超主観的ボカロ史 電脳世界を彩る音楽たち 2007年~2008年編

 こんがお!

 どうも、苗輪和音です!


 今回から少しの間、「超個人的な主観から見るボカロのターニングポイントと歴史」をテーマとした記事を投稿していきます。

 この間、関ジャムのボカロ特集回を見てたけどなんだか内容が物足りなかったので「じゃあ自分で書くか!」となり書き始めました。

 今思えば完全にミスったなという気持ちが強いです。一体どれだけ、どこまで書けばいいんだ……?

 ですが、いつか誰かの役に立つと信じて書いていこうと思います。

 念を押しておきますが、本当に主観なので「ここの表現ちょっと違うのでは?」といった部分があればこっそり教えてください。修正できる部分であれば修正します。

 ついでに言っておきますが、初音ミク登場以前のボカロについて触れていないのはキリがなくなるからですのであしからず。歴史の教科書でガッツリ触れるのが大きな文明が始まってからなのと同じです。


 それでは、始まります。





超主観的ボカロ史 2007年 編


ボーカロイド 初音ミク デモソング


2007/8/29

 初音ミクがニコニコ動画にはじめて現れたすべての始まり
 タグ「伝説の始まり」がそれを物語っている。



ボーカロイド 初音ミク 早速作ってみた


2007/9/1

 現存する初音ミク初のデュエット
 お相手はなんとあのルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール(CV:釘宮理恵)である。
 下積み時代の初音ミクを知る事が出来る貴重な作品。
 動画構成のカオスさが古き良きニコニコを感じる。ちなみに「vocaloid」タグを最古から順番に見た場合、この動画の次に初音ミクがデュエットしているのはディレイラマである。MEIKOなどの既に世に出ていたVocaloidではない。単純にそれ以前のデュエット動画が残っていない可能性もあるが、現時点での「これ、豆な」的トリビアである。



VOCALOID2 CV-01 初音ミク SPEC TEST #01 「夢冒険」


 同日に投稿されたカバー曲。原曲は酒井法子が歌うNHKのテレビアニメ『アニメ三銃士』の同名主題歌
 タグにあるように「現存するソロ歌唱最古のカバー曲動画」である。ちなみにコメント曰く「現存していないものを含めても2番目に古い」らしい。



VOCALOID2 初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた


2007/9/4

 全ての元凶にしてニコニコRC時代の傑作
 初音ミクに「ネギ」のイメージを植え付け、「はちゅねミク」の概念を世界に広めた伝説の動画である。ぶっちゃけこの作品なくしてボカロの歴史を語れない。



初音ミクにオリジナル曲を歌わせてみたその1 (迷惑なあなた)


2007/9/9

 現存する中で最古のミクオリジナル曲。つまり「伝説の始まり」である。
 まあ最初のオリジナル曲がこれだけサイケなら後続も出てきやすいよね。




Vocaloid2 初音ミクでオリジナル曲(曲名:宝物)


 同日に投稿された動画。
 当時のランキングを知らないので真偽は不明だが、タグを見る限りでは「ボカロオリジナル初ランクイン曲」とのこと。
 そしてサイケな上記曲に比べこちらはどちらかと言えば合唱曲的な趣があり、ボカロの裾野の広さを垣間見る事が出来る。余談ではあるが、この動画には「最古だと思いたい」というタグがついている。まあ気持ちは分からんでもない。



【初音ミク】恋スルVOC@LOID (修正版)【オリジナル曲】


2007/9/13

 数々のボカロPやボカロリスナーに今なお影響を与え続けている伝説の曲。めちゃくちゃ聴いてたし今でもたまに聴いてる。ボカロ黎明期から今も脈々とある「ボカロとマスターの関係を歌った歌」の原点なので、これがなかったら今のボカロ界隈がどうなっていたか分からない。歴史の分水嶺である。
 ちなみに作者である「ふわふわシナモン」ことOSTER project氏は現在、音楽作家としてボカロのみならず様々なアーティストに楽曲提供をしている。なんとアイマスにも楽曲提供をしてくれているんだ!みんな「ラビットファー/Xs」を聴こうな!!!



あなたの歌姫/初音ミク_fullver.


2007/9/18

 「恋スルVOC@LOID」同様にあらゆるボカロユーザー、ボカロリスナーに影響を与えた曲。端的に言うと伝説である
 かなりポップな曲が爆発的にヒットした次に爆発的にヒットしたのがこの静かで切ないバラードなのは音楽市場的価値観が徐々に出来上がっている事を思わせる。



【初音ミク】みくみくにしてあげる♪【してやんよ】


2007/9/20

 伝説にして神話。「恋スルVOC@LOID」同様、数々のボカロPやボカロリスナーに影響を与えている伝説の曲。というかある程度ボカロを好んで聴いている人で知らん人いないと思う。これにより「ボカロと言えばこれ
!」という一種のパブリックイメージが出来上がったような気がする。

 完全に余談だが、この動画の画像に使われているAAの元ネタは「ボコボコにしてやんよ」というAAであり、更にその元ネタは漫画『特攻の拓』の「ひき肉にしてやんよ!?」が元ネタだとか。



初音ミクがオリジナル曲を歌ってくれました「Packaged」 Full Ver.


2007/9/25

 初音ミクを「電子の歌姫」たらしめている所以とも言える曲。
作ったのは「Dear」や「Tell Your World」など後に数々の大ヒットボカロ曲を生み出しているKz氏。上記の楽曲を作ったP同様に氏の影響を受けた後続のボカロPも多いのではないだろうか。



初音ミクオリジナル『えれくとりっく・えんじぇぅ』Full ver.


2007/10/10

 ここまでに登場した楽曲に比べロックな要素がやや強まっているこの曲。しかし内容はやはり共通しており、「ボカロとマスターの関係を歌った歌」なのである。
 全体的にリズムがとても気持ちいい上に少々オリエンタルなメロディーを感じられるこの曲に惹かれた人も多いのではないだろうか。



初音ミクオリジナル曲 「ハジメテノオト(Fullバージョン)」


2007/10/14

 ここまでに登場した曲に比べて曲調や歌詞がかなり万人に受け入れられるようなものになっているこの曲。
 実際に「みんなのうた」タグがつけられている事からもそれが伺える。この曲の「初めての音に なれましたか?あなたの 初めての音に」という歌詞を今見るとなんか泣きそうになる。




初音ミクオリジナル「私の時間」


2007/10/22

 先ほどの「ハジメテノオト」と異なりかなりオタク文化に染まった初音ミクの曲。
 無論、ここまでの曲もオタク文化が根底にあったのだがよりアニソン感というかキャラソン感が強い気がする。



ボーカロイドにオリ曲を喋ってもらった1 「初音ミクの暴走」


 同日に投稿された動画。
 恐らく「ボーカロイド曲=電波ソング」という図式を確立させた原因にしてその頂点
 先ほどの「私の時間」も近しいものではあったが、この曲は頭三つ分くらい抜けている。
 そしてそれともう一つ、この曲が確立させた図式がある。それが「ボーカロイド曲=人間に歌えない高速高音ソング」というものである。ここまで紹介してきた中で唯一人間歌唱難易度が鬼くらいある。この曲を作ったcosMo氏の曲はどれもボカロだから歌えるような曲になっており、そんな曲たちを歌えるかどうかが当時の若いボカロ好きオタクたちの間でステータスになっていたりした。今もそんな文化があるのかは知らん。少なくとも筆者が中学生(2010年代中頃)の頃はまだ確実にあった。




【初音ミク】ミラクルペイント【オリジナル曲】


2007/11/22

 先ほど紹介した「恋スルVOC@LOID」と同じOSTER project氏の作品。
 ここまでの曲とは打って変わって管楽器が入ったトラックやミクのスキャットなど本格的なジャズソングとなっている。
 ボカロでもオシャレに出来る!という観念が出来上がるにあたってのかなり重要なものだと思う。これが無かったら今のボカロ界隈はなかったかもしれない。




「卑怯戦隊うろたんだー」をKAITO,MEIKO,初音ミクにry【オリジナル】修正版


2007/11/28

 架空の特撮作品「卑怯戦隊うろたんだー」の主題歌、という設定の作品。
 初音ミク登場以前から「ボーカロイド」ジャンルの地盤を作り上げてきたKAITOとMEIKOの2名と初音ミクを使用し男声であるKAITOが主旋律、女声であるMEIKOとミクがコーラスをするという昭和特撮作品でよくある編成で歌われているかなりカッコイイ曲なのだが、なんせ歌詞が面白い。詳しい歌詞は実際に聴けば分かるが、要はカーズ様の「勝てばよかろうなのだァァァァァッ‼」である。熱血な青年を思わせる曲調からは想像もつかない歌詞の内容というギャップにより見事伝説となったのだ!
 余談だが、KAITOのボイスサンプリング元である歌手・風雅なおと氏は特撮番組「電磁戦隊メガレンジャー」の主題歌「電磁戦隊メガレンジャー」を歌っている。もしかするとこの曲の元ネタというか着想元はそこなのかもしれない。知らんけど。



初音ミク が オリジナル曲を歌ってくれたよ「メルト」


2007/12/7

 伝説にして神話
 ボカロを聴き始めて少しすると皆聴くのではないだろうか。というかこの曲がボカロだと知らない人もそろそろいるのでは?
 楽曲自体の完成度が異常に高い事もさることながら、この曲は後にメルトショックと呼ばれる出来事のきっかけになったり、後にクリエイター集団supercellを結成したりEGOISTのプロデューサーとしてもバリバリ活躍したりしているryo氏が作成し投稿したものとしても評価されている。それらの大きな出来事があるため触れない事は不可能なのだ。
 この曲の空前の大ヒットにより今まで以上にボカロ界隈に入ってくる人が増えたのではないだろうか。
 一本の動画が歴史を変えた瞬間である。
 この動画により、低く見られがちだったボカロの地位は徐々に上がっていく事になる。




【初音ミク】ドルアーガの塔より「おなかすいたうた」


2007/12/25

 最近はあまり聴くことはなくなったが、一時期はボカロ界隈だけでなくゲーム実況系動画や日記系の動画などありとあらゆる場所で耳にしたこの曲。他ジャンルへボカロが浸透する事になったきっかけの一つでもあると思う。 
 昔のニコニコ動画やまだアングラ感のあったYouTubeなどを知っている人でこの曲を知らん事は多分ないのではないだろうか。もしいたらスマソ。
 なんというか、クリスマスに「おなかがすいた」と歌う曲がUPされている事に一抹の寂しさを感じる
 元ネタはゲーム『ドルアーガの塔』のBGM「オープニングテーマ~メインテーマ」である。




【初音ミク】コンビニ【オリジナル曲】


2007/12/30

 伝説の楽曲。この楽曲の歌ってみたを使用した手書きPVを観たことある人は多いのでは?
 ここまでのボカロ曲は「恋スルVOC@LOID」に代表されるような「ボカロとマスターの関係を歌った歌」のような作品や「メルト」のような「女性目線の恋愛ソング」全体の割合を占めていたのだが、この作品は「男性目線の恋愛ソング」として大成功を収めた。あまり触れられている事を見ないが、かなり重要な作品であると思う。


【2007年評】

 初音ミクが登場したボカロの歴史を語る上で欠かす事の出来ない年。ここで登場した楽曲どれもが現在のボカロ文化を形成する上で欠かせないものである。

 ここで登場した作品は謂わば全て「ボカロクラシック」である。”神”を讃える事を目的としたグレゴリオ聖歌から始まった「クラシック音楽」のように、インターネット文化の持つカオスとこの時代に一般に浸透していないDTMに手を出して「機械に歌わせる」という選択肢を選んだボカロユーザーたちの狂気とも言える情熱が合わさった上で”初音ミク”への愛を伝える事を是とした音楽。それが「ボカロクラシック」なのだ。





超主観的ボカロ史 2008年 編


【鏡音リン】ぶっちぎりにしてあげる♪【ロードローラー最速伝説】


2008/1/1

 鏡音リンに対するロードローラーネタがこれにより広がった。
 動画詳細にあるように実際はこの作品の元ネタやインスパイア元があるのでこの作品が元凶という訳ではないが、「鏡音リン=ロードローラー」ミームが伝播していく足がかりの一つになっているのは間違いない。
 クリプトンやリンもまさかこんな事になるとは思ってなかったのはないだろうか。




【初音ミク】 サイハテ 【アニメ風PV・オリジナル曲】


2008/1/16

 今なお様々な人が訪れる作品。それはこの作品の内容が深く関わっている。
 この作品は一聴するとゴキゲンなポップスなのだが、歌詞やPVをしっかり見ると「死」や「見送り」、「鎮魂」というテーマが込められている事が分かると思う。
 詳しい解説は他のサイトなどにお任せしたいが、その初見では気づきにくい深いテーマ性とそれをそうと思わせないポップな曲調により「ポップ・レクイエム」というジャンルとして確立されている。



『KAITO・ミク』カンタレラ(第二版)『オリジナル』


2008/2/21

 元々は本作品の作者である黒うさP氏が所属する同人音楽サークル「WhiteFlame」にて発表されていた楽曲で、それをボカロ版として調整したものが本作品である。
 今もなお続くストーリー性の高いボカロ曲の源流に近い作品であり、その耽美で美麗な世界観に焦がれたリスナーも多いのではないだろうか。
 ちなみに作者の黒うさP氏は他にもたくさんの楽曲を投稿しており、その中の一つはボカロの歴史を語る上で欠かせないものとなっている。が、後に触れるのでここでは触れない事にする。



初音ミク が オリジナル曲を歌ってくれたよ「恋は戦争」


2008/2/22

 ryo氏の作品。ウルトラジャンプで『DOGS / BULLETS & CARNAGE』(絶賛連載中!)を連載している漫画家・三輪士郎氏が動画イラストを担当している。当時としては現役のプロ漫画家がボカロPとコラボするという事は前代未聞の出来事で、単純な作品評価に留まらず動画イラストなど全体を含めた点を評価する声が高まった。
 そしてこの動画は事前にいつ投稿されるか告知されていたのだが、これが後に「222戦争」と呼ばれる事件のきっかけとなる。
詳しい事はこちらを参照していただきたいが、要は「ryoの新作が2/22に投稿されるらしいから俺はそこにタイミング合わせて作品投稿するぜ!」という事象が一気に重なった結果彼らのファンによる熾烈極まるランキング競争が起きた、という事件である。
 「ネ申作」である事が確約されている本作に対抗しようとすると当然他の作品のクオリティが上昇する事請け合いであり、その結果2008/2/22当日に投稿されたボカロ楽曲のうち7曲、前後の日付含む3日間で9曲が「VOCALOID殿堂入り」となった。




【初音ミク】桜ノ雨【オリジナル曲】


2008/2/23

 当時のボカロ作品としてかなり珍しい「卒業」をテーマとして扱った作品である。
 曲調や歌詞にもいわゆる「ボカロっぽい」電波感やアニソン感はなく、卒業式でのピアノ伴奏だけでもしっかり聴けるようになっている。卒業シーズンに投稿された事もあってか学生と見られるコメントが多い。
 実際に若い世代の中で「卒業ソング」としての地位を確立している。もしかするとこの記事を読んでいる方の中にもこの曲を卒業式で歌った人がいるかもしれない。そう思うと「未来」を感じる。



【初音ミク】First Sound Story#005 『Dear』


2008/3/15

 生っぽいバンドサウンドに乗せた永遠の別離を歌った作品。
 動画説明文にも書かれている通り、作者の19氏が投稿しているいくつかの作品とストーリーがつながっており、いわゆる連作の一部である。
 この当時からそういった形式の作品はあったが、ここまでヒットした作品はなかったのではないだろうか。




【鏡音リン・レン】下剋上(完)【オリジナル曲】


2008/4/2

 ボカロを使用したヒップホップ作品である。
 内容は「鏡音リン・レンが先輩である初音ミクやKAITO、MEIKOたちがランキングを席巻している現状(当時)に下剋上を宣言する」というものである。実際、この時点で鏡音リン・レンの発売から4か月ほど経っているのだが、初音ミクの発売から4か月と比べると割合が低い。しかしこの作品をきっかけにその状態から脱却していくのである。



【鏡音リン】 悪ノ娘 【中世物語風オリジナル】


2008/4/6

 ボーカロイドがボーカロイドとして歌うのではなく何らかのキャラクターとして歌う楽曲たちの源流とも言える作品
 ボカロを使用したストーリー性の高い楽曲群の源流の一つであり非常に高い完成度を誇っている。後に小説として刊行された「悪ノ大罪」シリーズの始まりであるので影響を受けた人は多い。
 こういったファンタジー性の高いゴシックなストーリー楽曲群が受け入れられやすいのは、ボカロブーム以前から根強い人気を誇っていた「Sound Horizon」や「ALI PROJECT」など独自の物語性の高い世界観を持ったアーティストの影響が多くある気がする。当時の事に詳しい人がいたら教えてほしい。



初音ミクオリジナル曲 「初音ミクの消失(LONG VERSION)」


2008/4/8

 「初音ミクの暴走」cosMo氏の人間には到底歌えない速度、ブレスの少なさ、文字量の多さなど持ち味が多分に含まれた伝説的作品である。BPM240のテンポから繰り出される文字通り前代未聞の内容に強い衝撃を受けた人も多い。
 「初音ミクの暴走」に比べ歌詞や曲調がかなりシリアスであり、「壊れかけの初音ミク」がモチーフになっている為、曲を通して徐々に壊れていく初音ミクを感じる事が出来る。
 この曲を歌いきる事が出来れば仲間内では神的存在として崇められ、クラスの明るい場所にいる人々から侮蔑の目で見られるという事を経験した人も結構いるとかいないとか。それも含めてボカロ文化の歴史だよね。



【初音ミク】トルコ行進曲 - オワタ\(^o^)/【ガルナ/オワタP】


2008/4/12

 かの高名な作曲家・モーツァルトが作った「 ピアノソナタ11番イ長調K.331 第三楽章」、通称「トルコ行進曲」をアレンジしなんとも物悲しいツイてない歌詞を初音ミクが歌った作品。
 いわゆるネタ曲なのだが、その完成度や汎用性の高さから一躍人気となった事により作者にして後のボカロ文化に多大な影響を与えるガルナ(オワタP)氏は人気ボカロPとなっていく。



【KAITO】千年の独奏歌(オリジナル曲)


2008/4/27

 KAITOを使用した数ある作品の中でも特に人気の高い本作品
 ケルト民謡を思わせる曲調に伸びやかで美しいKAITOの歌声が合わさり、まるでミュージカルを彷彿とさせる完成度となっている。同年に投稿されたKAITOによる「白虎野の娘/平沢進」カバー動画と共にKAITOの魅力を世間に広く知らしめた作品である。




【オリジナル曲】絵本『人柱アリス』【歪童話】


2008/4/30

 ボーカロイド誕生からここまでの歴史をホラー的視点から解釈したような作品。
 終始不気味な雰囲気を漂わせている本作は、一時期【閲覧注意】的な扱いを受けており、当時ボカロを聴き始めた中高生たちは「そんなの怖くねーし!」とイキる人とマジで怖いのが苦手だから見ない選択肢をとった人に二分されたりした。大人になった今見てもやっぱりちょっと不気味で怖いのである。



初音ミク が オリジナル曲を歌ってくれたよ「ワールドイズマイン」


2008/5/31

 ryo氏の作品。伝説である。
 本作の動画イラストの初音ミクのコスプレをした人は今でもそこそこ見るし、コスプレをして「踊ってみた」動画を撮影し投稿する人も多かった
 もちろん楽曲の完成度も非常に高く、イントロクイズを出せば即座に答えられるイントロや当時定番になりつつあったツンデレ気質なお嬢様の心情が描かれた歌詞など全ての要素がハイクオリティなのである。
 ただ歌詞の内容がそんな感じな為、この作品に触れた思春期真っ盛りの子たちは親にバレないようにこっそり見ていたとかそうじゃないとか。




初音ミクがオリジナルを歌ってくれたよ「ブラック★ロックシューター」


2008/6/13

 続いてもryo氏の作品。
 この作品はそれまでのryo氏の作品とは少し違いアニメチックなストーリーとキャラクターが展開されている。それもそのはず。この作品に登場する「ブラック★ロックシューター」はイラストレーター・huke氏の創作したオリジナルキャラクターで、そのhuke氏の描いたイラストにインスピレーションを受けたryo氏が作りあげたものが本作である。だから氏の他作品と少し毛色が違うのである。
 「ブラック★ロックシューター」は後にOVA化、それを原作としたテレビアニメも制作され、本作はそのテレビアニメのOPにも採用された。




「 神威がくぽ がオリジナル曲『 ダンシング☆サムライ 』を唄う」の巻


2008/7/31

 がくっぽいどが使用されたオリジナル楽曲である。
 軽快なリズムと楽しくなるメロディー、そして元気が出てくる歌詞が当時の社会情勢的にもウケ、徐々に人気に火がついた。
 ちなみにがくっぽいどのボイスサンプリング元が歌手・Gacktである事は有名だが、がくっぽいどのイメージキャラクターである神威がくぽのイラストは漫画『ベルセルク』などで知られる故・三浦建太郎氏である。



【鏡音レン】Fire◎Flower【オリジナル曲】


2008/8/2

 「桜ノ雨」の作者であるhalyosy氏の作品。
 少年キャラであるボーカロイド「鏡音レン」を使用し夏を舞台にした青春模様を描いた本作は、作中の主人公と同世代である中高生リスナーたちに熱烈な支持を受け、ボカロが若い世代に一気に浸透するきっかけとなった一つである。
 筆者は小学生の頃にこの曲を知ったので、周りの誰もがボカロを知らない中で誰に聴かせる訳でもないのに一人で練習していたあの頃を思い出す。 




【初音ミク】ぽっぴっぽー【本店だよ!!】


2008/12/11

 ここまでのいわゆる「ネタ曲」と呼ばれる作品は、そのほとんどが「クラシック音楽やゲーム音楽などをアレンジしオリジナルの歌詞をつける」というものであった。しかしこの作品は違ったのだ。
 作者・ラマーズPオリジナルの超絶ポップなトラックにオリジナルの無理やり野菜ジュースを好きにさせようとしてくる洗脳的な歌詞をつけた本作は、その抗いがたい中毒性により一気にファンを獲得した。
 その謎の中毒性と「ぽっぴっぽー」という妙に耳につく歌詞のリフレインが特徴的なこの作品は、ニコニコ動画の枠を飛び越えテレビのバラエティ番組などでもBGMとして使用されたりもしていた。もしかすると今もテレビで流れてたりするのかもしれない。
 なんとなく聴いた事あるけどそれがボカロだとは知らなかったという作品の一つであると思う。




初音ミクがオリジナル曲を歌ってくれたよ「初めての恋が終わる時」


2008/12/12

 この年の主役であったryo氏が年末に投稿した作品。
 そしてryo氏はこの曲の投稿以降supercellの活動などに注力していったため、「実質的にこれがニコニコ動画で見られる最後のryoのボカロ曲だ」と勘違いをしている人をたまに見かけるが、ゲームソフト『初音ミク -Project DIVA-』シリーズに4度楽曲を提供している。(そのうちの一つ「罪の名前」という作品はニコニコ動画にも投稿されているので聴いた事がない人は聴いてみるのもいいだろう)
 しかしおよそ1年間にわたり精力的にボカロ作品を投稿してきた人の新作ボカロ作品を投稿しなくなったらそう思ってしまうのも分からなくはないかもしれない。



【2008年評】

 この年の主役は間違いなくryo氏と19氏の2人だろう。両氏が「ギター」、「ドラム」、「ベース」からなるロックの構成を本格的に持ち込まなければここまでの盛り上がりはなかったのではないかと思う。

 もちろん両氏が制作した作品以外にも名作が怒涛の勢いで投稿されたのがこの年であるし、投稿されるジャンルが完全に固定化される事もなく寧ろ多種多様な音楽ジャンルが所狭しとひしめいているのがこの年の特徴でもある。

 そのどれもが次の年に生まれてくる作品たちの礎となっており今となっては欠かす事の出来ない作品たちであり紛れもなく歴史の一ページに刻まれているものなのだ。




次週、「超主観的ボカロ史 2009・2010年編」でまた逢おう!!!

それじゃ、おつがお~!

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