見出し画像

「こども選挙」の奇跡の軌跡

1.「こども選挙」の奇跡

「発表します。市民・団体の部、最優秀賞は、こども選挙実行委員会さんです。」

第18回ローカル・マニフェスト大賞の市民・団体の部の最優秀賞を、こども選挙実行委員会が受賞しました。

壇上には、代表の小学生2人の「ちがさきこども選挙実行委員」が。表彰状、トロフィーを受け取り、写真撮影の段になって、主催者の配慮で、会場に来ていたその他の子供の実行委員も全員壇上に登っての写真撮影となりました。

受賞後の写真撮影

写真撮影の後、当初の2人の小学生を残して、他の子供たちが降壇したところで、司会者が若干戸惑いながら、「それでは受賞者の方から一言コメントを、、受賞者、、お願いいたします。」と。

ここで、恐らく18回のマニフェスト大賞の表彰式で初めての小学生による受賞コメントが2人からなされます。

「このような賞を取れてとっても嬉しいです。「こども選挙」は、大人の人は選挙をしているのになぜ子供はできないのかという疑問を持って模擬選挙を実施しました。市長選挙の本番の時は、とっても緊張したけれども、いろんな人としゃべれたり、いろんな人と関われたりしたので、とっても楽しかったです。」

「この賞を取れると思っていなかったので、すごく嬉しいです。この選挙は、私たちがやって、この賞を取ったことで、もっといろいろな地域とか国とかに広がって欲しいなと思います。ありがとうございました。」

2人の小学生が順番にコメント。

司会者は、微笑みながら、「ありがとうございます。マニフェスト大賞のモットーを語っていただきました。ありがとうございます。」と。

私は、昨年の茅ケ崎の模擬選挙の立ち上がりから大人の「こども選挙実行委員」として関わっており、その後、「全国こども選挙実行委員会スーパーバイザー」という肩書を、一番の活動の推進者である池田一彦・美砂子夫妻からいただいてます。

池田美砂子さんは、翌日のFacebookで次のように述べています。

こども選挙 は大人がすべて企画して運営するのではなく、子どもたちが自ら学び、考え、行動し、子どもたちが主体となった活動だったからこそ実りあるものになりましたし、実行委員の私たちも子どもたちから多くのことを教えていただきました。
だからこそ、昨日は登壇も受賞コメントも子どもたちにお任せできて、本当によかった!登壇したふたりの堂々たる受賞コメントには涙が止まりませんでしたし、みんなが壇上に上がって最高の笑顔を見せてくれて、心から感動しました。
会場では、他の受賞者の方から「あなたたちは日本の希望よ」「こども選挙のファンです」なんて声をかけてもらって、こどもたちも嬉しかったはず。
数々の受賞を機に、この活動が全国に広がり、こども選挙が大切にしてきた「子どもの力を信じる」ということ、そして有権者ではないけれど主権者である子どもたちの声が尊重されることが当たり前の社会へと近づいていきますように。
私たちも引き続き、行動し続けます。

池田美砂子さんのFacebook

【2023年11月現在、こども選挙は以下の賞を受賞しました!】
キッズデザイン賞 最優秀賞・内閣総理大臣賞

グッドデザイン賞 金賞・経済産業大臣賞

マニフェスト大賞 市民・団体の部 最優秀賞

第18回マニフェスト大賞 最優秀賞7作を発表しました | マニフェスト研究会 (local-manifesto.jp)

ACC広告賞 PR部門・ACCブロンズ

実は、キッズデザイン賞受賞の後、新聞社の取材があり、昨年の茅ケ崎市長選挙で「こども選挙実行委員」となった子供達に集まってもらったことがありました。その際に、子供達から、表彰式に行きたかったとの話が出ていたのです。マニフェスト大賞の授賞式は、金曜日で、大人の実行委員サイドとしては、非常に悩んだのですが、この授賞式のことを伝えたところ、学校を早退して参加するかどうか、親御さんと先生と相談し、自分で考えて参加するとした子供達が、15人の「こども選挙実行委員」中10人も出て来ました。そこで、大人の実行委員サイドとして、子供達が来るのなら、登壇者2人も子供達に任せようかという話となり、希望者抽選の結果、2人の小学生が登壇者として選ばれていました。

表彰状の受領は、前の人の所作を見ていればわかるだとうと思い、問題ないと考えていたのですが、最優秀に選ばれれば、スピーチもあります。昨年の「ちがさきこども選挙」の後の取材での受け答え等を承知していたので、この子供達なら、多分それもできるだろう、ある程度のコメントはするだろうと考えてました。ただ、ライバルも強力でしたので、本当に最優秀に選ばれるかはわからないというのが正直なところでした。登壇者の2人には、最優秀に選ばれるか分からないけど、選ばれたらスピーチがあるとのみ言っていて、スピーチの内容の話は全くしてませんでした。

そういう状況で、あのスピーチが2人によってなされました。会場で最優秀と言われて私も大いに喜びましたが、それは同時にスピーチが現実化したことも意味します。子供達を信じて、同行した大人4人は、壇上に行きませんでしたが、実は、内心ドキドキし平静なふりをしていたのは、私だけではないと思います。そんな中で、小学生の2人は、こちらの想像を上回る素晴らしいコメントを堂々と述べたのです。大感動です。「こども選挙」の子供達との活動は、この日まで続いていたのだと思いました。

それにしても、振り返るとこうした受賞については、素直に「奇跡」という言葉が出て来ます。様々な困難に直面し、なかなか見通しがつかない中、一歩一歩進んでいったところ、気が付けは受賞会場にいたという感じです。そうした経過を、私の視点から振り返り、壇上での受賞コメントにもあったように、他の地域等での展開に役立てるべく、マニュアル的要素も含め、記していきたいと思います。

2.「こども選挙」の始まり

令和4年(2022年)10月30日、茅ケ崎市長選挙に合わせて、実際に立候補した者から市長を選ぶ形の子供達による模擬選挙「ちがさきこども選挙」が行われました。その様子は、テレビ、ラジオ、新聞等で取り上げられ、大きな反響を呼びました。報道等を受け、自分たちの地域でも同様な活動を実施したいという声が寄せられ、協力体制を構築する中で、その後、さいたま市、鳥取市、高松市、海老名市、新居浜市、壱岐市等、各地で「こども選挙」の取組が行われています。

「ちがさきこども選挙」の企画、経過、「全国こども選挙」への展開等については、「こども選挙」のホームページに詳しく掲げてあります。こちらは主に池田夫妻がまとめたものです。実施風景の動画もありますので、是非ご参照願いたいと思います。
こども選挙 | こどもの、こどもによる、こどものための選挙。 (kodomo-senkyo.com)

きっかけは、池田夫妻とお子さん繋がりの友人夫妻との会話でした。子供の主体性ってどうやって育てていけば良いかというような会話をしていて、その時に出てきたアイディアが、子供が実際の選挙で候補者を選んだら、結構、まちのことを考えたり、主体的に意識が変わっていくきっかけになるのではないかということだったそうです。調べると、その年の秋に茅ヶ崎市長選挙が行われるということが分かり、そこで模擬選挙をやってみようということで動きがはじまりました。

池田夫妻は茅ケ崎で、「Cの辺り」という一箱本棚オーナーシステムの民間図書館機能も持つコワーキングスペースを運営しています。私は縁あってそこの会員となっていましたが、私の本棚には、主権者教育に関係する本も置いてあり、それらも研究しているとの話をしていたので、相談がありました。池田夫妻から、最初に私に話があったのは、令和4年(2022年)4月12日。そこで、池田氏の最初の企画書が提示されました。そこには、実際の選挙の候補者の取材、模擬選挙、こども達の意見表明等が含まれていました。それら、個別の事例について私は、日本シティズンシップ教育フォーラム(J-CEF)での研究等でいくつか承知していましたが、それらを全部一度にやった例というものは承知していませんでした。どこまでできるかということはありましたが、否定するものでもないので、協力すると返事をしたのでした。大人の実行委員会をまず構築することになりました。「Cの辺り」の仲間10人が集まりました。このように本当に草の根というか、仲間内から始まった活動でした。

<参考にした事例、文献等>
4月15日に最初の打ち合わせを「Cの辺り」で実施しました。その際に、日本における模擬選挙の第一人者であり、『「18歳選挙権」で社会はどう変わるか』 (集英社新書) 新書 – 2016/6/17)の著者である林大介浦和大学准教授の「シティズンシップ教育とアドボカシー」という資料を私から池田夫妻に提示しました。林氏は、J-CEFの設立に、私を誘ってくれて、私が社会人研究者となるきっかけの一つを作ってくれた人でもあります。J-CEFは2013年に発足していますから、9年間、様々そこで私も研究をさせてもらっていました。林氏の資料には、2008年に全米で大統領選挙の模擬選挙に700万人が投票とか、2014年のスウェーデン総選挙で42万人が模擬選挙で投票等、「「実際の選挙」を題材に模擬選挙を実施する利点」等や、模擬選挙以外の子どもの声を活かす取組等が記述されていました。

総務省・文部科学省の高校生向け副読本『私たちが拓く日本の未来』を示したのもこの時です。林氏も執筆者の一人となっています。

模擬選挙とは、政治的な課題について調べ、自分なりの基準で判断して候補者に模擬的な投票を行うもので、これについては、選挙権年齢等の満18歳以上への引下げに対応し、学校現場における政治や選挙等に関する学習の内容の一層の充実を図るため、総務省と文部科学省の連携により作成された『私たちが拓く日本の未来』(生徒用副教材、教師用指導資料)が「バイブル」的な存在と言えましょう。(令和4年度に生徒用副教材の内容を一部改訂。また、教師用指導資料についても、令和4年度より高等学校学習指導要領(平成30年告示)の実施に伴い、見直しを行っている。)
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/senkyo/senkyo_nenrei/01.html

小中学生の主権者教育については、令和4年9月に『「主権者として求められる力」を子供たちに育むために』(小・中学校向け主権者教育指導資料)(以下、「小中用資料」と言う。)が文部科学省のWebサイトに掲載され公表されました。
https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/gakusyushien/mext_00085.html
「ちがさきこども選挙」の構想・準備は、この小中用資料の公表前のものであり、主に『私たちが拓く日本の未来』の記述を参考としました。高校生の模擬選挙も、小中学生の模擬選挙も、目指すもの、あるべき実施の仕方等は、同様であると考えました。
小中用資料は、「こども基本法(令和4年法律第77号)」について、作成時期の関係で言及はありませんが、1頁には、「平成29年及び30年に公示されたた学習指導要領の下、小学校・中学校の段階から、子供たちに主権者として必要な資質・能力を身に付けていくことが、これまで以上に重要となります」、「主権者教育を推進する上では,正解が一つに定まらない論争的な課題に対して、児童生徒が自分の意見を持ちつつ、異なる意見や対立する意見を整理して議論を交わしたり、他者の意見と折り合いを付けたりする中で、納得解を見いだしながら合意形成を図っていく過程が重要となります」等としています。
また、小中用資料の実践編では、実際に「ちがさきこども選挙」のワークショップで扱ったものに近い内容も掲げられていたり、70頁には「模擬投票」(模擬選挙)として、「学校のある市区町村の首長の模擬投票を行う」と記載もあります(架空の候補者を対象とするものではあるが)。71頁には、「小学校社会科,高等学校公民科との関連及び中学校社会科内での関連」も記されています。
更に、小中用資料7頁には、「学習活動の展開に当たって特に留意すべきこと」として、「①社会的事象の取扱い」、「②学校における政治的中立の確保」が掲げられているが、後者については、『私たちが拓く日本の未来―有権者として求められる力を身に付けるためにー(高校生向け副教材)活用のための指導資料』(以下、「高校教師用指導資料」と言う。)に詳しく解説があるとしています。このようなことより、『私たちが拓く日本の未来』を基に模擬選挙を実施することは、事後的に小中用資料を見てみても問題ないと考えます。

<実際の地方選挙を対象とする模擬選挙>
高校教師用指導資料51頁には、「地方公共団体の選挙などは、身近な課題が争点となることも多く、より自治意識が高まることも考えられる」とあり、また52頁には、「実際の選挙に合わせて実施する模擬選挙については,現実の具体的な政治的事象について,各党や候補者の主張を公約等の様々な情報から判断することによって,具体的・実践的な政治的教養を育むことができるなど有益な点が多い」としています。

高校教師用指導資料51頁には、次のような記述が続きます。「一方、選挙運動期間に合わせて模擬選挙を実施するということは、公職選挙法上、選挙運動を行うことができる期間に実施することとなるため、選挙運動について、公職選挙法上、様々な制限がある中、それらに抵触することがないよう留意して実施する必要がある」とし、①事前運動の禁止(公職選挙法第129条関係)、②人気投票の公表の禁止(公職選挙法第138条の3関係)、③文書図画の頒布・掲示の制限(公職選挙法第142条、第142条の2、第143条、第146条関係)、④投票の秘密保持(日本国憲法第15条第4項及び公職選挙法第52条関係)、⑤満18歳未満の社の選挙運動の禁止(公職選挙法第137条の2関係)、⑥教育者の地位利用の選挙運動の禁止(公職選挙法第 137 条関係)を掲げています。

これらの項目については、主に大人の実行委員が気をつければ良いのですが、②については、模擬選挙のやり方の理解のため、子供達にも説明をし、⑤については、子供達自身の行動に関わるものなので、説明し、違反がないよう、何度もよびかけることとなりました。
⑤は、投票証明書等にも記載し、「こどもせんきょ実行委員」15人だけではなく、投票した子供達にも口頭での注意と合わせて伝えるようにしました。

投票の秘密保持の④については、投票所での事務等の際に考慮しました。模擬選挙であり、➁や⑤を守れば、問題ないのですが、できるだけ本当の選挙に近いものを子供達に経験させようとして考えました。

保護者の投票所への入場については、本当の選挙の時に、大人が子供を連れて投票所に入るのは認められているということなので、逆に「こども選挙」でも親の同行は認めることとしましたが、投票用紙への記入が良く分からない子供の投票を親がやるような動きは止めることとしました。

投票用紙については、西宮市長選挙や神戸市長選挙で記号式(選択式)を条例で採用している例もあり、小学校1年生でも記入しやすいように、記号式を採用しました。
神戸新聞「有権者には簡単だけれども」
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202112/0014889684.shtml)。

公職選挙法は、「べからず集」だとも言われていますが、個々の事案の判断は、個々の事案に即して行う必要があります。しかし、人によって、ネット上でも、実際に聞いても、念頭にあることが微妙に異なる等して、一般論で聞いても、調べても、答えが異なることが多々あると感じられました。投票所の撮影についても、どうやら違法ではないがご遠慮くださいということで行政指導がされているいうのが実態らしいのですが、模擬選挙での投票所での撮影をどうするかも議論されました。投票の秘密を守り、自由意思による選挙を実現するためにどういうことが必要かということでしょうが、模擬選挙に参加するという貴重な機会を記録したい、伝えたいという気持ちも理解できるので、ここは、個人のプライバシーに配慮しての撮影はOKということにしました。

文書図画の配布・掲示の③や、選挙期間中の第3者による立会演説会の禁止(公職選挙法§164の3第2項)を意識し、主権者教育、「こども選挙」の模擬選挙のためのものであることを様々な機会に明確に示しました。「こどもせんきょニュース」にもその旨明確に表示し、持ち出しを禁止しました。

このように、いろいろな情報は、主権者教育のための活動であることを明示し、そのためにのみ使うこと等が大切だと思いますが、一部切り取られて発信されて、別の影響力を発揮したり、別の見方をされることも考慮しました。対策の基本は、各候補者を平等に扱うことと認識しました。回答の動画の制限時間、撮影方法は平等にし、投票用紙の記載順、動画の掲載順等は、本当の市長選挙の届出順と同様にする等です。

途中からNHKや読売新聞、朝日新聞等の取材もありましたが、それぞれの記者からも、中立公平な候補者の扱いについて相談に乗ってもらったりしました。自らの情報発信については、ワークショップ等の透明性を示し、地域住民、地域の子供達の理解を得るという目的をしっかり自覚し、特定の候補者に有利になることなどはないようにしました。

今回は、そうではなかったですが、実際の候補者を集めて立会演説会的に子供達の前で演説してもらうような場合は、公職選挙法の規定にかからない選挙期間前に実施する方が良いと考えます。

<候補者への取材>
候補者への取材については、市川市の「若者とママの投票率向上委員会」の候補者インタビューのSNSでの報告の事例を示しまし。池田夫妻の頭には、令和3年(2021年)8月22日の横浜市長選挙で、中一の娘さんが全候補者インタビューを行ったもので、マスコミでも取り上げられた「森ノオト」の記事
(https://morinooto.jp/2021/08/11/yokohamamayor/)があったようでした。これは私も見聞していました。

<アンケートの実施>
平成25年(2013年)7月に、林氏につれられて参加し、私が作成したた「未成年模擬選挙についてのレポート」が出てきたので、これも共有しました。千葉県立鎌ケ谷高等学校(平成25年7月10日)、私立駒場東邦中学高等学校(同日)、渋谷駅ハチ公前広場「僕らの一歩が日本を変える」グループによる街頭模擬選挙(タブレット使用、同日)、神奈川県立湘南台高校(同年7月12日)の模擬選挙についてのものです。選挙管理委員会が投票箱等を貸し出してくれるという実例がそこには示されています。また、駒場東邦では、模擬選挙とともに、なぜ、その投票を行ったかのアンケートを行ったことも記載されています。

<「こども基本法」の制定>
そうした中で、池田夫妻が運営する「Cの辺り」も採用している、一箱本棚オーナーシステムを創設した土肥潤也氏が、令和4年(2022年)4月28日に、衆議院内閣委員会のこども家庭庁設置法案、こども基本法案等の参考人として国会に呼ばれ、意見陳述することになりました。こうしたこともあり、「こども基本法案」等の内容も共有することとしました。

6月22日に大人のこども選挙実行委員のキックオフミーティングをオンラインで実施。『私たちが拓く日本の未来』教師用指導資料を共有。この後、様々準備が進みました。

8月18日に、大人のこども選挙実行委員と家族等を対象とした国会見学会を実施。これは、林大介氏が若い人を連れて国会見学する日に重ねたもので、林大介氏と池田氏が名刺交換し、選挙ドットコムの顧問の高橋氏とネット投票についてミーティングをする等、その後の動きに繋がりました。

<事例、文献等を頼りに、未開のフロンティアへ>
参議院選挙の模擬選挙は、各地で多々行われています。「キッザニア東京で模擬選挙6年生「必ず投票します」」(東京新聞2022年7月5日)等、割とすぐ事例にたどり着きます。しかし、実際の地方首長選を扱う模擬選挙の例というものが、ネット等でもなかなか確認できません。林大介氏が2002年に町田市長選挙で駅前に投票所を設けて実施したものや、2017年4月23日の名古屋市長選挙で名古屋大学教育学部附属中・高等学校の中学2年生と高校2年生の合計200人が行った例として、隅田久文「主権者教育の一環としての模擬選挙の実施Ⅱ」『名古屋大学教育学部附属中・高等学校紀要第62衆(2018)』があります。
(file:///C:/Users/san001632900/Downloads/bulsea_62_26.pdf)
しかし、これら以外は結局見つかりませんでした。その結果、前述のように、様々な要素を含む「ちがさきこども選挙」は、いくつかの事例、文献等を頼りに、ほとんど未開のフロンティアを進むことになりました。これは少し想定外で、この辺りから、様々なことを自分たちで議論して決めていかなければならない、あるいはその妥当性を説明していなかければならないという状況になっていきました。

「奇跡」と言うには、様々な困難の存在があったからということもありますが、この後、池田夫妻は大変な努力を重ね、基本的に最初の企画書に書かれたことをほぼ実現してしまいます。その経緯については、私も多少承知していますが、それらはご本人達がホームページ等で示しているものから知っていただく方が良いと考えますので、そちらに譲ります。

3.ワークショップ

(1)『そもそも民主主義ってなんですか?』

『私たちが拓く日本の未来』(生徒用副教材)(以下、「高校生徒用副読本」と言う。)の62頁には、「模擬選挙(2)」として、「実際の選挙に合わせて模擬選挙をやってみよう」とあり、「「なんとなく」投票するのでは、「なんとなく」投票に行かない人を生み出してしまいます。だから、「考えて投票する」という当たり前のことが当たり前にできるようにする必要があります。」「情報を得て、争点を整理・分析し、自分で考え、私たちの代表者を選ぶという活動を通して、民主主義を身近なものとして感じてみましょう。」とある。そして、「事前学習」として、「(ア)選挙の意義を考えよう。(イ)投票の基準をグループで考えよう。(ウ)ニュースを見たり、選挙公報を読んだりしてみよう。」とあります。
この(イ)、(ウ)の部分は、「ちがさきこども選挙」では、自分たちで考えた質問(投票の基準となるもの)を候補者に問い、その回答((ウ)に該当)を判断材料とするという構想があったので、まず(ア)について、ワークショップで実施する必要がありました。

政治とその仕組み、日本国憲法、国民主権等については、小学校6年生で初めて習うものと認識していたので、それを習う以前の者もいることを前提に、選挙、民主主義そのものから話す必要があります。当然、高校生が選挙の意義を考えるのとは違う取組が求められます。そして、それらを1回のワークショップである程度理解してもらうためには、制度、仕組みより、民主主義の中身に重点を置いた説明をするしかないのではないかと考えました。

そこで取り上げたのが、当時、出版されたばかりで評判になっていた、宇野重規東京大学教授による『知識ゼロからわかる! そもそも民主主義ってなんですか? 』(東京新聞社、2022年6月)でした。イラストも多用され、小学校高学年や中学生でもわかるような感じで作成され出版されていました。

私は以前、小学校高学年生と中学生による模擬議会の取組に接する経験を持っていたので、その時の、子供達の対応ぶりを念頭に、この本のエッセンスを説明に使うつもりで準備をしていました。ところが、集まった「ちがさきこどもせんきょ実行委員」の15人が想定より下の年齢であったことから、直前に説明ぶりを、より子供達に身近なものとなるように改めました。後日、確かに「難しかった」という子供もいましたが、「凄く良くわかって、おもしろかった。」という子供もいたので、ぎりぎり合格点がつけられる内容かと思います。保護者や大人実行委員には評判が良かったので、もう一工夫すれば、「小学3年生から大人まで、30分で民主主義を考えてもらえる説明」とすることもできるのかと思います。

(2)第1回のワークショップへ

小中用資料の実践編では、指導時間10時間等を想定してますが、有志の大人と自由応募の小学生では、なかなかそこまでの時間を確保することは難しい。子供達が自分たちで考えた質問(投票の基準となるもの)を候補者に問い、その回答を判断材料として模擬投票をするために有益なもので、限られた時間でできるものをワークショップで行うこととしました。

第1回目のワークショップは、「茅ヶ崎のこと、選挙のことを考える」としました。9月3日(土)の午前中、10時からの2時間をそれにあてるので、「1.わたしたちのまちを考える」を1時間弱、休憩の後「2.民主主義を考える」を45分程度、最後に「茅ヶ崎こども選挙実行委員会のやろうとしていること」を15分程度で行うつもりで取り組みました。

なお、全体の日程等については、池田一彦・美砂子夫妻が主に発案し、私と相談しながら細部を決めていきました。

「こどもせんきょ実行委員」の募集は、小学校3年生から17歳までとしました。「こども」という表現は、「こども基本法」の成立も意識して使ったが、中学生以上は、まだ自分達が「こども」と言われる当事者と考えにくいのか、集まったのは小学校3年生から6年生までの15人であった。とは言え、学年が異なる者に、基本的に同じ立場で話し合い等してもらうため、ニックネームで名札に名前を書いてもらい、到着順に3つのテーブルに5人ずつ座ってもらいました。

学年等の情報は示さず、違う地域からの者が同じテーブルに着席することで、一人一人が対等な存在と認識させ、互いに話しやすくすることが第一の目的でした。その意味で、大人の実行委員も、ニックネームを名乗り、名札に記載しました。大人にも話しやすい環境作りの狙いです。

このニックネームの名札は、その後、マスコミやネットに写真等が使われた際に、万一子供達の行動が何らかの攻撃の対象となるようなことがあっても、直接的に個人として特定されないという配慮もあったのは事実です。

各テーブルには、ホワイトボード代わりの模造紙を真ん中に広げ、色の異なる大きめな付箋紙、カラーマジックペン、鉛筆を置きました。
入室に際しては、新型コロナ感染症対策として、手指のアルコール消毒、マスクの着用を要請。
保護者の同行、入室は希望者には認めました。

マスコミ取材については、写真・動画に(マスクをした)顔が出ること、ニックネームが出ること等を、事前に個別に保護者、本人の了承を得、個別の取材については、取材者が直接、対象の保護者、本人の了承を得て行うこととしました。

(3)第1回 わたしたちのまちを考える

以下、実際に使ったパワーポイントの記述を引用レイアウトで表示し、ねらい等を別に示します。□の前の数字は、パワーポイントの頁を表すものです。
なお、ワークショップの司会進行は、大人実行委員の中で、一番滑舌が良く、子供達にわかりやすく語りかけられると思われたので、山口順平氏に担当してもらいました。

1□こどもせんきょ 
 令和4年(2022年)9月3日 ワークショップ
 
2□1.わたしたちのまちを考える
 わたしたちのまち茅ヶ崎
 おはようございます!みなさんよろしくお願いいたします。
 こども選挙実行委員会にお集まりいただき、ありがとうございます。
 茅ケ崎のこども選挙実行委員会ですので、まず、今日は、茅ヶ崎のこと、選挙のことを考えてみる日としたいと思います。
 最初に、地図をご覧ください。茅ヶ崎市の地図です。
 まず、皆さんの住んでいる場所はどこかわかりますか?
 地図に印をつけてみてください。
(わからない人は手を挙げてください。大人のメンバーが助けに行きます。) 

ワークショップで、いきなりいろいろ考えての答えを求めるのではなく、知っていれば対応できるものから入り、かつそれは、一人一人違う答えになる作業を行ってもらうこととしました。年齢や知識の差で答えに影響が出るものではなく、ワークショップに主体的に関わりやすくなるのではと考えました。

その作業しながら、茅ヶ崎の市境を認識し、市内の別のところに印を付ける仲間を見ながら、茅ヶ崎市全体にいろいろなところがあっていろいろな人が住んで生活していることに思いをはせてもらうことを目指としました。
なお、この発想は、NPOのYouthCreateがかつて無料公開したワークシート(https://news.yahoo.co.jp/byline/haradakensuke/20171010-00076755)も参考にしました。

3□わたしたちのまち 茅ヶ崎市の地図
  あなたの家はどこにありますか。

4□あなたのまちを考えましょう 茅ヶ崎の好きなことは何ですか?
 このまちは好きですか?
 このまちについて、残念だと思うことはありますか?
 そう聞かれても、あんまり考えたことない?じゃあ考えてみましょう。
 まず、わたしが住んでいるこのまちの好きなことを2つあげてください。
じっくり考えて良いです。思いついたら付箋(ふせん)に書いてみましょう。
 書けたら、テーブルにある模造紙に貼ってくださいね。
 テーブルの全員が1つ以上書けて、貼れたら手をあげて教えてくださいね。 

最終的には、残念なところから、どうしたら良くなるかを導き出させます。そこで「政策」を認識してもらい、更に国の仕事、市の仕事の認識まで持って行きたいと考えました。

茅ヶ崎の好きなことということで、自分の近所の好きなことでも良いですが、できるだけ大きな視点で考えてもらえればとも思いました。「こと」と言うのは、「ところ」でも良いし、人々の行い等でも良いという意味で用いました。好きなことをまず考えることにより、「茅ヶ崎って良いところだな。これをもっと良くしたいな」と思ってくれるとありがたいという気持ちもありました。

5□あなたのまちを考えましょう。茅ケ崎の残念なことは何ですか?
  みなさん、けっこう茅ケ崎のまちが好きですね。
 では、次に、このまちについて、残念だと思うことはありますか?
 いやだと思うこと、もう少しこうなればよいと思うことはありますか?
 あまりないかもしれませんが、一生懸命考えてみてください。
 わたしが住んでいるこのまちの残念だと思うこと、いやなこと、もう少しこうなればよいと思うことを2つあげてください。このまちで生活していて、思うことはありませんか。
 思いついたら付箋(ふせん)に書いてみましょう。
 書けたら、テーブルにある模造紙に貼ってくださいね。
 テーブルの全員が1つ以上書けて、貼れたら手をあげて教えてくださいね。

6□このまちの好きなこと、残念なことが出て来ましたね。発表!
 皆さん、よく考えてくれました。
 あ、自己紹介まだでしたね。
 では、名前を言いながら、テーブルの席で立って、順番に自分が書いた好きなこと、残念なことを発表してください。 

 自己紹介を後にしたのは、時間節約のためということもありましたが、このワークショップでは、年齢とか友達関係とかにとらわれず、一人一人が自分の考えで行動し発言することを目指したため、名前(ニックネーム)は自分の考えを示す時、他の人と協議する時にのみ必要と考えたこともあります。

最終的に今回は、候補者の肩書きとか周辺情報ではなく、政策で選択してもらうことも目指していました。もちろん、周辺情報も含めて選択することも有効であると考えますが、それらをどう認識し判断すれば良いかまで話し合うには時間がないのではないかと考えました。

子供達の発表については、基本「ありがとう」とか「すばらしい」とかしか言わず、大人が評論することはしませんでした。

7□ 残念だと思うところを良くするには!
  このまちの残念なところ、イヤだなと思うこと、なんとかすれば良いと思っていることがなくなれば、もっともっと好きなまちになりますよね。
では、ちょっとそのイヤだなと思うことを、どうすれば良くなるか、皆で一つ一つ考えてみよう!
 各テーブルで、自分が言ったものについて、他の人が言ったものについて、少なくとも1つは良くする方法を思いついた人は言ってみよう。
(時間が多少かかっても、一通り発言しましょう。)

8□よくするのは、誰がどう良くすることができるのか、考えてみよう。
 はい、皆さん、いろいろ意見ありがとうございます。
 よくする方法について、自分やまわりの人が動けば良くなるものと、多く  の人の協力、あるいは力とお金がないと変えられないものがあると思います。
 ここで、自分やまわりの人だけでは解決できない問題について考えて見ましょう。
 みんなのためのことを、みんなのためのお金を使って良くする、みんなのためのルールを作る、そういうことをやっているのは誰でしょう?
・日本全国のみんなに関係するものは、国の仕事になります。
・茅ケ崎だけの人に関係するものは、茅ケ崎市の仕事になります。

 政策を認識するというのも、YouthCreateの教材に基づくものです。
 


9□茅ケ崎市で解決できること 誰がやるかと言うと
 茅ケ崎市民のルールは、「条例」と言われるもので、茅ケ崎市議会で作ります。
 茅ケ崎市長は、このルールの案を市議会に出して決めてもらうことができます。
 茅ケ崎市長は、このルールなどに従って、みんなから集めた税金を使って、茅ケ崎をよくするために働きます。
 ですから、茅ケ崎市長選挙は、茅ケ崎市をよくするために働く人を選ぶものです。

地方自治体は、首長と議会の2元代表制を採用していることから、議会の役割についても言及しました。

10□なぜ、茅ケ崎市長は、茅ケ崎をよくする仕事ができるのか?なぜ茅ケ崎市長をみんなで選ぶのか。
 みんながみんなで幸せになるために、いろいろ考えて、ルールを作ったり、みんなのお金を使ったりする仕事を茅ケ崎市長はなぜできるのでしょうか。
 それは、その人をみんなで選んだからです。
 でも、例えば、茅ケ崎市で一番大きな家に住んでいる、お金持ちの人や、茅ケ崎市で一番力が強い人に、茅ケ崎市長をやってもらうということは考えられないでしょうか。
 う~ん、それだとうまくいかないことが多いんですよ。
 これは、「民主主義(みんしゅしゅぎ)」ということに関係しますが、休憩後の第2部で話したいと思います。
(ワークショップ1終了。休憩。)

なぜ選挙で選んだ茅ヶ崎市長に市政を委ねるのか、という問いから、次の民主主義の話に繋げます。
 

(4)第1回 「民主主義って」


 ここは、私が説明を担当しました。
 

11□ 宇野重規『そもそも民主主義ってなんですか?』2022年、東京新聞社等を参照。
 この建物は何でしょうか?知っている人。(国会議事堂の正面の写真)
どうしてこういう姿をしているのでしょうか。

学校で国会等についてきちんと習うのは、小学校6年生と認識していましたが、本や報道等からある程度知っているかと思い示しましたが、小学校3年生から「国会議事堂」との声が上がりました。
 

12□ (アテネのパルテノン神殿の絵)
 日本の国会議事堂は、1936年にできました。
 中央玄関の柱(エンタシス)にあるように、新古典主義建築。
 ギリシャ・ローマの民主主義に立ち戻ろうという建築様式。
 ずっと昔に行われた、「民主主義」の伝統をひきつぐものであることをあらわしています。

13□ アテネの民主主義(パルテノン神殿とペリクレイスと民会の絵)
 いまからずっと昔、約2500年前にギリシャのアテネというところで、ペリクレスという人たちが、みんなのことは、みんなで話し合って決めることをやってました。

14□ 3千年を30分で⁉
 民主主義(みんしゅしゅぎ)3千年のものがたり!
 
15□ むかしむかし今から3千年ぐらい前。
 ハマチという場所でのものがたり。
 人々は魚をとったり、食べられる植物をとったりしてくらしていました。
 ハマチの人々。6家族。
 このハマチにA太郎さんという人がいました。A太郎さんは、さかなをとるのがとてもじょうずでした。
 あるとき、A太郎さんは、食べられる実がついている草をみつけました。「これを集めて育てると、たくさん食べられるし、保存もできる。」それがうまくいったので、A太郎さんは、ハマチのほかの人に教えました。
 ハマチの人は、「みんなで力を合わせて畑を作って、水をひいてくれば、もっとたくさんとれる。」と思って協力し、うまくいきました。A太郎さんは、畑仕事もじょうずで、教えるのもじょうずでした。そしてみんな、おなかをすかすことがなくなりました。

当初は、宇野教授の本の、民主主義の歴史に関する記述の部分を、基本的にそのままコンパクトにまとめる形で示そうとしましたが、より身近に感じてもらうよう、架空の集落から話を始めることとしました。よく動物の名前を使うことがありますが、海の近くの会場でのワークショップだったため、魚等、海の生物の名前で集落から国の名前としました(が、なかなかしっくり来ないところもあると認識しながら説明)。

なぜ選挙で市長を選ぶのかに繋がることを念頭に話を作りました。集落や国は、○□△等で色分けして示し、イメージを持ってもらいました。本当は、それなりのイラストの方が良いのかもしれませんが、限られたスペースで示せると言う利点はあったと考えます。いろいろな国の名前が出て来ますが、こどもたちも、混乱せずに理解しようと必死に話について来る感じがありました。

このワークショップの部分、どういうものをどう扱うか等については、その後の「全国こどもせんきょ」の取組みでは、それぞれの実施主体で、個別に工夫して実施しています。茅ケ崎でも後に、本の読み聞かせを使った部分が出て来ますが、蒔田純「ポリポリ村のみんしゅしゅぎ」(かもがわ出版、2021年)等を用いた例があります。
 

16□ めでたし、めでたし?
 ハマチの人はみんながみんなで幸せになりました。
 「A太郎さんの言うこと聞いていれば、みんな幸せになれる。」「A太郎さんが、一番たくさん実を持っていってくださいね。そのかわりこれからもみんなを幸せにしてね。」
 みんなに尊敬(そんけい)されて、A太郎さんはハマチで一番大きな家に住むようになりました。
 めでたし、めでたし。
 ・・・・とここで話はおわらない。
 となりにアジというまちがありました。アジの人たちは、お互いに協力して畑を作ったりしてなかったので、あまり実もとれず、時々おなかをすかせていました。
 となりのハマチには、たくさんの実が、食べ物があると知って、みなでそれをうばいに行くことにしました。
 
17□ 
 A太郎さんは戦いも強かった。A太郎さんのさしずで、ハマチの人もみんなで戦って、アジの人をみんなやっつけてとらえました。
 アジの人が助けてくださいと言ったので、A太郎さんは全員助けました。アジの人は、ハマチの人の下で畑仕事をしました。アジのまちにもハマチと同じような立派な畑を作ったので、みんなおなか一杯に食べられるようになりました。
 こんどは、エビのまちの人が来ました。エビのまちの人は、協力して畑を作ってましたが、隣のカニのまちの人からおそわれて、これに勝ちましたが、ぎりぎりで、あまり畑も立派ではありませんでした。
 エビの人は、「A太郎さん、畑のやり方を教えてください。一緒に畑を大きくして、一緒にくらすようにしてください。」A太郎さんとハマチの人はよろこんでこれを受け入れ、まちはもっと大きくなりました。
 
18□
 新しいまちは、A太郎さんを中心にハマチの人とエビの人が集まって話をしてやることを決めてました。アジの人とカニの人は、そこには入らず、畑仕事をしてました。
 このハマチやエビの人たちは、ヨーロッパでは「貴族」(きぞく)とよばれる人たちにあたります
 今度は、タコのまちの人がおそって来ました。これに対しては、ハマチとエビの人が出て行って戦い、A太郎さんの作戦で勝ちました。
 タコのまちの人もハマチとエビの人は助けたので、アジとカニのまちの人と一緒にタコの人も畑仕事をすることになりました。
 タコのまちの人も一緒になり、人も土地も非常に大きくなったので、ハマチのまちは、ブリ国と名前を変えました。
 
19□
 このようなことを繰り返して、ブリ国はどんどん大きくなりました。戦いは、A太郎さんを中心に、ハマチとエビの人が出ていき、そのほかの人はハマチとエビの人の下で、畑仕事だけをしてました。
 ブリ国のことは、ほとんどA太郎さんの言うことにしたがって、ハマチとエビの人だけで決めてました。
 ところが、今度は、シャチ国の人がせめてくることがわかりました。シャチ国の人は、人数も多いですし、戦いも強いことがわかりました。
 A太郎さんたちは、シャチ国には、アジやカニやタコやイカの人たちも合わせて、ブリ国の男の人全員で戦うことにしました。そして勝ました。
 その後も、サメ国やハリセンボン国との戦いに、ブリ国は全員の戦いで、勝ました。A太郎さんは、作戦を立てるのもじょうずでした。
 ブリ国は、どんどんどんどん大きくなり、畑も大きくなり、みんなおなかをへらすことなく過ごすことができるようになりました。
 ・・・ところが、A太郎さんは、ある時、病気で死んでしまいました。

20□ A太郎さんの息子のA次郎さんがあとをつぐと、、。
 ハマチとエビの人は、みんなでどうしようかと思っていたところ、A太郎さんの息子(むすこ)のA次郎さんが、「これからはオレの言うことを聞けばうまくいく。」と言いました。
 A次郎さんの家は、ブリ国で一番大きく、武器もたくさん持ってましたから、ハマチとエビの人は、A次郎さんの言うことを聞くことにしました。
ところが、A次郎さんは、ちょっとおぼちゃまで、わがままで、目立ちたがり屋で、くいしん坊でした。
 そんな時に、カジキ国がおそって来ました。目立ちたがり屋のA次郎さんは、あまり考えず、先頭(せんとう)に立って「つづけ!」とさけんで飛び出しましたが、太ってたんでひっくり返り、カジキ国には負けはしませんでしたが、たくさんの人が傷つき、みんなつかれ切ってしまいました。
さて、ブリ国はどうなるのでしょうか。

もちろん、2世が親より優秀ということは充分あり得ますが、都合良くA次郎さんは、「おぼっちゃまで、わがままで、目立ちたがり屋で、くいしん坊」になってもらい、次のリーダーを選ぶことに繋げることとしました。
  

21□ みんなで話して決めよう。 
 ハマチとエビの人は、A次郎さんの言うことを聞いていたらダメだと思いましたが、なかなか言えません。
 そのうち、今度は、アジやカニやタコやイカの人たちが、「自分たちも戦っているんだから、意見を言わせろ!A次郎はダメだ!」と騒(さわ)ぎ出しました。
 すると、エビのB太郎さんという人が、「わかった。みんなで戦っているんだから、みんなで話て決めよう。」と言って、みんなを集めて話をしました。そこで「A次郎はダメた」と決まりました。A次郎さんは怒(おこ)って、ブリ国を出て、家族と一緒にクジラ国に行ってしまいました。
 さて、次はどうしようと、みんなは話し合いをつづけました。
 B太郎さんは、ハマチのC太郎さんが、A太郎さんの考え方を一番知っていて、わがままでもないので、C太郎さんが次のリーダーにはよいと言いました。
 別の人は、D介さんがよいと言いました。

「自分たちも戦っているんだから、意見を言わせろ」は、アテネの民主制の展開の中で出て来た話を取り入れています。

22□ クジラ国との戦い 
 C太郎さんとD介さんのどちらがどうよいか、みんなで議論しました。そして投票した結果、C太郎さんがリーダーとなりました。
 「みんなで考えて選んだんだから、勝っても負けてもC太郎さんについて行こう。」ブリ国の多くの人はそう思いました。
そこに、とっても大きなクジラ国がせめて来ました。
 C太郎さんは、A太郎さんならどう戦ったかなどをいっしょうけんめい考えて、みんなに戦い方を伝えました。
 みんなも自分たちで選んだC太郎さんとともにひっしに戦いました。そしてクジラ国をやっつけることができました。
 
23□ このブリ国の話は、2千5百年前のギリシャのアテネの話をもとに作りました。
 C太郎さんは、「みんなの力でクジラ国に勝つことができました。これからもみんなで話し合って決めていきましょう。」と言いました。
 ブリ国は、この後、B太郎さん、C太郎さんを中心に、みんなで知恵を出し合い、できるだけ多くの人が納得(なっとく)する形で、ものごとを決めて、動いていきました。
 このブリ国の話は、2千5百年前のギリシャのアテネの話をもとに作りました。
 
24□ ギリシャ アテネの民会
 (地図)
 
25□ ギリシャ アテネの民会
 ペルシャがアテネを攻めて来る。
 
26□ アテネは、人口25万人ぐらいの都市国家(ポリス)に。今の茅ケ崎市の人口ぐらいの時にみんな(3-5万人)で話してものごとを決めていた。
(茅ケ崎球場サザンコンサート2万人)
(横浜スタジアムの収容人数3.5万人)
(東京ドームの収容人数5.5万人)
 今から約2500年前、貴族(戦争の指導者たち)のキモンを追放し、民衆による話し合いの場、民会でものごとを決めようとしたのがペリクレス。
 その後、また何人かのリーダーによりアテネの方針を決める時期があった。
 紀元前510年、独裁的な(ものごとを自分勝手に決めるような)ヒッピアスが追放され、指導者になったのがクレイステネス。
 クレイステネスは、アテネを10区に分けて、住んでいる人から構成されるメンバーが話し合ってものごとを決める制度を作りました。
 しがらみのない人が集まって自由に話あえるようにする工夫でした。
 
27□ 貴族ではなく平民が力を持つようになった背景には戦争があったのは事実。
 古代ギリシャのポリス(都市国家)では、平民は自分でお金を出して武器をそろえ、国のために戦争に参加しました。
 本人にしてみれば「国のために戦っているのだから、戦争や外交についての話し合いに参加したい。自分だって意見をいう資格があるはずだ」、そんな気持ちがめばえてもふしぎではありません。
 この参加したいという気持ちが、貴族が支配する社会を変え、民主主義を発展させる大きな力になります。

28□ 「法」の認識 ルール(茅ケ崎市で言えば、「条例」(じょうれい))
 アテネも戦争で負けるようになりました。
混乱する国の中で、より強い指導力を求めて、独裁制が採られるようにもなりました。
 でもやはり民主主義が大切ということで、何度も民主主義の体制が復活したりしました。
 このころ、指導者が変わって、混乱ばかりしていてはいけないということで、誰が指導者になっても守らなければならないもの、あるいは民会の決定であっても守らなければならないもの、ルールが「法」(ほう)として認識され、作られるようになりました。
 今で言う「憲法」(けんぽう)のようなものかと考えます。
 その後、紀元前338年の敗北で、アテネはマケドニアの支配下に入ります。
 しかし、その後もしばらくはアテネでは民会への出席者も増え続け、民主主義が機能しました。
 
29□ ブリ国のルール「法」(茅ケ崎市のルールは「条例」(じょうれい))
 ブリ国で言えば、B太郎さんやC太郎さんが中心にみんなで、何かあった時に、A太郎さんがやっていたことの、ここの部分はやっぱり良かったから、そのやり方を「法」というルールとして決めておこうというようなことです。
 そのほか、みんなで考えて、大事にしなければならないやり方を「法」としておこうと。
 B太郎さんやC太郎さんがいなくなっても、このルールである「法」を守れば、ひどいことにはならないと考えて「法」を作ったということです。
 
30□ マケドニアのA太郎さんアレクサンドロス大王(アレキサンダー大王)
 マケドニアという国には、本当に、A太郎さんのようなすごい人がいました。アレクサンドロス大王という人です。
 
31□ 
 アレクサンドロス大王・マケドニア(エジプト、ペルシャ、インドにまた
がる大帝国を作ります。) 
 
32□ その後、アレクサンドロス大王の大活躍 大王が死ぬと、国を守ることができなくなります。
 
33□ ギリシャ(アテネ) ローマ ヨーロッパ
 ローマでも話し合いでものごとを決めてました。
 
34□ みんなで話し合うから王様の時代へ。
 古代ローマでも、みんなで話し合ってものごとを決めてました。
兵隊の中心は、ふつうの市民、畑仕事をする人たちでした。
 でも戦争が続くと、畑仕事がじゅうぶんにできなくなり畑が荒れたり、遠くから安い食料がたくさん手に入るようになって、作物が売れなくなったりして、力をうしなっていきました。
 すると、戦いがうまい人が、たくさんの富(とみ)を得るようになっていたので、そういう人がお金をはらって自分の兵隊を集め、戦争を戦うようになりました。
 ローマのカエサル(シーザー)やオクタウィアヌスもそういう人で、そういう人が力を持って、みんなそういう人の言うことを聞かざるをえなくなりました。
 そういう人が皇帝とか王とか名乗るようになりました。

余談ですが、「カエサル(シーザー)とかオクタウィアヌスとか知っている?」と聞いたところ、同時代人の「クレオパトラ」との言葉が小学生から出て来て驚きました。このエジプトの女王はカエサルと仲良くなり、オクタウィアヌスに滅ぼされます。そういことを知っている小学生もいるのです。
 

35□ 王様の時代 国民から税金をとるように
 王様はどんどん強くなっていきました。
 「私は神様から力をもらった。だからみんな私の言うことを聞け。」
 ところが、さらに国が大きくなると、王様も自分のお金だけでは国をおさめて、よその国と戦ったりすることが難しくなりました。
 そこで王様は、国のみんなから、お金を取るようになりました。これが「税金」(ぜいきん)のはじまりです。
 
36□ 「議会」から「議会制民主主義」へ。(「身分制議会」)
 国の中で、王様とそのほかのみんなのバランスをとるために必要だったのが「議会」です。
 王様の言うことを聞いて税金をおさめるから、かわりに私たちの意見を、私たちの代表者から聞くようにと。
 文句があれば、話合える場が必要だったわけです。
 王様が議会を通して、国民の意見をある程度聞いて、国民が幸せになるように動けば、バランスがとれて、その国は安定するのです。
 バランスがとれ、議論によって決定していける仕組みが作り上げられる中で、「議会」がふたたび民主主義(みんなで話てみんなで決める)と結びつけられるようになっていきます。
 
37□ イギリスで フランスで
 ところが、王様が議会の言うことを聞かなかったり、聞いても、それにしたかって十分な結果を出せなかったりすると、国民の不満が高まっていきます。
 
38□ イギリスの 議院内閣制
 王様のかわりに議会で首相(総理大臣)を選ぶことに。
 イギリスでは1215年に「マグナ・カルタ(大憲章)」というイギリス憲法の土台となった文章が作られました。これは当時の国王が無理な課税を要求したことに貴族が反抗して生まれたもので、「課税するなら、議会を開いて承認を得なければならない」とする決まりができたもです。
 16世紀前半のイギリスでは、宗教問題や課税問題から王権と議会の対立が続きましたは、名誉革命(1688~89)で国王を市民が追放し、決着がつきます。
 その後は、議会を中心にものごとを決める議院内閣制がはじまりました。 
 王様は戻りましたが、儀式等を中心に行い、力はふるわなくなりました。代りに議会でえらばれた「首相」がそれまでの王様の仕事をするようになりました。
 イギリスでは19世紀以降には選挙権も拡大しました。議会は、かつてのような課税の正当化という権力者のための機関ではありません。
 政府が社会への説明責任を果たし、選挙を通して国民の意見が議会に反映されるようになりました。
 
39□ 不平等への不満が爆発したフランス革命 「人間の平等」
 王様のかわりに大統領をみんなで選ぶことに。
 フランスでは国王が強大な権力を握っていて、独断で政治を行っていたため、長い間議会は開かれませんでした。
 ルイ16世の時代に財政赤字が広がり、170年ぶりに3部会を1789年に開きました。
 この時、既に力はなかったにもかかわらず、貴族がかつてと同じように自分たちの特権の主張しつづけました。
 国民は平等なはずだ、貴族が特権と主張して自分を例外扱いするならもはや国民ではないという声が市民にあいだでどんどん高まり、ついに不満が爆発、フランス革命につなかっていったのです。
 その後、議会の議員をみんなで選び、王様に代わる大統領をみんなで選ぶようになりました。
 
40□ 「議会」と「選挙」 「大統領」と「選挙」
 国家と社会のバランスが取れ、議論によって決定していけるしくみが「議会」
 国が大きくなると、みんなで「議会」に入ることは難しくなる。
 「議会」に自分たちの代表を送り込む。
 誰が代表としてふさわしいか。
⇒いいぞ、だめだ、もう少しこうすれば良い
 代表の候補者が何を考えているか(政策)を聞いて、自分の考え方に近い人を選ぶ。「選挙」!
 また、大統領の候補者の考え(政策)を聞いて、自分の考えに近い人を選ぶ。「選挙」!
 
41□ 選挙で大事なのは
 候補者の人の見た目や雰囲気ではなく、何をやろうとしているかの考え(政策)で選ぶ
 候補者の考えに近い考えを持つ人が一番多い候補者が選ばれる。
 ⇒選ばれた人がその人の考えで動ける理由。
 
42□ 誰がよいだろうか 候補者の考えを聞いて、みんなで考えて選ぶ
 アレキサンドロス大王は、多分、ものすごく頭がよくて、力があった。・・・でもその人が死んだら、国がつぶれた。
 アレキサンドロス大王の次の人を、みんなで考えて選んだわけではない。
 王様は必ずしもみんなの幸せを実現できるわけではない。わがままだったり、ひとりよがりだったりすることもある。
 候補者の考えを聞いて、一番よさそうな人をみんなで考えて、投票して決める。
 それが多分、一番うまくいくだろうし、選んだ多くの人も文句が出ない。
これが「民主主義」の考えに基づくもの。

以上のような歴史的アプローチについては、専門に研究している者から見れば、あまりに大雑把で、いくつもの要素が欠けている等と映るかもしれません。宇野教授も見たら何を言うかわかりません。批判は甘んじて受けますが、子供達には、メモをとってもらい、ここで示したことを覚えてもらう気は毛頭なく、<政策を聞いて、一番良さそうな人をみんなで考えて選ぶ、多分それが一番上手く行くであろう>ことを、感じとってもらいたかったのです。その後の動きから、ある程度その目的は達成できたと自負していますが、対象年齢層や持ち時間によっては、様々に改良できるものと考えています。
 

43□ 茅ケ崎市の場合
「議会」の議員を選ぶ・・・茅ケ崎市議会議員を選ぶ。
「大統領」を選ぶ・・・茅ケ崎市長を選ぶ。
「法」(ルール)を作る・・・「条例」を制定する。
 
44□ 参考図書 宇野重規『そもそも民主主義ってなんですか?』2022年、東京新聞
 さて、ギリシャ・ローマの直接民主主義から、議会の誕生、議院内閣制等、話を進めて来ましたが、民主主義をめぐる話は、ほかにもたくさんあります。
 興味を持たれた方は、是非「宇野重規『そもそも民主主義ってなんですか?』2022年、東京新聞社」を読んでみたら良いと思います。わかりやすく、いろいろなことが書かれています。
 そのほか、民主主義に関係する本がいろいろとCの辺りの本棚にもおかれています。ぜひ読んでみてください。
 
45□ さて、民主主義でみんなで考えてルールを作ることについてもう一度考えてみましょう。
 今日の話の中で、いろいろな言葉が出てきました。その中のルール「法」  
(茅ケ崎市では「条例」)について、改めて考えてみたいと思います。
(質問1)
 ルールとは何のためにあるものでしょうか?
 
 民主主義の考えでは、ルールは議会で作ります。(市長はルールの案を提案できます。)
 議会の議員(と市長)は、国民が直接選挙で選びます。
 選挙で選ばれた人が作るルールとは何のためにあるのでしょうか?
 
46□ ルールとは この〇〇とはなんでしょうか?
 ルールとは、〇〇を実現するためのものである。
 法とは、〇〇を実現するためのものである。
 条例とは、〇〇を実現するためのものである。
 
47□ 「正義」!
 ルールとは、「正義」を実現するためのものである。
(質問2)
 では、「正義」とは何でしょうか?
 
48□ 「正義」とは
 「正義」とは「みんながみんなで幸せになること」。
(質問3)
 「みんながみんなで幸せになること」とは?
 
49□ 「みんながみんなで幸せになること」とは?
 ・・・難しいです。
 だから、みんなで良く話し合って、知恵を出して合って決めていくことが大切です。
 難しいことを、みんなで考えて、みんなの代表者を選んでやってもらう、それが一番正解に近づくと考えて実施すること・・・民主主義の考え。
 
50□ 民主主義について
 以上が、民主主義についてのお話でした。
 難しくて、よくわからないところがあったかもしれませんが、とても大切なことなので、これからもいろいろと勉強して理解を深めてもらえればと思います。
 
51□ 茅ヶ崎こども選挙実行委員会のやろうとしていること
 茅ケ崎の「みんながみんなで幸せになるためには」どういうことをしていく必要があるのだろうかと考える。
 茅ケ崎市長選挙の候補者が「みんながみんなで幸せになるために」どういうことをやろうと考えているかを調べる。そのために質問を考える。
 質問の返事をもらって、茅ケ崎市長選挙の候補者の考えのうち、自分の考えに一番近い人は誰かを考え、模擬選挙(もぎせんきょ)を行う。
 沢山のお友達に、同じように模擬選挙をしてもらう。
 選挙の結果が出た後に、お友達の模擬選挙の結果を調べる。
 そして、その模擬選挙の結果も見ながら、当選した市長さんがやろうとしている「みんながみんなで幸せになる」と思われることのうち、もっと良くやって欲しいこと、あるいは、そこの掲げられていないことがあれば、それを意見にして、市長さんに茅ケ崎のこどもとして持って行く。
 当選しなかった候補者にも伝える。
 
52□ こども基本法(令和4年法律第77号) 児童の権利条約の趣旨にのっとり
 (基本理念)
 第三条
こども施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
一  全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障 されるととも に、差別的取扱いを受けることがないようにすること。
二 (略)
三  全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。
四 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。
(略) 
 
53□ こどもは有権者ではなくとも主権者だ。
 こどもは意見表明をする権利を持ってます。
 自分たちの社会の在り方を考え、それを作っていくことに加わる権利もあります。
 みなさんのまちのことをみなさん主権者として、投票権はまだないですが、考えることは大切です。
 
54□ だけど、ルールは守る必要があります。
 選挙は、どの候補者にも公平に行われる必要があります。
公明かつ適正に選挙が行われるため、守らなければならないルールがあります。公職選挙法という法律に書かれています。
①  こどもが主権者として、茅ケ崎のことを勉強して考えて市長の模擬選挙をすることが、特定の候補者が有利になるようなことがあってはなりません。(具体的には大人チームが良く考えて動きます。)
②公職選挙法では、模擬選挙の結果が本当の選挙の前に分かっても、それを発表すると、本当の選挙に影響を与える可能性があることから禁止されています。
➂未成年者の選挙活動は公職選挙法で禁止されています。
 
55□ みなさんに特にお願いしたいこと。
 次のようなことは、決してやらないでください。
×「茅ケ崎市長には、〇〇さんがよい」と友達や大人の人に言う。(自分の考えを持つことは大事ですが、これを他の人に言うことは、未成年者の選挙活動として認められてません。罰せられます。ぐっと我慢して、もしこういうことを聞かれても決して答えないでください。)
×特定の候補者を応援するようなメッセージをブログ、SNSに投稿する。
×特定の候補者の選挙運動の情報発信を、SNSなどでリツィート、シェア する。
×特定の候補者の演説等の姿を、SNS、YouTubeのような動画サイトに投稿する。
×特定の候補者の選挙事務所や街頭などで手伝いをする。


候補者への質問とそれに対する回答を受けて、子供達の模擬選挙の投票先を決めてもらおうと考えていたので、最終的に全候補者が確定し、回答を受けて考えるとなると、選挙期間に入ることが充分想定され、政治活動と選挙活動を区別せず、選挙期間の前から候補者に対する自分の考えを大人に言うこと等は、「やらないでください」と子供達にお願いした。

56□ やってよいこと
 〇選挙のこと、民主主義を勉強する。茅ケ崎の市政のことをよく考える。
 〇選挙の投票を呼びかける。「〇日は、茅ケ崎市長選挙です。選挙権をもっている人は、忘れずに投票しましょう。」などと言ったりする。
 
57□ 以上です。
 守らなければいけないことはありますが、みなさんと一緒に茅ヶ崎のことを考えていけるのは、大変うれしいことです。
 どうそよろしくお願いします。 

漢字かな混じりについては、多少不揃いのところがありますが、基本、漢字にはふりがなを付けることで対応しました。  

以下に、ワークショップで使った実際のパワーポイントを掲げます。「こども選挙」を実施する際には、これを改変して使用していただいても結構です。但し、内容の正確さ、妥当性については、それぞれ使用者の責任ということで、お願いいたします。

(5)第2回 茅ケ崎の先輩に学ぶ1日


 9月18日の日曜日13時30分から16時の予定で2回目のワークショップを実施。前回のワークショップで、子供達は自分のまちの問題とその解決策も考えていたので、それを茅ケ崎の大人の先輩はどう考え、どう行動しているか等を学ぶ1日ということで、3組の講師を招いて話を聞くことにしました。人選・依頼は池田夫妻が実施。

「大人が考えをこども達に押し付けるような印象をもたれないように」ということは、各講師に明確に要請。3人目の釈氏は、僧侶でもあるので、直前に法事もあり、袈裟での登場を予定。それはそれで「個性」で良いのですが、写真が外に出ていくことも含め、メッセージ性が強く、子供達もそれに引きずられて話に入って行きにくいのでは等考えたことから、相談したところ、作務衣で登場することとなりました。
後は、自由に発言してもらい、子供達との質疑応答を行いました。

なお、この回から、「ちがさきこども選挙(せんきょ)ノート」を子供達全員に配布。何かを覚えてもらうためではなく、何か感じたり、気になったりしたことを書き留めてもらうための位置づけ。後に、候補者の話を聴いて、それについての考えを大人に伝えると、未成年の選挙活動の禁止に抵触する可能性があったので、言わずにノートに書いておいてもらうことも考えて用意しました。
 
司会は、山口氏。前回の振り返りから始まりました。

最初の講師は、子供達からも「残念なところ」として声が出ていた「海のゴミ」も含め、地球環境問題について「みんなで一緒に考える」ため、茅ケ崎でフリーペーパー発行、イベント、訪問授業等をしているBENIRINGOの田中藍奈さんと阿部汐里さん。活動メンバーに中高生もいるということで、比較的年齢が近い人の話。子供達も身近に感じられたのではないか考えました。


2人目は、茅ケ崎を盛り上げる様々な活動をしている茅ケ崎青年会議所の三井篤氏。大人の「こども選挙実行委員」でもあります。「茅ケ崎の歴史と今」。縄文時代から茅ケ崎のまちはどのように歩んで来たのか。現存する文化財や自然環境にはどのような特徴があるのか。前掲の主権者教育の小中用資料にも、実践編に第3学年「市の様子の移り変わり」とあり、「学習したことを基にこれからの市の発展について考えよう」との目標も共通するものでした。

3人目は、僧侶で仏教学者で「湘南ロックンロールセンターAGAIN」の釈順正さん。「僕らの存在と茅ケ崎音楽文化」。「ご縁」「文化(環境)」の中で自分が成り立ち、「まずは「愛する」ことから始めてみてください」と。
質疑応答。子供達はノートに様々書き込んでいました。子供達に感想等を言わせるのではなく書かせることで、より子供達の受け取り方の自由度が確保されたのではないかと考えます。 

(6)第3回  候補者への質問を考える

10月2日の日曜日13時から15時の予定で、3回目のワークショップ。ワークショップ案を次のように考えてました。3班に分かれての作業です。

①質問したいことを各自書いてみよう。(7分)
・1回目で考えたこと。2回目で聞いた話で考えたこと。
・特に『茅ヶ崎を愛する』ことを念頭に。愛してなくてもOKだけど。
→各自席で付箋に書いて、模造紙に貼り付ける。何枚でもOK。
②(質問したいこと、1人5つぐらいできたら。)(5分)
・各班の中で発表しよう。
・質問をしよう。
③各班の中で、自分が一番良いと思う質問を一つ選ぼう。(自分のものでも、他の人のものでも)(5分)
・それを付箋に書き、なぜ、それが質問として良いかを書こう。
④全体発表(15分)
・全員で、自分が選んだ質問と、その理由を発表しよう。
⑤各人作業(3分)
・全員の発表を聞いて、質問したいと思うものを1つ、もう一度選ぼう。
 (発表したのでも良いし、書き直しても良い。)
⑥班内発表(5分)
・⑤を班内で発表し、理由も言おう。
・質問をしよう。
⑦班内で投票!(5分)
・自分が班内で一番良いと思う質問を選んで投票しよう。
・全員ばらばらなら、あみだくじで2つ選ぶ。そして決戦投票。
・同順位なら決戦投票。
⑧各班で1つ選んだものを、全体発表。(5分~)
・同じようなものとなったら、じゃんけんして、負けた方が別の質問を出そう。
(⑤、⑥、⑦を再度実施)
⑨質問、決定(ここまで50~60分)。
⑩質問の撮影・録画

ポイントは、次のとおりです。
1つ目は、できるだけ自由な発想で質問をそれぞれの子供が考えやすいようにすること。発言すると、子供同士でも他の人の発言に影響を受けたりすることがあると考え、まずは各自、だまって付箋に書いて貼り出すことにしました。

2つ目のポイントは、3班で作業したこと。質問は、各候補者からの回答の動画の時間等も考慮し、全部で3つにすることとしました。そのため、3班で作業してそれぞれ1つの質問を選んでもらう。ただ、全体のバランスも必要なので、各班で絞る前に、(4)で全体発表を全員で行い、子供達にそのバランスを感じ、考えてもらう。

3つ目は、質問を各班でとにかく1つにまとめるために、(7)で投票のみならず、あみだくじの手法も用意しました。実際に国会の内閣総理大臣の指名の投票でも、同数の場合は、「くじ」で決めることがあります(衆議院規則§18・§8、参議院規則§20)。
実際は、この点が一番大変でした。子供達は、自分の質問をなんとか生かそうと、班内で複数の質問を一つにまとめることをし始めたところが複数ありました。あまりに多くのことを入れた質問になると、さすがに「長いんじゃないかな」と見ている大人委員が言わざるを得ませんでした。
ある班では最終的にくじで決めることとなりかかったが、やはり多数決にしようとなり、かつ、目をつぶっての採決にしようということで、決着をつけました。

4つ目のポイントは、⑧の同じようなものがあった場合の調整。大人委員としては、この点が心配であったのは事実ですが、これまでの2回の子供達のワークショップでのやりとりを見ていると、十分自分たちでそのあたりを判断できるのではないかと考えて委ねることにしました。
実際、3つの班の発表の後、同様な質問になったということで、1つの班が自主的に別の質問に変更することが起きました。その質問は班内で2番目の位置づけのものでしたが、他班と同様な質問ではないものをという選択で、それを第1候補としていなかった班員も納得していたようでした。
 
さて、大人委員でこの案を検討している中で、ほるぷ出版の『どうぶつせんきょ』という本を読んだらどうかという話が出て、これが採用されました。本の選挙の結果を読む前に、本の中に出て来る候補者の動物について、子供達に実際に投票させる。本当の模擬選挙の前に模擬選挙をやるのです。本の中で、候補者の動物が言うことを基に投票する。なぜその動物に投票したかの理由を子供達に求める。子供達は、候補者のどういういう言動を投票のよりどころとするかを経験してもらうのです。

自分のイメージ近いまちづくりをしてくれそうな候補者を選ぶための質問に加え、茅ヶ崎市の子供達みんなが、「こども選挙」委員が決めた質問に対する回答を見て候補者を選ぶため、みんなが候補者を選ぶ参考になるような質問を考えることに思いをはせてもらうことも大切と考えました。

①で自由に質問案を書いた後に、『どうぶつせんきょ』の朗読と投票を行うこととしました。投票と開票、意見交換の後、本に書かれている投票結果は示しませんでした。
 
『どうぶつせんきょ』の朗読と投票等に加え、班内で1つの質問にまとめるのに時間がかかったこともあり、質問が決まり、撮影までに2時間近くかかりました。ただ、とりまとめに時間がかかったのは、ニックネームを使用して、お互い何年生かを意識せず自由に意見交換できた成果でもあると考えます。

候補者への質問は、このようにして、ワークショップの場で、子供達が各自付箋に書いたものから、子供達の手で選んで作り上げたものです。

(7) 候補者の回答を視聴
 

10月23日の日曜日、茅ケ崎市長選挙の告示日、13時に子供達が集まり、3人の候補者からの回答動画を視聴。告示日直前に立候補を決める者がいれば、その者も模擬選挙の対象とする必要があると考えたので、この日の実施となりました。

未成年の選挙活動の禁止を意識し、子供達に候補者に対する意見等を表明しないことを再度念押しし、動画を視聴して思ったことは、ノートに記載してもらいました。

4. 10月30日、こどもせんきょ実施


茅ケ崎市長選挙の当日、それを対象とした模擬選挙である「こども選挙」を市内11か所の投票所とネット投票で実施。なお、10月24日には、学童保育40人を対象に「こども選挙」を先行して実施しています。

「こども選挙実行委員」15名は、その親御さん、当日ボランティアの人と投票所の事務等を実施。投票終了後の開票も行いました。

投票所の事務等は、大人が対応するところもありますが、「こども選挙実行委員」の15人やその兄弟姉妹等が行うことを考え、どこまで手間をかけて良いかが大人の実行委員の間で議論されました。

できるだけ本当の投票に近い形を実施した上でアンケート等を実施すると、投票とアンケートを一緒に投票するより手間がかかりますが、最終的に次のマニュアルのように行うこととしました。



このマニュアルを配布し、オンラインで当日投票所で事務を行う者に説明会を行いました。

最終的には、「投票の流れ」の➀の前に、手指のアルコール消毒をお願いすること、➁のところで、インタビューを文字起こしした「こどもせんきょニュース」を閲覧することを可能としたことを追加しました。「こどもせんきょニュース」は模擬選挙のためのものなので、通し番号を打ち持ち出し禁止としました。また、聴覚障害者用のコミュ二ケーションボードも用意。これに、街頭に出ての、「こども選挙」のビラ配り、呼びかけが加わります。

投票箱と記入台は、組み立て式のもので、市の選挙管理委員会が無償貸与してくれました。記入台の高さが、小学校1年生には厳しいかと思われましたが、事前に学童保育で模擬選挙を行った時に、小さな子供もなんとか届いて書いていたので、踏み台は用意せずに実施しました。

対象は、茅ケ崎市内に住む小学校1年生から17歳まで。投票時間は10時から17時。ネット投票は7時から20時まで。最初の投票者には、できるだけいわゆる「ゼロ票確認」(投票箱が空の確認)をしてもらうようにしました。

投票所は屋外のところもあり、雨天の場合は、テント等で対応することも考えましたが、天気予報が晴だったので、テント等は用意せず、突然の雨等で屋外での実施が困難となれば、無理せず投票所を閉鎖し、ネットでの投票を呼びかけることを考えました。幸い雨には降られず、全投票所、時間通り事務を実施できました。
 
投票所によっては、小学生2人とその親御さん1人の3人で事務をする場所も考えられました。どこまで事務を任せられるか、心配したのは事実です。段取りを少なくするのも、そうしたことへの配慮からでした。しかし、できるだけ本当の投票に近い形をということを選択し、手間を減らすことが出来ませんでしたが、実際には、小学生達が、多少ゆっくりでも投票者に説明をしながら、しっかりと事務をこなしました。役割が明確であれば、小学生でも十分対応できることが分かったのです。投票の呼びかけ、ビラ配り等は、子供達の方が上手だったとの感想も寄せられました。

この時期、市内11か所の投票所を確保できたことは良かったのですが、内部レイアウト等の情報が把握できず、また選挙期間中の「こども選挙」についてのマスコミの報道は追い風となりますが、自らの情報発信は慎重にすべきと考えて、ナーバスになっており、池田夫妻とは「投票所のロジの確認が先では」とのやりとりをしてしまいました。
皆、仕事を抱えながらボランティアで精一杯やっているのに、いらだちを示してしまい、恥ずかしい限りです。
この点については、池田氏が作ったマニュアルの「投票の流れと設置パターン」の分かりやすい図によって、各投票所の担当者が最低限押さえるべき点を十分把握することができ、当日、臨機応変にレイアウトを組立て、投票開始の10時前には、全ての投票所の準備が出来たとの連絡を受けました。感動するとともに、自らのいらだちに改めて恥じ入ったのでした。

5.開票作業


なにぶん初めての取組であり、どのぐらいの者が投票してくれるか、全く予想がつきませんでした。投票用紙は1か所300枚と、かなり多めに用意しましたが、個人的には、開票作業では、全部で1000票来た時の処理を想定していました。

次のような開票作業案を用意しました。ネット上にあった平成30年6月24日の滋賀県知事選挙の甲賀市選挙管理委員会の「開票事務テキスト」(https://www.city.koka.lg.jp/secure/19787/kaihyou.pdf)等を参考としようとしましたが、自書式投票用紙読取分類機を使用するものだったりしたため、公職選挙法第61条に定める開票管理者の役割(開票事務の最高責任者、投票の有効・無効を正しく決定し、開票事務が迅速に処理されているかどうか、開票所内の秩序が保たれているかどうか等、開票事務のすべてについて、常に注意する)や、総数確認の仕方等のみを参考とし、具体の開票の仕方は、筆者が承知していた参議院の本会議での投票の開票のやり方等を基に作成しました。

公選法の人気投票の結果公表の禁止を踏まえ、トータルの候補者別得票数は、本当の茅ケ崎市長選挙の開票が済むまで算出しないこととしたほか、有権者たる茅ケ崎市民で投票を済ませていない者がいた場合は、開票会場から退出願うこととしました。

また、開票もこども達に行わせるため、興奮して全員が開票にとりかかり、開票の全体像が見えなくなり、票を紛失する等がないよう、各開票で、当初手を出さず、全体を見守る「記録者」を置くこととする等、工夫をし、複数回チェック等で、後で再確認しなくても正確性が確保できるようにしました。

11か所の投票所の開票を同時期に行わなければならないことを想定しましたが、実際は、各投票所から票が届くのに時間差があり、3、4か所が同時に開票作業を行うことで済みました。

マニュアルでは、輪ゴムで止めるのを案では20票とか30票とかしていますが、実際は、10票ごとに輪ゴムで止めて開票を行いました。

○開票作業案
1.準備
(1)投票所別の開票用トレイを用意する(計11)。
(2)トレイには、どこの投票所のものか書いた紙を貼る。
(3)トレイには、その投票所用の記録用紙、輪ゴム等を置いておく。
(4)開票管理者(池田一彦)、職務代理者(池田美砂子)を決める。
2.開票準備
(1)投票箱が到着し、開票できる状況になる。
(2)その投票所開票の開票者A、開票者B、記録者Cを決め、記録用紙に記載し、開票管理者に報告する。
(3)開票管理者が確認した後に、開票作業に入る。
(4)開票者AとBで投票箱を開け、票をトレイに全て移す。真ん中あたりに。
(5)投票箱に票が残ってなく、票が全てトレイに移ったことをAとBで確認し、その後記録者Cも確認する。
3.開票
(票の読み上げは、他の投票所の開票に影響のないよう小さな声で行う。)
<投票確認>
(6)AとBが、真ん中あたりにある票を別紙のとおり、分類し、20枚(or 30枚)ごとに輪ゴムでとめる。
(トレイに書いてある訳ではなく、だいたいの場所に置く。)
(7)整理が終わったら、記録者Cが無効票、白紙、不明票を確認する。そこでも不明があれば、開票管理者を呼び、判断を仰ぐ。
(8)不明がなくなったところで、A、Bは輪ゴムを外し、再度確認しながら分類する。分類が終わったら、AとBは、それぞれの数を、Cに報告する。Cはそれを記録する。
(9)Cは分類された票の数を再度確認し、違っていれば訂正し、正しければそのまま記録する。
(10)Cは、全ての分類の票の数を足し、総数を記録する。その投票所の開票は終了したものとして、開票管理者に報告する。開票管理者は、記録用紙の記載に漏れがないか等確認の後、集計用紙に記録する。
(11)開票管理者が了承したら、票を分類ごとに輪ゴムでとめ、記録とともに、全ての開票が終わるまで、投票済用紙保管場所※(箱や袋になる可能性もある)に保管する。
<アンケート分類>
(12)(6)~(9)をトレイを使って同様に行う。
(13)それぞれを分類ごとに輪ゴムでとめ※(封筒に入れる可能性もある)、アンケート回収箱に戻す。アンケート回収箱の上面に、投票所名を記載しておく。
(14)アンケート回収箱を開票管理者に手交し、開票作業を終了する。
(15)少なくとも20時までは、自分の把握する開票状況を他人には言わない。
(開票トレイの図:付箋に名前等を記載し、トレイに付箋を図のように貼り付け、そこに票を置くこととする。)

○開票管理者記録用紙
全ての投票所分を記載した表を用意しておく。

投票済用紙保管※は、場所ではなく、投票所ごとの封筒としました。封筒の表紙に投票所名を書き、そこに集計済み用紙を入れて封をしたのです。アンケートも別の封筒に、同様に表紙に投票所名とアンケートであることを記載して、アンケートを入れて封をしました。
 
大人が入って開票するところもありましたが、子供達3人で開票したところ(大人が見守っていたが)でも、手順に従って正確に開票作業を行うことができました。

各投票所での投票は15時に終了することとしましたが、そこから「Cの辺り」に投票箱を持って来て、開票を行いました。開票は17時には終了していました。

候補者への投票の各投票所での得票数を記録し、トータルの集計は行いませんでした。投票総数のみ集計を行い、399票でした。ネット投票は167票。合わせて計566票の投票が行われました。

6.公職選挙法の在り方の検討を


「ちがさきこども選挙」をやってみて、実際の地方選挙を題材とした模擬選挙の実施を是とするならば、自分がどの候補者の考えが良いと子供達が発言することができないのは、やはり非常に不自然ではないかと思いました。

公職選挙法第137条の2の未成年の選挙運動の禁止については、見直しの必要があると考えます。

こども基本法に基づく施策(こども大綱)の中の「こどもの社会参画や意見表明の機会の充実」に関し、「こどもや若者が自由に意見を表明しやすい環境整備と気運の醸成に取り組む。」のであれば、公職選挙法の第137条の2の未成年の選挙運動の禁止規定について、その改正も含む在り方の検討を行うべきと考えます。
 こどもは有権者ではありませんが、主権者であり、政治が未来の選択であれば、選挙期間中に「自分はこの選挙で〇〇氏の考え方と考え方が近いので応援したい。」と 言うことが、選挙運動とされ、罰せられる可能性があるならば、自分たちの未来の選択に意見を持つことにも抑制的になるのではないかと考えます。
意見表明もそうですが、意見を持つことも抑えられるのであれば、こども基本法の理念にも大いに反するのではないでしょうか。
公職選挙法第137条の2 の未成年の選挙運動の禁止規定については、その改正も含む在り方の検討を行うことを求めたいです。

7.市民ができたこと


566人の子供達の投票は、宝物のように輝くものと感じられました。何のバックボーンもない市民が、真に主権者教育のために、中立公平に注意し、自分たちができる最大限の努力でワークショップ等を実施し、それらを透明性を持って伝えたからこそ、子供達の、そして地域の大人達の理解を得、さらに不信がって当然の候補者の理解を得て、全員の候補者から子供達の質問に対する回答動画をもらえるという、奇跡的な事態が生じたのです。そして理解は広がり、市内10か所の商店等が場所を投票所として無償で提供してくれるようになり、当日ボランティアも多数集まり、最終的に566人もの子供達が投票してくれました。池田夫妻の努力の成果は実に大きなものです。

ここに、ルールを守り、様々な配慮をし、内容の充実の努力をし、そして何より子供達の力を信じることで、できたものとして「ちがさきこども選挙」が前例として存在することになりました。今後は、「前例がない」は、やらない理由としては成り立たないのです。

こども基本法は、令和5年(2023年)4月1日に施行されました。
こども選挙の取組みは、徐々に各地に広がっています。「こども選挙」と書かれた「のぼり」は、「ちがさき」から「さいたま」、「さいたま」から「さぬき」に、そして「とっとり」に、「とっとり」から「えびな」に送られ、使われています。


「こども選挙」を自分達の地域でやってみたいと思っていらっしゃる方、今度はあなたの地域に「のぼり」をお届けします。「のぼり」だけではなく、全ての経験をオープンにしてお伝えします。それが子供達のことを信じることによって、様々な「奇跡」に接することができた者の役目と考えております。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?