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生理、月経、女の子の日、アンネ、月の日、ストロベリーウィーク、日本が攻めてくる日。使い物にならない体で恋人が血のついたシーツを洗っているのを眺めていた日。

その日はよく晴れていた。

丸い窓の形が好きで選んだ恋人の部屋で、ベランダに立って煙草を吸っている彼の背中が好きだと思った。

彼が、私の血がついたシーツを洗って干し終えたところだと気が付いて、ちょっとそれはどうなの?と思いながら、でもまぁそれもいいかと力の入らない体でぼんやりと寝そべっている休日の朝。

20代の始めに付き合っていた恋人は、当たり前のようにそういうことをする人だった。いつだって私はいつの間にか柔らかな毛布にくるまれていた。

生理用品は自分で買ったけど、それを置くために私の手が届く場所に棚を取り付けておいてくれて、それを飲まないと動けもしない私のために市販の鎮痛剤を切らさない。

生理中にセックスするのは嫌だと断っても無理やりにしようとする人や、まるで汚いもののように繋いだ手を振り払った人や、セックスが出来ないとわかるとデートすらなかったことにする、そんな友だちの恋人たちの話が夢か幻に思えるほど。

彼をそう育てた女のことをよく考えた。
母親なのか、恋人なのか、友だちなのか、聞いてみたことはなかったけれど。

生理前になると情緒不安定で、生理中は失敗ばかりで使い物にならず、生理後には落ち込む。絶対にこの時期に大事なことは決めない、とだけ決めていた。私の20代の始めの頃の生理は、ずっとそんな感じ。

10代の始めに生理が始まって、毎月怪我をしているんだと思っていた。その頃は生理痛もそれほど酷くなかったし、眠くて眠くて仕方がないだけだった。それでも10時間以上眠ってなお眠いんだから、不便ではあったんだけど。

性教育も一通り受けたはずなのに、それが「子どもを宿すための準備」であることは理解していても、それが自分の中の身体や精神にどう影響するのかはわからないまま。

「その時だけ万引きが止められなくなる子がいた」

そう言ったのは母だった。

極端な例ではあるけれど、それほど心にも影響があるのなら学校でみんなに教えておいて欲しいと思ったのを覚えている。男にも女にも、みんな。

だって、その子はそれが生理のせいだとわかるまで、どれだけ悲しい苦しい思いをしただろうか。ホルモンのバランスをとるための投薬治療や、心のケアが出来たら。してしまったこと、犯罪はなくならないけれど、少しは何か違ったはずで。

生理痛が年齢や体調によって変わることも、私の場合はメンタルがものすごく影響して周期が正しかったことの方が少なかったのも、全部体験して模索しながら学んだこと。

それはもう、本当に些細なストレス、電車に乗るのが嫌だとか、小テストがあるとか、デートに何を着ようかだとか、それこそまた生理がくるなとか。そういうことで簡単に生理が止まったり遅れたりする。これに気付くまでには結構時間がかかった。

私自身が、そんな日常的なことが体に不調をきたすほどのストレスだと認識すらしていなかったから。

生理との付き合い方は、自分の心と体との付き合い方。

生理用品は何が最適か?
タンポンかナプキンか、カップか布か、大きさは、羽根の有無は、ショーツ型、素材、パッケージ、薄さ…。全部試してみなければわかりようがないのに、加えて経血量が多いか少いかによってバリエーションがまた変わる。

オムツや介護用品と同じく生理用品もドラッグストアやスーパーでは男性が通らなくて済むような導線に置かれていることが多いけれど、機会があれば一度見てみて欲しい。男性も病気や怪我でナプキンをつける必要に迫られることはたまにあるし、大量のラインナップから自分に最適なものを選ぶ必要があることを一度考えてみて欲しい。

生理用の下着も必要だし、人によっては生理用のシーツを買う人もいる。その期間は肌が敏感になるから化粧品を普段と変えるとか、寝巻きを変えるという子もいた。婦人科の通院費もバカにならないし、産婦人科の医師のデリカシーの無さに傷つけられることもある。

私は鎮痛剤を4時間おきに最大量飲んで、でもそれさえすればまぁ普通に動けていた。
最近は薬はあまり飲まなくても良くなって、代わりにしょっちゅう貧血を起こしている。微熱が続いているので顔色は常に悪いし。

ここまできて、でもこれはあくまで『私』の話でしかない。個人差がめちゃくちゃあるから。

だから、基本的なことは、全員に教えておいて欲しいと思うし、理解しておいて欲しいと思う。

女の体に生まれたっていうだけで、どれだけ社会の理解が進んでも、女は自分の体と心を月に一度無理やりかき回されるような現象とその対処法に慣れていかなければならない。

そこに、生理用品をセックス用品と間違えたり青い水が出るんだと勘違いしてしまうような無知と、女は感情的だとかすぐに泣いて怒る理性的な思考ができないとか差別的な無理解と、性欲のはけぐちとして飛んでくる暴力的な言動が加わるのは本当にしんどい。子どもを産めだとか、正しい母親のイメージだとか、性欲を満たす「いい女」のイメージだとか押し付けられるのは余計なお世話だしね。

だから、変えられることは変えていきたいし、変わっていって欲しいと思うんだよね。

ちなみに、 タイトルの「日本が攻めてくる日」は、生理の呼び方の1つで、シーツについた血が日本の国旗に似ていることから。目から鱗とはこのことかと思った(笑)
国旗に赤色が使われていたり、共産主義の赤のイメージがある国はだいたいどこもそういう言葉に使われているみたい。


参考URL

ハフポスト
生理にかかるお金、一生でいくらになる? 計算してみたら......女性の多くが経験する生理。この自然現象に、一体どれくらいお金がかかるんだろう、と考えたことがある?
<記事を読む>

BuzzFeedNews
世界中の女子は生理をこう呼んでいる
呼びかたで見えてくる、生理との向き合いかた。
<記事を読む>

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