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アスベストは心配ないか?

 リノベーションに向いた古い物件を探していると、心配のタネのひとつとしてアスベストがある。
 たいていの中古物件は、アスベストに関する調査をしていない。物件の売買契約のときにあわせて確認させられる「重要事項説明書」には、アスベスト(石綿)の使用状況について調査したかどうかを記す項目はあるのだけれど、たいがい未調査とだけ書いて終わりとなっている。しっかり調査すればそれだけで相応の費用が掛かるし、解体する時ででもなければそのままでも実害はないので、わざわざ調べたりはしない、というのが、業界的な通例になっているようである。
 つまり、壁や天井の解体をともなうリノベーションを前提に物件を買う場合、買ったあとで解体を始めてみないと、アスベストの有無は分からない。どきどき・アスベスト・ロシアン・ルーレット、なのである。

アスベストがあったらどうなるのか?

 アスベストが見つかってしまったら、その程度にもよるけれど、数百万程度の費用増加になってしまうケースもあるようだ。
 中古マンションのリフォームで「レベル1(3段階あるうちの最高レベル)」のアスベスト撤去をした事例が、工事の写真付きでネットで公開されているが、47㎡で4日間、180万円かかった、とのことである。金額的に、かなり痛い。

アスベスト年表(簡易版)

 どきどき・アスベスト・ロシアン・ルーレットの結果を推測するには、たいていの場合、物件の築年数くらいしか情報がない。
 世間のアスベスト利用状況を、以下に簡単な年表にしてみる。

・1980年には、米国では問題化しはじめているけど、国内ではまだ、あまり騒がれていなかったようだ。
・1987年には、国内でもニュース等でさかんに取り上げられるようになった。それ以降、各種の法律なども定められて、アスベスト利用はどんどん少なくなっていった。
・2006年には、アスベストは国内で完全禁止されており、それ以降の物件には解体時のアスベスト調査義務がない。

 築年数が2006年以降であれば心配は全然なく、1980年以前であればけっこう心配、ということになる。
 ぼくたちの買った物件は1985年築だったので、少し心配していたのだけれど、幸いアスベストの使用はなかったので、その分の経費は掛からずに済んだ。
 もし見つかった場合でも、アスベストを封じ込めるように壁や天井を作ってしまうという対策もできるようだ。このへんはもう、業者さんに任せるしかない部分だと思う。

アスベストについて細かい話

 古くは平安の頃、竹取物語でかぐや姫が求婚者に求めた五つの難題のうちの一つ、火に投じても燃えない布いわゆる「火鼠の皮衣」というのは、もし実在するモデルがあるならばアスベストであったのだろう、と言われている。
 アスベスト(石綿)は、繊維状の石、文字通りの石の綿である。加工がたやすく、耐久性に優れ、防火性能があり、安価であったため、建材として大量に利用されてきた。が、その繊維が飛び散って、呼吸によって人体に取り込まれると、治療の難しい肺の病気(肺がんや中皮腫)を引き起こすということが分かってから、使用規制の対象になっていった。
「静かな時限爆弾」という著作が発表されたのは1985年だけれど、この時代にはすでに、長い将来にわたってアスベストが健康被害をもたらすだろうということは判っていたようだ。アスベストの利用自体はもう2006年で止まっているけれど、潜伏期間は40年といわれており、健康被害が出てくるのはこれからなのだそうだ。気が重い話ではある。

この記事の写真は、幸いにもアスベストは使われていなかった、天井をはがした後のぼくたちの新居。

以上。