超主観的ボカロ史 電脳世界を彩る音楽たち 2012年編

 こんがお!

 どうも、苗輪和音です!

 今回もやや長いので早速本題に入らせていただきたいと思います!



 では、どうぞ!!!!!



超主観的ボカロ史 2012年編


【VY2・VY1V3】とても痛い痛がりたい【オリジナル曲】

2012/1/10

 EZFG氏の作品。
 ヤマハ自らが企画、開発した女声ボーカロイド「VY1V3」男声ボーカロイド「VY2」が使用された作品で、投稿された翌日にVOCALOIDカテゴリ1位を獲得した。これは「VY2」オリジナルとしては初、「VY1」オリジナルとしては氏の前作にして2011年の顔ともなった作品『サイバーサンダーサイダー』以来となる快挙である。
 この作品を皮切りに2012年は始まっていく。





【ボカロ8人】Bad ∞ End ∞ Night【オリジナル】

2012/1/15

 2009年頃から活動を開始したひとしずくP氏とやま△氏のコラボ作品。
 初音ミク鏡音リン鏡音レン巡音ルカKAITOMEIKOGUMI神威がくぽの計8つのボーカロイドを使用したホラーミステリテイストな作品で、投稿からわずか2日で殿堂入りを果たした。
 この作品によりひとしずくP氏とやま△氏の両名は一気にスターダムを昇り詰める事になる。
 また、この作品は全編に亘ってホラーの雰囲気を持たせつつも楽曲の根底にジャジーで妖しい雰囲気を漂わせる事でホラーが苦手なリスナーでもミステリ的に楽しむ事が出来るようになっており、そこに作者の妙を感じられる。
 だいたいの人間はよく分からないものを怖がるが、それが理解できるようになる糸口を見つけると怖さは少し軽減されるのだ。まあ知る事が命取りになる場合もあるので一概には言えないのだが。





【初音ミク(40㍍)】 ドレミファロンド 【オリジナルPV】

2012/1/17

 40mP氏の作品。
 氏の作風は時期によって少しずつ違っているのだが、その中でもこの作品はそれまでの作品よりもかなり子ども向けな雰囲気を持つ作品となっている。
 もちろん「子ども向け」と言っても悪い意味ではなく、NHKの『みんなのうた』のような子どもが聴いても大人が聴いても楽しめるという意味である。『忍たま乱太郎』や『おじゃる丸』が大人になって観ても面白いのと同じである。
 この作品がきっかけで40mP氏は様々なボカロPたちの中でも特にそういった「親子で楽しめる」という方面に強い作家となっていく。





【GUMI】恋愛勇者【オリジナル】

2012/1/20

 投稿から一年と経たずに100万再生を記録した、Last Note.氏の名を広く世に轟かせた作品。
 歌詞の内容に共感出来る人はかなり限られる作品ではあると思うが、楽曲自体はノリが良いハイテンポ爽やかロックナンバーなのでツボにハマると中々抜け出せない作品であると個人的に思う。
 しかしそれは言い換えると「歌詞が自分にたくさんハマるかどうかを重視しすぎず、曲が良いから聴いている」リスナーが多いという事であり、どちらかと言うと洋楽的な聴かれ方をしているのではないかと思う。
 最近よく議論されている「リスナーが歌詞に求める比重」についての答えに辿り着くのには『ボカロ文化』を辿るのが手っ取り早いのではないだろうか。





【IA】想像フォレスト【オリジナルPV】

2012/2/1

 じん(自然の敵P)氏の作品。
 氏の展開するマルチメディアプロジェクト『カゲロウプロジェクト』に属する作品である為、氏独自の設定や世界観が根底に存在するが、単一の作品として起承転結がしっかりと形成されているので設定などを知らない人でも楽しめる内容となっている。
 これまでの氏の作品とは違い、かなり爽やかで初夏を感じさせるポップスであり、氏の作風の幅を早い段階から感じられる。ただ、楽曲中にしっかりと氏の代名詞とも言えるシンセサイザーの音が組み込まれ、プロデューサタグ的な機能を果たしている為「氏の作品だと気付かなかった」という事態があまり起きていないように感じる。デビューから一年ほどのこの段階で自分の代名詞的サウンドを持てている事にはかなり驚かされる。





【GUMI】 イカサマライフゲイム 【オリジナル・PV付】

2012/2/8

 kemu氏及びkemu voxxの作品。
 これまでの『人生リセットボタン』や『インビジブル』などと世界観を共にする作品であり、それまでの作品以上にバッドエンドである事が強調されている作品でもある。
 kemu氏の代名詞とも言える独特のサウンドと大サビ前パートのシンフォニックでメロディアスな部分が完全に確立されたのもこの作品だと思われる。
 じん(自然の敵P)氏と同様にデビューから一年足らずで自身の武器をしっかり認識できており且つ存分に振るっているというのはミュージシャンとしてかなりの強みである。
 様々な音楽が溢れかえって「ながら聴き」が当たり前の今の時代、自分の好きな曲が誰の曲なのか知らないという人も多いそうだが、じん氏やkemu氏のような作品に共通するサウンドを使う事によってそれがフックとなりその作家の作品を芋づる式に聴いていくという流れを作る事が出来るというのはかなり強い。




【ルカ ミク グミ】一心不乱【オリジナル】

2012/3/3

 梅とら氏の作品。
 今や押しも押されもせぬ不動の人気を誇る氏を一気に押し上げた起爆剤となった作品。
 非常にクラブ映えしそうなサウンドや歌唱パートとラップパートの入り乱れる様が魅力のダンスナンバー。どちらかと言うとK-POP的な構成に近い気がする。
 この時期辺りから、あまり日の目を見る事が少ないボカロのダンスミュージックに注目が集まる事になる。





【初音ミク+IA】コノハの世界事情【オリジナルPV】

2012/3/30

 じん(自然の敵P)氏の作品。
 氏が展開する『カゲロウプロジェクト』が正式に発表され、今まで氏が投稿してきた各作品が一つの世界観を共有しているという事が明かされた作品でもある。
 氏の代名詞であるシンセサイザーギターとドラムを中心に据えたロックサウンドで形作られたハイテンポロックナンバーである本作は、初音ミクと当時発売されて間もない『IA -ARIA ON THE PLANETES-』が使用されており、今までにあまり聴いた事のない歌声ですらピッタリとハマるように作られている。
 この作品があるかどうかは即ち『カゲロウプロジェクト』があったかどうかにかかわってくるので、ボカロ史的には外せない作品であると考える。




【IA】六兆年と一夜物語【オリジナル曲・PV付】

2012/4/11

 kemu氏及びkemu voxxの作品。
 氏の作品の中でも特に人気の高い作品であり、『太鼓の達人』や『SOUND VOLTEX』など非常に様々な音楽ゲームに収録されている作品の為、「ボカロにあまり興味はないけどこれは知っている」という人が多い
 氏特有のハイテンポロックサウンド、MVの流れなど様々な要素の完成度が非常に高いものとなった本作は同じ土俵で鎬を削るクリエイターたちに多大な影響を与えただろうと推察できる。




【GUMI】セツナトリップ【オリジナル】

2012/5/3

 Last Note.氏の作品。
 氏の作品の中でも特に人気の高い作品であり、持ち味である爽快なロックサウンドが特徴である。
 またサウンドに劣らずMVも凝られており、2012年のトレンドに則したようなものとなっている。
 『恋愛勇者』とは違い歌詞に共感しやすい作品である事などから氏の「時代の流れを読む力」は非常に高いものだという事が伺える。
 音楽の流行がガラッと変化しない限りはいつになっても受け入れられる普遍性を持った作品であるので、今でも人気は高い。




【GUMI】マダラカルト【オリジナル曲】

2012/5/6

 トーマ氏の作品。
 氏特有の怪しげで軽快なロックと凄まじい語彙からなる本作は、氏自身の人気も手伝ってかなり早い段階から人気を得た作品である。
 また一見脈絡のない、ともすれば無意味にも感じられる歌詞だが、動画内にそれを読み解く為の登場人物や物語の設定がビッシリ書いてあるシーンが存在するので深い意味を自身で考察したい方はこちらからどうぞ。
 この時期に活躍した他のボカロPたちと同様に氏も「トーマ節」と呼ばれる独自のサウンドを持っている
 この時期はそういった自身の作りたいものと自身の武器が嚙み合った作品やクリエイターが萌芽するタイミングだったのかもしれない。
 そしてそれは2011年以前に活躍しメジャーシーンに進出したボカロPたちが自分の武器を早々に見つけ出していったのを見ていたからなのかもしれない。そう考えると歴史は連綿と続いている事を実感できる。





【GUMI】 しわ 【オリジナル!】

2012/5/7

 buzzG氏の作品。
 いわゆる「ボカロっぽい」と言われる作品が人気を博していた時期に「愛」をストレートに謳った作品であり、氏の代表作の一つとなった。
 その内容からしばしば「泣ける歌」や「涙腺注意」と言われる事の多い本作だが、同じような言葉で形容される作品に切ないものが多いのに対し、本作はハッピーエンドで泣かせにくるので強い。
 「愛」という普遍的なテーマはいつの時代にも受け入れられ、支持されるのであるという事を感じられる作品でもある。




【IA】孤独ノ隠レンボ【終焉ノ栞プロジェクト】

2012/5/12

 150P氏の作品。
 氏が主体となり一世を風靡した『終焉ノ栞プロジェクト』の始まりの作品。
 都市伝説がモチーフという特徴を持つこのプロジェクトはそのオカルティズムでロックな雰囲気で中高生の支持を一気に得、小説や漫画などのメディアミックス展開もしていく事になった。
 当時のボカロ界隈のトレンドを上手く捉えた作品であると思う。




【初音ミク】こちら、幸福安心委員会です。【オリジナル】

2012/6/15

うたたP氏の作品であり氏の名前を一気に広める事となった作品。
 イントロ~Aメロのロックバラード調な雰囲気から一転し、Bメロからトランステクノ的な曲調に変化しディストピアを想起させる凄まじくブラックな歌詞がリスナーの度肝を抜き、一気にヒットした。
 このインパクトのある歌詞を書いたのは小説家の鳥居羊氏であり、氏曰くこの作品の歌詞はTRPGの金字塔『パラノイア』をリスペクトして書かれたものであるそう。
 この作品以降うたたP氏と鳥居羊氏は共同で『幸福シリーズ』と呼ばれるボカロ作品群を創っていく事となる。
 また、鳥居羊氏はそれらの作品をそれぞれ小説として執筆し出版もしているので気になる人は調べてみてもいいだろう。




ありふれたせかいせいふく / 初音ミク

2012/6/18

 ピノキオピー氏の作品。
 元から氏の作風として「エレクトロニックポップ×シニカル」というものがあったが、この作品はよりその面が大きく出てきたもの且つ大きく評価された作品だと思う。
 美しさの中に恐ろしさすら感じてしまうMVもまたこの作品の魅力であり、他にはないほど楽曲と絶妙にマッチしている。
 そういったMVの進化の軌跡としても必要な作品なのではないだろうか。




【GUMI】 地球最後の告白を 【オリジナル・PV付】

2012/6/26

 kemu氏及びkemu voxxの作品。
 氏の作品としてはかなり珍しく爽やかなラブソングなのだが、その世界観や歌詞中に登場する語句から氏のこれまでの作品とリンクしている作品である事が分かる。
 また全体的に壮大な雰囲気を持つこの作品だからこそ大サビ前のシンフォニックでメロディアスなパートがとても綺麗に映えるのである。
 ハイテンポなハードロック路線だった氏の新たな挑戦であるとも取れるこの作品は今でも根強い人気を誇っている。





【初音ミク】 古書屋敷殺人事件 【女学生探偵シリーズ】

2012/7/3

 ボカロPとしてだけでなく小説家としても活動するてにをは氏の作品。
 和風ポップロックな曲調に豊富な語彙から繰り出される様々な言葉遊び、探偵物のミステリ作品である事などが相まって、氏の作品の中でも人気の高い作品となっている。
 当時のボカロ界隈のトレンドや邦ロックのトレンドに忠実であり、この作品を含めた当時の作品数作を知ればどういった音楽が流行っていたのかがかなり分かりやすくなる。





【IA】チルドレンレコード【オリジナルPV】

2012/7/21

 じん(自然の敵P)氏の作品。
 また氏の展開する『カゲロウプロジェクト』のオープニングという立ち位置の作品であるので、プロジェクトに登場するキャラクターがほぼ総出演というMVや氏がここまでに投稿してきた作品の中でも特にアッパーな曲調となっている。
 オープニングらしく歌詞には同プロジェクトに属する作品たちを想起させる語句が使用されており、ファンであればより楽しめるものとなっている。




sasakure.UK×DECO*27 - 39 feat. 初音ミク

2012/7/27

 初音ミク生誕5周年を記念して制作された作品
 楽曲をsasakure.UK氏、歌詞をDECO*27氏が担当、編曲を両氏が行ったという伝説同士の共作である。これだけで充分に豪華なのだが、楽曲の演奏陣も凄まじく豪華であり、ベース・すこっぷ氏、キーボード・40mP氏など名だたるメンツが参加している。
 その作品内容も素晴らしく、ボーカロイド、ひいては初音ミクに触れてきた時間が長ければ長いほど感じ入るものがある。
 あまり語りすぎるとチープになってしまうので、気になった方はご自身で聴いてみるといいだろう。
 あなたが初音ミクに触れていた時間が長ければ長いほど、きっとこの作品が好きになるはずだ。





【GUMI・鏡音リン】 いーあるふぁんくらぶ 【オリジナルPV】

2012/8/15

 みきとP氏の作品。
 今や押しも押されもせぬ凄まじい人気を誇る氏の初ミリオン作品が本作であり氏の名前をより多くのリスナーに届ける事になったきっかけでもある。
 本作以前から人気Pではあったのだが、この作品で見せた独特の歌詞や非常にノリの良いアイドルソング的な曲調が人気を博した理由ではないかと考えられる。特に開始早々『神戸中央区元町駅前』という固有名詞を使った事も人気が出た理由なのではないだろうか。いきなり地名で始まる事で知っている人は「えっ!?なんで!?」となり知らない人は「えっ!?どこ!?」となる。どちらにせよ非常に強いフックになっているのだ。
 ちなみにその『神戸中央区元町駅前』近くには『神戸南京町』というチャイナタウンがあり、美味しい肉まんが食べられるので周辺に立ち寄った時には覗いてみるのもいいだろう、と知り合いが言っていたので一応載せておく。




【GUMI】Masked bitcH【オリジナル】

2012/8/22

 2021年の音楽シーンの最前線に立っていると言っても過言ではないクリエイター・ギガ氏の作品。
 この作品が投稿される以前から活躍していたが、この作品をきっかけにより注目を集める事になる。
 筆者はギガ氏の作品は大別して「アダルトな雰囲気漂うスタイリッシュな作品」「ハイテンポハイテンションハイトーンの3Hが揃った作品」2つに分けられると思っており、この作品は前者にカテゴライズされるものであるが、後者のような作品から知ったリスナーはその雰囲気の違いに少し驚かされる事もあるのかもしれない。
 だが、どちらもギガ氏である事に変わりはないので自分の好きな作品を見つけるのも面白いだろう。





【Lily】WAVE【オリジナル曲】

2012/9/22

 niki氏の作品。
 株式会社インターネット製作のボーカロイド・Lilyが使用された本作は、氏の持つ高い音楽センスや調教技術とLilyの持つ声が見事にマッチした作品となっている。
 様々なボカロ作品の中でも特にハウスミュージック的なスタイリッシュさが強く、ボカロ界隈で同じようなジャンルが発展していく為の基点となった作品であるとも言えるのではないだろうか。




【初音ミク】みんなみくみくにしてあげる♪【してやんよ】

2012/10/8

 あの伝説の作品『みくみくにしてあげる♪』のロングバージョン。
 総勢235名の絵師により描かれた初音ミクがアニメーション的に動いたり初音ミクの様々なMMDモデルが踊ったり3D表現されたニコニコ動画のコメント弾幕が流れて行ったりこれまでに投稿された数々のボカロ作品のタイトルが一挙に登場したりなどいわゆる「思い出ボム」的な演出が多量に含まれている。
 つまり一種の「初音ミクの集大成」的意味合いの作品なのである。
 また「メモリアル作品」としての意味も強く、この作品がある事でこれまでとここからのボカロを知るきっかけにもなるのだ。
 ボカロ史において非常に大きな意義を持つ作品である。





【初音ミク&GUMI】脳漿炸裂ガール【オリジナル】

2012/10/19

 れるりり氏の作品。
 これまで氏が投稿してきた作品とは雰囲気が打って変わり、スラップベースがかなり強く効いたジャズポップス的なものになっている。
 一度聴けば耳から離れない強烈なサビ凄まじいほどの変拍子リスナーの心を鷲掴みにし、投稿からわずか3日で殿堂入りを果たした。それでもなお勢いは収まらず、本記事執筆現在、公式YouTubeとニコニコ動画の再生回数を合わせるとなんと6000万回以上となっている。
 またこの作品は、大ヒットしたボカロ作品の例に漏れず小説化や漫画化、実写映画化などのマルチメディア展開もされている。
 なおこの作品がハイテンポで早口なのは「(当時)若い世代の間で流行っていたものがそういった音楽だったから」という事だそうで、つまりそれは「これを聴けば当時のトレンドが分かる」という作品になっているという事でもある。
 本作を構成する様々な要素を鑑みても、ある意味「一番ボカロらしい」作品だと言えるのではないだろうか。




【ルカ ミク グミ IA リン】威風堂々【オリジナル】

2012/10/29

 梅とら氏の作品。
 常に進化し続ける氏のサウンドを聴く事が出来る作品であり、当時のJ-POPのトレンドを感じる作品でもある。
 氏の作品の中でも特に高い人気を誇る作品であり、今も「歌ってみた」作品が多数投稿されている。ただ歌詞の内容など様々な面で歌いこなすのがかなり難しい作品である事は間違いないのだが、そんな作品だからこそ人は魅了されるのだろう。
 梅とら氏を筆頭にniki氏、ギガ氏たちが新たなボカロシーンを切り拓いていった事を象徴する作品ではないだろうか。





【初音ミク】てんしょう しょうてんしょう【オリジナル曲】

2012/11/8

 きくお氏の作品。
 サウンドクリエイターとして活躍する氏の作品であり、様々な技巧が凝らされた楽曲は流石プロだと言わざるを得ない。
 ボカロシーンが新しい段階に進んでいくこの時期にこの作品が登場したのは凄く納得がいくし、プロがいるジャンルは安定感が段違いに上昇するのでこの時点で変遷は成功していると言っても過言ではないのかもしれない。
 完全に余談なのだが、誰もいない家で独りこの作品を鑑賞しながらこの文章を書いてたらいきなり雷雨になった上近くに雷が落ちたのでちょっとビビった。余談終了。





【初音ミク】「独りんぼエンヴィー」【オリジナル】

2012/11/29

 電ポルP氏の作品。
 落ち着いたロックな曲調と高い調教技術が魅力的な作品で、投稿されると1週間と経たないうちに殿堂入りを達成し、名実共に氏を象徴する作品となった。
 また当時流行していた高音を連発するような作品ではない為か、「歌ってみた」ジャンルでも人気を博し翌年には2013年内にニコニコ動画で最も多く歌われた作品となった。
 『脳漿炸裂ガール』が象徴するような作品が市場を席巻する中でこういった作品もしっかり評価されるというのはとても健全であると言えるのではないだろうか。




【GUMI】放課後ストライド【オリジナル】

2012/12/1

 Last Note.氏の作品。
 氏が創作した『ミカグラ学園組曲』という共通の世界観を基にした作品群の始まりの作品である。
 氏が得意とするノリの良いアップテンポな爽やかロックナンバーであり『ミカグラ学園組曲』の主人公のキャラクターソング的な側面も持つ。
 本作を基点とした『ミカグラ学園組曲』はテレビアニメや漫画など様々なメディア展開を行ってボカロの発展の礎となった。





【鏡音レン様】ギガンティックO.T.N【オリジナル】

2012/12/8

 ギガ氏の作品。
 歌詞の内容はすがすがしいほど電波ソングであるが、楽曲は流石ギガ氏と言うべき完成度である。
 ダブステップ風なサウンドでブレイクもしっかりあるのでダンスミュージックとしてクラブなどで確実に映えるサウンドに仕上がっている為か、「踊ってみた」ジャンルでの人気も高く一時期は様々な「踊ってみた」作品が投稿されていた。
 『脳漿炸裂ガール』などとはまた違う方向性でこの時代を象徴する作品なのではないだろうか。





【初音ミク】オレンジ【オリジナル曲】

2012/12/20

 トーマ氏の作品。
 氏の作品の中ではかなり珍しいバラード調の作品で、氏の引き出しの多さが伺える。
 しかし作品の様々な箇所にトーマ氏ならではのギターであったり転調であったりなどが組み込まれている為、「誰が作ったのか?」という部分がかなり分かりやすい。
 本作に限った話ではないが、特定のジャンルで人気を得たクリエイターが別のジャンルに挑戦し成功を収めるというのは本当に難しい事なのだが、このように自分の持ち味を理解して使い方を工夫する事で自分の限界の閾値を拡げられるのだ、という事を感じる。
そういった例の代表としてこの作品を挙げさせていただいた。





【2012年評】

 2012年は、前年に引き続きかなり激動だったと言える。

 じん(自然の敵P)氏やkemu氏、トーマ氏など、前年に活躍をし始めたクリエイターたちが作品制作を通してドンドン進化していくのと並行してLast Note.氏やみきとP氏、ひとしずくP氏とやま△氏などのクリエイターたちがこの年を皮切りに多くの注目を集める事になった。

 また梅とら氏、niki氏、ギガ氏などのクリエイターたちがそれまでのボカロ界隈であまり日の目を見る事のなかった「EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)」ジャンルを開拓していった事も非常に重要である。

 なぜこれまでEDMが日の目を見る事が少なかったのか、というのは恐らく「ボカロがオタクの文化だったから」だという事が考えられる。この年もそうなのだが、ボカロの基本的なメインストリーム「ロック」「ポップス」の2本であり、万人受けする「ポップス」は置いておくとして「ロック」というジャンルはオタク文化、ひいてはいわゆる「陰キャ」層に馴染んでいるのである。それは「ロック」の成り立ちなどでもよく言われている事なので割愛するが、なんにせよ「オタク」と「ロック」は相性が良いのだ。
 一方「EDM」は成り立ちからしていわゆる「陽キャ」である。超簡単に言うと80年代のナイトクラブに端を発したダンスに適した音楽が時代を経て進化したのが今のEDMである。そして日本でも一般的にジャンルとしての認知度がまだ低い。そして何より陰キャは陽キャが怖いので海外の音楽に明るくない限り馴染みがないのだ
 また似たジャンルとして「パラパラ」や「ユーロビート」があるが、割と似て非なる上、EDMと違い90年代に日本で爆発的な流行をした事や『名探偵コナン』『頭文字D』など様々なアニメで使用されたのでオタクにも馴染み深いのである。

 まあその辺りの詳しい考察などはまたの機会にするとして、とにかく梅とら氏を筆頭とした彼らが爆発的人気を博した事がきっかけでニコニコ動画では一定の人気を誇るようになった。

 そしてこの年を語る上で外せないのが、「ボカロ作品を基にしたマルチメディアプロジェクト」たちである。

 じん(自然の敵P)氏の『カゲロウプロジェクト』やkemu氏の『kemu voxx』、150P氏の『終焉ノ栞プロジェクト』、Last Note.氏の『ミカグラ学園組曲』、れるりり氏の『脳漿炸裂ガール』など実に多様な企画が発表されたこの2012年は、ボカロ史にとってどうしても外せない年なのである。

 それぞれのプロジェクトがどのような道を辿ったかはあまりにも膨大な情報をここに記さねばならないので割愛するが、黎明期といった感じであるとだけ言っておこうと思う。詳しい事はそれぞれ自分で調べられたし。

 だがここで重要なのは「成功したかどうか」という部分より「やった事に意義があったかどうか」という部分である。

 例え失敗していたとしてもそれが他のプロジェクトが成功する為の経験値になったのならそれは意義のある事だと思う。もちろんそれらのプロジェクトには多額の費用が支出されている『商業作品』なので失敗しても良い訳ではないという事は承知している。

 そしてその点で行くと上記の例に出したプロジェクトたちはおおよそ「意義があった」と言えるだろう。

 特にじん(自然の敵P)氏やkemu氏などはそれを通してミュージシャンとしての経験を積めたから現在に至るまで音楽活動が出来ている訳だ。

 そしてそこで培ったノウハウを次代のクリエイターたちが吸収して成長を遂げる。そういった一般的によく見られるサイクルがボカロ界隈でようやく完成したのがこの辺りの時代であると考える。

 そのサイクルが完成する以前のややアングラ気質だったボカロはこれ以降、発展に発展を重ねメジャー音楽シーンに行く為の道の一つとして確立される事となる。




 では、次回『超主観的ボカロ史 2013年編』でお会いしましょう。



 ここまで読んでいただいてありがとうございました!

 おつがお~!


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