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SaaSのCS同士で話が噛み合わなくなる時


クラウドサーカスでマーケをやっている小木曽です。以前はカスタマーサクセスを5年くらいやっていて、ハイタッチの立ち上げからテックタッチの施策設計なんかもやってました。

弊社には10つもプロダクトもあるためそれぞれのCSと話すだけでも勉強になるのですが、その中でもKPIの置き方については似ている部分と違う部分があるなと感じる今日この頃です。

それはツールの特性が違うから当然なのですが、それに気づかずに会話をするといまいち噛み合わないと感じることが多々あります。特に1社のCSしか経験してこなかったり、幅広くケースを学んでこなかったりした場合に起きがちだったりします。

なので今日はSaaSのKPIの話を軸にサービスの構造理解の重要性について、ゆるゆると書いていきたいと思います。

私の担当していたCS領域について

私がメインで担当していた商材はCMSといって、企業のWebサイトを簡単に更新できるシステムです。CMSの中だとWordpressが法人個人問わず有名どころですが、私は有料の法人向けCMSである「BlueMonkey」という自社プロダクトのカスタマーサクセス(以下CS)を担当しておりました。

ただ、弊社にはMAツール「BowNow」や電子カタログ作成ツール「Actibook」といったWebサイトと親和性の高いプロダクトも存在し、複数導入いただいているお客様も多かったので、そういった場合はCMSに限らず包括的にCSの支援を行っていました。

そもそも弊社のクライアントはBtoB企業がほとんどで、Webサイトの運用目的で最も多かったのは有効案件数の最大化です。となると、支援内容もCMSの使い方というよりも、Webマーケティング全般についてのアドバイスであったり、リードジェンやナーチャの話がメインに来たりします。その全体設計と中長期な目標設定をもとに、Todoを整理していって、手段として「CMSをこう使っていきましょう」となるのです。

BowNowやActibookも導入いただいていたらもちろん合わせて支援しますが、他社のサービスを入れていたとしても、そのツールをどう使ってWebマーケティングを回していくのかを考えるのがCMSのCSであり、支援会社の仕事だと思っています。

CMSのKPIのあれこれ

前置きが長くなりましたが、KPIの話に入っていきます。

CMSのカスタマーサクセスのKPIとして置かれていたのは主に「顧客成果」「解約率」「アップセル(数も金額も)」「クロスセル(数も金額も)」などでした。正直、フェーズによっても変わってきましたし毎年のように入れ替わったり優先度も変わってきたのですが、基本的にはこれらの指標のうち重要度の高いものを毎年KPIとして設定し、ウォッチしていました。

中でも顧客成果はCSだけが頑張っても達成できないため、数年前からは全社指標として置いており、みんなで追えるような設計にしています。

これだけお話しすると一般的なCS指標なのですが、実はCMSの性質に関わる特徴的な部分もあります。それは、解約率への指標の重み付けが当初は低かった、と言う点です。

理由としてまず、CMSがインフラの性質を持つSaaSだったことが挙げられます。スイッチングコストが高いため、しっかりと顧客支援をしていれば解約率を意識せずともそれほど高い水準にならないのです。

逆に言えば、新規顧客獲得のコストが非常に高くなるのも特徴です。そうなると、既存の顧客からのアップセルやクロスセルの指標が非常に重要になります。

幸いWebマーケティングの支援をしっかりと行えば、顧客の成果が粗利や売り上げ貢献につながり、次の投資をしてもらいやすくなるため、クライアントと健全な関係を保ちながらLTVを最大化していくことができます。しっかりとお客様にも利益を出してもらいながら、弊社にも投資してもらうような関係性をいかに作っていけるか、がポイントになります。

現場の意識は指標や日頃の会話に引っ張られることもあるため、CMSのカスタマーサクセスでの重要指標は常に「顧客成果」と「クロスセル・アップセル」でした。とにかくこの2つ。(昔の話なので最近はまた事情が変わってます)

私自身も「お客様の役に立ったのか」「成果につながってるのか」と何年も言われ続けましたし、クロスセルやアップセルが少ないと「成果出してるなら次の投資をしてもらえるはず。それがないなら成果を実感できてないのでは?」といった会話を長いことしてきました。

そんな感じで試行錯誤していった結果、もともと私が1人でやっていたところから、2人3人と増えていき、コストセンターではなくプロフィットセンターとして7名程度のカスタマーサクセス組織となってきた経緯があります。

また、それ以外のところで特殊だったと思う点としてオンボーディングが挙げられます。SaaSの指標としてオンボーディング完了率を置いている会社も多いと思うのですが、CMSのCSではそこも追ってはいませんでした。

と言うのも、弊社の場合CMSの導入の際にはWebサイトのリニューアルが必須となるのですが、ディレクターがWebサイトをしっかり納品して操作講習を終えるところまでが、オンボーディングのような役割を担っていたからです。

Web制作に入る前に、営業から提案内容(目的、目標など)を引き継ぎ、それをもとにディレクターが制作を行う。運用前提のWeb構築を行うので、操作講習までを終えたらCSに引き継ぎを行いますが、その時にはすでに最低限の利用は開始している状態になっているのです。

そのため弊社では、予定通りの納品やCSのキックオフについては細かく見ていたものの、「オンボーディング率」という言葉は使っていませんでした。ですが、しっかりオンボーディングにあたる活動も行っていましたし、解約にならないように攻めの提案もしていたし、そもそも「カスタマーサクセス」という言葉すら使っていなかったけどCS的な活動はしていた、ということに気づきました。

以上が私がメインで担当してきたCMSのカスタマーサクセスの特徴です。

MAツールのCSとのギャップ

弊社ではMAツールの方が数年遅れてリリースされたため、カスタマーサクセス組織も後から立ち上がりました。

MAに関してはCMSとは違うので、一般的なSaaSの指標が適用されます。オンボーディング完了率や継続率、アップセルなど、おそらく少し調べれば出てくるような指標を置いて、日々試行錯誤しています。

CMSと違って、極端な話ツールを解約しても「外せば良いだけ」「別のツールと差し替えれば良いだけ」といったものなので(実際は色々と引き継ぐものがあって大変なこともありますが)、解約率もCMSよりは当然高くなります。またCMSと違って初期費用もかからないので、解約する際の心理的なハードルも低いでしょう。

いわゆるオンボーディングも重要で、CS自身がしっかりと案内を行わなければ顧客は利用を開始できないことが多々あります。そのフローを自動化するためにテックタッチの仕組みを取り入れたり、1人あたりのCSMのキャパシティを上げ一定品質の支援を行えるような平準化も行なっています。

そのため、指標もオンボーディング完了率や解約率、そして各設定フェーズがどのくらい進んでいるのか、どれだけ顧客が自走しているのかなどの優先度が高くなります。CMSのCSとは違い、まずはツールを使いこなして運用を軌道に乗せるところが、最優先の活動になるのです。

こういった背景の違いがあるため、CMSとMAのCSだけをそれぞれやってきたメンバーが、それぞれの経験だけをもとに会話をすると微妙に話が噛み合いません。悩んでいる部分も異なりますし、同じやり方で解決しようとするとうまくいかないことも多いのです。

これは弊社に限らず起こる話で、SaaSのカスタマーサクセスと一括りにしても大前提の部分が全く異なる構造になっていることがあります。おそらく弊社(というか私)の場合は先にCMSのカスタマーサクセスをやっていたこちらが特殊だったわけですが。

自社内でそれを感じることがあったのだから、きっと世の中でももっとこう言うことが起こっていくんだろうなと思いつつ、しっかりとビジネスの構造やサービスの性質を理解していこうと改めて思うのでした。当たり前の話だけれども、バイアスかからんようにせねば、ですね。

はい、今日はもう書き疲れたので以上です。また気が向いたら色々と書いていこうと思います。


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