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「数学」で求められる、正しく読む力

わたしは日頃、主に「国語」を教える仕事をしているのですが、昨日久しぶりに数学の問題を解いてみました。

とある高校入試の問題です。


解いてみて改めて思ったのは、「数学の問題を解くのにも、読解力が求められるな」ということ。

もちろん単純な計算問題は別として、問題文を「正しく読む力」がないと、状況を理解して式を立てることすらできません。

国語と数学、それぞれ「別物」のように扱われることが多いですが、意外と土台の部分では共有する部分も多いのではないでしょうか。そもそも、あらゆる教科学習が言語(日本語)をベースにしている以上、国語がすべての教科学習に関わってくるのは当然とも言えます。


さて、今まで関わってきた生徒たちを思い返してみると、上記の「国語(日本語)」の部分でつまずいた結果、数学/算数ができないという子たちはたくさんいました。

かつて小学生の算数クラスを受けもっていた頃、「これはもはや国語の領域の課題だな」と感じたことが何度もあります。たとえば、顕著にそれを実感したのは「割合」の単元を学習をしたときです。

・150円は50円の[?]倍です
・[?]円の3.3倍は2640円です
・72冊の25%は[?]冊です
・12人は20人の[?]%です

割合は「比べられる量 ÷ もとにする量」で基本的にもとめることができますが、どれが「比べられる量」または「もとにする量」なのかが判別できないと、式をつくることができません。

この場合は、助詞(〜の/は)に着目すれば判別できるのですが、どうやらこうした機能語(function word)を苦手とする子が多いようです。


昨日わたしが解いた高校入試の数学の問題でも、似たような部分を感じました。計算自体はとても簡単(小学生でも解けそう)でしたが、いかんせん文章が長いので、しっかり読み込まないと正しく立式できません。

これはもはや国語のテストだなと感じました。「こんなの簡単!」とさくさく解き進める子と、「問題の内容が頭に入らない……」と苦戦する子で二極化しそうですね。

こうした問題は、「単に計算や図形が得意というだけでなく、正確に文章を読み取る力を持った生徒がほしい」という学校側からのメッセージとも考えられます。


こうした「正しく読む力」を測定するためのテストが「RST(Reading Skill Test)」です。

リーディングスキルテストとは、「日本語のルールに従って教科書の文章を読むことができない生徒がいるのではないか」という仮説のもと、診断法や教授法の開発を目的に設計及び調査が進められている基礎的な「読む」力を測るテストです。

RSTホームページより

公式ホームページには、こんな問題が例題として紹介されています。

RSTホームページより

上記は知識を問う問題ではないので、問題文を正しく読むことができれば正解できるはずです。ところが、この問題を間違えてしまう生徒は決して少なくありません。

RSTホームページより

こちらの問題も同様です。問題文に書かれている通りの図を選ぶだけなのですが、なぜか生徒の反応は芳しくありません。

ホームページに他にもサンプル問題が紹介されているので、気になった方はぜひご覧になってみてください。中学生以上だったら、十分解くことができると思います。


もちろん学習につまずく原因は「読む力」だけではありません。いろいろな要因が絡み合っていることもあるので、一概に「これだ!」と決めつけることはできませんが、もしも「あれ?どうしてこの問題が解けないんだろう」と気になる部分があったときは、一つの可能性として探ってみるのも良さそうです。


ちなみに、RSTに関しては下記の書籍でさらにくわしく紹介されています。

新井紀子先生の前著『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の続編になりますが、この1冊単体でも読めるのでおすすめです。こちらの本には体験版のRSTが収録されているので、ぜひ解いてみてください。



みな

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