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【史上最高の直木賞】東野圭吾『容疑者Xの献身』を完全要約(※ネタバレあり)【PART3】

▼YouTubeでは要約動画を公開


◆容疑者Xの真相 PART3


◇パート1とパート2の要点


こんばんは!Kazukiです!
それでは今週もさっそく投稿の内容に入っていきましょう!

今月は、
2008年8月10日に文藝春秋さんから発行されました、
東野圭吾(ひがしの・けいご)先生の、

『容疑者Xの献身』の完全要約をお届けしておりまして、

前回までのパート1とパート2の投稿では、



  • 紹介書籍概要およびその選出理由

  • このシリーズの投稿内容とその目的

  • 『容疑者Xの献身』の完全要約【第一部〜第二部】



についてお届けしてきました。


なので、
今回の投稿ではその続きになります、

『容疑者Xの献身』の完全要約【第三部】

の内容をお届けしていきますので、

もし、先にあげたパート1・2の投稿の内容の中に、
なにか気になる内容がございましたら、
その方たちはぜひパート1・2の投稿をご覧いただければと思います。


◇前回までのあらすじ


とはいえですね!

これでいきなり、
『容疑者Xの献身』【第三部】の要約に入っても、

パート1・2でお届けした【第一部】と【第二部】の内容が、
少し薄くなってしまっているかもしれませんので、

まずははじめに、
【第一部】と【第二部】のあらすじを振り返っていこうと思います。


▼それがこちらになります▼


江東区の私立高校に勤務する数学教師の石神哲哉(いしがみ・てつや)は、

三月のある晩、自身とは全く無関係の殺人事件に出くわしてしまう。

殺したのは、隣人の花岡靖子(はなおか・やすこ)とその娘の美里(みさと)
殺されたのは、花岡靖子の元夫である富樫慎二(とがし・しんじ)

しかし、石神はなにを血迷ったのか、
「自首をしない方法」という無理難題を求める、
憐憫な花岡親子の二人に向かって、

「難しいね。でも、不可能じゃない」と自ら協力を申し出てしまう。

後日、旧江戸川の堤防で発見された身元不明死体にいっときは悩まされていた、
警視庁捜査一課の草薙俊平(くさなぎ・しゅんぺい)だったが、

亀戸のレンタルルームの一室から忽然と姿を消した男性が、
その部屋に残した毛髪や指紋等と現場の遺体や遺留品のものとが、

完全に一致したことで、

草薙はそこの宿帳に記されてあった「富樫慎二」が、
遺体の身元だと想定して捜査を進めていくことになった。

けれど、容疑者として名前の上がった、
江東区森下に住む富樫の元嫁の花岡靖子には鉄壁のアリバイがあり、

草薙は友人で物理学者の湯川学(ゆかわ・まなぶ)にその概要を聞かせると、

「相当な強敵だぞ」

と、今後の捜査の進展を案ぜざるを得ない言葉で釘を打たれてしまう。

そして、釘を打たれたのは草薙だけではなくて、

事件の渦中にいる花岡靖子は、
昔の馴染客である工藤邦明(くどう・くにあき)と懇意にしていたところを、

あろうことか、富樫の殺害を隠蔽してもらった石神に見つかってしまう。



◇『容疑者Xの献身』第三部


授業を終えた石神が職員室に戻ると、
自身の机の上にメモが載っていました。


『湯川という方からTELあり』

『容疑者Xの献身』p156


事務員が書き残したと思われる雑な字のメモに、
石神は妙な胸騒ぎを覚えつつ、

ひとまず、
記載されてあった電話番号にかけることします。

すると、電話に出た湯川は、


今日、これから会えないか

『容疑者Xの献身』p156


と、先の石神の胸騒ぎを、
さらに掻き立ててくるような提案をしてきます。

けれど、石神としては、
特に断る理由もなかったので、

高校の側で湯川と落ち合うことにして、
そのままアパートへの帰路に着こうとすると、

その石神を制するように湯川がさらりと一言。


「あそこに行きたいんだよ。例の弁当屋に」

『容疑者Xの献身』p158


その湯川の一言に「……どうして?」と、
顔を強張らせずにはいられない石神でしたが、

当の本人はただ「弁当を買うため」という純粋な理由で、
目的地である『べんてん亭』へと歩をどんどん進めていってしまいます。


そうして、湯川が店の戸をガラリと開けて中に入ると、

「いらっしゃいませ」と彼に愛想笑いを向ける靖子。

しかし、その後ろに続く石神の顔を見た瞬間、

彼女の笑顔は中途半端な形で止まってしまいます。


流石の湯川も、
その靖子の張り付いた笑みに違和感を覚えたらしく、


「彼が何か?」

『容疑者Xの献身』p159


と、靖子に尋ねると、
彼女は多少のぎこちなさが残るものの、


「お隣さんなんです。いつも買いに来てくださって……」

『容疑者Xの献身』p159


と、なんとかかぶりを振る余裕は残っていました。


しかし、本当の問題はその後でした。


というのも、湯川と石神が店内にいる最中、
つい先日、靖子と一緒にタクシーを降りてきたあの男、


工藤と石神は思わぬ邂逅を果たしてしまうからなんですね。


しかし、当の工藤は石神のことを知る由もないので、
彼のことは歯牙にもかけず
カウンター越しに靖子と親しげな視線を交わすだけでしたが、

その二人を側から見ていた石神の胸の内は、

決して穏やかではありませんでした。


俺には決して見せない顔を、彼女はこの男には見せるーー。

『容疑者Xの献身』p159


そんな苦虫を噛み潰したような想いを石神は抱いたまま、
湯川の頼んだ品が用意されると二人はお店を後にしますが、


「あの男性がどうかしたのかい」

『容疑者Xの献身』p162


と、湯川に尋ねられたことで、

あの男を気にしていたことが、
自身の態度に出てしまっていたことを石神は悟ります。


そしてまた、それをあの一瞬で見抜いた旧友の慧眼にも。


石神はその湯川の疑問にとぼけながらもそう認識を改めると、
あとは雑談を交えながら自身の住むアパートへと近づいていきまして、

新大橋の横の階段を上がったところで、
湯川が旧友との帰り道を締めくくるように口を開きます。


ところで、数学の新しい問題をひとつ思いついた。

『容疑者Xの献身』p166


ここはひとつ湯川の誘いに乗ってやろうと思った石神は、


「どういうのだ」

『容疑者Xの献身』p166


と、その続きを湯川に促します。


「人に解けない問題を作るのと、その問題を解くのとでは、どちらが難しいか。ただし、解答は必ず存在する。どうだ、面白いと思わないか」

『容疑者Xの献身』p166


旧友からの興味深い問題に石神は、


「考えておこう」

『容疑者Xの献身』p167


とだけ答えると、
湯川は石神の回答に満足したように踵を返し、

そのまま通りに向かって歩き出していきました。



そんな帝都大卒の天才二人を他所に、
警視庁捜査一課の草薙のこの事件に関する捜査は、

残念ながら完全に行き詰まってしまっていました。


再三、事情聴取を行っている花岡靖子からは、
あれからなんのめぼしい情報も得ることができずにいて、

それどころか、

富樫の絞殺痕から炙り出した凶器である、
電気炬燵によく使用されている「袋打ちコード」というのは、

花岡靖子の事情聴取の際に盗み見た、
彼女の家の電気炬燵のコードとは、

違うタイプのものであることが判明しますし、

また、その花岡靖子の張り込みで浮上した容疑者、
会社経営者の工藤邦明への事情聴取も行いますが、

彼の口から出た自身のアリバイと、
渦中の花岡靖子を案ずる彼の想いに草薙は、


 あの男はシロだ。本当のことをいっているーー。
 そして、本気で花岡靖子に惚れている。

『容疑者Xの献身』p197


という自身の考えに確信を持っていました。


なので、草薙は、
その工藤が事情聴取の際に自身に投げかけてきた、

花岡靖子に協力しようとする人間がほかにいる

『容疑者Xの献身』p197

その可能性について糸口を掴むべく、
工藤に事情聴取を終えたその足で、

先日、花岡靖子の張り込みの最中に、
花岡靖子の隣人である石神と共に、

なぜか『べんてん亭』に現れた、
帝都大学の物理学科第十三研究室の、
友人のもとへと向かいますが、

研究室にその友人の姿はおらず、
大学院生が二人いるだけでした。


草薙は院生に湯川の所在を確認すると、

湯川は篠崎駅にいると告げられます。


篠崎駅といえば、

富樫の死体の側に放置されていた自転車が盗まれた土地の駅でして、

草薙は、これまでの湯川の事件に対するスタンスが、
極力関わらないようにするものだったことを考えると、

確実に何かを解き明かそうとしている動きに違いないと考えまして、

すぐさま自身も篠崎駅へと向かいます。


そうして、都営新宿線篠崎駅を降りた草薙は、

駅周辺にあるスーパーの向かいの本屋手前のガードレールに、
ソフトクリームを食べながら腰掛けている湯川を見つけると、

草薙は単刀直入に彼に尋ねます。


「こんなところで何をしているんだ。おっと、ソフトクリームを食っている、なんていう答えは聞きたくないからな」

『容疑者Xの献身』p208


しかし、この友人は結論を先延ばしにする癖があり、
その草薙の問いには答えず話題をはぐらかしてきたため、

少し声を荒げる草薙。


それでも、湯川は全く怯まず、
自身のペースで会話を進めていきましたが、

草薙がこの篠崎で盗まれた自転車の話題を挙げた途端、
湯川はこんなことを口にします。


「そこなんだがね、もし自転車に指紋が付いてなかったとしたらどうだろう。君たちは死体の身元を突き止めることはできなかっただろうか」

『容疑者Xの献身』p210


少し考えた草薙は、
結局は毛髪のDNA鑑定で身元が判明しただろうと応えますが、

その草薙の回答で水を得た魚のように目を光らせた湯川は、
「それなら」と自転車の持ち主がすぐさま判明した点を挙げて、


「なぜそうあっさりと持ち主が見つかったんだ」

『容疑者Xの献身』p212


と、追求の手を緩めません。

しかし、草薙としては、
「盗難届が出ていたのだから当然だ」と、
至極当たり前のように湯川の追求に応えますが、

その草薙の回答に未だ満足していない湯川は、
自転車が盗まれた場所を草薙に案内させて、

そこに今も並べられている、
数多くの自転車を眺めたかと思えば、


「一体、何が気に入ったのかな」

『容疑者Xの献身』p213


と、ここでも煮え切らない質問を草薙に浴びせます。


再三、湯川に結論を先延ばされた草薙は、
流石に苛立ちを隠しきれず、


「おまえ、何がいいたいんだ?」

『容疑者Xの献身』p214


と、目の前の物理学者に感情をぶつけたかと思えば、
その物理学者はくるりと踵を返して応えました。


「僕の推理をいおう。その自転車は新品もしくは新品同様の品だった。どうだい、違うかい?」

『容疑者Xの献身』p214


先日の事件の概要を湯川に教えた際、
盗まれた自転車が新品だったかどうかは、
口にしていなかった草薙は、

彼の言葉に目を見張ります。


では、なぜ自転車が新品である必要があったのか?


湯川は続けてこう口にします。


自転車の持ち主が間違いなく証言することがある。それは、盗まれた場所は篠崎駅、ということだ

『容疑者Xの献身』p215


その湯川の言葉に息を呑んだ草薙は、彼の顔を捉えて、


「俺たち警察の目を篠崎駅に向けさせるための偽装だといいたいのか」

『容疑者Xの献身』p216


と、まるで生徒が教師に正解を求めるような反問を湯川に投げかけますが、

残念ながら、

その湯川から告げられたのは伸ばした手を振り払われるようなものでした。


「君にいっておくが、今回にかぎっては、全面協力というわけにはいかない。僕は個人的な理由で事件を追っている。僕には期待しないでくれ」

『容疑者Xの献身』p217



そんな言い争う帝都大卒の二人を他所に、
もう一人の帝都大卒の石神は何をしているのかというと、

工藤邦明が経営する会社のビルから少し離れたところで、
車のハンドルを握ってじっとその時を待っていました。


車に備え付けられているデジタル時計が、
午後五時五十分を示した時、

工藤の経営する会社から工藤本人が退社したところを確認すると、
石神は手にしていたデジタルカメラでその姿を捉えて、

嫉妬心に駆られつつも、シャッターを押していきます。


さらに石神の行動はエスカレートしていくばかりでして、
ビルの裏手から工藤の運転する緑色のベンツが出てくるなり、

石神はその後を拙いながらも付かず離れずの状態で尾行していき、

品川の道路際に建つ立派なホテルの地下駐車場に、
彼の車が入ってくのを石神はその目で捉えると、

自身も後を追うようにしてその駐車場へと車を滑り込ませていきます。


すると、流石の工藤も後をつけてくる石神の車に気が付いたのか、
何度か後ろを振り返り、石神の乗る車に注意を配るそぶりを見せますが、

石神はなんとか気付かれないようにもう一度、
カメラのシャッターを押していきます。


そして、石神は撮影し終えた二枚の写真を眺めつつ、
その写真に応じた次のような文面を頭の中で組み立てていました。


『貴女が頻繁に会っている男性の素性をつきとめた。写真を撮っていることから、そのことはおわかりいただけると思う。
 貴女に訊きたい。この男性とはどういう仲なのか。
 もし恋愛関係にあるというのなら、それはとんでもない裏切り行為である。
 私が貴女のためにどんなことをしたと思っているのだ。
 私は貴女に命じる権利がある。即刻、この男性と別れなさい。
 さもなくば、私の怒りはこの男性に向かうことになる。
 この男性に富樫と同じ運命を辿らせることは、今の私には極めて容易である。その覚悟もあるし、方法も持っている。
 繰り返すが、もしこの男性と男女の関係にあるのならば、そんな裏切りを私は許さない。必ず報復するだろう。』

『容疑者Xの献身』p223-224



草薙は湯川にはっきりと拒絶の意を示されたことから、

それはつまり、

「あの数学教師が何か絡んでいるからではないのか?」

という自身の考えを捨てきれず、
花岡靖子のアリバイを探る一方で、

あの冴えない数学教師の石神哲也についても、
外堀からその人と成りを詳らかにしていました。


すると、その外堀から埋めている最中、
『べんてん亭』に石神のことで事情聴取を行った際、

電話に出た店主は、

「その石神は花岡靖子を目当てに来店しているんじゃないか?」

との憶測を草薙に打ち明けてきたことで、

草薙は頭の中で、

「石神哲也は花岡靖子に惚れている」

という構図を組み立てていきます。


そのような構図を頭の中で組み立てた草薙は、
石神に再度事情聴取を行わずにはいられず、

森下のアパートへ意気揚々と向かうも、

残念ながら石神は留守でした。


草薙はめげずに彼が勤務する高校に電話をすると、
高校が春休みなのにも関わらず現在追試を行なっており、

石神はその追試の真っ最中だということだったので、

石神が勤務する江東区の私立高校に草薙は出向いていきます。


そうして、再度対面する草薙と石神。


草薙はまずは雑談とばかりに、
石神に追試の件で労いの言葉をかけたり、

また、
石神の作る問題は難しそうとの言葉を投げかけると、

それを受けた石神は、

「難しくはありません。ただ、思い込みによる盲点をついているだけです」

『容疑者Xの献身』p272

と、お互い言葉のジャブで相手の出方を探っていきます。


とはいえ、草薙は、
刑事である自分が来たということは、

つまり、そういうことであることは、
石神も承知しているだろうと考えて、


本題である三月十日の夜のことについて、
再度、石神に尋ねていきます。


しかし、石神の口から出るのは、

やはり先日森下のアパートで伺った内容と同じものでした。


草薙は半分そうなることは予想していたため、

事務員から借りてきた石上の勤怠表や、
担当クラスの時間割などを石神の眼前へと並べていきます。


けれども、やはりというべきか、

それでも石神の態度は何も変わらず、

あの夜は柔道部の練習が終わるなり帰ったとか、
あの夜は誰とも会っていないとか、

富樫殺害にまつわるめぼしい情報は何も出てきません。



なので、石神も、
力添えできないことを少し申し訳なさそうに、

「すみませんね、わざわざ来ていただいたのに、何ひとつ参考になることをお話しできなくて」

『容疑者Xの献身』p275

と、会話を切り上げようとした、


その時です。


草薙が「ところで……」と三月十一日の箇所の勤怠表を指差して、
石神にその日が「午前休」になっていることを確認させたかと思えば、

その前日の三月十日も「午前休」になっていることを指摘してきまして、

草薙は満を持した表情でこんなことを石神に問いかけてきました。


二日連続続いたことは、今までになかったそうですね

『容疑者Xの献身』p276


さすがの石神でも、
この草薙の指摘には慎重にならざるを得ませんでして、


「まあ、深い理由はありません。おっしゃるとおり十日は、前日に夜更かししたものですから、午後からの出勤にしてもらったんです。ところがその夜になって少し熱が出たので、翌日も午前中は休まねばならなかったというわけです」

『容疑者Xの献身』p276


との回答をなんとか拵えましたが、
その回答を目の前で受けた刑事の目は、

明らかに疑いの籠った目で石神を見返してきていました。



石神への聴取を終えるなり草薙は、
その成果を仲違いしていた湯川への和平材料として、

この事件、何度めかわからない、
帝都大学理工学部物理学科第十三研究室にお邪魔しており、

その日は湯川が珍しく若干苛つきながら、
悄然と立っている学生にレポートの再提出を求めていました。


その湯川と学生のやりとりを側から見ていた草薙は、
それがひと段落したところで湯川に石神に直接会ってきた旨、

さらには、石神から聞かされた、
三月十日と十一日の「午前休」のことを打ち明けます。


すると、湯川は石神が犯人ではないことを願いつつも、

その連日「午前休」を取得した理由について思考を巡らせていきました。


しかし、その時です。


一人の学生が研究室のドアをノックして入室してきまして、

湯川はその学生に目を向けるなり、
「急に呼んですまない」とその学生に一言詫びて、

呼んだ理由を端的に告げていきます。


「君のレポートはなかなかよく書けていた。ただ、ひとつだけ確認しておきたいことがある。君はあれを物性論で語っていたが、どうしてかな」

『容疑者Xの献身』p285


すると、学生は戸惑った顔をして、


「だって、物性論の試験だったから……」

『容疑者Xの献身』p285


と、さも当然の如く応えます。

すると、湯川はかぶりを振って、


「あの試験の本質は素粒子論にある。だからそちらからもアプローチしてほしかった。物性論の試験だからといって、ほかの理論は無用だと決めつけるな。それではいい学者になれない。思い込みはいつだって敵だ。見えるものも見えなくしてしまうからな」

『容疑者Xの献身』p286


と、その学生が優秀であることを見込んで彼なりのアドバイスを施します。


その様子を側から見ていた草薙は、

先の石神とのやりとりの中でも、
彼が似たようなことを言っていたことを思い出し、

それを湯川に手土産とばかりに教えることにします。


「ふうん、思い込みによる盲点をつく……か。彼らしいな」

『容疑者Xの献身』p286


そう湯川は呟き、
ニヤけ顔を覗かせたのも束の間、


次の瞬間には、彼の顔つきが一変します。


そして、
草薙が持ってきた石神の勤怠表をひったくり、
そこに目を走らせたかと思えば、

湯川は苦悶の表情を浮かべて一言だけ。


「そんな……まさか……」

『容疑者Xの献身』p287


そんな彼の表情を草薙は、

これまでに一度も見たことがありませんでした。


〈来週へ続く〉


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