Manifesto Awards Collection Day2 若者の参画と意見反映
「若者の参画と意見反映 シティズンシップの未来」
(令和6年(2024年)2月1日。早稲田大学井深大記念ホール)
マニフェスト大賞実行委員会等の主催のManifesto Awards Collection に参加。Day2は、「若者の参画と意見表明 シティズンシップの未来」が主テーマとなっていました。「こども選挙」で実行委員を務める等、シティズンシップ教育に、研究、実践で関わって来た私としては、とても興味深いプログラムでした。
1.西尾真治氏による基調提起
最初に、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社コンセンサス・デザイン室長で、早稲田大学マニフェスト研究所研究員の西尾貞治氏から基調提起がありました。
(1)マニフェスト大賞とシティズンシップ
マニフェスト大賞は18回の歴史。もともと議員・会派のためのものとして創設。第2回に首長部門の創設。第3回で市民・団体部門の創設。
マニフェストサイクル(地方におけるPDCAサイクル)、選挙を起点としてまちづくりをするサイクル。その全ての段階に市民が関わる。市民の視点でチェックをしていく。事前のチェックと事後のチェック。
関わるには、市民の市民性が高められていかなければならない。シティズンシップ教育の取組みが大切。
このように、簡潔に、マニフェストとシティズンシップ教育の関係を説明されています。
ここで使われた資料、非常にわかりやすいので、再現すべく作ってみました。
この後、西尾氏からは、マニフェスト大賞・市民部門の変遷の説明がありました。平成24年(2012年)の参議院の「子ども国会~復興から未来へ~」の事務方の実行副本部長を務めた後、模擬選挙推進ネットワークの林大介さんにお声がけいただいて、日本シティズンシップ教育フォーラムに加わる等して来た私としては、見聞きして来たこの間の動きを整理する意味でも大変すばらしい報告でしたので、これも再現すべく、資料を作ってみました。一番下の「こども選挙実行委員会」に関わった一人として感慨深いです。(西尾氏の整理の意図を十分に理解していない部分もあるかと思いますが、その点はご容赦願えればと思います。)
(2)牧之原市の対話による協働のまちづくり
西尾氏は、次に、「対話による協働のまちづくり~牧之原市の取組~」と題しての話をなされました。
最初はマニフェストの市民による検証からスタートして、マニフェストサイクルの市民提案につながる。取り組みが広がっていて、それを自治基本条例に位置付けることで、制度的に、まちづくりの中に市民参加、市民の対話と協働が取り入れられている。
そして、地域大学生プロジェクトという形で、市内にある高校と連携をして、高校生のファシリテーターの育成を強化の中に取り込んでいく。高校生ファシリテーターがまちづくりの現場で活躍するというような場面を作っていくという形で発表している。
ポイントとしては、市民ファシリテーターを養成しているというところ。外部から専門家を呼んで、対話をするのではなくて、市民の中から自ら対話を企画し運営していける、そういう市民ファシリテーターを養成し、市民同士の対話を進めていく。
そして、それを高校に下していって、地域理解育成プロジェクトという形で高校生ファシリテーター、高校生グラフィッカーがまちづくりの現場で活躍をしている。その高校生たちが、自分の出身の中学校に出向いて、授業をして、今度は高校生が中学生に講座を開いて、教えていく。そういう循環もでき始めていまる。
そして市役所と連携して、実際に市のまちづくりの計画書の作成に活用している。あるいは小学校を廃校にした後の校舎をどう活用するかっていうような場面で、こういった対話の取り組みを活用して、実際に、市民の意見、市民を反映した形で廃校の活用が進んでいる。実際のまちづくりの中にもこういったことが反映されている。
シティズンシップの世界では有名な牧之原の事例ということですが、私は今まで接したことがなかったため、高校生ファシリテータ―から、中学校での「先輩ファシリテーション講座」、最近は小学生のファシリテーターの登場まである等、とても刺激的でした。更に勉強したいと思います。
2.事例発表とディスカッション
次に、4つの事例発表がありました。
(1)わかもののまち 土肥潤也氏
日本シティズンシップ教育フォーラムで知り合い、私設民営一箱本棚図書館「みんとしょ」システムの創始者として、付き合いのある土肥氏。こども家庭庁の審議会の委員で、専門委員会の委員長等も務めていますが、今日は、NPO法人わかもののまち代表理事の肩書で登壇。
土肥氏は、マニフェスト大賞優秀賞を、第10回(わかもののまち静岡実行委員会)、第12回(若者による静岡県知事選公開討論会2017)、第13回(日本版ローカル・ユースカウンシルプロジェクト)、第15回(みんなの図書館さんかく)で受賞していました。この第15回は私も知っていましたが、それ以外は知りませんでした。土肥氏の「振り返ってみますと、私自身マニフェスト大賞に支えられながら、育ってきたなというふうに改めて、感じるところ」とのこと、実際にそうだなと思えました。
「2023年、去年はこども若者参画元年だったなというふうに考えている」と、「こども大綱」が出され、こども基本法第11条により、こどもの意見の反映の義務化が、地方における「こども計画」の策定の中で、現実化していく段階にあることに言及。
3つの論点として、「その1変わらないといけないのはだれか?」、「その2なにに参画・意見反映するのか?」、「その3「こども」と「若者」の違いは?」を示し、「正直、うちの児童館の子どもたちがこんなに立派に意見を言えるとは思っておらず、本当にびっくりしました。今回の経緯から児童館でも日常的に子どもの声を聞いていかないといけないことに気付かされました。」との、意見交換会に参加したとある児童館職員の感想を示す等して話を進めました。
土肥氏は、この日のFacebookに「久しぶりに北川正恭先生ともお会いできました◎「どんどんやればいいんだよ!」と激励をいただき、勇気づけられました!!どんどんやります!」と投稿。マニフェスト大賞に支えられながら育って来た土肥氏、さらに勢いづくのだろうなと思います。
(2)新城市若者議会委員 木戸ゆめ氏
長篠の戦いが行われた場所でもある愛知県の人口4万人余の新城市。
新城市若者議会のことは多少聞いていましたが、その発祥の話は初めて聞きました。新城=ニューキャッスルだ(これを言って推進した人が結局偉かったということになります)ということで、海外の複数のニューキャッスル市の関係者の集まりに参加し、帰国した若者が、ヨーロッパの若者は、その意見をまちづくりに実現させていたこと、そういうことができる場所がそれぞれのまちにあったということに、大きな刺激を受け、「若者が主体となる団体が必要!」と自らボランティア団体を立ち上げたのがきっかけとのことでした。その後、新城市若者条例、新城市若者議会条例が作られ、平成27年第1期新城市若者会議が始動したとのことです。(新城市の担当者の午後の説明では、市との協働事業(自治基本条例による)の市民自治会議での市民を交えての議論、答申を経て、条例化されたとのことです。)
この新城市若者議会の凄いところは、1,000万円の予算提案権を持ち、若者自らが自分のまちのことを考え、政策立案するということです。若者会議で、1,000万円の仕事をしてしまうのです!
委員(20人)、市外委員(定員5人)、メンター市民、メンター職員、事務局(市の市民自治推進課)の体制。
委員応募条件は、市内在住、在学、在勤のいずれか。概ね16歳から29歳。任期1年(再任可)とのこと。
3月に委員募集、4月に準備会、5月に所信表明、6月7月検討期間、8月中間報告、9月10月検討期間、11月市長答申。その後、詳細な検討を更に3月まで詰めていく。2月ごろに市議会との意見交換があり、3月には最後の若者議会で市長答申後に検討してきた内容を市長に報告をする。
普段の会議は市役所の会議で行っているが、5月の所信表明、11月の市長答申、3月の市長報告の3回については市議会の議場を借りて行う。
会議室では全体会を年に15回、各委員会を15から20回ほど行う。
その他実績等は、HPに譲りたいと思います。
木戸氏は、若者会議に参加する理由として、「新城が好き、自分が住むまちを自分で理解したい、多くの人と交流をしたい、自分ではつかめない機会を得たい、何よりも大事にしている理由は私が参加することで、周りの人に新城市を身近に感じてほしいということです。」とし、「行政と市民との間にこのような組織が存在することで、市民参加型のまちづくりが確立されていくと思います。」と述べられました。
(3)こども選挙実行委員 池田一彦氏
こども選挙については、池田氏とともに、私も関わっており、「「こども選挙」の奇跡の軌跡」というnote(2023.11.13)を書いているので、そちらをご覧いただければということで、ここでは省略したいと思います。
ただ、池田氏が最後に、この活動を通して得た学びとして示したことを掲げたいと思います。それは、「こどもへ」から、「こどもと」へ、そして「こどもが」と、大人の実行委員自身が変遷してきたということです。
「どうやって、主権者教育するかとか、こどものための選挙をどうやって作ろうかっていう、大人から「こどもへ」ということに、一所懸命活動してきたんですけど、途中で「こどもと」一緒にやるっていうことが重要なんじゃないのかなっていうことで、「こどもと」一緒に選挙を作るっていうスタンスに変えたんですよね。それで当初は、集計作業とか受付っていうのも大人がやるっていう予定だったんですけど、全部そこをこどもに任せるようにしました。そうしていくと、「こどもが」っていうふうに、「こどもが」主体となって、自ら勝手に動き出していったんですね、例えば「こども選挙」を告知するためのポスターを学校に貼ってくださいって、校長に直談判したこどもが現れました。」
「こどもが主体っていうんですけども、このこどもとの関わり、こどもと大人と社会の関わりっていうのが結構、関係性として重要かなと思って、最後に申し上げさせていただきました。」
(4)「みんなのルールメイキング」山本晃史氏
「新たなシティズンシップ教育への挑戦!生徒が主体となり、学校の校則・ルールメイキングを見直す「みんなのルールメイキング」」として認定NPO法人カタリバの山本晃史氏が発表されました。
ルールメイキング実践校が2024年1月29日時点で、326校となったとのこと。初年度全国4校から始まった取組。実に大変で素晴らしい取組だと思います。ただ、これについても私、noteに書いているので、そちらをご覧いただければと思います。
日本財団の2023年9月の「こども1万人意識調査報告書」によると、「こども大綱で取り組んでほしいことについて、小学生・中学生の1位(全体の2位)は「学校教育の内容や規則の見直し」ということの紹介は、「こどもの声を聞く」場合のこどもの関心の所在を改めて認識させてくれました。
ルールメイキングを始める前の先生のイメージは、「先生=ルールや指導を押し付ける人」でしたが、ルールメイキングの取組をすると、先生のイメージは、「一緒に考えてくれる人」、「生徒たちのことを真剣に考えてくれると感じている」との調べや、先生同士の関係も良くなったとの話は、大変興味深かったです。
ルールメイキングの取組を行っていない学校の数の方が多数であることは事実ですので、困難ですが、着実な広がりを期待したいと思います。
3.ディスカッション
後半は、発表者全員が登壇してのディスカッション。
ここでは、まず、木戸氏の次のような発言が印象的でした。
「私が若者議会に入って、変わったことは2つありまして、大きく1つ目は人と話を週一とかのペースでするので、しかも、それも同年代じゃない上の人とか下の人とかと話をするので、話を聞く姿勢について、自分の意見を常に持っておかなければならないんだなっていうことを若者議会の話し合いの中では知ることができ、話し合いのスキルが高まったっていうのは挙げられます。」「もう1つが、自己成長という面で、議場とかで話す機会などは、本当に普段の学校生活ではできないので、そこで人前に立って話すっていう機会が得ることができたことで、自信を持ってこういう場にも立つことができているのかなと思うので、そちらの2点が私の成長した点です。」
土肥氏は、次のように述べました。「名古屋市の高校生事業をうちのNPOでお手伝いさせていただいていて、(略)参加した高校生の子が終わった後に感想を書いてくれたんですけど、その時に、大人がやってることに意見を言ってはいけないっていうふうに思っていたけど、言ってもいいんだっていうふうに思えたっていう感想を書いてくれて。結構 これ僕にとっては衝撃的で、意見言ってはいけないっていうふうに思ってるんだっていうふうに思ったんですよね。」「大人たちは、こどもたちの意見を聞くと、意見がないと言うんですけれど、そもそもこどもたちは意見を言っていいとも思えていないっていう状態であるということを、やはり認識しないといけないなと思います。」
池田氏は、これを受けて、「結構印象に残っているのは、初めのワークショップで、こどもたちに民主主義について話したんですけど、その時に「正義とは何か」みたいな質問に、こどもが「ルールを守ることだ」っていうふうに言ったのですよ。まあ確かにそう教えられてきたなと思って、日本の教育はそうそうだ、僕もそうだったと思って。」「でも、ルールをみんなで作るのが民主主義だから、結構パラダイムチェンジがあるんじゃないかなと。今、土肥さんが言ったことも、ルールメイキングの趣旨もそうだと思うんですけど、その最初のところが結構重要なんだなって。それでその子は、終わった後に、実は動画の一番最後に(茅ケ崎はこども選挙の前は、単に住むところだったけれど、こども選挙が終わったら、自分にとっても大切なものとなったとの趣旨を)語っててくれた子なんで、だいぶ意識が変わったんじゃないのかなとは思います。」と述べられました。
山本氏は、「皆さんが語ったことにかなり重なる部分なんですけども、やはり校則とかルールのイメージって、本当に上から与えられるもので、自分たちはむしろそれにどう順応していくかみたいなとこがあったりするので、校則の話をした時も、「え、変えていいんですか?」みたいな話から実は入ったりするのが多いなと思っています。」「生徒会の活性化の話も、結構学力が高い学校で、「別に聞いても、多分意見は出てこないと思いますよ」って、最初に先生方が言っていて、それって、やっぱむしろまあどうせ言ったところで、聞いてもらえないし、変えられないんだったらわざわざ言う必要もないし、むしろ忙しくなっちゃうから面倒くさいからみたいなところの、ある種の諦めとかそういうことがあったんだけど、やっぱりそこを変えていく。先生に、聞く必要があるんだというところが出てくれば、だったら自分も参加したいなみたいなところも、変化の現れなんだろうなというふうには思っているので。そもそも聞いてもらえると思ってないみたいな、諦めみたいなものって、結構根深くあるんじゃないかなというのは、やりながら、すごく感じています。」と続けました。
その後、いろいろと話がありましたが、西尾氏は、「どうもお聞きしていると、こどもたちの力を信じられないとか、こどもたちの可能性を信じられないとかいうところがすごく多くて、その裏には、やはり大人がこどもをコントロールしなければいけない、コントロールしたいっていう思いもあるのかなと。ただ、その大人自体が、先生も含めて、自分のこどもの時に自分を信じてもらえなかった、そういう原体験、そうしたものが裏にあるんだろう。根深い問題かなと思いました。」と述べられました。
西尾氏は、「若者が主体的に意見を自分たちで作り上げ、自分たちでまちづくりするという、そういうところまで本当に持っていかなければいけないのではないかと思うんですけども、そこについて、ご意見いただきたいなと思います。」と問われました。
木戸氏は、「やはり、場所がいると思うんですよね。」、「私は若者議会がなかったら、ここにはいないわけですし、まちづくりにも関心を持っていないわけで、そして新城のこともこんなに好きになっていたかもどうかも分からないんですよ。なので、若者議会に入ってない子は今は新城について、どう思っているのかは、私は分からないんですけれども。その場所があるので、私は今ここにいるけど。なかったらどうなるんだろうって考えたら、ちょっとなんか怖い。まちづくりについての場所が、意見を言う場所があるというのが1番必要かなっていうふうに私は思います。」と率直で頷ける意見を述べられました。
土肥氏は、「ちょっと別の視点になるんですけど、よく主体性を育むとか言いますが、そもそも育めるのかっていうか、主体性はそもそもあるんじゃないかってと思うんですね。赤ちゃんとか、すごい主体的に動くじゃないですか。ある意味、小学生、中学生、高校生ってだんだん大人になっていくにつれて、だんだん主体性が削がれているような感覚もあるんですね。」「なんでだろうと言うと、やっぱりそれは周りの環境なんだろうなと思います。もちろん社会性が身につくっていう部分もあるんだと思うんですけども。」「主体性がどんどん削がれていってしまうような社会要因があるんじゃないかと考えています。」「具体的に最近僕は大事だなと思うのは、遊びの機会をちゃんと保証することではないかなと思っていて、(略)」「遊びなさいと言われて、遊ばないと思うんですけど、その最も主体的な活動でさえも、もう周りから決められる活動、受け身の活動になり始めている。」「(略)単純に今、こどもの数が減ってるので、その分大人の目が増えているとなると、やはり注意する大人がどんどん増えることによって、子供がなんかこう大人の監視下でしか遊べないというふうになってしまってるんじゃないかなと思いますね。なので、子供だけの安全圏というか、自分たちの安全圏みたいなものをどういうふうに作っていけるかっていうことが、例えば1つは遊びだと思いますけど、そんなことも大切じゃないかなというふうに思いました。」と述べました。
池田氏は、「どこまでを大人が用意して、どこまでをこどもに任せるかという線引きって、めちゃくちゃ難しいんですよね。それはあらゆる活動でそうだと思うんですけど。実は(こども選挙を)やっていく中で、僕らも徐々に変化していって、初めはここまでは大人がやろうとか、集計は大人だし、投票所の運営とかも大人だしというふうに考えてたんですけど。でもこどもたちと一緒に作るみたいな感じになってきて、こどもにどんどん任せてみたらどんどんやってくれるようになったんですよね。なので、その手放す勇気というところも結構重要だなと思います。」「ただ、こども選挙っていう仕組み自体がないと、参加もしてくれなかったわけで。だから振り返った後に、何か1つ言語化できたのは、舞台装置を一所懸命大人が作って、その上で、自由に遊ぶのがこどもで、舞台装置をいかによく遊べるように作るかっていうのは大人の責任であって、その中でどう遊ぶかについては一切口出しせずに手放すというようなことで、今、僕の中で整理している感じです。」と話されました。
山本氏は、「やはりどう自分たちの声を聞いてもらえたかという経験とか、自分たちで決めたという、いわゆる自己決定の機会をどう作っていくのかというのが重要だなと思っています。土肥さんの話だけど、まさに遊びの話とかもそうだなと思うんですけど、学校の中でも、例えば部活動とかでも、最近だと、自分たちで決めていくものがあって、甲子園で最近優勝した学校の指導方針をもそうなっていたりとかいう中で、自分たちで話し合って、自分たちで決めたんだ、あるいは自分で決められたんだっていうのを、いろいろ大小含めて、経験できる場を用意していく、あるいはそういうことを作っていくということは、すごく大事だなと思っています。 先ほどの舞台の話もつながるなと思っているんですけど。こどもたちに委ねるっていうことは、つまり全部、大人は何も言えない、もうむしろ丸投げしてしまうようなことの発想になりがちだと思うんですけど、それは大人側が不在になっていて、むしろこども扱いしているような丸投げの仕方ではないかなと思っています。やはりそこは1つ参画とか意見表現の機会を作る時に、ちょっと違うスタンスで、いきなりやったことないのに聞いて、で、意見が出なかった、やはり聞いても意味ないのではないかみたいになるので、(略)段階段階でちょっとずつやっていく、時に、関わる大人も、伴走という形で、最初は一緒にやっているけど、徐々に徐々にこどもたちに委ねていくみたいな、そういうステップを踏みながら、丸投げせず、大人もちゃんと向き合って、自分の思いもちゃんと伝えていくってことが大事かなと思っています(略)」と続けました。
この辺りのディスカッションは、非常に嚙み合っていて、大変興味深かったので、必死に再現していますが、私の聞き違い等があるかもしれないので、その辺りは勘弁していただきたいと思います。
まだまだ話は続きました。こどもの意見の聞き方についての土肥氏の発言を載せたいと思います。
「今の学校について、どうなってほしいかみたいなことを聞くと、例えば小学生からは「エレベーターつけてほしい」とか出るんですよ。すると、予算がないから、そんなことできないと大人は思うんですけど。なんでそう思ったかっていうことなんですよね。それで聞いてみたら、実は友達にちょっと足が悪い子がいて、その子が上がっていくのすごい大変だから、それをどうにかしたいということで、エレベーターをつけたいんだっていう意見だったんですよ。ここまで聞かないと、意見を聞いたことにならないと思うんですよね。」「多分子供にはそんな大した意見が言えないっていうようになってしまうのは、「エレベーターをつけてほしい」という、手段として、表現されていることをだけを見て、そう思ってしまうんじゃないかなというふうに思うので、聞き取るトレーニングというのは、大人たちがこれからしなければいけないんじゃないかなというふうに思っています。」
池田氏は、「僕らまずリアルにめちゃくちゃこだわったんですよ。模擬選挙っていうのがこれまでいろんなところで行われてきたけど、架空の候補者で、架空の投票していると、それは教育のためにやっているという構造があって、僕はその主権者教育という言葉自体、若干違和感があって、(略)投票の仕方だけだったら5分で説明できるのではないかと。もう本当に社会に接続した場でやると、真剣に選ぶじゃないですか。すべてそうだと思うんですけど、自分たちの校則を実際に変えるという段になったら、本気で議論するとか、それは楽しいものになると思うんですよ。なので、特別な実験空間の中で教育を施すみたいなことでは、この自発性とか主体性が生まれるわけもなくて、本当にリアルな社会に接続した場で大人とこどもが一緒に考えていくっていうふうに、ちょっと転換してあげるだけで、だいぶ変わってくるんじゃないのかなと思います。」「大人もこどもも本当に本気で取り組むという、そうですね、本当にその先にリアルな変化っていうのを見据えた上で、取り組まないと、勉強的になってしまうし、その勉強的な中で、自発性とか主体性とか、本当のシチズンシップとか主権者意識は身につかないんじゃないかな。知識のことじゃないではないですか。自分が世界に参画して、社会を変えれるかどうかという意識を、1点だけ、その意識が持てるかどうかということが大切だと思って」と熱く語られました。
更に興味深い話は続きますが、再現する私の気力・体力も限界に近づいて来ているので、、。そうそう、政治のタブー視の関係では、茅ケ崎の市議会議員と市民の「まちのBAR」の話も出てきましたが、その辺りは、参加者の特権として、ここでの再現は終わらせたいと思います。
と言いつつ、午後の分科会で出た話を最後に一つだけ。
こどもの意見を聞くということは、それを実現させることによって、こどもに成功体験を与えるということですが、同時に、そのこどもの意見によって実現したことに対して、良いと思わない人がいたり、やったことがうまくいかないことも出て来るので、実は、失敗体験も与え得ることではないかということです。新庄市若者議会の件で伺ったところ、良かれと思って作った木造のものが、風雨で劣化して来ていることを指摘され、残念に思っているとのことを率直に述べてくれました。そうしたことも、こどもの成長の糧にしてもらうとか、メンタル的な支援も用意するとか、こどもの意見を聞くことの大人の事前の責任、舞台づくりの覚悟も必要ではないかとの話も出ました。
実に、熱のこもった、有意義な議論の一日でした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?