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#04 競争戦略に意味はあるのか

株式会社が「目的」に立ちかえるためには

 4月から3ヶ月かけて大学院の同級生と、Colin Mayer先生の「株式会社規範のコペルニクス的転回ー脱株主ファーストの生存戦略」を輪読し、聴講していたRIETI-ECGI-WBF共催の連続セミナー「A New Concept of the Corporation」の最終回も本日終了しました。

 Mayer先生の主張は、多岐にわたりますが、要約すると「株式会社を目指す目的(Puropose)にしっかりと向かせることで、世界をよりよくすることができる」ということでした。

 フリードマンドクトリンへの痛烈な批判から始まり、株式会社が「株主」だけでなく、マルチステークホルダーのために存在するには、「目的(Purpose)」を定め、シンプルにそれがどれだけ実現できているかを評価されるべきであるという主張は、株式会社を取り巻くほぼ全ての社会環境に対して変化を求めることになります。

・「定款に目的を定めるように会社法を改正する」
・「財務諸表に金融資本以外の資本を取り込むよう会計基準を変更する」
・「目的の実現度を評価するための評価方法を確立する」
・「コーポレートガバナンスの形態の正解を一様に定めない」
・「アンカー株主による目的のガバナンスを実施する」
・「株式会社が公的な目的を掲げ、政府や公的機関が公的資金でアプローチしていた分野に進出する」

 この書籍を読んでよかったと思うのは、「よい行いをすることで、社会をよくする」というシンプルなことができづらくなっている株式会社を再設計できると確信できたことです。

 会社が財務的に調子がよいときは、問題は顕在化しないかもしれませんが、しんどくなれば、会社設立当初の目的やMVVを貫くことが難しくなってくることが往々にしてあります。「そうはいっても株主が…債権者が…」という声をうんざりするほど聞いてきました。

 そういう意味では、ビジネススクールでもでなかった答えをもらえた書籍でした。

競争戦略は必要か

 実をいうと、もうひとつ、ビジネススクールで最後まで腑に落ちなかったことがあります。

 それは「競争戦略を考える意味はあるのか」ということです。

 同業他社や他業態からの参入に対して、どのようにポジショニングをして、自社の優位性を確保するかという戦略を競争戦略とすると、それに一体何の意味があるのだろうと、MBA在学中ずっと疑問だったのです。

 この疑問も、この書籍でクリアにすることができました。

自社と共通の目的を持つ同業他社がいて、その目的が意図する社会への意味が同じであれば、社会へのよいインパクトの総量が増えるだけで、「パイを食いあう競争相手」という発想にならないのではないかと思います。

 ただ粛々と、自社の掲げる目的にしたがって、できることをしていく。それが、「目的志向」の経営であるという結論にいたりました。

 同じ目的をもつ同業は、競争相手ではなく、「同志」であるといえるわけです。

今後の学習に向けて

 今日のRIETI-ECGI-WBFセミナーで紹介されていましたが、”Putting Purpose Into Practice”が出版されたそうです。

 今回読了した書籍の実務への適用について書いてあるようで、次の学習材料も揃い、楽しみは尽きません。


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