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すみだ北斎美術館’24夏~『北斎グレートウェーブ・インパクト』

すみだ北斎美術館に行ってきました。
夏の特別展は、『北斎グレートウェーブ・インパクト』

いよいよ7月3日に発行される新紙幣ですが、1000円札の裏面に、葛飾北斎の『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』が採用されます(表面は北里柴三郎さん)

本展覧会は、採用を記念して、どのような背景で『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』が誕生したのか。そこに至るまでの軌跡、そして日本のみならず海外にまで与えた影響を辿っております。



冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏

 「冨嶽三十六景」は、北斎が70代で発表した各地から見える富士山をめぐる風景を紹介した錦絵の揃物(そろいもの=多色摺の浮世絵版画シリーズ)です。なかでも本図は、海外の人々から「Great Wabe(グレートウェーブ)」の名で親しまれる人気の作品です。題名の「神奈川沖」は、現在の横浜市神奈川区にあった東海道の宿場・神奈川宿の沖合を意味します。波間に見える三艘の船は、江戸周辺で獲れた鮮魚を江戸に送る高速船の押送船(おしおくりぶね)です。水しぶきをあげながら力強く立ち上がる巨大な波、自然の猛威に翻弄される人間たち、超然とたたずむ富士山を描いた壮大な作品です。

図録より

 北斎が70代で発表した「冨嶽三十六景」シリーズの1図である「神奈川沖浪裏」は、北斎の約50年にわたる研鑽のもとに大成した作品です。北斎が20代で浮絵を手がける中で吸収した西洋の透視図法(線遠近法)と、40代で洋風風景版画を制作する中で深化させた空間表現や構成力によって、画面の半分ほどを大波が占める大胆な構図が生み出されました。また40代後半以降に読本挿絵の世界で磨いた中国絵画から取り入れた鉤爪形の波頭を用いて、怪物が鋭い爪で掴みかかろうとしているような迫力と、荒れ狂う並の一瞬をとらえた躍動感が創出されています。

図録より

冨嶽三十六景 相州七里浜

 「冨嶽三十六景」シリーズは美しい藍色が特徴的ですが、それは古来用いてきた植物由来の本藍だけではなく、18世紀初頭にベルリンで開発された方正化学顔料であるブルシアンブルー(紺青)を使っているためです。日本には18世紀中頃には輸入され、ベロリン藍、ベロ、ヘロなどと呼ばれました。浮世絵に取り入れられるようになったのは、文政(1818-30)末頃のことです。鮮やかな発色で、粒子が細かく水にも溶けやすいため、空や海、川を美しく表現するぼかし摺りにも活かされました。本図の鎌倉七里ヶ浜と次の江戸の佃島は、天保2年に出された「冨嶽三十六景」の広告文で「藍摺一枚二一計ツゝ追々出板(中略)或ハ七里ヶ浜にて見るかたち又ハ佃島より眺る景」と紹介されているように、シリーズ中でも藍一色で摺られた初期のものです。

図録より


冨嶽三十六景 武陽佃島


感想

50年間、北斎がどのような軌跡をたどり
『神奈川沖浪裏』を制作するに至ったのか?
どのような文化、誰に影響を受けたのか?
が時系列で紹介されており、とてもわかりやすかったです。

また、鉤爪形(浪の模様)が与えた影響
当時、災害の被害を報じた瓦版にも採用された技法
そして後世への影響など、見どころ満載の展覧会でした。

東京近郊にお住まいで北斎ファンであれば、行った方がいいでしょう。
平日、大雨の中訪問したのですが、それにもかかわらず多くの外国人が訪れており、北斎の人気の高さが窺えました。


おまけ

『神奈川沖浪裏』を鑑賞する人々(AIで作成)


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