超精密な分析力
現状を的確に分析できなければ合理的、論理的な決断は下せない。
人の感情、相手の能力、組織体制等、あらゆるものを些細な情報から的確に分析するからこそ、デルウハの決断には誤りがない。
初見の攻撃でも、相手の特性や攻撃を受けたときの状況から、攻撃の特徴や弱点を瞬時に見極めて対策を練ることができるし、個人個人のメンタルも含めた弱点が分析できているから、ハントレスが敵に回ったときも対処できる。
読者的には「何が起きたの?」という状況をデルウハは瞬時に分析するし、その分析過程は作中に現れた情報から納得できる。
さすがデルウハ!という分析も、デルウハがわかんねえなら仕方ないか…という納得も、デルウハの分析力が説得力ある形で描写されているからこそ感じられる。
・強い
個人としての戦闘力がめっちゃ高い。
強くなければハントレスの記憶消去はできないから当然だが、それにしても強すぎる。
ハントレス6人に勝ってしまう。
筋力も人並み以上にはあるが、戦闘分析力が高すぎる。
個人の弱点、チームになったときの弱点を見極めた上で一人ずつ的確に殺していく様は惚れ惚れしてしまう。
さっきまで仲良くしていた少女に「お前は視野が狭い」「お前が…物ではなく人のために動く奴だったらもう少し行動に幅が出たろうにな」とか言いながら躊躇なく引き金を引いていく。
念能力があればHUNTER×HUNTER世界でも間違いなく強者と渡り合える。
大砲があればイペリットの大群を一人で対処できるほどの軍事スキルも持っており、単純に「強い!かっこいい!」という感情を読者に与えてくれる。
・コミュニケーション能力
一番好きなのはこの能力。
自分に情がないだけで、他者の情には人一倍敏感。
人が感情で動くことを理解し、感情に働きかけるために相手が最も必要としている言葉を常に選べる。
そして、他者と向き合うときに一番大切なことが誠実さであることを理解している。
これ、「どの口で言ってんだ!」ってシーンに見えかけるけどそうじゃない。
デルウハは誰と接するときも誠実に向き合っている。
誠実に向き合うとはうわべではないコミュニケーションを取るということ。
「何を理由に動くか」「一番大切なものは何か」「何に怯えているか」を対話の中でしっかり見極め、必要な言葉を返し、必要な姿を見せること。
そこに情など必要ない。
真実の内心など誰にもわからない。
人はコミュニケーションを取るために外に出てきた言葉、表情、仕草からメッセージを受けとるのだ。
いい顔で「お前がいて良かった」と伝えてもらったことがよみにとって重要なのだ。
その目的がよみを管理しやすくなるためなんてことはよみには関係ないし、これを一番乗りで言ったことに過去改変するために二人を殺したことも関係ないのだ。
人と会話するとき、「自分がどう思うかじゃなくて相手がどう思うかで発言内容決めてるなー」と感じがちな自分にとって、デルウハのコミュニケーションは到達点の一つ。
デルウハの目的が食事であり、たまたま不死身の兵士を管理しなければならない殺伐とした世界に生まれたせいで冷血漢になってしまっただけで、もし人との親密な関係を目的にするような性格だったら、この上なくいい奴だと思う。
…いや、それは違うか。
・殺すときのテンションが一線を越えている
本人は合理的に淡々と殺しているだけって認識なはずなんだけど、快楽殺人鬼にしか見えない。
すごい頻度、すごいバリエーションでこんなコマが出てくる。
これが出てくるたびにどうしても笑ってしまうんだよなあ。
・正統派ヒーローの味もする
高いコミュニケーション能力に裏付けられた、人を扇動する能力も超一流。
これを適切に使うと
少なくともこのシーンを読んでいるときは、王道漫画を読んでいる熱さを味わえる。
でも、これは人を殺すことに大義を与えるシーンであり、これを言った記憶を消去するための殺人に奔走する姿を見て我に返るんだけど。
ただ、デルウハは人が欲しがっている言葉を的確に使いこなすので、励まし、育成、扇動、どの言葉も言ってる瞬間だけは結構エモい。
擬似的とはいえちゃんと王道を楽しむこともできる。
◆まとめ
冒頭で述べたとおり、ほかにも魅力はたくさんある。
いろんな楽しみ方ができる漫画だと思う。
一つの楽しみ方として参考にしてもらえたら嬉しいです。
自分はとにかくデルウハを追いかけているのが幸せでした。
12巻早く出てくれー!
最近は魔々勇々をとにかく推してますが、たまにこんな感じで作品紹介記事を書いてます。
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