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白い四輪駆動車

「まだ、乗ってたんやね。」

久しぶりに出会った、友人や教員の知り合いに、必ずと言っていいほど言われました。何せ、距離にして36万6400キロ走ったのです。私の愛車、白い四輪駆動車です。

「そろそろ、次の車どうですか。」と言われても、多少燃費が悪くても、同じ車を道路で見かけなくなっても、私は乗り続けました。もちろん、運転のしやすさ、相性のよさもありました。が、私には約束があったからです。


「ボク、大きくなったらパパの車に乗る!」

一度だけ言われました。確か2歳か3歳の頃だったと思います。まさか、免許を取るまで乗り続けるのは、さすがに無理だろう。当時は、そんな気持ちでした。

何度も行った釣りやスキー。駅までの送迎など、思い出がどんどんたまっていくうちに、「ひょっとしたら、約束を果たせるかも。」そんな気がしてきました。

何度か大きな修理もしてもらいました。何とか、もちますように…。

そして、とうとう、彼が運転席に乗る日がやってきました。

「そんなこと言ったっけ。」
あっさりと言われました。

冷たい雨の降る、2月の夜。白い四輪駆動車は、何度も通ったことのある、湖岸を進んでいきます。

18年間、私が車に込めた想いは何だったのでしょうか。
「自分が選んだ、自分で決めた道を進んでほしいな。」

私は、そんな気持ちになっていることに、気付きました。

【2024年3月6日 初出】

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