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異星人VS後鳥羽上皇の歌バトルー田場狩「秘伝隠岐七番歌合」を読んでみた※ネタバレあり

鎌倉殿の13人。いよいよ大詰めですね。
北条義時VS後鳥羽上皇を楽しみに待っていたら、なんと後鳥羽上皇(と藤原定家)を主人公にしたSF小説に出会ってしまいました。

田場狩の「秘伝隠岐七番歌合」(『ゲンロン13』2022年10月)です。

以下ネタバレあります。



設定とあらすじ

時は承久の乱のあと。

現代の人類よりも科学が発達した異星人が地球にやってきます。
目的は自分たちの言葉の拡張です。というのも異星人たちは誤解のない意思疎通しかできないのですが、いろんな星の生物とのコミュニケーションを通じて、自分たちももっと複雑なコミュニケーションをしたいと思うようになったのです。

そこで異星人の一人(一体?)が後鳥羽上皇のところに派遣されます。
後鳥羽上皇は異星人に和歌を教え、異星人は後鳥羽上皇に科学(たぶん量子力学とか宇宙物理学的な)を教えます。

歌を習得した異星人の卒業イベントとして歌合をします。言葉を拡張した異星人と科学的知識を拡張した後鳥羽上皇の歌バトルです。その審判に藤原定家が招かれます。藤原定家は確か鎌倉殿の13人では、源実朝の歌の添削をしていたような気が…(うろ覚え)

卒業後、異星人は習得した歌を自分の星に持ち帰り、その星では実際にそれを運用するかどうか審議されます。というのも地球のさまざまな地域、他の星々からも同様に言葉を集めているので、それらと比較検討したり、どのような段取りで自分達に浸透させるのか検討するためです。

バトル後、ある事件がきっかけで、審議なしに異星人たちに歌が伝わってしまいます。今まで誤解のないコミュニケーションしかしたことがない異星人に、意味が多様な和歌が伝わると異星人たちの精神になんだかたいへんなことが起きて…。

感想

設定の概要を書いているだけで、わくわくしてきます。

特に面白かった点を二つあげます。

一つ目。
後鳥羽上皇の歌能力に、量子力学や宇宙物理学的知識が加わると、どんな歌ができるのか、考えただけで鳥肌もんです。もちろん異星人の歌も見てみたいです。実際彼らの歌が発表されます。私は歌をよくわかっていませんが、わからなくても問題ありませんでした。藤原定家が解説してくれるので。ただ、歌の知識がある方が楽しめただろうと思います。

二つ目。
誤解がないコミュニケーションしかしたことがない生き物に超曖昧な和歌を与えるとどうなるのか。これは本能だけで生きてきた動物が、言葉を獲得して人間にかわる、その瞬間に何がおきたのかを考えることと同じことだと思います。これを読むとその瞬間に立ち会えます。(たぶん)

鎌倉殿の13人の後鳥羽上皇はちょっとヤナやつだけど、こっちの後鳥羽上皇はカッコいいです。もちろん偉そうではあるのですが。


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