音楽の職安1【バイショウ】
音楽の職業案内所
第一回「バイショウ」
今回は音楽の仕事を好き勝手にご紹介したいと思います。実体験ですので実際やってる人も、これから目指す人も賛否両論、面白おかしくご高覧ください!
初回はミュージシャンが音楽の仕事をやりたいと思った時にそこまで質を求められず1番はじめにやるであろう職種【バイショウ】をご紹介したいと思います。
バイショウとは?
バイショウとはショウバイ(商売)の反対語で平たく言うとバーで酔っ払い相手の演奏の事。
突き詰めると
【音楽がメインではないBGM演奏】
時代背景もありますが戦後とかはカラオケとか有線の代わりにバンドが入ってお客さんを楽しませてました。いわゆるバンドマン。
※今でいうバンドマンとは意味合いが違います。
バイショウ系バックバンドの意
似たものにエイギョウというものがあります。
そちらはギョウエイじゃなく「営業」
自身の音楽活動以外の外での活動。
昨今を賑わせた闇営業。あの闇でない営業の事です。
・企業のパーティーでのライブ演奏
・結婚式や披露宴などのBGM演奏
など他者が企画したものに呼ばれる仕事。
内容もある程度決められていたりします。
芸人やミュージシャンらはこれらで収益を受けて自分のライブで本当にやりたい事を頑張る、みたいな。
エイギョウはある程度演奏ができる人、というか信頼できる人じゃないと話をもらう機会が中々ないかと思います。
この話はまた次回の職安で!
やはり私にも師がいてて、師に言われたのは
「バイショウするようなミュージシャンになるな。そんなんはオレらの時代だけで十分や」
それでも10代のサイタ少年は音楽の仕事というものに憧れがあったし「やってみな分からんやん」という反抗期があり、とりあえず経験してから考えようと日々を過ごしておりました。
バイショウデビュー
19の時に北新地の外国人バーと高級クラブを経営しているママと知り合ってその2店で演奏する事になるわけだけども、オーディションで弾いたのはソロギターでスイートホームシカゴとかラグタイムブルース。
どうみても静かな酒場の感じ。
ところが初出勤してみると外国人バーの方は店員も客も外国人で大騒ぎ。こんなん静かなブルースなんかやってられへん笑
ということでジミヘンのウッドストックみたいな雰囲気系の派手めのソロギターに変更。
高級クラブは反対にジャジーにしっとりと。
しばらく経って、たまにピアノが入ったり歌が入ったり色々したけど1人は正直しんどいので「もう1人入れてくれ」とママに泣きついて(抱かれてはいない)、さらに「ステージ数増やしていいからギャラ上げてくれ」とママに泣きつき(抱かれてはいない)、見事サックスの相方とステージ数が増えてギャラも増えました。
あの当時は1日で
外国人バー→会員制高級クラブ→ラウンジの3件ローテーションで計12ステージ。死ぬ。
終盤、飽きてきてBlue Bossa というジャズの曲をCircle of 5thで4度ずつあげてAll keyで客に同じ曲と悟らせないようにアレンジしたりしていく遊び、というか公開練習しながらやってました。
あと思い出すのは外国人キャストの手グセの悪さ笑
ある日更衣室で窃盗騒ぎがあって犯人はロシア人のユリア。
小柄で透明感のある金髪ロングのスゴく綺麗な子。
北斗ファンとしては「ユリアが窃盗」という香ばしいワードに胸を躍らしてました。
週末は演奏終了後に店の子らに連れられて踊る系の外国人クラブに行ったり、また外国人ネットワークのハコで深夜に朝までバンドでライブしたり。ビール瓶も飛んできたり笑
話は脱線しましたが、当時の信念としてはマライアキャリーが歌ってたらどんな場所でも振り返って演奏聞くやろ、と。そんな気持ちでした。
でも求められるのはそんな尖った演奏ではありません。まぁ僕が経営者だとしたらお客さんの会話に当たり障りのないBGMな演奏者を求めるでしょう。そもそもマライアキャリーではない笑
バイショウ引退!
バンド系シンガーは絶対やらない方がいいですね。音量制限のある小さいハコだったら変な「抜いた」歌い方を覚えてしまうし、小上手い(コウマイ)だけのボーカルになってスケール感が小さくなり魅力が半減する。
遠くに届ける感じがしない。
ジャズ系ならいいでしょうね。そもそも音量も小さいしハコもバーが多いし、そういうエイギョウも取れるでしょうし。
自分がバイショウをやらなくなったのは自分が先輩に連れられてそういうクラブとかに行った時。
客の立ち位置からそのバイショウミュージシャンを見た時にすごく冷めてしまった。きっと各々は頑張ってるんでしょうけど。
たまに外国人のバイショウピアニストって見かけますよね?
彼らは生活のために完全にモードをシフトしてるプロのバイショウ。だからか淡々とこなす様も全く気にならないです。彼らは余計な事をしない。その場で求められる100%の仕事をこなします。
一方、バンドは深夜のローカルテレビとかで演歌を演奏してそうな感じに見えます笑
決してミュージシャンという感じはしないですね。少なくとも楽器を始めた時に憧れるミュージシャン像とはかけ離れてます。
ジャズとかは元々そんな雰囲気なのでそういう仕事はジャズの人達に集中してます。対応力も含めて。
ちなみにTV案件はバイショウともエイギョウとも言わないです。
余談ながらフジテレビの仕事を数回受けると何故か突然CXと言い出す業界ぶったオノボリさんもいます。ワシの事や!笑
バイショウによる弊害
自分でやってる時は「勉強になる」「経験になる」「お金ももらえる」「誰か見てくれてる」とか謎の肯定をするのですが、そんなのは幻想。
全ての頭に「バイショウ」が付きます。
バイショウの勉強になる
バイショウの経験になる
バイショウでお金をもらえる
バイショウの演奏を見てくれる
だけ。時間の無駄です。
あとバイショウミュージシャンは独特の匂いを発します。
バイショウ臭い。流した演奏。
情熱のないジャズミュージシャンにもたまにいます。
若い子達にはまだ音楽で食べれない内はやってしまい沼にハマってしまいがちですが、それなら他のバイトして週3でスタジオ入って3人のお客さんの前で赤字になりながらライブする方が良いと思います。必死に汗かけ、と。
「バイトするよりマシや」と怒られそうですけど長い目で見るとバイトする方がマシです。メンタル的にも変なクセがつく前にやめた方がいい。
何も成し遂げてないのに『なんちゃってプロ感』が出ます。
「見える景色に合った演奏するのがバイショウ」
『まだ見ぬ景色に演奏するのがライブ』
東京や沖縄にバンドでロックの演奏するバーなどがあります。言ってみれば枠的にはバイショウですが、そっちはカラオケでもBGMでもないので迫力もあり、前述のプロバイショウを攻めさせた感じで雰囲気もありカッコいいです。もはやライブ。USJやテーマパークにも似たエンタメですね。
最後に、バイショウを志す人たちへ
またしても体験と共に好き勝手書きましたが
バイショウをするのは、
・一通りやり終わったおじいさんぐらいの人
・夜の空気やホステス、酒が好きな人
・結婚して給料袋を持って帰らないといけない人
・趣味や副業の人
等に任せておいて若者はやらなくていい世界だと思います。
師に言われた言葉
「バイショウするようなミュージシャンにはなるな。そんなんオレらの時代だけで十分や」
に私が付け加えるとするなら
「得るものは僅かな賃金とメッキの誇り。失うものは時間と情熱」
最近知ったのですがnoteって支援できるらしいです!
勿論この記事に支援してくれてもいいんですよ!
本当に出来るか試してみて下さい。
これはバイショウじゃないです笑
次回また次の職安で!
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