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仕事で出会った人① 郵便のおじさん

私が東京のとあるビルで働いていた時、各部署に郵便物を届けるのを仕事をしているおじさんがいた。大きなビルだとこういう事も立派な仕事として、雇われている人がいる。

私はそのビルでは、下請けの下請け(のもっと下だったかもしれない笑)だったから当然、郵便物なんてこのビルには届かないんだけど、気づいたら話しかけてくるようになった。すると

おれは、シロガネーゼなんだ、だからこんど銀座で売ってる食パンを買ってきてあげるね。

最初信じてしまったのだが、後からほかの人に話したら、

どこがシロガネーゼなのよ、、確かあのおじさんは下町生まれで下町育ちでしょ!!

!!まだ20代だったから普通に信じた私…。

私はそのビルで10年ほど働いたが、そのおじさんの評判の悪いことわるいこと。

ああやって郵便物もないのに、いろんなフロアをウロウロして、話せる人を探して会話していくだけだから、気を付けて。

私は普段から冷たい人間と周りからも言われているし、自分でも人と距離を置くのだが、なぜかこの人のウザさがわからず、ほぼ毎日1回は会話するようになった。そして、浅草の「ペリカン」というお店の、おいしい食パンも何回か貰った。私が不在でもパンだけ席に置いてあった日もあった。

ある日、そのおじさんが「いいもの見せてやる」と言って持ってきたカードがあった。それは、おじさんの若かりし頃の免許証だった。

…笑いでおなかが痛かった。声を小さくするのが大変だった。首にスカーフ、ロン毛の写真だった。「昔はイケメンだったんですね」と私が、ホントかウソかわからない事を言うと「は、今もイケメンでしょ??」と言われ、あーこの人おじさんっていう会話をしてた覚えがある。

こんなくだらない会話に付き合う女子は、私だけなのか…
正直なところ、別に楽しくはなかったけど2、3日会話をしていないと「どうしたのかな?」と少し心配になった。

とある日、私の隣の席の上司に、そのおじさんが何か持ってきた。豆腐とキムチともやしである。そして、そのもやしには賞味期限が書かれていなかった(笑)上司は「これ、誰かいる?」と迷惑そう。どうやら女性にはそれなりのものをプレゼントするのだが、男性となると不要なものを押しつけたりするのか。それは人によっては迷惑かもなぁと思った。

私に接した時は、女性だから気を遣ってくれたのかもしれない。と思うと、人は出会った側面で全然違う人になるんだなと感じた。

当たり前のことのようだが、第一印象って大事だ。結局、この郵便おじさんとは距離感が変わらなかったせいか、私にとってはずっとこのままプラスな印象。周りの男性にはマイナスイメージ。

私が退職する寸前、還暦を迎えて仕事が変わった。…そうそのまま同じ職場だったがメール室でじっとしている仕事に変わったのだそうだ。
人と会う事が毎日の楽しみだったハズだから、今頃はどうしているのだろう。そういえば独身で、親の介護もしていた。

仕事以外で人生を謳歌している、と私は思っている。
元気かなぁ。

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