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謝辞 ACKNOWLEDGEMENTS

2020年9月20日、早稲田大学大学院基幹理工学研究科表現工学専攻を卒業いたしました。修士論文のテーマは「接ぎ木」と「針金かけ」といった園芸手法を、からくり機械を作れるようなものづくり技術に応用していくことでした(詳細は下記の記事)。

大学に入学してから6年間、同じ西早稲田キャンパスという学び舎で数えきれないほどの新たな知見を得て、思想を知り、何よりかけがえのない仲間や師に出逢えたとともに、これまでの人生においても家族や友人などに支えられてきたことに気づきました。はじめに、研究を最後までやり遂げられたのは所属研究室の橋田先生の的確な助言があってこそですし、先輩、同輩、後輩との交流によって豊かな学びの時間を体験させていただきました。

それだけでなく、学業と並行して継続してきた俳優業においても、素晴らしい同志たちと触れ合うことができました。正直、学部時代は長い間、自分を俳優と名乗っていいものかと不安に駆られていた時期もありました。その時に思い出すのは、大学1年の時に出演した『博多座めんたいぴりり』の千穐楽で女優の紺野美沙子さんからいただいたお言葉でした。「仕事はいつでもできるからな!がんばれよっ!」もうひとつ、自分はナタリーポートマンさんによる大学の卒業式でのスピーチを聞いて、学業に専念したっていいんだなと励まされました。しかし、自分だけで物思いにふけっていると、どうやら暗黒面に吸い込まれていくようでして…。そんな時、仕事で苦楽を共にした俳優やスタッフたちによって自分の芸能業に対するモチベーションを今日まで維持することができたのです。さらに、覚悟のないこんな自分であっても、変わらず応援してくださったファンの皆さま、事務所の皆さま、そして家族に感謝いたします。

おひとりおひとり、自分にとって不可欠な存在なのです。

ちなみに、冒頭で申した接ぎ木という園芸手法を知ったきっかけは家庭菜園を趣味で行っている祖父であり、本日、研究で使用した柑橘類の植物たちを祖父の家まで運んでいきました。およそ2年間、自分の研究のために植物を自分勝手に操作しておりましたが、アゲハが葉に留まり、イモムシが生まれ、齧られた葉のそばでまた新たな枝を伸ばすといったような風景を眺めておりました。

すると、ふと、研究室に所属した時からこの4年間、命について考察を強いられていたなあと思いました。より具体的に、他者の「死」を突きつけられました。過去に出演した『天才てれびくんMAX』において共演した後輩が亡くなり、母方の祖母が亡くなり、最近ではメディアを通じて尊敬する先輩方の訃報をよく聞きます。一方で、同輩が結婚をし、子を育み、家族が誕生する様子も目の当たりにしてきました。塾講師のバイトを18の時にしておりまして、その時に見ていた生徒が高校や大学に入る年だと考えると震えます。

目まぐるしく移ろいゆく現世の激流の中に佇んでいると、さて、自分はどっちに進もうと思っていたっけかと迷うこともしばしば。しかし、小学生の頃から役者業と学業を18年間両立して、ようやく分かってきたのは「自分はやはりカテゴリーを細分化して可能性を制限することがダイッキライ!!」なんだということでした。小さい頃から性格がねじ曲がっている天邪鬼ですので、みんなと違う方向へ道草をして、拾ってきたものを「どう?見たことないでしょ?」と見せたいんです。

自分・自己を一本の木の根幹と捉えるのならば、たくさん道草をして芸能や学問やアートといった世界に触れ、そこで手にした枝を持ち帰り、まさに接ぎ木をするように繋ぎ合わせたいと、そう思っています。

やがて、それぞれの枝が幹に活着し、千の色の葉をつかせた時、その一枚一枚を丁寧に磨きあげればと思います。

千葉一磨、そう名付けられたからには。

展示やイベントレポート、ブックレビューなどを通じて、アート・テクノロジーなど幅広いジャンルを扱った記事を書こうと思います。また、役者としても活動しているので劇場などでお声がけさせてください!