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【アセクシュアルで最も悲しいこと】「恋人じゃないお前は価値がない」と突き付けられる

自身がアロマンティック・アセクシュアルと自認するまで、私は漠然と「生きにくい」とは感じていました。恋愛至上主義の世の中では、私にとって「何がダメなの?」と思うことがたくさんあったからです。
今回はそういう中で、私が1番嫌だったなと思う「恋人じゃない自分は、相手にとって価値がない」について、ちょっとお話ししたいと思います。

彼氏を作って分かったのは「恋愛=意味不明な言動だらけ」ということ

アセクシュアルなので、私には当然恋愛経験はありません。1度だけ「もしかしたら恋愛が分かるのかな」と思って彼氏を作ったことがありましたが、私にとっては「彼氏という肩書の人」というだけで、特別な感情が湧くことはありませんでした。

  • 毎日のようにやってくる日記のようなメールになんて返すのが正解なのか分からない(彼氏がどこで何をしてても良いし、私のことも知らなくて構わない)

  • クリスマスやバレンタイン、誕生日とかに一緒に過ごさないといけない意味が分からない(私にとっては記念日だろうが何だろうが、ただの「1日」でしかない)

  • 彼氏がしてくれたことに対して、何を返せば良いのか分からない(できれば要求を書面でくれないか。同じものか、それ以上のものを返せないって、何よりも恐怖)

という「分からない三重苦」に陥り「世の中の人たちはこんなに意味不明なことを明確にしてこなしているのか、人間、ハンパねぇ」と思ったくらいです。
とにかく「一般的なカップルがしていること」は、私にとってはことごとく意味不明で「彼女」は私には向いていないんだなと思いました。欠陥品である私の、まるで実験のような恋人ごっこに付き合わせた彼氏には申し訳なかったなと思っています。
ただぶっちゃけると、私、彼の顔も名前も覚えていないのです。恋人って多分世間一般で言うと優先度が高い方なのでしょうが、私にとってはそれくらい優先順位は低かったのだと思います。

恋人じゃないと価値のない私

それ以外の「恋人」としてのお付き合いは、私は全部お断りしています。ほとんどの方は、1~2回一緒に食事に行ったとか、何かの集まりでちょっと言葉を交わしたとか、中には一言も喋ったことのない人もいました。こういう人の場合、相手も私もお互いのことをよく知らないので、お付き合いをお断りしても特に問題はありませんでした。

でも、友達として仲良くしていた人から恋愛感情を伝えられて、それを断るのは非常にしんどかったです。なぜなら、私が彼らをどんなに「良い友達」と思っていても、彼らにとって私は「恋人」でなければ価値がないからです。

社会人になったばかりのころ、小中と同じだった友人とよく遊んでいました。彼とは趣味が同じで話も合うし、共通の友人を交えて遊ぶのもすごく楽しかった。私にとっては、一生仲良くしたい友人の一人でした。

でも彼からある日「一葉にとって俺は近い位置にいるのかな?」というメールが来ました。私は「近いってどういうこと?私は友達に順序はつけないよ」と、思ったことを素直に返しました。そうしたら、

「今までありがとう。俺の連絡先は消して良いよ」

と、急に絶縁宣言をされました。当時の私は、何が起こっているのか全く分かりませんでした。あとから学んで知りましたが、彼が言った「近い」とは「自分は恋人だと思って良いのか」という意味だったんですね。どっちにしろ、アロマンティック・アセクシュアルの私には、それには応えられなかったと思います(そもそも私は、恋人と友達ならはるかに友達の方が近い。「友達>>>>>>>>>>恋人」くらいの方程式)。

ただ、このときショックだったのは、彼にとって私は「恋人」でなければ、人間関係を築く価値がないと思われていたことです。彼のあの発言は「恋人じゃないお前とはもう連絡を取らない」という意志表示。つまり「恋人じゃないお前に価値はない」と言われるのと同義でした。私にとって彼は、友人として非常に価値のある人だったので、何の前触れもなく急に絶縁を言い渡されたのは「寝耳に水」で、すごく悲しかったのを覚えています。
これは、私が「自分は人間の欠陥品」と思うのを加速させた出来事のように思います。

それからも、同じようなことが何度かありました。そのため「仕事に関係ないところで、私と人間関係を築こうとしてくる男性」からは、なるべく離れるようにしています。同じようなことになりたくないので。

なぜ男女は恋人じゃないとダメなの?

友人だと思っていた男性に「お前は恋人じゃないと価値はない」と突き付けられた私は、ショックであると同時に「なぜ男女は恋人じゃないとダメなの?」とめちゃくちゃ考えました。私としては男だろうが女だろうが、人間性が優れている人、合う人のことは好きだし、関係性を持っていたい。でもそれが「恋人」でないとダメだというのなら、私にはどうしようもありません。
相手が私に恋愛感情や性的関係を求めないのなら、名ばかりの「恋人」になるのは可能だと思います。でも多くの人は、自分が恋愛感情を向けている相手には、同じく恋愛感情で返してほしいし、性的関係も持ちたいんですよね。それができない私は、相手の求めているものに応えられない。応えられないのに「恋人になってほしい」という要求に応えた時点で「応えられる人」と思われてしまう。堂々巡りだと思いました。
結局「なぜ男女は恋人じゃないとダメなのか?」に明確な答えは出ないまま、今に至っています。

最後に

今回私が書いたみたいな経験は、きっと多くのアセクシュアルの人がしてきていると思います。アセクシュアルの人は同性だろうが異性だろうが関係ないので、相手の性別で対応を変えません。それがオープンに見えるが故に「自分に恋愛感情を持っているのでは?」と勘違いさせることもあるのかなと。でも実際は違うから、相手からしたら「思わせぶりなことをするな」と思われてしまうことがあるのかもしれません。だったら、とても申し訳ないことをしていたなぁと思います。

私が漠然と感じていた「生きづらさ」は、きっとそういうすれ違いから来るものだったのだろうと、今になって思います。

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