超主観的ボカロ史 電脳世界を彩る音楽たち 2013年編

 こんがお!

 どうも、苗輪和音です!

 今回も『超主観的ボカロ史』、書いていきたいと思います。

 まあまあ長いのでお気を付けを!

 では、いきます!



超主観的ボカロ史 2013年編



【初音ミク】THE WORLDS【オリジナルジェットコースターPV】


2013/1/18

 M.S.S.Projectの作品。
 普段は『ゲーム実況』カテゴリで活動をしているゲーム実況グループ『M.S.S.Project』の制作した作品で、作曲を担当したメンバー・FB777氏はこれ以前にもその作曲センスを遺憾なく発揮していたが、本作を機により飛躍する事になる。
 また、『ボカロ』カテゴリを主たる活躍場所としていない「別カテゴリで活躍する人でも作品が良ければ受け入れられ適切に評価される」という事を改めて認識できる作品となっている。
 2013年当時の『MINECRAFT』サバイバルモードで初音ミクのイラストを再現しているという「ボーカロイドに対する愛情」も評価されている点だと思う。





「Q」椎名もた feat.鏡音リン


2013/1/23

 2015年に20歳という若さで逝去した故・椎名もた(ぽわぽわP)氏の作品。
 これまで数々の名曲を世に放ってきた氏初のミリオン作品であり、氏の持つ多様な音楽センスを確信させるギターロックナンバーとなっている。
 氏の作品はリスナーだけでなく数多くのボカロPたちの心を今なお掴んでおり、未だに人気は衰える事を知らない。同業者からも愛されるという事は即ち彼らに影響を与えているという事。つまり我々が今聴いている作品たちは少なからず氏からの影響を受けたものだという事だ。
 もし、氏の作品を知らないという人がいたら一度聴いてみる事をオススメする。





【初音ミク】コインロッカーベイビー【オリジナル】


2013/2/2

 今現在も新作を投稿し、高い人気を誇るMARETU氏の作品。
 2011年頃に、歌詞が様々なボカロPたちのP名で構成された作品『【初音ミクオリジナル】 P 名 言 っ て み ろ ! 【550人】』という作品で一気に注目を浴びる事となった氏が制作した社会派作品。
 ほぼ全編通してアッパーなロックとやや早口で狂ったように「さよなら」を繰り返す歌詞の組み合わせでなんとも言えない奇妙な雰囲気を持つ作品だが、最後の1分ほどを残し音楽は止まってしまう。だが、音楽が止まった直後から形容しがたい不気味なサウンドが流れ始める。この最後のパートこそがこの作品の持つ意味であり本作が「社会派」と言われる所以であると推察する。
 こういった独特の視点から様々な社会問題を取り扱うセンシティブな作品を創る氏の存在はこれ以降のボカロ史でかなり重要な存在と言って過言ではないだろう。




【IA】夜咄ディセイブ【オリジナルMV】


2013/2/17

 じん(自然の敵P)氏の作品。
 氏の展開する『カゲロウプロジェクト』に属する作品であり、氏の音楽センスに驚かされる作品でもある。
 投稿からわずか5時間で殿堂入りを達成し、ひと月足らずで伝説入りとなった。思わず目を疑ってしまうほどの凄まじいスピードでここまで人気となったのは「『カゲプロ』の作品だから」という理由だけではないだろう。初速こそ元来のファンがいてこそだろうが、一定ライン(具体的に言うとランキング上位に入ったタイミング)を通過して以降は元来のファン以外のボカロリスナーたちの純粋な興味からの伸びなのだと思う。
また他の人気作品と同様に楽曲だけが良いのではなくMVの出来が素晴らしかったからこそだろう。リスナー層の大半を占めている学生たちの心を鷲掴みにする「程良い厨二感」が理解できていなければこの作品は生まれてくる事はなかっただろう。
「作者が作りたいもの」と「リスナーが欲しているもの」という、ともすれば相反する事もある歯車が見事に噛み合った結果が、この作品なのだと思う。
 また、単純に一つの音楽として聴いても非常にレベルの高いものだと思うし、2021年現在のJ-POPシーンにおいて重要な存在である「ネット発の音楽」の作り手たちに多大な影響を与えているのは間違いないだろう。




【GUMI】 透明エレジー 【オリジナル曲】


2013/2/19

 現在、大人気音楽ユニット『ヨルシカ』のコンポーザーを務めるn-buna氏の作品。
 氏にとって初となる殿堂入りを達成した作品で、現在まで続く氏の活躍が始まった作品とも言える。
 高音のエレクトーン的サウンドがアクセントに用いられたロックや少し切ない歌詞、高音域でのやや息苦しそうな調教など、当時のボカロらしさがふんだんに盛り込まれており、ヒットするべくしてヒットしたという印象を受ける。
 一歩間違えれば「ただマーケティングをして売れる為に作った」という受け取られ方をされかねないという気もするが、作品を鑑賞すれば確実にn-buna氏自身のセンスやここまでに培ってきた経験値に裏打ちされたものという事が分かるので、より一層凄みが増すのである。





【鏡音リン】 ロストワンの号哭 【オリジナルPV付】


2013/3/4

 Neru氏の作品。
 氏らしい高速高音ロックナンバー。いわゆる「モラトリアム」の只中にいる人が学生時代を振り返ったような視点で書かれた歌詞がメインリスナー層である学生の心に深く突き刺さり、瞬く間に氏を代表する作品となった。
 この時期に氏が発表した作品の中でも特に様々な方面に影響を与えた作品なのではないだろうか。




初音ミク オリジナル曲 『ブリキノダンス』


2013/3/10

 日向電工氏の作品。
 以前から作品を投稿していた氏初の伝説入り作品である。
 BPM172という高速リズム迫力のあるギター安定感のあるベースとドラム、アクセントとして用いられているオリエンタルなシンセサイザーヒンドゥー教などから引用された語句で構成された歌詞など、多様なピースが見事に組み上げられた、構築美すら感じる作品である。
 間違いなくこの作品は「ボーカロイド」というジャンル全体に影響を与えたものだろう。





【鏡音リンレン】しんでしまうとはなさけない!【オリジナル/ワンオポ】


2013/3/14

 じーざすP氏及び氏の所属するワンダフル☆オポチュニティ!の作品。
 『ドラゴンクエスト』風な世界観を舞台に、ひたすら働かされる勇者とこき使う王様の掛け合いが特徴的な作品。
 じーざすP氏の持ち味であるピコピコサウンドが押し出された楽曲が魅力の一つであり、AメロやBメロのハイテンポなポップスが転調で一転、サビはエモーショナルでスタイリッシュな雰囲気を纏う。
 今もなお、人気の高い作品である。




【IA】ロスタイムメモリー【オリジナルMV】


2013/3/30

 じん(自然の敵P)氏の作品。
 氏の得意とする疾走感溢れるロックサウンドが魅力的な作品。
 かなり早い段階で氏は楽器を生音にしていた為、より作品に見合った温度感を持つサウンドに仕上がっており、ただただカッコイイのである。
 ここまでドストレートにスタイリッシュなロックを出されたら若い世代は否が応でも影響されてしまう。
 またMVの進化も目覚ましいものがあり、数あるボカロ作品の中でもアニメーションとしてかなりレベルの高いものが出来上がっているのではないだろうか。
 この作品が与えた影響はとても大きい。





【初音ミク】魔法少女幸福論【オリジナル曲】


2013/4/2

 トーマ氏の作品。
 氏の持ち味である超高速BPMから繰り出されるショッキングピングな世界観と複数回の転調が特徴的な作品。
 曲調やイラスト自体は今までの氏と比べてもかなりポップなのだが、不思議な事に進行していくにつれて明らかになるダークな世界観に対する良いアクセントとなって凄く馴染むのである。
 氏の持つセンスが本物である事をまざまざと見せつけられる作品でもある。
 今現在トーマ氏最後の作品である。





『KAITO v3』上弦の月『オリジナル曲PV』


2013/7/15

 黒うさP氏の作品。
 氏制作の伝説的作品『千本桜』と世界観を共にする作品であり、ボカロの和風作品の中でも特に人気の高い作品である。
 既存の作品の世界観をより深く掘り下げる作品というのは数多くあるが、そういったスピンオフ的側面を持つ作品の中でも特に良い作品であるのは間違いない。





初音ミクが声優のようにしゃべってラップして歌った!『ビバハピ』PV付


2013/7/26

 Mitchie M氏の作品。
 作品タイトルにもある通り、氏の持つ凄まじく高い調教技術によりまるで人間が歌っているかのように錯覚すらしてしまう作品である。
 しかもただ歌うのではなく更に別種のスキルが求められるラップまでこなすのだから、もうどうなってんだか分からない。
 この作品も含め、Mitchie M氏がボカロ文化に与えた影響は計り知れない。





【初音ミク】高音厨音域テスト【オリジナルPV】


2013/8/21

 木村わいP氏の作品。
 当時の『歌ってみた』カテゴリでは「原曲キーのままで歌う高音域がウリの歌い手」たちがリスナーの大多数から支持を得ており、「如何に凄い高音を叩き出せるか」みたいな部分だけがピックアップされて評価される風潮がある時代であり、それを感じた木村わいP氏はそういった風潮に対しての皮肉として本作を制作、投稿した。
 しかし歌い手側も皮肉に敢えて乗っかった。その結果、本作は『歌ってみた』カテゴリに一大ムーブメントを巻き起こし、逆に『歌ってみた』カテゴリは本作を含めた超高音域が登場する作品でいっぱいになったのである。
 また、「このテストをクリア出来ない者、高音厨と呼ぶべからず!」とでも言うように登竜門的作品ともなっている。
 いろんな意味で文化を作った作品の一つである事は間違いない。




【IA】サマータイムレコード【オリジナルMV】


2013/9/2

 じん(自然の敵P)氏の作品。
 『カゲロウプロジェクト』のエンディングテーマとして制作されたこの作品は、夏をテーマにしたプロジェクトに相応しく爽やかなロックナンバーとなっている。
 1つの作品のエンディングとして完成されているのではないだろうか。
また、『カゲロウプロジェクト』というボカロ文化に多大な影響を与えたプロジェクトの最後を飾る作品としても素晴らしいものなのではないかと個人的に思う。





DECO*27 - 妄想税 feat. 初音ミク


2013/9/7

 DECO*27氏の作品。
 氏がどれだけ時代に合わせたサウンド作りを心掛けているかがよく分かる作品である。
 当時の流行サウンドであるEDM的なサウンドと複数回の転調が取り込まれている上に氏の得意なギターロックが組み合わされているキャッチーさがある。
 時代を振り返る時にまず間違いなく分かりやすい指標になる作品であるのは間違いない。




歌愛ユキ「いかないで」


2013/10/9

 想太氏の作品。
 氏初の殿堂入り、及び伝説入り達成作品である。
 この時代で外せないのはスピード感のあるロックだけではない。そういった作品が主流だった時代だからこそ、本作のようなラブソングは外せないのである。
 特に「別れ」をテーマにした本作はメインリスナー層である学生に伝わりやすいストレートな歌詞であり普遍的だが、一方の楽曲は非常に音数が少ない淡々としたリズムを刻むドラムと旋律を奏でるピアノが殆どを占めるかなりシンプルな構成となっており、より歌詞が響いてきやすいようになっている。
 この作品は未だに人気が高く、2021年現在もランキングに入る程である。




GUMI MV「ドーナツホール」


2013/10/28

 前作『パンダヒーロー』から2年9ヶ月ぶりとなるハチ氏の作品。
 既にこの時点で『米津玄師』としての活動を活発化させていた氏が、新たなステージに上がる最後のステップとなった作品だったのではないだろうか。
 これまでのサウンドから更に洗練されたものとなっており、完成度が圧倒的である。
 そもそもハチ氏がボカロ作品を投稿しただけでもボカロ史に残る大きなポイントだが、その完成度で以てより大きなポイントとなっている。




【鏡音リン・レン】おこちゃま戦争【オリジナル】


2013/11/29

 ギガ氏の作品。
 氏の得意分野であるスタイリッシュEDMコメディタッチな作風が見事にマッチした途轍もなくキャッチーなものとなっている。
 元々歌い手・kradness氏の1stアルバム書き下ろし曲として制作された作品であり、どちらでも聴いていて楽しい掛け合いが特徴的である。
 本作の途中にある鏡音リンと鏡音レンによるセリフでの掛け合いの完成度がかなり高く、しっかりと喋っているような調教が成されていて聴いていて違和感が少ないここにギガ氏の確かな手腕を感じられる
 本作の制作経緯からして人間が歌えるようになっているものなので、当然ながら『歌ってみた』カテゴリでの人気も高く様々な歌い手たちがデュエットをしている作品が多数見受けられる。
 そういう意味でもボカロ史にとって必要な作品であるのは間違いない。





【2013年評】

 この1年は全体的に見て目立った大きな出来事が多かった訳ではないが、間違いなくボカロ文化の新たなターニングポイントであるだろう。

 他カテゴリからの本格的な進出やレジェンド作家たちの新作、大きな企画の一旦の終了などがあった年であり、これ以降のボカロ作品の全体的な方向性が決定した1年でもあったのだと思う。

 それは「『ボーカロイド文化』が一定の水準に達したから」、という理由だけではなく「ニコニコ動画全体の空気感が変化した事」という理由も大きいのではないだろうか。

 具体的に何が変わったかと問われると答えるのは難しいのだが、2013年以前からニコニコ動画を利用していたユーザーならなんとなくこの感覚は理解してもらえるのではないか。

 投げっぱなしの様になってしまって本当に申し訳ないのだが、この2013年という年について語るのはまだまだ筆者にとっては至難の業なのである。

 いつかまた書ける時がくれば書こうと思う。




 それでは、次回【超主観的ボカロ史 2014年編】でお会いしましょう。

 おつがお~!


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