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沖縄6月23日「慰霊の日」。79年目の風。

自己紹介:妻の海外赴任を機に福祉施設の施設長を退職し、持ち家も処分。当時13歳の娘と家族3人で2023年夏に日本を出てオーストラリアに移住の48歳。現在子育てと家事全般を行う完全専業主夫。ワーホリのタグ付けをしているが、ワーホリではなく働く予定も特になし。一応、社会福祉士だが外国ではなんの意味もない。吉本芸人チャド・マレーンがオーストラリアを「ラリア」と呼ぶことに感銘を受け、そのまま使用する。


気温12℃。49年間の中で初めて「寒い」6月23日。

この島の人間にとって6月23日ってやっぱり特別だと思う。「明日、慰霊の日だね〜」って話し合う人たちもいれば、特に何も口にすることなくその日を迎える人もいると思う。

正午に黙祷をするために15分くらい前からそわそわする家族もいれば、午後になって思い出し街角でひっそりと想いを馳せる若者もいる。

建国記念日や労働感謝の日、その他の公の休日は覚えてなくてもこの6月23日だけはみんな無意識にカウントダウンするんだよね。後何日だ、って。

今日、島はきっと暑いんだろう。梅雨が明け、太陽光線がジリジリと照り付け、みんなジトっと汗ばんでいるんだろう。

午前中から気温はどんどん上がる。正午に近づくにつれ街のざわめきが少しづつ耳に入らなくなり、そして完全に無音になる。目の前の風景も朧になり、風も止まる。

太陽光線だけが目の前にある。

いよいよ長針が12時を指す。遠くから聞こえるサイレンを聴きながら目を伏せる。何かを考える時もあればそうでない時も。ただ、じっと目を伏せる。

島全体が静寂に包まれる。

1分の黙祷の後、何事もなかったかのように皆がそれぞれの生活に戻っていく。

・・・その時、止まっていた風が吹くんだよな。

この島で6月23日を経験した人はみんな知っていると思うけど、黙祷のあと目を開くと、ふわっと風が吹く。1分間止まっていたすべてのものが、その風と共に戻ってくる。

通りの喧騒、テレビの音、誰かの笑い声、赤ちゃんの鳴き声そのほか全ての「日常」が1分間の静寂の後に、目の前のアカバナを揺らす風と共に戻ってくる。

そして、誰かが「・・・暑いね」と言うと誰かが「だからよ」って応える。

そんな会話が、そんな「日常」がどれだけ大事なのか、その「日常」を守り続けることが如何に大切なのか、それを考えるための「1分間」。二度とこの「日常」があの「殺戮の日々」に変わらないように。

ずっと風が吹き続けますように。

現在、気温12℃。「寒い」6月23日。汗ばむこともなくサイレンも聞こえない6月23日。

でもね。島の正午に合わせて、北の方角に向かい目を閉じた。

そうしたらサイレンも聞こえたし街の喧騒も消えたよ。んで、ちゃんと風も吹いてくれた。

南半球から祈りを込めて。



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