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怖いのはお化けだけじゃない

ペンが動かない。

頭は活発に働いているし、書きたいことだって思い浮かんでいるのだけれど、このペンを握る右手は一切動こうとしない。
テストのときに奏でられる「カリカリカリ」という気持ちいいあの音は、一体どこへ行ったというのだ。

だからこの時間が嫌いなんだ。


これは、俺のせいなのだろうか。
それとも、この俺を育ててきた両親のせいか。
はたまた、俺が生きるこの社会の空気のせいか。

いや、そんなことはどうでも良くて、もうこの右手は一切動くことは無いだろうな。
後ろを振り向かない限り。



はじめに

先日、大学のゼミの先生の付き添いでとある高校の授業に行ってきました。
「アシスタントを募集します」的なことをFacebookで言っていたので、すぐに予定を確認して、行きたいという旨のコメントをしました。

昨年は何度も高校生たちとコミュニケーションを取り合ったものですが、今年はそんなわけにもいきませんからね。
だから、2020年初です。

他に3人のゼミ生が集まり、僕たちは、先生がアート思考を基にしたプレゼンをした後の実際に高校生たちに自分の手を使って行ってもらうワークのファシリテーションを担当しました。


ワークの内容を簡単に説明します。
今回のワークは、一人でワークシートに書き込んでいく個人ワークでした。

まずは、➀10年後の未来を想像してワークシートに書いてもらいます。
それは、「消費税が20%になっている」とかではなくて、自分が望む未来や自分に深く関連するであろう未来の想像をいくつか書き出してもらいます。
ちなみに、高校生に例として見せるために僕たちも事前にやっていたですが、僕は「ポケモンとの共存のリアリティが上がる」ということを書きました。切実です。
今思ったのですが、消費税20%もだいぶ自分に深く関わりますね(笑)

次に、②自分の価値観(バリュー)を書き出してもらいます。
しかし、急に「自分が大切にしている価値観をシートに書いて」と高校生に言ったところで、ほとんどの高校生は何も書くことができません。
そのため、思いつきやすいように、「好きなこと」や「大切にしている言葉」「得意なこと」「友人にどう思われたいか」などの項目を準備し、それぞれ埋めていってもらいました。

次は、②でやったとこを念頭に置いて、➀で想像した未来で自分がどんな役割を果たしているのかをイメージしてもらいます。
これは全く制約がなく、自由に書いていいのですが、それは高校生からするととても難しいことなので、僕たち大学生が「どういう人と働いているだろう?」とか「自分のデスクの上には何が置いてあって、そのデスクから何が見える?」とか「社会がどうなってほしいと思いながら働いているだろう?」などの問いかけを繰り返すことで、高校生たちに自分が想像する未来(ビジョン)をよりクリアにしてもらいました。

そして最後に、
「なぜ、高校で勉強をしているの?」
「なぜ、大学の進学を考えているの?」
「なぜ、理系(文系)を選んだの?」
「大学で何を学び、どうなりたいと思っているの?」
という、これまで高校生たちが深くは考えてこなかったであろう問いかけをすることで、もう一度高校生たちに自分の進路選択と向き合うきっかけを与えます。

他にも授業の内容は盛りだくさんでしたが、今週のnoteのテーマはここから出てくるので説明はここまでとします。



背筋が凍った

なんと僕らが担当したクラスは全員男子で、まあ本当に色んな子がいました。
女子がいなかったから、この章のタイトルが「背筋が凍った」になったわけではないですよ?(⌒∇⌒)
別の大きな理由があります。


第一ボタンを開けて堂々と座っている子、物静かでオドオドした様子の子、ずっとニコニコして前を向いている子、まともに質問に答えてくれない子など、実に多様でした。
多様なことは素晴らしいことだとは思うのですが、ほとんどの子に共通することが一つだけあることに気づきました。
他の付き添いで来ていた大学生もすぐにそのことに気づいており、これが僕の背筋が凍った理由です。

勿体ぶらずに書きますが、それは、
「全くワークシートに書こうとしない」のです。

「答えはないからね」とか「後で消しちゃえば良いんだから」とフランクに伝えてもどうしてもペンが動きません。

今の高校生たちはシャイだから他の人に見られたくないんだろうな、ぐらいに思っていたのですが、後日僕は、その高校生たちには共通したメカニズムが働いていて、それが原因で書くことができないのだ。これは授業が上手くいかない云々では終わらず、将来大変なことになるぞ。と寒気をおぼえたのです。

一体、そのメカニズムとは何なのか。
どうして将来大変なことになるのか。

これについて説明していきます。


「シャイだから」では決して無いですよ!!!



教育

多くのところで問題提起されていますが、僕たち若者は小学校から高校まで、正解を見つける訓練を10年以上かけてしてきました。

ちょっとでも違うことを書くと減点をされ、それを重ねていく度に自分の将来の選択肢が狭まっていくという、とても過酷な道を歩んできました。
少し皮肉が含まれますが、その正解を出す行為が得意だった人たちが上手く出世していき、今の日本を創り上げていっています。
だから変わらない、いや、変えたくない、の、かも、、?


そして今も高校生たちは、1+1=2のような、たった一つの答えを導き出す訓練を繰り返しています。

この訓練だってとても大切なことではあると思いますが、その弊害が今回のようなワークで現れます。

先ほど、「答えはないからね」とフランクに伝えてもどうしてもペンが動きません。と書きましたが、僕は後に、この言葉こそが高校生のペンを止めてしまうことに気づきました。

つまり、答えが無いからこそ書くことができないのです。

それは、どういうことか。



自分だけの答え

僕たちが「答えはないからね」と繰り返すのは、高校生たちに自分なりの答え(想い)を見つけてほしいという願いがあるからです。

しかし、逆に高校生たちは縛られてしまうのです。

それは、その自分が書いた(自分から出てきた)ものは、100%自分のセンスからできているから。


これまで、高校生たちは「1+1=2」という事実に基づいた一般解を空欄に埋めてきました。
そこには、自分の思想やセンスなどは全く関与していません。
間違えたところで、ただ勉強が足りないとかケアレスミスが多いだとか、そういう自分という存在とは離れた理由に逃げることができます。

しかし、答えのないもの、自分だけの答え(特殊解)を見つける場合だったらどうでしょう。

答えはないにもかかわらず、「自分が書いたものを友人に見られてバカにされたらどうしよう」とか余計なことを考えてしまうから、ペンは全く動かなくなるし、無意識のうちに体を屈め、頭を下げ、脇を広げることで自分のプリントを極力隠そうとしてしまうのです。

一般解ではなく特殊解を自分で見つけ出す力が求められるこの時代では、このままではいけません。
もちろん、彼らが悪いことなんて決してありませんから、僕たちがその呪縛から解放するために授業に行ったのです。
んん、でも、僕のファシリテーションがまだまだで、あえなく撃沈してしまった気がしますが。

この問題については、これから大学を卒業した後も僕の中で大きなテーマとなりそうな気がしています。
こういうことに気づけるので、やっぱり何か行動を起こすのは大事ですね。
後輩たちには、都合が合えば絶対にこういう機会は逃すなとアドバイスしたいです。
「行きたいです」と言うだけで、色んなことを発見できるのですから。



過去

ここまで散々偉そうなことを言ってきましたが、実は僕も一切ペンが動かないタイプの高校生でした。
いや、寧ろもっと拗らせていました。

最後に少し僕のお話をして終わりたいと思います。


僕が通っていた高校はそこまで賢くなく、僕は常に上位の成績を取っていました。
数学ばかり勉強していて、校内偏差値 82を出したこともあります。
まあ、これに関しては周りに0点が多すぎたというメカニズムが、、、

そんなことは置いといて、実際に数学の定期テストはほとんど100点でしたし、他の科目に関しても高得点をたたき出すことで、僕は周りから「正解して当然」という目で見られていましたし、僕自身も「正解しなければならない」と自分を縛っていました。

そんな状態で3年間も過ごしたことで、僕は正解大好き人間に成り果ててしまいました。

分からないと思った問題は答えを書きませんでしたし、授業中に分からない問題を先生に当てられたときはだんまり作戦を実行していました。

おそらく、今回僕たちが行ったような授業を僕が高校生の時に受けていたら、僕のプリントはほとんど何も書かれていないか、うっす~い字で小さ~く書かれているか、後ろの友達が書いているのを見て同じようなことを書いていたと思います。

そんな僕を変えてくれた大学の先生方や友人たちには感謝しかありませんね~。

今回僕が出逢った高校生たちや、今どこかで苦しんでいる高校生や中学生たちにそんな素敵な出逢いをして、自分だけの人生を思う存分満喫してほしいと願うばかりです。
そして、その出逢いの一つとしてこのnoteがあることをもっと願うばかりです。



おわりに

最後になんとなく思ったことを書きます。
本当にただのぼやきなので、時間が無い人はここでやめてもいいですよ。

どうしても僕はnoteを書くときに、何か伝えたいことが無いといけないと思いがちで、今回のようにどこかにメッセージ性を加えようとしてしまいます。

でも、普通に「ここに行きました」とか「この映画を見ました」とか、正にブログ!!みたいなことを書いても良いんだよな~って。
だって、僕だったらそんな脂っこい文章を好んで読もうとは思わないですもん。

寧ろ、そういう何でもないことを面白く書こうとした方が書く力の訓練になるのではないか?
と思ってきたので、来週はそれにチャレンジしてみようと思います。

いや~、でもまたメッセージ込めちゃいそ~。
気をつけよ~。

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