パンデミック下で撮影を再開。昼ドラ「ネイバーズ」が豪テレビ業界の注目を集める理由とは？＜日本語訳＞
当記事は、オーストラリアの国営放送「ABC」のニュースサイトに掲載された 2020/4/20 の記事を翻訳したものです。まもなく制作を再開するドラマシリーズ『ネイバーズ』が、業界関係者の注目を集める理由とは？
より正確な情報は、元記事をご参照ください。もし誤訳がありましたら、お手数ですがコメント欄にてお知らせください。適宜、訂正してアップデートいたします。
引用：https://www.abc.net.au/news/2020-04-20/neighbours-resumes-as-aussie-tv-adapts-to-coronavirus-rules/12161150
引用：Neighbours
COVID-19の影響で中断された昼ドラの長寿番組『ネイバーズ』が、制作を再開しようとしている。しかし現場はかなり異なる環境になりそうだ。
KEY POINTS：
▶︎ パンデミックにより、100本以上のオーストラリアの映画・テレビの制作が中断されている。
▶︎ 来週から制作を再開する『ネイバーズ』の現場では、物理的距離による対策が行われ、撮影スタジオは "四分円（quadrants）"に分割される。
▶︎ テレビ関係者の多くが、他の作品が『ネイバーズ』に学び、すぐに制作を再開できることを望んでいる。
キスも手をつなぐこともない。俳優とスタッフは3つのグループに隔離されるが、物理的に離れた俳優をより親密に見せるための、撮影のトリックが使われると言われています。
「ちょっと変な感じになりそうだ」と、番組の制作会社「フリーマントル・オーストラリア」の最高経営責任者クリス・オリバー・テイラー氏は語る。
ただ『ネイバーズ』はそれでやり切れる番組だ、と。
私たちは、業務を再開したいと願う何百人ものスタッフを雇用している。数百万人のイギリスの視聴者、オーストラリアの多くの視聴者に届けるため、番組の制作を続けることが重要だ、と言う。
What we need now is escapism, Australian stories — and I'm sure our British friends want the Australian sun.
今必要なのは現実逃避、オーストラリアの物語。英国の友人たちはオーストラリアの太陽を求めているはずだ。
『ネイバーズ』は、制作中断後にその制作を再開する、英語圏で初めてのテレビドラマになるとみられています。
このニュースに、コロナ禍により制作が中断され、壊滅的な打撃を受けたオーストラリアの多くのテレビ関係者が、盛り上がりを見せています。この『ネイバーズ』の制作プランが、他の番組のロードマップにもなり得る、という期待によるものです。
メイクは少なめに、親密なシーンは禁止
オリバー・テイラー氏は、制作が再開されなかった場合、6月中旬には番組のエピソード（のストック）が底を尽きるだろう、と述べた。番組制作は、復活祭（4月中旬）の2週間前に中断されました。
撮影スタジオは、運営ハブ、3つの異なる制作チームへと4分割され、3人の俳優のみがそのユニット間を行き来することが許されるという。
「どの区画も1日に100人以上の立ち入りはなく、4㎡ ルールと 1.5m の社会的距離（social distancing）のルールを適用する」とオリバー・テイラー氏は述べた。
We've got a nurse on set, different catering for everyone, males will have no make-up, women's [make-up] will not be touched up, there are no intimate scenes.
現場には看護師が常駐し、ケータリング（食事）は全員個別に用意。男性出演者はノーメイク、女性出演者のメイクは体に触れない範囲で、親密なシーンもありません。
「もし誰かが病気になっても撮影自体を中止にする必要はない。そのグループを閉鎖して（制作を）続行する」
ドラマの制作は、世界的に中断されています。オーストラリアでは、すべてのテレビドラマシリーズ、MARVELの大作映画2本、ゴールドコーストで撮影中だったトム・ハンクス主演、バズ・ラーマン監督のエルビス・プレスリーの伝記映画など、119本の映画やテレビ番組の制作が中断されています。
引用：Neighbours
億単位の打撃
業界団体である「Screen Producers Australia」は、制作中断による費用を5億ドル（約345億円）以上、輸出収入の損失は2,000万ドル（約13.8億円）と試算しています。
※ 金額は豪ドルとして換算したもの
ABC（オーストラリア放送協会）の人気コメディ番組『Shaun Micallef's Mad As Hell』のように、一部の番組は続いていますが、スタジオの観覧客はいない状態です。
フリーマントル社は、ABCで放映されているリアリティショー番組『Grand Designs Australia』と『Restoration Australia』の制作を続けていますが、これは、人と人が近距離で接触することなく制作ができる番組である、というのが理由です。
一方、同社による、刑務所を舞台にしたドラマシリーズ『ウェントワース』は制作が中断されたままです。
「『ネイバーズ』ではこれらのルールを守れますが、『ウェントワース』ではできません」とオリバー・テイラー氏は語った。
映画業界の中断による大きな負担は、正社員ではないため、政府のジョブキーパー制度（雇用調整助成金）の対象外となっている、フリーランスの俳優やスタッフたちが負担しています。
ネイバーズが証明する再開への道筋
オリバー・テイラー氏によると『ネイバーズ』の俳優とスタッフは全員、来週から仕事に復帰することを選択したという。
アラン・フレッチャーは25年間『ネイバーズ』にカール・ケネディ役で出演しています。現場の組合の代表でもある彼は（その立場を踏まえて）新たな制作プランに「絶対的な自信がある」と語っています。
「ウイルスが俳優やスタッフに忍び込んだ場合は、必要な健康措置（health procedures）が皆を守るだろう。」と彼は言った。
「リスクが高いと思われる人には特別な配慮も必要です」
引用：Neighbours
オーストラリアのメディア、エンタメ業界、アート業界を束ねる労働組合『MEAA』のケリー・ウッド氏は、フリーマントル社が『ネイバーズ』の復帰を成功させられるかどうか、業界全体が注目していると語る。
業界団体「Screen Producers Australia」のマイケル・ティアー代表は『ネイバーズ』の復帰は「安全衛生上のリスクを管理し、再開する方法を見出せると証明している」と述べました。
シドニーのトウモロコシ畑で行われるホラー映画の撮影
しかし、映画の方では、保険が確保できないことがプロデューサーの足かせとなっています。
ひとつ例外としてあるのが、アメリカのインディペンデント作品として制作される、スティーブン・キングの古典的なホラー映画『チルドレン・オブ・ザ・コーン』のリメイクです。
ルーカス・フォスターと監督のカート・ウィマーのプロデュースにより、シドニー郊外のトウモロコシ畑で、オーストラリア人の俳優とスタッフを中心に撮影が続けられています。
この映画に投資している州の資金提供団体「Screen NSW」の広報担当者によると、私費でリメイクされたこの映画は NSW で600万ドル（約414.8億円）を費やし、490名のオーストラリア人を雇用する予定だという。
※ 金額は豪ドルとして換算したもの
「労働組合のメンバーは作業を続ける自信があると話している」とMEAAのウッド氏は語った。
「すべて屋外で行われ、脚本に人と人が近距離で接するような内容もない」
プロデューサー陣はABCとの間で、撮影に関する話はしませんでしたが、ウッドさんは8ページに渡る行動規範が採用され、台本の一部が書き直され、スタッフが減らされたと話します。
彼女によると、撮影のほとんどが屋外の撮影用に植えられたトウモロコシ畑で行われ、ほとんどの俳優やスタッフがロケ地に収容されていたという。
このプロジェクトは、企業や製作スタジオのシステムから独立しているため、広く発行されている包括的な停止命令に従う必要はありませんでした。
『マスターシェフ』の新たな現実
制作中断を回避したテレビ番組の中で、最も注目を集めているのは『マスターシェフ』です。
制作会社の「Endemol Shine」は、1月の最新シリーズの撮影開始後に、連邦政府による勧告にしたがって、より厳しい衛生管理を実施しました。
プロデューサーの広報担当者は、社会的距離（social distancing）と手指消毒対策が強化されている、と言います。これには、コンテスト出場者の調理台の間隔を空けたり、チームチャレンジや食品貯蔵室の中で、食品を扱ったりする際に手袋を着用することなどが含まれていました。
手洗い場が追加され、審査員は個別に分けられた料理を試食します。
一方、『ネイバーズ』に話題を戻すと、アラン・フレッチャーは『Ramsay Street』での新しいノーメイク・ルールの修正案を考え出しました。「メイクはかなりの腕前になってきたので、自分でやることになるでしょう」と話す。
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