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ダッタン人の踊り

歌劇「イーゴリ公」

 このノートは、「ロシアのもろもろ(6)ヴァイキング」で述べた、1185年に、ロシアのイーゴリ公がタタール人(=ダッタン人=ポロヴェッツ人;国や地方、時代によって呼び方が変わるのでややこしい)と苦戦する「イーゴリ軍記」を受けて書いています。

【イーゴリ軍記】
中世ロシア文学の代表的叙事作品。12世紀末に成立。遊牧民ポーロヴェッツ族との戦闘でのロシア軍の敗北、捕虜となったイーゴリ公の脱走の史実を伝える。イーゴリ遠征物語。ボロディンがオペラ化。

広辞苑 第六版 

 なお、13世紀に入って、モンゴルからタタール人が大挙して侵攻してきて、1240年キエフを占領し、キエフ・ルーシ大公国は終焉を迎え、モンゴル支配(後世、「タタールのくびき」と呼ばれるようになる)の時代に入ります。

 タイトル写真にあるように、「イーゴリ軍記」に基づくボロディン(1833-1877)作曲による歌劇「イーゴリ公」のなかに有名な「ダッタン人(ポロヴェッツ人)の踊り」があります。

Stranger in Paradise

 しかし、私が実際にこの曲を知ったのは、サラ・ブライトマン(来日コンサートのたびに観に行った)のアルバム「ハーレム」「Stranger in Paradise」という、とてもきれいな曲を聴いてからです。
 その解説からオリジナルが「ダッタン人の踊り」だということを知りました。どうも最初はタイトルから、ハチャトリアンの「剣の舞」をイメージしてて、えー、そうだったんだ、聴いてみなくちゃ、とボロディンのアルバムを買い求めました。

 まずは、サラブライトマンの「Stranger in Paradise」


 こちらがオリジナルの「ダッタン人の踊り」の場面、ボリショイ劇場2013年の舞台。日本語訳がついてたので選びました。

タイトルに「ダッタン人の娘たちの踊り」とつけているものもあり、その方がしっくりきますね。

 このシーンは、イーゴリ公が侵攻してきたポロヴェッツ人の戦いに敗れ、囚われの身となりますが、首領のコンチャック・ハンは、客人としてもてなし、ダッタン人の(娘たち)の踊りを披露します。

映画&ミュージカル「キスメット」

 歌劇「イーゴリ公」と「Stranger in Paradise」を調べていると、キスメットというミュージカル映画で有名になり、数多くの歌手がカバーしているということがわかりました。

「キスメット」は、もともと1944年のアメリカ映画で、内容は、バグダッドが舞台で、「千一夜物語」の一話にありそうな話です(あるかどうかは知りません)。
 1953年にミュージカルとしてブロードウェイで上演され、1955年にミュージカル版が映画化されたとのこと。

現在のタタール人

 「ロシアのもろもろ(3)シベリア民族」で調べて書いたように、ダッタン人=タタール人は、チュルク系民族です。
 調べていると、次の動画が出てきました
 今のロシアにも、タタールスタン共和国があって、タタール人は全世界に800万人近くいて、日本で暮らしている人もいます。
 今の時代、文化交流の大切さを感じさせられます。