超主観的ボカロ史 電脳世界を彩る音楽たち 2009年編

 こんがお!

 どうも、苗輪和音です!



 今回は前回予告したように「超主観的ボカロ史 2009年編」をやっていきます!

 パッと書いたらめっちゃくちゃ長くなったので記事を2つに分けました。


 では、行きます!




超主観的ボカロ史 2009年 編


【巡音ルカ】 星屑ユートピア 【オリジナル】


2009/1/30

 巡音ルカの発売日に投稿された巡音ルカオリジナル楽曲で一番初めに殿堂入りを果たした文字通り伝説的な作品。
 元々、巡音ルカは発売以前より「ボーカロイド初の日本語と英語、2つのライブラリを持つバイリンガルである」とアナウンスされていたので注目度は高かったが、超スピードの殿堂入りを果たした部分からは巡音ルカに対してだけではなく「ボーカロイドの可能性」という広い意義からの注目度が高かったのではないかという事が伺える。



RIP=RELEASE【巡音ルカオリジナル】


同日に投稿された伝説的な作品。
発売日当日に制作され投稿されたと微塵も感じさせない「神調教」は、当時のボカロユーザーの度肝を抜いた。
 この作品を聴いたボカロユーザーたちは「こんなに短時間でここまで出来るんだから、巡音ルカの調教って簡単なんじゃね?」という考えに行き着いた。が、この神調教は単純に作者の実力であるので皆ことごとく撃沈したという。この出来事を作者であるみなと(流星P)氏の名を借り『流星詐欺』という……らしい。(ニコニコ大百科「RIP=RELEASE」より)
 ちなみに、巡音ルカのボイスサンプリング元である声優・浅川悠氏はこの曲を「凄いと思った巡音ルカの楽曲」として挙げている。




【巡音ルカオリジナル曲】ワンダーラスト【PV】


2009/2/2

 巡音ルカの初期作品の中でも特に伝説的なものの一つ。
 前年よりボカロ界隈のメインストリームの一角として成立しつつあった「非常に高いストーリー性を持つ作品」をより強く補強したものでもあると考えている。
 現在も音楽業界の前線を走っている作者・ささくれP(sasakure.UK)氏初の殿堂入り作品であり氏の次作が後述する「*ハロー、プラネット」である事からも伺えるようにこの作品が無ければこの世に生まれなかったものが多数あったのではないだろうか。




【巡音ルカ】ダブルラリアット【オリジナル】


2009/2/5

 巡音ルカの初期作品の中で特に存在感を放つ様々な意味で伝説の作品。
 この作品に関しては観たことがない人でも長くインターネット(特にアニメ・漫画界隈)にいる人ならばほぼ確実に耳にした事のあるものだと思う。もしかするとこれを読んでくれている人の中にはこの作品を使った自作手書きMADを制作した人がいるかもしれない。もし読んでくれているならば、僭越ながら数多の視聴者たちの代表としてこの場を借りてお礼を言わせていただきたい。あの時、あなたのその作品を世界に送り出していただいてありがとうございます。
 本作および本作を使用したMADたちは今の自分たちが生きるインターネット世界の礎を築き上げたものの一つとなっている。




【鏡音リン】いろは唄【オリジナル曲】


2009/2/11

 鏡音リンと和風楽曲の親和性の高さを決定づけた重要な作品。
 この完成度で作者・銀サク氏の初投稿作品というのだから凄まじい。
 タイトルにもあるように「いろは歌」がテーマの一つとなっている為、この作品に触れた小中学生は歌詞の意味を理解する為に特に古文の勉強を頑張ったという話もある。これはなんにでも通じる事だと思うが、作品のテーマや元ネタを知っているかどうかでその作品に対しての解像度が全く異なってくるので学生諸君はその辺りを心の隅にでも留めておいてほしい。特に将来「作家」などの創造性の高い職業を目指している人はしっかり勉強してアニメ・漫画・小説・ゲーム・音楽・映画などをいっぱい鑑賞して自分の糧にしていこう。絶対に役に立つ。




巡音ルカ「ルカルカ★ナイトフィーバー」【オリジナル曲】


2009/2/12

伝説にして永久の傑作
 2015年に逝去したsamfree氏の代表作の一つにして確実にボカロ文化の発展の一助となった作品であり、後に続く氏の「SAMナイトシリーズ」と呼ばれる作品群に属するものほぼ全てが歌唱ボーカロイドが発売されてから数日以内の作品となっている為、ある意味ではボカロ入門にうってつけのものかもしれない。




【巡音ルカ】 トエト 【オリジナル曲】


2009/2/17

 巡音ルカの可能性を更に広げる事になった作品。
 鏡音リンを使用した作品「ココロ」により一躍人気ボカロマスターとなったトラボルタP氏による優しく可愛らしい曲調が特徴的な本作の人気は様々な反響を呼び、作品内に登場する猫ぼうしを被った巡音ルカは「トエト」という独立したキャラクターとして認知されクリプトン公式の派生キャラになったり、北海道の沿岸バスが「夢海鳥」というバスのイメージソングとして採用されたりした。
 鏡音リンの可能性を世に知らしめた「ココロ」、巡音ルカの可能性を切り開いた「トエト」、そのどちらもがトラボルタP氏の作品であるというのは氏の確かな慧眼を感じる。




初音ミクオリジナル曲 「from Y to Y」


2009/3/24

 愛の別離を切なく描いた伝説の作品。
 作者であるジミーサムP氏はこれ以降も様々な伝説的な作品を世に送り出しているのだが、その道程の足がかりになったと言える作品である。
 よく「バラードがヒットするのは難しい」と言われる中でここまで歴史に名を残すヒットとなったのは細やかな情景描写のある歌詞と寂しいながらも何処か優しさのようなものを感じる曲調が大きいのではないだろうか。
 この作品の「歌ってみた」動画も多数投稿された事もあり、その分野の発展にも貢献している。





鏡音リンオリジナル曲 「右肩の蝶」


2009/4/1

 鏡音リンが歌唱する作品の中で特に人気の高い伝説的な作品。
約1か月後に投稿された鏡音レンver.と共に今なお凄まじ人気を誇っており、最近でも某スマホ向けリズムゲームに登場する人気バンドによりカバーされている。
 ボーカロイドと親和性の高いテクノ系の楽曲で鏡音リン・レンの確かな持ち味を更に知らしめる事となった。
 こちらとレンver.は少し内容が違う上に両方を聴く事で分かる良さもあるので是非とも聴いてもらいたい。そういった違いから「歌ってみた」ジャンルでは一時期たくさんの『右肩の蝶』が聴く事が出来た。ボカロ界隈のみならず「歌ってみた」という界隈が賑わう一助となっていた。




「ロミオとシンデレラ」 オリジナル曲 vo.初音ミク


2009/4/6

 初音ミクとボカロの人気を語る上で欠かす事の出来ない伝説の作品。
 キーボードとギターの音が特徴的なロックに誰もが知っている童話をミックスし少し大人っぽい内容の歌詞を乗せた本作は、中高生などに絶大な支持を受け、ボカロを支持する層の基盤を形作る作品の一つとなった。
 また、『歌に形はないけれど』などのバラードで一躍名を馳せた作者・doriko(きりたんP)氏のイメージをガラリと変えるきっかけになった作品でもある。





【初音ミク】ハイセンスナンセンス【オリジナル曲】


2009/4/19

 園山モル氏により制作、投稿された色んな意味で伝説級の作品。
 ここで紹介している他の作品に比べるとやや知名度は低いかもしれないが、確実にボカロ文化が成長する上で欠かせない作品(いわゆる「電子ドラッグ系」と呼ばれるもの)のボカロ黎明期代表として選出させていただいた。作品の内容については「考えるな!感じろ!」的なものなので触れないが、こういった作品がしっかり評価されるという土壌が既にあったという事とその土壌をより成熟させていくにつれて必要となった作品である事の2点はボカロ文化の重要な要素である。
 なお作品を閲覧して夜中にトイレに行けなくなっても筆者は一切の責任を取りませんので、ご了承ください。





magnet【初音ミク・巡音ルカオリジナル】


2009/5/1

 投稿直後からボカロ界隈に一大ムーブメントを引き起こした伝説の作品。
 初音ミクと巡音ルカによるデュエット曲であり、美しいピアノの旋律に乗せ「許されざる愛」を歌った本作は2010年の「JOYSOUND年間カラオケランキング」にて4位「ボカロ部門」にて1位を獲得するなど数多くの栄光を手にした。
 人気歌い手同士がコラボした「歌ってみた」作品が多数投稿されただけでなく、鏡音レンによるカバー作品なども多数投稿された。




【初音ミク】ペテン師が笑う頃に【オリジナル曲】


2009/5/12

 これまた今までとやや雰囲気の異なったダークな作品。
 ジャンルとしては恐らくガレージロックであり、ボカロ界隈でこのジャンルが一定の評価を得られるきっかけを作った作品である。
 当時から流行しているポップス作品へのカウンター的要素も持ち合わせており、そこが同じく流行のポップスに馴染めなかった人々から支持を受けたのだと推察される。この辺りは60年代や70年代当時のロックンロール黎明期に近しいものを感じる。
 作者・梨本うい氏は、この作品で人気のボカロPとなって以降もソリッドで物悲しげなロックを創っている傍らでキャラクターCDプロジェクト『Clock over ORQUESTA(クロック・オーバー・オルケスタ)』にて声優・村瀬歩氏と金田朋子氏両名に楽曲提供をするなど積極的な音楽活動を行っている。




【初音ミクオリジナル曲】*ハロー、プラネット。【ドットPV】


2009/5/24

 ささくれP(sasakure.UK)氏によるボカロを代表する伝説の作品の一つ。
 この作品によりささくれP氏の知名度はうなぎ上りとなり、この作品を皮切りにチップチューン系のボカロ作品が一気に増えた
 高いストーリー性を持つ楽曲だけでなく、ドットで描かれた可愛らしいアニメMVが更に世界観を広げた結果、ボカロ作品全体の後押しになったのではないかと思う。
 ちなみに氏のボカロ作品のいくつかは『終末シリーズ』と銘打たれ、全て鑑賞する事でとんでもなく壮大な物語が浮き上がってくるのだが、その感動と衝撃は是非とも自身の目で確かめてほしい。




『巡音ルカ』紅一葉『オリジナル曲・PV付』


2009/5/26

 黒うさP氏の作品。楽曲の完成度もさることながらMVの完成度も当時としても圧倒的であった。
 元々この作品は作者である黒うさP氏が別サイトに投稿した作品のアレンジver.であり、巡音ルカより以前にも初音ミク歌唱ver.がニコニコ動画に投稿されている。そしてこの2年後、黒うさP氏はとある和風ボカロ作品を投稿し世界を震撼させる事となる。





初音ミク オリジナル曲 「とおせんぼ」


2009/6/16

 星の数ほど存在するボカロ作品の頂点の一つである。
 作者は2019年に急逝したミュージシャン・wowaka氏本作は氏にとって初の「VOC@LOID殿堂入り作品」であり氏が一躍脚光を浴びる事となったもの。ニコニコ動画的に言うと伝説の始まりである。尤も、この作品は氏の投稿したボカロ作品の中で4つ目であるため真に伝説の始まりとは言えないかもしれないが、それでもこの作品は紛れもなくwowakaというミュージシャンを世間に知らしめるきっかけとなった事は間違いないだろう。





メグッポイド「メグメグ☆ファイアーエンドレスナイト」【オリジナル】


2009/6/26

この作品の投稿日に発売が開始したボーカロイド「メグッポイド」の初殿堂入り作品である。
 作者はもちろんsamfree氏。投稿後わずか2日で殿堂入りという凄まじいスピード感は氏ならではのものだろう。
 氏の制作する作品の例に洩れずこの作品も「メグッポイド」という新たなボーカロイドの可能性や性能が遺憾なく発揮された素晴らしい完成度を誇っている。
 この作品で「メグッポイド」の知名度が一気に上昇した事により、発売後早い段階で「メグッポイド」を使用した作品が沢山登場する事になる。





【巡音ルカ】Just Be Friends【オリジナルPV】


2009/7/4

 日英バイリンガルの特性と大人っぽい声質という巡音ルカの2つの利点を最大限に活かした作品。「巡音ルカと言えばこれ!」な人も多いのではないだろうか。
 投稿後、早い段階で「歌ってみた」動画が投稿された事も手伝って、2009年を代表するボカロ作品の一つとなった。





【オリジナル曲PV】結ンデ開イテ羅刹ト骸【初音ミク】


2009/7/6

 現代日本の音楽シーンを代表するトップアーティスト・米津玄師ことハチ氏の作品。
ハチ氏初のミリオン再生を達成した作品であり、今思えば氏の作品の方向性を決定づけた作品でもあるのではないかと考える。
 楽曲、MVなどを当時10代だった氏が手掛けていると考えるとこの時点で末恐ろしい才能を感じる。また氏の初期作品に見られるホラー的な要素が全編に亘り展開されている為、怖いものが本当に苦手な人はお昼に人が複数居る明るい場所で鑑賞する事をオススメする。iTunesなどで楽曲データのみを購入して鑑賞するのもいいだろうが、やはりボカロ文化にとってMVは欠かせない重要な要素なので出来れば動画を鑑賞してほしい。





【めぐっぽいどオリジナル曲】ぼくらの16bit戦争【PV】


2009/7/12

 ささくれP氏による「メグッポイド」を使用した作品。
 メグッポイド初期作品の中でも特に人気が高いものの一つである。
 80年代のプログレッシブロックを想起させるこの作品によりメグッポイドが歌えるジャンルの可能性が更に広まったのではないかと思う。
 また、ささくれP氏の持つ世界観を表現するのに重要なMVも非常にレベルが高くこのMVなくしては語れない作品となっている。





DECO*27 - 愛言葉 feat. 初音ミク


2009/7/21

 今なおボカロPとして音楽業界の第一線で活躍するレジェンドボカロP・DECO*27氏の作品。
 氏にとって通算8作目となる本作は、氏からみんなへの感謝を歌ったものであり随所に自身の作品の要素が散りばめられている。
 また、氏が大きく注目される事になったきっかけの一つであり、この辺りをきっかけに更に飛躍していく事となる。
 余談ではあるがこの『愛言葉』、DECO*27氏の活動の節目ごとに氏からの感謝の気持ちとして今まで『愛言葉Ⅱ』、『愛言葉Ⅲ』という続編が投稿されている。





【鏡音リン】 天樂 【オリジナル】


2009/8/12

 鏡音リンによる和ロック作品として一世を風靡した作品である。
 作者・ゆうゆP氏はボカロ界隈に影響を与えた作品をいくつも投稿しており、特にロックテイストの作品やポップスなどで実績を残している。
 この『天樂』は後にロックバンドSOPHIAのボーカル・松岡充氏が「歌ってみた」動画を投稿した事がきっかけで松岡氏が投稿するまでの期間に参入してきた新規リスナーたちから再び注目される事となった。





DECO*27 - 二息歩行 feat. 初音ミク


2009/8/28
 DECO*27氏によるロックナンバー。
 早速氏の別作品が登場してきたが、もう既に氏の幅広い音楽センスが理解できる事だろう。凄まじいセンスを感じられる。
 この作品は約1週間で殿堂入りを果たし、DECO*27氏の作品イメージを決定づけたものと言って差し支えないと思う。だが彼はここで自らについたイメージを何度も自らの手で塗り替えていけるほどの引き出しを持っていたのだった。





初音ミク オリジナル曲 「裏表ラバーズ」


2009/8/30

 『とおせんぼ』により一躍脚光を浴びたwowaka氏が繰り出した次なる一撃。
 本作によりwowaka氏は更なる脚光と注目を集める事になる。
 この作品からwowaka氏を知ったという人もかなり多く、また氏特有の独特な音色からボカロを聴き始めた人もいる。間違いなくボカロの歴史の中で重要な作品である。




【鏡音リン】炉心融解【オリジナル】


同日に投稿された伝説の作品。

 『裏表ラバーズ』と『炉心融解』が同日に投稿されていたとは知らなかったので知った時は驚いた。
 普通に生活していればまず耳にする事のなかった「炉心融解」や「アレグロ・アジテード」など独特の語彙で彩られた本作だが、歌詞の内容を噛み砕いて考えれば特に専門的な知識が必要になるような内容ではない。
この作品が後のボカロユーザーたちに与えた影響は計り知れない。





【鏡音レン】パラジクロロベンゼン【ガルナ/オワタP】


2009/9/19

ガルナ(オワタP)氏による作品。
 フラメンコ調のメロディーに乗せて歌われるのは思春期特有の鬱屈とした感情であり、それと歌詞に何度も登場する「パラジクロロベンゼン」」の関係などについては調べると考察記事が大量に出てくるのでそちらを参照するか、ご自身で考えてみていただきたい。
 この作品と直上で紹介している『炉心融解』はこの時代のボカロ文化の一端を担っている作品である事は間違いない。また両作品ともボカロ文化の裾野を広げるのにとても意味のあるものだと考える。




【初音ミク】1925【オリジナル曲】


2009/10/5

 往年のフォークソングを思わせる曲調とタイトルや画像など大正~昭和前期の雰囲気により、どことなくレトロ感のある作品。
 ここまでしばらくの間、いわゆる「ボカロっぽい」作品が多かったのに対して高速でも高音でも考えないと意味を分かりかねる歌詞などもなく、とにかく色んな意味で郷愁を誘う作品である。
 この作品は「歌ってみた」でも人気が高く、そちら側の文化の成長にも一役買っている作品である。





【オリジナル曲PV】Mrs.Pumpkinの滑稽な夢【初音ミク】


2009/10/12

 ハチ氏によるハロウィンソングである。
 先ほど紹介した『結ンデ開イテ羅刹と骸』などに代表される初期ハチ作品のホラー感や不気味感を醸し出しているうちの一つであり、毎年ハロウィンの時期になると誰かが「歌ってみた」作品を投稿している。
 ただ怖いだけでなくタイトル通りの滑稽さが感じ取れるからキャッチーなハロウィンソングとして今なお人気を博しているのだろう。




【初音ミク】 鎖の少女 【オリジナル】


2009/10/26

のぼる↑P氏による作品。
 この作品に限った事ではないが、ボカロ文化だけではなく当時流行していたアニソンやゲーソンを類推する事が出来る要素の一つである。そういう意味で非常に重要な作品であると言える。
 また投稿後わずか4日で殿堂入りを果たすなど、この作品が残した功績は多いと言える。





【オリジナル曲PV】clock lock works【初音ミク】


2009/11/27

ハチ氏の作品。前作から約1か月後に投稿された本作は当時「描いてみた」ジャンルで人気を博していたコンビ・タスク氏うつした氏とハチ氏のコラボが実現したものであり、当時としてはかなり珍しい全編フルアニメーションで制作されたMVは今観ても凄まじい完成度を誇っている。
 また本作はハチ氏の初期作品の中では珍しくダークな部分が身を潜めている為か、ボカロを聴き始めて間もない人が「えっ!?この曲の作者って同一人物なの!?」とやや混乱する事もあった。
 余談ではあるが、この作品をきっかけに縁が出来たハチ氏とタスク氏、うつした氏はこれ以降も共同で作品を世に送り出していく事となる。




【2009年評】


 年間を通して様々なボカロPたちが頭角を現し始めた年であり、「歌ってみた」など関連する文化の発展が著しかった年でもある。

 その中でもやはり一番大きいのはささくれP(sasakure.UK)氏、ハチ氏、wowaka氏、DECO*27氏の登場である。厳密に言うとデビュー作が大きく取り上げられた訳ではないが、ボカロに関してだけでいえばほぼ新人も同然である。
 そんな彼らが自身の持つ才能を発揮してくれたおかげで、ボカロ文化は様々な発展を見せていく事となっていく。

 感覚的にはこの年までがボカロ黎明期であり、続く2010年以降から数年は第一次ボカロ高度成長期であるという風に考えている。
 ここまでの短い期間で「ボーカロイドを使用した文化」は目覚ましい発展を見せてきた。しかしそれは誰も分からないから故の試行錯誤の連鎖により起こった事象でもある。
 しかし、2010年以降では少し違ってくる。そこまでで培われた経験や成功する為の道筋などが徐々に確立されてくるのだ。そしてここまでのボカロ黎明期に広げられた裾野を今まで以上の速度で広げる形でボカロ文化は発展を遂げていく事となる。

 完全に余談ではあるが、「大人の事情」により本来2009年のボカロ史に入れるべきである作品を2つほど除外している。この記事が投稿されているプラットフォーム『note』はその特性上、インターネットに繋がる端末さえあれば小中学生でも利用する事が可能な為、出来る限り直接的なR-18的表現を含むものは除外せざるを得ない。そういう訳で、申し訳ないがSOPHIAのボーカル・松岡充氏がニコニコ超パーティーⅡで『天樂』と共に披露したあの作品デッドボールP氏による未だにMADが制作されているのを見かけるあの作品などは除外させてもらっている。本当に、申し訳ない。



「超主観的ボカロ史 2010年編」に続く

↓次記事へのリンクはこちら↓

https://note.com/kazuneoftiger/n/ncc1f416cc31d


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