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ポンコツ同期

会社には色んな人がいる。

会社で一番のポンコツは同期にいた。

コールセンターでの研修の時、他の研修生の前で僕とポンがロープレをすることになった。
お客さんとオペレーターの役でトークの練習をしてみようというわけだ。

コールセンターの対応は復唱が基本。
相手の話を敬語で復唱して、ちゃんと伝わっていることを相手に示す。


ポ「ご契約者様のお名前を教えてください」

僕「ヤマダジロウです」

ポ「ヤマダジロウ様ですね。ありがとうございます。では、今お話頂いているお客様のお名前をフルネームで教えてください」

僕「ヤマダタロウです」

ポ「ヤマダタロウ様ですね。ありがとうございます。それでは、ご契約者様との間柄を教えてください」

僕「父です」

研修室にいた全員が「お父様ですね」と返すんだろうと思って見ていた。

だって数分前に育成担当がお手本でお父様ですね。って返してたんだから。

しかし、「父(ちち)」が頭にこびりついて離れないポンは少し間を置いてこう返してきた。

ポ「…あっ、お父上(ちちうえ)ですね?」


ポンはちょっと昔の時代から来ているようだ。



実際に電話を取り始めたポンはある時、パスワードの口頭通知対応をしていた。

アルファベットを電話で伝える時は、聞き取り違いがあるといけないので、ちょっと工夫が必要だ。

メジャーなのは、aはアメリカのaとか、bはブラジルのとか、国名で伝える方法。

昼休みにみんなで昼食に行こうと他の同期と一緒に呼びに行くと、まだ電話中のポンが必死に例えを絞り出しているところだった。

「アメリカのa、お米のo、田んぼのt、ライスのr、…」


ポンはどうやらごはんが大好きらしい。



電話の内容によってはお客様の家へ送付物を送ることもある。

送付物を送る際に説明をする内容も決まっている。

『送付物の到着日は前後することがございます』

このように書かれているスクリプトも、ポンが話せばこうなる。

「送付物の到着は前後左右します」


隣の家に届けちゃダメだろ。



そんなポンは誰よりもポンコツで、誰よりもみんなから愛されている。

誰からも愛されるポンがたまに羨ましくなる時もある。

今は大阪で、ツッコミたい盛りの関西人の格好の餌食になっていることだろう。

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