超主観的ボカロ史 電脳世界を彩る音楽たち 2015年編

 こんがお!

 どうも、苗輪和音です!

 さてさて、今回もボカロ史を紐解いていきましょうかね!

 今回は少し短いですが、その分なるべくしっかり書いてますのでお願いします。

 それでは、行きましょう!





【超主観的ボカロ史 2015年編】



頓珍漢の宴 / 初音ミク


2015/3/2

 キノピオピー氏の作品。
 居酒屋の飲み会の様子を歌った韻踏みまくりの歌詞軽快で有象無象が溢れかえったような曲が特徴の作品。
 普段暗喩などを用い叙情的でインテリジェンスに富んだ歌詞を書くキノピオピー氏としては珍しく見たままの風景を歌詞になっているのも「頭が回らなくなる飲み会」にちなんでいるのかもしれないと考えると緻密な構成力とプロデュース能力に畏敬の念すら抱いてしまう。




【IA×ONE】CITRUS【オリジナル】


2015/4/4

 Orangestar氏の作品。
 氏がよく用いる90年代のエイベックスアーティスト風なメロディーと前を向いて必死に走っていくような歌詞がとても映える作品であり、VOCALOID・IAの妹分として開発されたCeVIO・ONE(ONE -ARIA ON THE PLANETES-)のソングボイス公式デモソングでもある。
 こういった公式デモに起用される人はその当時人気と知名度がある人なので、Orangestar氏は当時のボカロ界隈を盛り上げていたクリエイターとして広く認知されていたという事だ。
 ちなみに氏の作品には「6451進行」(別名「小室進行」)と呼ばれる有名なコード進行が活用されている。その為、ノリやすく親しみやすい作品が多く生まれるのだろうと思う。




【初音ミク】 うみたがり 【オリジナル】


2015/5/2

 MARETU氏の作品。
 氏の得意とする社会派な歌詞不思議な浮遊感とザワザワする奇妙な恐怖感が両立するサウンドによって成り立っている。
 楽器を弾けたりコード進行に詳しい訳ではないのでこれがこうなってこう!のような説明が出来ないのが申し訳ないが、恐らくこの作品の根底にある不可思議な感覚を生み出しているのはたまに鳴る和風テイストな音なのではないかと勝手に思っている。




【ニュース速報】初音ミクが女子アナに挑戦!『ニュース39』番組MV


2015/5/3

 Mitchie M氏の作品。
 もはや氏の代名詞ともなっている「神調教で神滑舌な初音ミク」を遺憾なく発揮した本作は、そのメガトン級にポジティブな歌詞何処か90~00年代のニュース番組を感じさせるフュージョンチックなダンスミュージックのコンボによって瞬く間に人気作品となった。
 この作品で特筆すべきなのは作品後半に登場するラップパートである。今までも度々ラップをするボカロ作品はあったのだが、ここまで克明に歌詞が聴きとれるものはあまりなかったのではないだろうか。しかもポジティブでユーモラスなライムを刻んでいるのも氏の確固たる信念のようなものを感じられて良いと個人的に思う。




【初音ミク】 メリュー 【オリジナル】


2015/5/12

 n-buna氏の作品。
 歌詞と密接にリンクしているシンプルな打楽器の音色とこの作品の主人公の感情の起伏に沿うように奏でられるギターの音色というシンプルながらも王道の構成が見事な作品。
 シンプル且つ王道というのは音楽に関係なくどんなものでも凄く難しいのだが、本作はそれを成している。もちろん他にもそれを成している作品はいくつもあるのだが、この2015年の中では特にこの作品がそれを見事に成しえていたのではと思う。




アンドロメダアンドロメダ / 初音ミク


2015/7/1

 これ以降様々な大ヒット作品を次々と生み出していくナユタン星人氏の初投稿作品。
 氏の作品は様々な面があるので一概にこうだ!と言いづらいのだが、敢えて言うなら「ネオ歌謡ロック」ではないだろうか。
 『ナユタン星人』という名前の通り、宇宙人や宇宙規模の比喩表現を巧みに活用する歌詞往年のアイドル曲や歌謡曲を彷彿とさせるギターの音色やテンポ感、そして演歌歌手も驚きの見事なこぶし回しが光る調教とどれをとっても初投稿作品だとは思えない。
 よく演歌などの話題で出てきたりカラオケの精密採点で加点ポイントにもなっていたりする『こぶし』とはもの凄く簡単に言えば「一音の中で細かく連続で音程を移動させる技法」である。ただこれを行っている時の喉頭の仕組みを論理的に理解し使っている人はおらず、感覚で理解して使っている人が多いのではと思う。それくらい出来ない人には出来ないのだ。
 しかし本作、というかナユタン星人氏はそれを「機械的に入力する必要のあるVOCALOID」でやっているのだ。
 本作で言うとサビの「答えておくれ」の「答え」の辺りが特に顕著に使われている部分である。恐らくこの部分のボカロデータは細切れにされた「た」の音が散らばっているのだと思う。
 氏の登場は色々なものをもたらしてくれたが、『こぶし』をボカロ文化に導入したという事がかなり偉大な事だと個人的に思う。






【2015年評】

 2013年頃から徐々に広まりを見せ2014年に顕著となった「ボカロ離れ」が加速していたこの2015年。

 2007年から爆発的に広がりを見せたボカロ文化もこの辺りで徐々に似た毛色の作品が多くなっていた。それは徐々に短くなっていくこの記事シリーズからも見て取れるだろうが、オリジナリティがあり且つ次の世代や同世代に多大な影響を与える作品というものがあまり出てこなくなってしまっていたのだ。

 それは様々な芸術が発展する上で何処かで経験する事になる停滞期のようなものであり、『ボカロ』という音楽もそこに到達したという事である

 それは言い換えれば『ボカロ文化の発展』という事でもあるのだが、この停滞期の乗り越え方によってそのジャンルの運命が違ってくる。
 例えば「苦肉の策を用いた突破」や「1人ないし少数の才人による突破」はその後遠くないうちにまた停滞期がやってきてしまう。それではダメだ。
 ではどうなれば良いのか。それは例えば「沢山の才人たちが実力をつけた状態で突破する」というものである。これはあくまで自論だが、そうした突破は作品の母数が増える分、新規層が入ってきやすい。そうして新規が沢山入ると今度はその中からまた才人たちが現れる。そうしたサイクルに入る事で次にやってくる停滞期を少しでも遠ざけていけるのだ。

 2013年頃から徐々に停滞を始めたボカロ文化。だが次の世代の芽は着実に成長を続けていた。




では次回『超主観的ボカロ史 2016年編』でお会いしましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?