【短大時代の寮の話】
バン!!
入寮初日、深夜12時部屋のドアがあく。なんのデリカシーもない開け方で。
「心スポ行こうや!!」(心霊スポット)
自分は2段ベッドの上。下には高校の同級生のタカシが寝ていた。
タカシが嫌がりながら、連れて行かれようとするのが分かる。
結局自分も道連れになり、ほぼ強引にベッドから引きずり出される。
実家帰りたいいい…心の中で強く思った。
断りきるという行為が苦手だった、石川県民2人は、関西人のゴイゴイ来る感じに圧倒された。
初めて絡んだ関西の人が、こんな感じだったから、関西人てこんなんばっかなんかなって、ちょっと引いた。
マイルドな関西人もいるっていうことを知るのは、少し後になる。
寮生活初日から短大の2年間耐えれるか不安になった。勉強っていうより人間関係がね。
名前もよくわかってない人達に連れられ、心霊スポットにむかう。人数は5人くらいだったかな。
みんなタバコを吸う。自分は吸わなかった。自動車整備の短大だからか、喫煙者は結構多かった。二輪の整備もあるから雰囲気ヤンキーも多かった。
あわねえ、、、
健康一番、睡眠大好き、お酒ほぼ飲まない、朝ごはんは毎日欠かさず食べる大谷内とはちょっと違うタイプだなあと思った。
よく分からん古びたホテルについた。いかにもでそうなとこじゃんか馬鹿野郎。
そもそも、ガチな肝試しとか、心霊スポット行こうぜ!!っていうタイプが本当に苦手だ。
家でUNOすればいいやんUNO。ドキドキしたいなら黒ひげ危機一髪でも充分だよ俺は。
幽霊だって望んでないよ。急に人きてびっくりしちゃうよ。
呪われたらどうすんだよ!責任とれんのかよ!なあ!
こっちはビビりなんだよ。本当にあった怖い話も見れないんだよ。
これを読んでくれている優しい人は間違っても、肝試しとかそういう類の物は誘わないでほしい。
結局ビビりながらも、中に入ったりしたけどなにもでてこなかった。心底安心した。
帰りの車中で、誰かが、毎週心スポいこう!って言った。
毎週どんな言い訳をしてでも断ることを心に誓った。
寮に帰って、たかしとトイレに行った時、二人で「しんどいな」って言っていた。もう良い子は爆睡してる時間。静まりきっている寮で自分は悪いことをしてる気分になった。
こうして短大生活が始まる。
結局、心霊スポットに行ったメンバーとは、ほぼそれっきりだった。
あるあるだと思うけど、入学してすぐ最初はまあまあ喋ってたけど、1、2ヶ月もしたら、ほぼ会話もしなくなるあの感じ。
分かるかな。
クラスが違うかったからってのもあるけどね。
残念ながらタカシは、心スポメンバーとクラスが一緒だったので、しんどい思いをすることになる。
相部屋だったから、よく話を聞いた。2年間よくやったよ、おつかれさま。
ただ、二人で同じ部屋っていうのは結構ストレスが溜まる。
タカシは寝る時に小さい電気をつけたい派だった。自分は真っ暗で寝たい派だったのだ!
こうして寝る時、電気つけるか、つけないか戦争が始まる。
自分は真っ暗で寝たい。そうタカシに言う。二段ベッドの上だったので、電気と距離が近いからなおさら消してほしかった。
わかった。たしかなんの引っかかりもなしに、そう言ってくれた。
寝る時間は自分の方が早かった。たかしは夜寝るのが遅くて、出かけたり、他の部屋で遊んだりしていた。
なので、自分が寝た後に帰って来ることが多かった。
なんと、あろうことか部屋に帰ってきたら、やつは電気をつけっぱなしにして寝やがる。
それで夜中に何度か目が覚め、「こんちくしょう!」とぶつけようのないイライラを抱えて眠れない夜が何度かあった。
それも何度か言ったら改善してくれて、ドアの開ける音とかも細心の注意を払って、音がならないようにそっと開けるようになってくれた。
いいやつだった。
テスト期間のことだ。テストはだいたい午前中に終わる。前日みんな徹夜くらいの勢いで勉強するから、帰って飯食った後はみんな寝る。
事件は起きた。パァン!パァン!と寮の外から音がする。ちょうど、その頃格闘技が流行ってて、パンチやキックを受けるミットの音だった。
パァン!パァン!と文字で見ただけだと卑猥に見えるあなたは、大人だよ。
まじで頭おかしいやつがいるなと、目が覚めた。
睡眠不足だからイライラがすごい。
誰だよ、テスト期間のみんな寝てる時にうるさいのは、、、
カーテンを開けると、あろうことかそこにいるのはタカシではないか、、ひょろひょろの体で、必死にキックを繰り返してるではないか、、
ふと、タカシのTシャツに目がいく。
文字入りTシャツを着ていた。部活とかで着ているのはよく見るやつだ。一球入魂とか一種懸命とかね。
たかしの背中には「人としてどやねん‼️」とプリントされている。
お前がどやねん!!無地T着とけ!!
おわり。
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