1限目『お酒と包丁』:日本酒先生
はーい。じゃあこの時間は、お酒と包丁は似ているってことについて、お話をします。
「お酒」と「包丁」のなにが似てるのかな?
「…………どちらも、大人にならないと使っちゃダメ」
んー、あながち間違ってはないけど、ちょっと違うかな。だって、みんなも調理実習や、おウチでお料理するときに包丁を使いますよね?
もちろん、お酒は大人になってからしか飲んだらあかんけどね。
「わかった! どちらも、この学校のみんなが大好き! ……あ、これ包丁じゃなくて、校長やった」
うまいこと言わんでええねん。これは1本取られたな〜、お酒だけに。
このことは、先生の意見として校長先生にちゃんと伝えておきます。ズルいという意見は受け付けませんよ。
「えー、先生ズルいー」
はいはい。わかりました。
じゃあ、質問変えます。包丁って、どんなもの? 包丁に抱くイメージをいっぱい挙げてみて。
「料理に使うものー」
「切れるものー」
「学校で1番偉い人」
「それ校長や」
「野菜を切るものー」
「お肉も切れるー」
「この前、おれ、カボチャ切ったで」
「おれなんか、豆腐切ったことあるし」
「危ないもの」
「刃物」
「殺人事件の凶器」
はい。ありがとう。この辺にしときましょう。
最後、殺人事件の凶器って答えてくれたけど、包丁って、殺人事件の凶器なんですかね?
「ちがうー、料理の道具ー」
そう? でも、殺人事件の凶器としても使われることあるよね?
「あるけど、料理の道具やから、凶器じゃないー」
じゃあ、包丁で刺されて殺された事件の凶器ってなに?
「包丁?」
うん、包丁やんな。
つまり、包丁は、料理の道具でもあるし、殺人事件の凶器でもあるってことなんです。
「えー、でも、それって使い方まちがってるー」
その通り! そこやねん。
包丁って、料理のとき、食材を切るのに便利ですよね? 正しく使ったときは。
じゃあ、話を戻しますよ。
お酒を飲んで、酔っ払って暴れる人がいるの知ってる? それって、お酒が悪いと思いますか?
「うん。お酒が悪い。だってお酒飲んだら酔っ払って暴れるやん。それで人にケガさせたりするもん、お酒は悪いもの」
ほんとにそうなんかな?
じゃあ、そんな悪いものやったら、法律で、お酒禁止にしたらいいことじゃない?
「え、でも、大人になったらいい」
おっちゃんでも暴れてる人いてますよ?
「あっ、わかった! お酒は悪くない!」
なんでそう言えるの? お酒を飲んで暴れる人たくさんいますよ。
「ううん。包丁と一緒で、お酒はいいものやけど、使い方が悪いとあかんものになる」
おー、なるほど。
つまり?
「包丁にも正しい使い方があるように、お酒にも正しい飲み方があるってこと?」
「あ、そういうことか」
「なるほど! 飲み方かー」
もうわかりましたね? じゃあ、最初の質問に戻ります。
お酒と包丁の似ているところは?
「使い方次第で良いものにも、悪いものにもなる」
そういうこと!
お酒自体は「百薬の長」とも言って健康にもいいし、なによりおいしいし、素晴らしいものなんです。
でも、みんなが言ってくれたように、悪い飲み方をすることがあかんだけで、お酒自体に罪はないんですね。
「わかりました!」
はい。じゃあ、これでみんなも酒飲みの仲間入りやな!
「それはあかんやんか、先生ー!」
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