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アメリカ建築大学院受験のためのポートフォリオ制作

留学のためのポートフォリオに限らず、建築のポートフォリオの作り方に関する情報は検索しても少ないように感じたので、自分の考えていたことを書いておこうと思います。留学の全体的な話はこちら。

参考のために、自分が出願時に提出したポートフォリオを載せておきます。

0. 自己分析

就活とかでよく聞く自己分析。自分はあまり好きではないのですが、まず自分の作ってきた作品を見直し、次にどんなことをしたいのか考えました。これは受験大学を選ぶ際に何となく考えると思いますが、それをポートフォリオにも反映させます。エッセイなどで書いている内容と一貫性があった方がいいので、自分の思想と作品を比較検討します。自分が作った作品で気に入っているものから共通点を考えると分かりやすいかと思います。

自分の場合は、今までのほとんどの課題、コンペで、建築を扱いながらも都市スケールの事、特に都市の特徴とその変化の様子に興味があったことをエッセイで書きました。それに加えて建築の新しい表現とメディアとしての働きの探究というようなことをテーマにしていました。UCLAを受験しようと思った時には何となくこんなことを考えていたと思います。

1. 事例集め

自分のテーマや軸が定まり、受験大学が何となく絞れたら、issuuで過去の作品を漁ります。"portfolio UCLA architecture"とか、"application portfolio 2020"とか、こんな感じのワードで検索すると、過去の受験生のポートフォリオが出てきます。大学のstudent workと同様に、これらを見ても大学のカラーが何となく見えます。自分が集めたポートフォリオが以下にあるので、よろしければ参考にしてください。これらがこの記事で一番有用かもしれません……。

これらは表現を真似するのにも参照できますが(めちゃくちゃ真似したものもあります……)、最低限の情報やレイアウト、フォーマットを知るためにも役立ちます。表紙、履歴、スキル、目次、ページ数など、受験校や人それぞれですが、大体こんなものかと分かります。ちなみに、とんでもないクオリティのものとかがあったりしてビビることも多いですが、一握りなので気にしないようにしましょう。真似できるところは真似すればいいと思います。個人的には海外のポーフォリはやはりグラフィックのレベルが日本より高い印象です。大学がどこまで丁寧にポーフォリを見ているか分かりませんが、見た目のかっこよさや密度はある程度必要な気がします。

2. 要件の確認、作品選び

各大学ごとにポートフォリオに求められる条件が異なります。自分の年を例にいくつか条件を挙げてみます。

UCLA:15MB以下、dpi150以上300以下
SCI-Arc:15~35ページ、各ページ10MB以下
USC:15~25ページ、各ページ5MB以下
Princeton:hardcopy(実物)、10MB以下
Yale:2GB以下

このように、学校によって制限は様々です。学校のカラーによってポーフォリを作り替えるのがベストではあるのですが、ほとんどの場合、一つのポーフォリで複数大学に出願すると思われるので、作り始める前に与条件を確認し、一番厳しいところに合わせます。それに合わせてどの作品を何ページくらい載せ、どれを省くかなど考えることになります。
とはいうものの、当然作っていく中でも調整していきます。大きく載せたい図が小さくなってしまったり、余白を埋めるために図を追加したりもしました。履歴、表紙は含めないとか、画像かpdfかなども地味に影響するので確認しましょう。
また、レターサイズやA4などサイズ指定の大学がいくつかありますが、基本的には守ったほうがいいです。違うレイアウトで合格している人もいるので一概に言えませんが、単純に守ったほうが相手が見やすいのと、扱いやすさが指示に従ったほうが良い気がします。

3. レイアウト、色、フォント

indesignでグリッドを引いて、文章や図をざっくりと配置して作品ごとに全体通してどのように見せるか考えました。

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見返してみると従っていないところが多数ありましたが……

ページごとにキャプションや余白が統一されていると、それだけでまとまりがあるように見えます。自分の卒制はかなりカラフルで散らかっていますが、フォーマットの力で抑え込んでいます。逆に、最後の作品など図が大きかったので図がグリッドをまたぎ、少しダイナミックになってしまいました。UCLAやSCI-Arcだけ受験するなら、卒制のレイアウトももっとダイナミックにしたのですが、東海岸の学校にも出すことを考え、ある程度統一しました。

テーマカラーが何かあるとそれも統一感が出て良いです。自分の場合、ベースは白で、黒と赤とたまに青、という感じになっています。5つ目の作品はどうしても緑が多くなってしまいましたが……。

フォントはHelveticaを使って見たかったものの、買いたくないという気持ちで、無料でこれに似ていると言われていたNeue Haas Grotesk Text Proを使いました。きれいな設計をしている方ではないのでサンセリフにしました。ちなみにフォントは全然詳しくないです。

4. 作り直し

いよいよ中身を作ります。しかし、実際にはちまちま作って直してを繰り返していた気がします。卒制せんだい用、就活用、奨学金用etc.といった感じです。1つ目と2つ目の作品でレイアウトとか雰囲気を何となく作り、その後他の作品をそれに合わせて作り直しました。10月あたりに本格的に作り始めましたが、体感では1つ目が7割、2つ目が4割、3つ目が7割くらい完成というか、そのまま使えるという状態でした。

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初期のポーフォリの表紙、これだけでもかっこ悪い……

4,5つ目の作品に関してはほぼすべて作り直しました。完成した状態で課題が提出できたことがあまりなかったのもあり、モデリング、ダイアグラム、図面、パースほぼ新しくなっています……。設計はほぼ変わらないので、参考になるものを見ながらひたすらきれいにしました。昔作り切れなかったものを作り直すのは楽しいですが、無限に時間がかかります。to doリストを細かく作って優先順位を付けて、未完成でもとりあえず次の作品を直し始めるなどしていきました。

文章量なども学校によって違うようですが、UCLAは割と文章も読まれるという話を聞いたので、少し多めにしました。英語で説明を書くのは非常に苦しいですが、DeepLとgrammaly、Weblioを駆使すれば何とかなります。特にDeepLはネイティブから見ても自然な表現があると聞きました。自分は最後の方は時間がなく、後半の説明はすべて日本語をDeepLに入れてざっと読んで確認し、そのまま入れました。ネイティブの方に確認してもらった方がいいと思いますが、自分は時間がなくそのまま出しました。

5. 参考ポートフォリオ

特に見ていたのは以下のものです。

ハッチングするだけで図面の見栄えが変わるのが分かります。2つ目の作品の図はこちらを参照しました。作品ごとにテーマカラーがあっていい差し色な感じがします。

絵がすごく美しいです。5つ目の作品のパースはこのポーフォリを参考にしました。全体的にクオリティが高く何度も見ました。

Harvard GSD最優秀賞の人。図を真似したところがありますが、強すぎるのと、タイプが違いすぎるのであまり参考になりませんでしたが、よく見ていました。

友人のポーフォリ。デザインがきれい。履歴やらサブタイトルやらを真似しました。ここまできっちりは作れませんでした。内容も面白いです。歴史のダイアグラムをコラージュするのは他でも見かけます。

5つ目の作品の図やレイアウトはほぼこれを参照しました。


ちなみにバイトの上司や就活相談会などで、このポーフォリの作りかけのものを見せたりもしましたが、絵や図のかっこよさはあまり問題にはならない印象でした。ただかっこいいパースとか、余白を埋めるための図(9ページ目右上とか)は必要ない、説明する際に使う図だけ載せて分かりやすい説明を心掛けろ見たいなことを言われた気がします。これは肌感ですが、よくも枠も海外はグラフィックが日本より重視されている印象も受けました。受ける会社、事務所、大学、国などによって見られているポイントは異なる、という当然のことに気づかされました。

必要性、目的に応じて、この記事を参考にしていただければと思います。

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