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オンライン往復書簡①「早口で、声が大きすぎる自分が嫌です」

T子さんから、お問い合わせフォームに届いたメール。
そのやりとりをT子さんの許可を頂いて、
往復書簡のようにnoteに綴ってみようと思います。
もしかすると、誰かの何かのヒントになるかもしれません。

いちえ先生の"自分の声と話し方が嫌い" を読ませていただきました。
日頃から悩んでいたこともあり、オンラインでレッスンを受けることは可能でしょうか。
T子

T子さま

ご連絡ありがとうございます。
アナウンスハウス松山代表のいちえこと福井一恵です。

noteの記事を読んでくださったのですね。
嬉しいです。

日頃から悩んでいたとのこと。
もちろん、オンラインOKです。

日頃、どういうことでお悩みでしょうか?
人に何か言われたり、指摘されたり、
自分悩むきっかけになった出来事はありますか?
きっかけではなくても、悩みが増すようなことはありましたか?

また、どういう自分になりたいという理想はありますか?

全くまとまりなくても構いませんので、
思うままに、個人レッスンより前にメールに書き綴って送っていただくと、
オンラインでお話しする際に、時間を有効に使えると思います。
noteを読んでどんなことを思ったり感じたりしたかでもOKです。

いちえ先生
早速の返信 ありがとうございます。

私は 人に言われたわけではないのですが 
以前から自分の喋り方が大嫌いでした。
早口で声も大きいです。
バイト先などでは、大きな声は確かに役にたちます。
でも、非常に疲れます。
そして、子供からも(もう成人してます)
なんで家にいてもそんなに声が大きいのか、と叱られます。
その時は意識しても、すぐ忘れます。
なんで忘れるのか、自分でも悲しくなります。
心療内科に行こうかと悩んでもいます。
ただ 注意してもらうとその短い時間は 普通に話せます。

昨年 新しい仕事に就くための研修があり、
うまれて初めて自分の姿をビデオに録画されました。

その時あまりのショックで 死にたくなったほどです。
4人で研修を受けたのですが、他のの録画を見ると
自然に普通に話しをしてています。
自分だけが、わざとらしく、すごく下手なことに気づかされました。

自分で自分の話し方が嫌いで、
自然に話したいと思うのですが、どうやったらいいのかわかりません

話していてすごく疲れるのですが、
それも、自分だけかも、と最近自覚してきました。

本を音読するときはゆっくり読めます。
自分でなにか発信しようとすると、内容に意識が行き、
自分のくせをすっかり忘れてしまいます。

子供からよく注意されていたのは、これだったのか、
と気づいたのですが、直せません。

自覚してからがほんとにつらいです。

そんなとき 先生のnoteをみつけて、連絡してしまいました。

自分の声を録音しても、その時はショックで、
しばらくは気分が落ち込み、
話し方は直るのですが、また元に戻ります。
なさけないくらい学習しない自分が本当にいやになります。 

先生の生徒さんで 
私のような方がおられて克服されている例などあると勇気がでます。

とりとめもない長文すみません。

T子


T子さま

丁寧なお返事をありがとうございます。
T子さんがこれまで長い間、
自分の声や話し方について良い感情を持てなかったこと、
意識して変えようとして努力をしたこと、
でも、すぐに忘れてしまうことで余計に悩んでしまったこと、
など、とてもよく伝わってきました。

ご自身では、早口で声が大きいと思っていらっしゃるのですね。

そして、子どもからも声が大きいと注意されると
余計に気になって、過剰に大きいのだと思ってしまいますよね。

意識して小さい声にできても、すぐに戻ってしまう。
意識してゆっくり話せても、自分が何か発信しようとすると、
内容に意識が行き、早口になってしまう。

これらのことから、考えられるのは、
「声の出し方やスピードを意識して」変えようとしても、
その方法では難しいだろうなと思います。

なぜならば、
「声の出し方やスピード」というテクニックが原因で
大きい声や早口になっているわけではなさそうだからです。

T子さんは、「自然に話したい」のですよね。
T子さんのイメージする「自然に」はどういう話し方でしょうか。
きっと、
「自分以外の人はみんな自然に話している」
と考えてしまうこともあるのではないでしょうか。

まず、ご自身でできることのひとつとして、
「理想の話し方をしている人」になりきって話してみる、
という方法があります。
一人でいる時間に、その人のものまねをするように、
なりきって話してみるという方法です。

だれか芸能人でT子さんが良いなと思う人はいませんか。
できれば、性別が同じで年齢の近い人が良いと思います。
その人がトーク番組に出ているときなど、番組を録画して
その人のトークをオウムのように真似して繰り返すのが良いと思います。
繰り返していくうちに、その人の癖がうつっていきます。
その人っぽい話し方が出来るようになります。
ものまねが出来るようになれば、そこからがスタートです。
自分との違い、が「体感」できるようになるからです。
ただ、この方法は、
自分で変化を感じられるようになるまでに時間がかかると思います。

もう一つは、自分が話しているときの心理状況を観察してみることです。
「大きい声」が出ると言うことは、とても得なことです。

声帯や身体の条件が整わなければ、大きい声が出ません。
大きい声が出る人は小さい声を出すことは簡単にできますが、
小さい声しか出ない人の声を大きくしていくのは難しいのです。

また、早く話せる人はゆっくりにできますが、
ゆっくりな人を早くすることは難しいです。

さらにこれは余談ですが、
低い声の人に高い声がでる訓練をするのは比較的簡単ですが、
高い声の人に低い声を出す訓練をするのは大変難しいです。

声帯や身体の条件によって、
低い声をだすのも、大きい声を出すのも限界があります。

そういう意味では、T子さんが理想の話し方に近づくには
限界はありません。
物理的にも小さくすることも、ゆっくりすることも可能です。

そうはいっても、
一時的にはできても、すぐに忘れてしまう、戻ってしまうのですよね。

では、どうすればいいのか。

そこで、自分が話しているときの心理状況の観察が重要になります。

早口になる人は「伝えたい情報量が多い」ことがあります。

それだけでも早口になりますが、
もう一つの原因として、
これまでの人生の中で「聞いてくれなかった経験を持っている」という人もいます。

その場合、
「聞いてくれているうちに伝えたい情報を詰め込みたい」
という心理が、自然と早口にさせるのです。

大きい声になる人も似ています。
「聞いてほしい」「わかってほしい」という思いが強いことがあります。
相手が聞きたいと思っている気持ち以上に
「伝えたい」「わかってほしい」
という思いがあると
それが大きな声という方法をとらせるのです。

レッスンは、そのようなことをお話ししながら、
自分の話し方を知り、自分を知り、新しい方法を試していくという
カウンセリング的な進め方になります。

ですから、話し方教室で想像するような
発声練習や話し方のテクニックを教えるというレッスンになることは
あまりありません。
もちろん、必要に応じて発声発音練習も取り入れますが、
それが必要になるのは口の中の使い方を間違って覚えていて、
滑舌が良くない人が中心です。

T子さんの場合は、おそらくカウンセリング的なレッスンになるかなと思います。

費用的なこともありますので、もちろんムリにオススメはしませんが、
どうしてもつらくなったら、いつでもお声かけくださいね。

克服されている方がいるかどうかというご質問に対しては、
いるといえばいますし、いないといえばいないかもしれません。

克服された方は、T子さんとはタイプの違う悩みでしたが、
人生が変わるきっかけになったと言っていただき、
今では生き生きとご自身の世界で発信していらっしゃいます。

反対に1回のレッスンで、諦めた人も居ます。
諦めた方は、早口で焦るとどもってしまうという悩みでしたが、
ご自身の心には向き合う決心がつかず、1度のレッスンで辞められました。
話し方のテクニックだけで改善できると思っていたと言うことでした。

私は瀬戸内海に面した温暖な香川県生まれです。
主観ですが、温暖な地域で生まれ育った人は声が大きくよく響くような気がしています。
(私の親戚だけかもしれませんが…)

それではまた、気になることがありましたら、お声かけください。


いちえ先生

大変ご丁寧な返信をありがとうございます。
先週まで非常に忙しく、また体調も崩してしまい、
ご連絡できず申し訳ありません。

まだお目にかかる前に、詳細なアドバイスをいただきまして
ほんとに恐縮し、そしてとても嬉しい気持ちでいっぱいになりました。

私の特徴や意向をしっかりと正しく理解してくださった点にも
深く感動しました。

小さい声の方、そしてゆっくりとしか話せない方と比べて、
私には改善のチャンスがある、という事実があることは
今まで気づかなかったことです。

はじめて、自分の嫌いな所が少しだけ、
嫌いの度合いが薄まってきた感じです。

相変わらず、すぐ忘れてしまいますが、
忘れては思い出し後悔し、また落ち着く。
また、大きな声になり、すぐ直す、の繰り返しの毎日です。

憧れの話し方をされる有名人は 姜尚中さん(男性の作家さん)です。
私とは180度違います。
早さというか、あのトーンが理想です。
疲れそうな話し方ではなく、自然な感じで、
もっと話しているのを聞いていたくなる感じです。

とりあえず自分で3か月くらい、努力してみます。
先生のアドバイスがほんとに一筋の光に思えました。
ありがとうございました。 
(またご連絡させていただくかもしれません)

T子

(つづく)


     


書いてみたこと、発信してみたこと、 それが少しでもどこかで誰かの「なにか」になるならばありがたい限りです。