見出し画像

教育に関する日本の立ち位置

私たちの日常生活に深く関わる教育の現場で、日本はグローバル社会の中でどのような位置づけにあるのでしょうか。本日は、日本の教育事情と、国際社会における日本の立ち位置についてお話ししていきます。


日本の教育システムの概要

日本の教育システムは、6年の小学校に続いて3年の中学校、さらに3年の高校、そして4年の大学といった6-3-3-4制が基本構造となっています。小中学校9年間は義務教育期間で無償化されており、誰もが等しく教育を受ける機会が保証されています。

高校は国公私立に分かれ、大学進学を目指す普通科と、専門的な資格取得や就職を想定した専門学科に分かれています。大学についても国公私立に分かれ、国立や難関私立大学への進学を目指して熾烈な受験競争が行われています。



国際基準との比較

しかしながら、日本の生徒の学力水準は国際的に見るとそれほど高くありません。経済協力開発機構OECDが3年ごとに実施している生徒の学習到達度調査PISAの2018年の結果では、読解力と数学的リテラシーで加盟国平均を下回り、科学的リテラシーでは平均程度にとどまっています。

単に知識を詰め込むのではなく、その知識をどう活用できるかという点で日本の生徒は不足していると指摘されています。


教育の国際化

このような状況を受けて、日本の教育においても国際化への対応が求められるようになってきました。小中高校での英語教育が再強化され、国際的な資格であるIB(国際バカロレア)の認定校の数も着実に増えつつあります。大学でも外国人留学生の受け入れ拡大が進められ、海外の大学との学生交換協定の締結も進んでいます。ただし、英語による授業の比率は欧米の大学に比べるとまだまだ低い水準にあります。


技術と教育

もっと専門的な観点から見ていきましょう。教育における国際標準化の動きとして、OECDが推進する「キー・コンピテンシー」の育成が注目されています。これは知識・技能だけでなく、批判的思考力、問題解決能力、コミュニケーション能力などの汎用的能力を指しています。PISAの評価対象にもなっているこの「キー・コンピテンシー」を育成することが、国際的に通用する人材の育成につながると考えられています。

一方で、教育の国際化に対しては、ナショナル・アイデンティティーの希薄化を危惧する議論もあります。グローバル人材育成が強調されすぎると、伝統文化や国民意識が失われてしまうのではないかという懸念です。フィンランドなどでは「国民教育」「アイデンティティ教育」といった考え方のもと、自国の文化・歴史の学習を重視しています。日本でもこの点は意識される必要があるでしょう。

近年の教育改革の動向として、コンピテンシー・ベースの学習指導要領が導入されつつあります。こうした教育課程の設計においては、「バックキャスト」という手法が有効視されています。つまり、社会が求める資質・能力をあらかじめ設定し、その達成に向けてカリキュラムを組み立てていく方式です。PBLや探究的な学びなど、能動的学習を重視する授業デザインが求められています。

さらに、教師の質の向上にも課題があります。教員の大量退職が見込まれる中、教師不足が深刻です。OECDの教員指導環境分析では、日本は加盟国中下位に位置づけられており、教員の労働環境の改善が急務とされています。同時に教員養成制度の改革も検討されており、教職課程の実践力向上などが目指されています。

AI・EdTechの発展による教育のイノベーションにも注目が集まっています。遠隔・オンライン教育の拡大はもちろん、ビッグデータ解析に基づく個別最適化学習や、ロボット・エージェントとの協働学習なども試行されつつあります。しかし一方で、教育の機会格差が拡大しないよう、デジタル・デバイドへの対応が求められます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?