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【悲報】損益分岐点売上高に騙された!!!

■結論

『ちゃんとやれてない』損益分岐点売上高はマジで役に立たないどころか、
誤ったメッセージや経営判断を招くので、
めちゃめちゃ注意が必要です!
以上!


■あるクライアントの話

ある新規のクライアントさんがいました。
年商は15億円もあるのに、
なぜか毎シーズン資金繰りがキツくなるのでみてほしい、
という悩みでした。
顧問税理士さんは結構有名なところで、
税務サービスはもちろん、
経営コンサルもやります、
という税理士さんでした。
(お分かりかと思いますが、はい、地雷です)

ちょうど決算申告月だったため、
顧問税理さんへのご挨拶も兼ねて決算報告会に同席させていただきました。
今期の振り返りと今回の決算確定数値、
納税額の話が合った後、
来期に向けた話がありました。
契約したてだったので、
税理士さんの話から会社の状況をより詳しく把握するのが目的でした。

その時登場したのが損益分岐点売上高です。
損益分岐点売上の説明をして、
今回の決算数値を用いて計算し始めました。

「社長が目標に掲げた営業利益5,000万を達成するためには、
売上をあと1億作ってください!
社長は営業強いので年間1億なら作れますよね!」
経営コンサルタントの肩書をもつその担当者さんは、
素敵な笑顔でキリっと宣言されました。

決算報告会が終わって、
私自身がリサーチを始めたところ、
その経営コンサルタント様がおっしゃった数値はクソ間違えていることが分かりました。
利益5,000万獲得するために追加で必要な売上高は、
2.5億円でした。

なぜこんなことが起こるのでしょうか。
前回のnoteで紹介した損益分岐点売上。
シンプルでいいよね、
と言ったのですが実務上の使用は結構注意が必要です。

■損益分岐点売上高の使用上の注意点

損益分岐点売上高を実務で使用する場合の注意点をざっと書きます。

①変動費と固定費にしっかり分ける
②売上の計上基準を確認する
③今みている数値が分析に値するか確認する
④しょせん目安だと割り切る

こんなところでしょうか。
それぞれ見ていきます。

①変動費と固定費に分ける
損益分岐点売上高を計算する際、
決算申告書のPLを使って求める方が多いです。
が、
PL=損益計算書は費用の多くを原価と販管費に分けているだけで、
変動費と固定費に分けているわけではありません。
作成目的が異なるので集計単位も異なっております。
決算書の数値をそのまま使うのではなく、
費用の項目を改めて変動費と固定費で分ける必要があります。
例えばマーケティング費用っぽいものは広告宣伝費に分類することが多いと思いますが、
固定の月額でかかるSNS運用代行費も、
毎月の広告消化によって変動するFacebook広告費も、
広告宣伝費にまとめる場合もあります。
片方は固定費に分類されますし、
もう一方は変動費に分類されます。
全体から見てインパクトが小さければ無視してもよいかもしれませんが、
割と大きい金額でしたら同一勘定科目でも中身をみて分けた方が良いです。

②売上高の計上基準を確認する
これは税理士さんの処理の仕方による部分であることが多いですが、
普段の月次決算、
つまり毎月みる損益計算書は現金主義と呼ばれる方法で売上計上する一方で、
年に1回の決算のタイミングだけ発生主義・実現主義でまとめる、
という方針の税理士さんもいます。
現金主義と発生主義・実現主義との計上方法の差による影響がほとんど無ければ経営分析上問題ないと言えますが、
多くの場合かなり数字が変わります。
1割、2割売上高が変わる場合もあります。

税務的には間違いでない計上基準であることと、
社長が知りたい数値を導き出すための決算書であることは、
全く別物であることが多いです。
ここがズレるとそもそも分析しても意味ない資料となります。

多くの中小企業は税理士さんに任せっきりの会社が多いと思いますので、
セカンドオピニオン的に別視点の財務顧問を付けるなどでリスクヘッジできますね。

③今みている数値が分析に値するか確認する
上で述べたことに近いのですが、
毎月税理士さんから報告される数値、
決算が完了して報告される数値、
それが自社のビジネスモデルを適切に反映したものであるかどうか、
はマジで重要ですので一度ご確認されることをおすすめします。
規模が小さかったりすればあまり影響ないかもしれませんが、
規模が大きくなると影響を無視できなくなってきます。

決算月近くまでは大きな黒字で安心していたのに、
決算処理が完了したら突然赤字であったと報告される会社もありました。

税金計算のための決算書と、
自社の実力を適切に反映した決算書は、
同じ「決算書」という言葉でも全く違うものである、
と覚えてください。

④しょせん目安だと割り切る
これも結構大事です。
単一事業、
単一商品、
単一集客方法、
単一オペレーション、
昨年も今年も来年も、
やることが何も変わらず固定されているビジネスモデルであるなら使用に問題ないですが、

複数事業、
事業内複数商品、
複数集客経路、
複数オペレーション、
などになってくると、
利益構造が全く異なるので全体を用いた損益分岐点売上高は全く参考になりません。

利益構造の違う事業が2個や3個あって売上構成が変わるようならもう正しく計算できないですし、
同一事業でも複数の商品を走らせていて利益構造が違うならやっぱり計算できないですし、
広告を使って集客するのか自社メディア集客なのかでも利益は変わってきますし、
塵も埃も一切ない科学実験室のような会社でない限り、
そのまま素直に活用は難しいですし、
おすすめしません。

現在の多くの会社は後者のモデルが多いので、
昨日ご紹介した損益分岐点売上高ですが、
あんまり使えないのが実情です。

■まとめ

今回は損益分岐点売上高の使用上の注意点をまとめさせていただきました。
公認会計士さんや税理士さんがYoutubeにあげている動画でも、
損益分岐点売上関連は結構ヒットコンテンツで、
再生数が割と稼げています。
ああいった動画を見て実践してみることは非常に良いことですが、
現実的に実務でやるときにはかなり注意が必要です。

にもかかわらず、
それほど注意点がまとめられていないように感じました。
このnoteをご覧いただいている数少ない読者様は、
是非罠にかからず、
正しい経営数値の把握をされてください。

本日も長文をご覧いただきましてありがとうございました。
引き続き何卒宜しくお願いいたします。

■あとがき

今回でついに第5回目のnoteとなりました。
皆様いつも応援いただきましてありがとうございます。
飽き性学会の副会長を自認している私なので、
3日坊主になるだろうなと思いつつ始めましたが、
なんとか5回目まで続けることができました。

人生の中でしっかりと続けられていることは、
顧問・コンサル業の仕事と、
信長の野望ぐらいしか思い当たらないので、
自分自身少し驚いております。

あまり無理しすぎず、
それでもなるべく発信を続けられる人間に近づくために、
今後も頑張ってまいります。

10回目まで続けられた時には、
遅いですが自己紹介をさせていただきたいと思っております。

皆様、引き続き何卒宜しくお願いいたします!m(_ _)m

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