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画廊のおばちゃん

歯の矯正の相談に表参道の歯医者さんにいってきた。
田舎者なので表参道という単語を発するだけでぞわぞわするくらいにはまだ田舎っぺだ。

自分はチャームポイントでもあり、コンプレックスでもある、前歯が3本ある。見た目は置いといて将来的に歯並び治しておいた方がいいのではと思いつつ先延ばしにしてたので相談に来た。

自分は人より歯が2本少ないという事実が発覚して萎えつつ、鏡で自分の鼻毛がでていることに気付き恥ずかしさを覚えながら見積もりをもらい歯医者を後にした。

マウスピース矯正で48万円ほどかかるみたいね。

ぐぬぬ。

せっかく表参道まできたのでお散歩して帰ろうと思い散策してみる。
すると絵が売ってる小さな6畳くらいのお店があった。

張り紙に、値段は書いてありませんが安いです。値段を貼ると画家さんのイメージ的によくないのでお気軽に聞いてください。みたいなことが書いてある。

25歳にもなると部屋に額縁に入った一枚の絵があってもいいような気がしてきた。
なんか街でこの絵見かけて、詳しくはないけどビビッときて買っちゃったてきなね。
ありあり。そんなことを外で絵を眺めながら考えてると、おそらく1人で店をやってるであろうおばあちゃんが話しかけてきた。
とりあえず「いいっすね〜」というと絵について話してくれた。けどもう、ひとつも覚えてない。ごめん。

「でもこの絵安いんですか?」
そう聞くと待ってましたと言わんばかりのおばちゃんが
「本来は300万円だけど240万円になってるよ」

そっちか〜〜そういう安いか〜〜絵ってそういうとこある。うんうん。
矯正5回くらいできちゃうね〜〜

と内心焦りつつ決して顔にはださない。そうなんですねと微笑み、ここですぐ帰ると絵の価値を全く分からない若者と思われてしまいそうな気がしたのであえて店内に踏み込む。

ここは逃げちゃだめだと心のおおやちが言ってる。
戦後の画家の苦悩、なぜここで画廊をはじめたのか、おばあちゃんの年齢を教えてくれた。

そろそろ帰ろうかなと思うと、お名前教えてと言われたので大谷内ですと言うとどんな字書くの?ここに書いてと白紙を渡される。
なんの疑いもなく書くと、一応電話番号とメールアドレスも書いてと。

やられた。。白紙を渡されたのでただ自分の少し珍しい苗字に興味がある、69歳好奇心おばあちゃんかと思っていたら、どんな人でもお客さんの肉食営業スタイルのキャリアウーマンだった。

ごめんおばちゃん、おれ買えねえよ。
ごめんおばちゃん、怖くて適当に電場番号とメールアドレス書いちゃったよ。

ごめん電話かかってきた人ごめん。
断るべきでした。


都会はむずい。

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